
小牧太騎手、岩田康誠騎手、木村健騎手など歴代の名ジョッキーが達成した1日6勝。1月11日、吉村智洋騎手が7勝を挙げて園田・姫路競馬における1日最多勝記録を更新しました。さらに翌週には地方通算3000勝を達成。また、2022年は2回目の地方競馬全国リーディングに輝くなど勢いに乗る吉村騎手に記録の数々ついて聞きました。
話題が豊富すぎる吉村騎手。まずは1日7勝おめでとうございます。
ありがとうございます。1日6勝は何回かしたことがあって(6回)、どこかで7勝ができるな、とは思っていました。
この日は最初の騎乗から直線入口で大きく外に進路を取るようなレースが見られました。
前日にインを狙ったレースを2~3回したんですけど、伸びないなと感じていて、最終レースで外に行ったらやっぱり伸びたので、「外やな」と気持ちが決まりました。
あそこまで外に出すのは勇気がいりそうですが、逃げたレースでも大外に誘導していましたね。10レースでは廣瀬航騎手との接戦を制して勝ちました。
直線で馬も脚が上がってふわっとしていたんですけど、乗っている感覚としてはアタマ差くらいで勝っていると思っていました。でも、ちょうど僕の馬が頭を上げて、相手は頭を下げたところがゴールだったので写真判定になりました。このハナ差の6勝目はかなり大きかったです。残り2レースで、最終レースはよっぽど下手に乗らない限り勝てるなと感じていましたが、メインレースは強い馬が1頭いたので、10レースを勝たないと7勝には届かないな、と考えていました。
ということは、このハナ差を勝ったことで「7勝はいける」と?
はい、7勝は来るなと思いました。さらにメインを勝てれば、もしかしたら8勝までもあるかもしれない、と思っていましたけど、順序があるんじゃないですかね。「1日7勝してからじゃないと8勝はダメですよ」っていう。
園田・姫路競馬は1日の騎乗数が8鞍までという制限があるので、1日8勝は全勝を意味しますが、吉村騎手ならいつか達成しそうです。1月17日からは開催が姫路に変わり、「姫路は苦手」と公言していましたが、園田と変わらぬペースで勝っていますね。
苦手は苦手なんですけど、コース形態ではなくて輸送があまり好きじゃないんです。厩舎や調整ルームのある園田競馬場と違って、姫路競馬場は毎日バスで約1時間かけて移動。姫路に着いてからは体重調整などの時間がなくて、あらかじめ園田で全てやらないといけません。
1年のうち8カ月以上は園田開催なのに対し、スケジュールがタイトになるんですね。そうした中でも、姫路開幕日にポンポンと勝ち3000勝も達成。おめでとうございます。
ついていますよね。開幕週3日間のうちに達成できればいいかなと思っていましたけど、まさか初日からポンポンと勝つとはね。流れがたまたま向いただけだと思うんですけど、流れは大事ですからね。
そして2022年は2回目の地方競馬全国リーディングで、NARグランプリの最優秀勝利回数騎手賞受賞も2度目となりました。
めちゃくちゃ嬉しいです。全国リーディングなんて、一度きりかなと思っていました。
2018年、296勝で初めて全国リーディングに輝いた後、ずっと300勝以上を挙げていましたが、森泰斗騎手(船橋)がそれ以上に勝つという状況でした。
森騎手のことは必然的に意識はしていました。去年は9月頃に20勝前後、森騎手に一度離されたんですけど、10月半ばくらいに僕が一気に勝って「ひょっとしたらまたリーディングが来るか!?」と意識していました。それだけいい馬に乗せていただいていて、このくらい勝って当たり前なんだと思います。むしろ、もっと勝たないといけなくらいだと思っています。それだけ「勝ってきてくれよ」という気持ちで騎乗依頼をいただいていると感じています。
長男・誠之助くんは現在、JRA競馬学校に在学中で騎手を目指しています。息子さんの存在は刺激になっていますか?
間違いなく刺激になっています。周囲の人から「お前の親父、全国リーディングやな」と言われた方が本人も嬉しいでしょうから、そういうところを見せていけたらいいなと思って、励みになっています。
お手馬の中では楠賞を勝ったエコロクラージュがいますし、今年も「親父すごいぞ」というところを見せられそうですね。
エコロクラージュはデビューから無敗で名古屋の秋の鞍に遠征した時、抜け出してからとんでもなく遊んでしまって、3着に負けました。連勝している時でも抜け出して遊ぶ面があったので馬具を変えたかったんですけど、やはり勝っている間はなかなか変えられないですよね。でも、名古屋で負けて、「何か考えないと、次の楠賞は勝てないぞ」となり、ブリンカーを着けることになりました。大目標にしていたのが楠賞で、秋の鞍と両方勝てれば一番良かったんでしょうけど、あの敗戦があったからこそ楠賞を勝てたと思っています。
11月2日、エコロクラージュで楠賞制覇
バンローズキングスも菊水賞での敗戦からチークピーシズを着けることになり、兵庫ダービーを勝ちました。無敗はもちろんすごいですが、負けて得られるものも大きいですね。
負けて学ぶこともたくさんあると思います。エコロクラージュはまさに分かりやすい例ですね。
最後に、オッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
レースではいつも人気ばかりが先行していますが、その人気にできるだけ応えられるように頑張っていきますので、これからも園田・姫路競馬共々、応援のほどよろしくお願いします。
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 大恵陽子(写真:大恵陽子、兵庫県競馬組合)
プロフィールページからお気に入り登録ができます。
※お気に入り登録にはログインが必要です。
ファン投票によって出走馬が決まる園田金盃。ここを勝った馬が年度代表馬に選ばれることも多く、園田・姫路競馬の1年を締めくくる一戦でもあります。今年は、2年連続年度代表馬のジンギ vs ホッカイドウ競馬三冠馬ラッキードリームの2強ムード。ジンギは出遅れを跳ね除けて追い込みましたが2着まで。勝ったのはラッキードリームでした。移籍初戦から3戦続けて手綱をとる下原理騎手に聞きました。
ラッキードリームで園田金盃勝利、おめでとうございます。
ありがとうございます。ホッとしました。
スタートではジンギがまさかの出遅れ。それは分かりましたか?
逃げ馬のタガノウィリアムが内に、ジンギが外の枠だったので、両サイドを確認して乗ろうと思っていたんですけど、スタートして100mくらい行って、「あれ?あの2頭どこ行った!?」となりました。クリノメガミエースが最初のコーナーで先手を取りに来た時もジンギだと思ったんです。「あ、違うちがう。大丈夫、落ち着け」と言い聞かせていました。
そのクリノメガミエースが後続を10馬身以上離して大逃げを打ちました。道中はどんな心境だったんですか?
1周目のスタンド前では「めちゃくちゃ行くなあ」と思っていました。あの作戦はすごいなと思いましたけど、あの流れだったら後ろが相手かなと思って慌てませんでした。ある程度のところで前を射程圏に入れようと考えながら乗っていました。
園田金盃を制して園田で重賞2連勝としたラッキードリーム
前走の姫山菊花賞ではコーナーでモタついた点が課題として挙げられましたが、今回はどうでしたか?
姫山菊花賞ではシェダルが来るのは分かっていましたけど、いきなり来た時に対応ができませんでした。でも、今回は流れも位置取りも違っていて、自分のペースで全て運べたので競馬がしやすかったです。自分で淡々とレースを作る方がコーナーの動きなどを含め、この馬の味が生きると思いました。
園田・姫路で絶対王者だったジンギに2戦続けて勝ちました。いよいよ世代交代でしょうか。
ジンギに2回勝ちましたけど、正直、今回は幸運な面があったと思います。ジンギは前走は休養明けでしたし、冬場に強さが増す馬なので、まだまだやってみないと分からない部分もあります。
このあとは状態次第で南関東への遠征や2月の佐賀記念なども視野に入ってくるかと思います。楽しみは広がりますね。
ダートグレードで上位を狙えるかもしれない馬に乗れるって幸せですよね。姫山菊花賞の(ラッキードリームの)上り3ハロンが37秒0。この時計ってなかなか出ないと思います。スタートが決まればそれなりに行きたい位置を取れて、道中は折り合いもつきやすくて、この上がりの脚を使えるのが魅力です。4歳で年齢的にもまだまだこれからの馬ですし、走りもどんどん良くなっています。ジンギと一緒に園田の代表として頑張りたいので、2頭とも応援してほしいなと思います。
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
2歳馬で、デビューから2連勝中のヒメツルイチモンジという馬も操縦性が良さそうで、大晦日の園田ジュニアカップでは楽しみにしています。ぜひ応援よろしくお願いします。
-------------------------------------------------------
※インタビュー・写真 / 大恵陽子
プロフィールページからお気に入り登録ができます。
※お気に入り登録にはログインが必要です。
混戦ムード漂った第23回兵庫ダービーをバウチェイサーで制した笹田知宏騎手。兵庫三冠の開幕直前は「ダービー最有力候補」と目された一方、菊水賞3着、兵庫チャンピオンシップ10着と敗れてしまいました。そこから見事な巻き返しに成功した喜びの声、そして若い頃はニュージーランドで騎乗し、地方競馬の騎手免許を取得して今秋で11年を迎える笹田騎手自身のことを伺いました。
兵庫ダービー、おめでとうございました。
ありがとうございます。
バウチェイサーは今春の早い段階から地元で「ダービー最有力候補」と囁かれていました。ここまでの経緯を教えてください。
昨年、2歳秋に新子厩舎に来て、移籍初戦を強い勝ち方をして兵庫ジュニアグランプリ(4着)でもいい競馬ができたので、「来年は大きなところを目指そう」という話をずっとしていました。でも、菊水賞は馬の反応があまり良くなくて、敗因もハッキリしませんでした。それを踏まえた上で兵庫チャンピオンシップでは前半から気合いをつけて出して行ったのですが、それが兵庫ダービーでは生きたのかなと思います。それに、僕らの想像以上に馬もしっかり成長してくれて、感謝しています。
改めて兵庫ダービー当日を振り返りたいのですが、返し馬の感触はどうでしたか?
いつもより落ち着いていて、それがいいのか悪いのかはよく分からなかったんですけど、笠松や川崎に遠征した時もすごく落ち着いていてゲートの出も良かったので、きっといい方に向くだろうと思いながら、自分も落ち着こうと思いました。
ニネンビーグミなど同型馬の存在もありました。レースプランはどう描いていましたか?
はじめから2番手につけるつもりでした。笠松でゴールドジュニアを勝った時も2番手外でいい形で走ってくれて、兵庫ダービーでも想像していた通り2番手で力を抜いてくれました。
そうすると、3~4コーナーの手応えは?
良かったですね。今までにないぐらいのいい手応えだったので、本当はちょっと仕掛けるのが早いんですけど、でも「この手応えなら!」と思って行きました。
ダービーの勝負所をいい手応えで回ってくる時って、胸の高鳴りとかどうでしたか?
どちらかと言うといつもより冷静でした。ダービーだからというわけじゃなく、大事なレースの時はいつもそうなんですけど、勝負所のタイミングだけは間違えないようにと思っています。いつもより冷静に、馬の呼吸と背中の感触を確かめてからゴーサインを出しました。
兵庫ダービーを制したバウチェイサー
ゴール後には関係者に向かって喜びの声を上げているのが聞こえてきました。
菊水賞が悔しい負け方で、それを踏まえてみんなでここを目指してやってきたので、そこを勝てたというのは大きくて、自然と「よっしゃ!」と言っていました。ダービーが終わってからもたくさんの人に「おめでとう」と言ってもらえました。栗東の地元の友人や、父の元にも祝福の言葉があったみたいで、本当にダービーは特別なんだなと思いました。
笹田騎手の父はオークスなどを制した笹田和秀調教師(JRA)、祖父は数々のビッグレースを制した伊藤雄二元調教師(JRA)です。勝利騎手インタビューでの「この業界に生まれ育って、ダービーの重みはすごく分かっていました」という言葉に重みを感じます。
ずっと栗東トレセンの厩舎に住んでいて、祖父が管理するウイニングチケットが勝った時は7歳でした。子供だったので、ダービー前のピリピリしている感覚はよく分からなかったですけど、中学生くらいになると競馬場の雰囲気が変わるというのが伝わってきました。それに、そういう時に武豊さんはしっかり勝っていた方なので、自然と「ああいう風になりたいな」と目指しました。
ウイニングチケットでは柴田政人元騎手が悲願のダービー制覇を果たしましたが、今年の兵庫ダービーでは新子雅司調教師が「笹田騎手をダービージョッキーにするのが目標」とおっしゃっていた夢を二人で実現されました。
先生がそうおっしゃっているのを直接は聞いていないんですけど、レース後に周りの人から聞いて、先生の偉大さを感じました。僕は勝たせてもらったという立場で、本当に感謝しかありません。
笹田騎手は園田・姫路競馬でデビュー時は重畠勝利厩舎の所属でしたが、2013年に重畠調教師逝去により新子厩舎へ移籍しました。そこから重賞を勝ったり年間100勝など、どんどん輝いていっているように感じます。
新子先生のところに所属になった当初は、ここまでしっかり「師匠と弟子」という関係ではなくて、籍だけ置かせてもらったんですけど、そんな僕を先生はずっと乗せてくださいました。先生の成績が上がるにつれて僕の成績も上がっていないと、周りからの先生を見る目もあまり良くないと思うので、僕もちゃんと成績を上げないと、という自覚が芽生えていきました。でもまだまだ未熟で、もっと上手なジョッキーはいるので、もっとしっかり任せてもらえるように頑張りたいです。
これからの目標はなんですか?
バウチェイサーはこれからも大きいレースを狙っていくと思うので、僕自身もしっかり力をつけてグレードレースで勝負ができるようになりたいです。厩舎にはイグナイターという大きな看板馬がいるので、少しでも近づけるように頑張りたいです。
最後に、オッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
今回こうしてダービーを勝たせてもらえて、周りの人のありがたみというのがよく分かりました。これからもその気持ちを忘れず、少しでも色んな人に還元できるようなジョッキーになっていきたいなと思います。これからも応援してもらえたらなと思います。
-------------------------------------------------------
※インタビュー・写真 / 大恵陽子
デビューから21年目にして悲願の重賞初制覇を果たした廣瀬航騎手。ガリバーストームで兵庫若駒賞を制覇した瞬間、喜びの声を上げ、検量室前に引き上げてきてからは嗚咽が止まりませんでした。トップ層が厚い園田・姫路競馬での長い下積み時代を経て、37歳の今でも誰よりも調教に騎乗する廣瀬騎手が、少し照れながら心境を語ってくれました。
兵庫若駒賞をガリバーストームで優勝、おめでとうございます!
ありがとうございます。
待望の重賞初制覇となるゴールの瞬間はどんなお気持ちでしたか?
「レースに勝てた」という気持ちで、ホッとしました。その後、長い間苦労してきたことが蘇ってきて、込み上げるものがありました。
ガリバーストームはデビューから2連勝中で、前走の勝ちタイムもよかったです。プレッシャーはありましたか?
結構プレッシャーを感じていて、むちゃくちゃしんどかったです。プレッシャーに弱いんですよ。夜は眠れたんですけど、兵庫若駒賞までに少しレース間隔が空いたので、そこから感じはじめました。
レースを振り返ってみていかがですか?
逃げにはこだわらずにと思っていて、内から行く馬を行かせました。4コーナーを先頭で回りましたけど、ベラジオボッキーニがまだ近くにいて気になりました。正直、こちらの手応えがなくて、残り50mくらいで「(ピロコギガマックスに)負けた......」と思いました。いつものパターンなら、差されて負けていました。
それが「今回はなんとか凌げてよかった!」と。
そうです。それで、とりあえずホッとしましたね。
その直後には喜びの声が聞こえてきました。
それはもう「よっしゃ!」と思いました。
ピロコギガマックス(右)をクビ差でしりぞけ人馬とも重賞初制覇
先月には5連勝中で1番人気に推されたハナブサで園田チャレンジカップに挑むも、4着という出来事もありました。
あの時も常にプレッシャーを感じていました。ハナブサの時は挑戦者という気持ちでしたけど、今回は勝ちに行かないといけないと思っていました。
それだけガリバーストームの可能性も感じていたんですね。現時点での長所はどんなところですか?
テンが速いですし、乗りやすいです。あとは距離が延びてどうなるか、それはまだ分からないですが、能力はありますね。
廣瀬騎手は2001年4月デビュー。JRAに移籍した小牧太騎手や岩田康誠騎手がバリバリに活躍されていた時代ですね。
当時はジョッキーも50人くらいいて、デビューして12~13年はレースにあまり乗った記憶がないです。
それだけ競争が激しくてレースに乗ることさえ大変な時代だったんですね。減量特典も今は101勝を挙げるかデビューから5年までは付与されますが、当時は20勝で減量卒業でした。
環境のせいにはしたくなくて、自分が何か悪かったんじゃないでしょうか。その中でも伸びている後輩騎手もいますから。
そう感じつつも、努力が結果に繋がらないと腐りそうになることはなかったですか?
それはもう何度もありました。なかなか上手くいかなくてしんどいなとも感じますが、叩き上げでここまで上がってこられたのはミラクルじゃないかなと思います。
たまにですが調教を見に行くと、いつも最後の時間帯まで乗ってらっしゃいますよね。そういった姿勢が少しずつ評価されて、昨年・今年と騎乗数が園田・姫路で4位なのかなと感じます。
本当にありがたいです。毎日20頭以上、調教に乗ってきた甲斐があったのかなと感じます。
競馬で心がけていることは何ですか?
レースにほとんど乗れない時代が長かったので、どんな馬でも1頭ずつ真剣に「結果を出したろう!」と思って臨んでいます。もしかしたら他のジョッキーの方がもっと考えているかもしれないですけど、自分なりにはそう思って乗っています。
重賞初制覇を果たして、これからはどんなジョッキー人生を歩んでいきたいですか?
現状維持でいいんじゃないかなと思います。ここまでこられたら十分です。
最後に、オッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
今はこういう状況でなかなか競馬場に来ることは難しいと思いますけど、全力で頑張るので応援よろしくお願いします。
-------------------------------------------------------
※インタビュー・写真 / 大恵陽子
デビュー1年目に重賞初制覇を果たし、この7年は地元リーディング6位以内と、堅実な活躍を続ける大山真吾騎手。兵庫ダービーはこれまで2着2回、3着2回と手が届きかけたものの、意外にも未勝利でした。しかし今年6月10日、ついにスマイルサルファーで兵庫ダービー初制覇を果たしました。待望のダービージョッキーとなった今の心境とは。
兵庫ダービー制覇、おめでとうございます!一番喜びが沸いてきたのはいつでしたか?
次の日に「あ~、勝ったんやなぁ」という感じでした。1回は勝ちたいレースですね。
スマイルサルファーにはデビューから騎乗しています。最初の頃の印象はどうでしたか?
デビュー前の発走検査と能力検査から乗って、「そこそこ走ってくるかな」とは思いましたけど、当時は「普通」という印象でした。新馬戦を勝った後にすぐ牧場へ休養に上がって、帰ってきてから西脇トレセンへ能力検査に乗りに行った時に、「これは走るな」と感じました。成長したのか、いい休養になったのか、その辺りは分からないですけど、パワーアップして帰ってきました。
スマイルサルファーにとって兵庫ダービーが重賞初制覇でもありましたが、これまでで一番変わったと感じるのはその時ですか?
2歳10月のJRA認定レースを勝った後にまた休養に上がって、休養明けの兵庫ユースカップからはずっと強い相手とやってきたので力をつけてきたんじゃないかなと思います。兵庫ユースカップの時は休み明けが響いたかな、という感じのレースぶり。菊水賞は初めての距離でもしっかり走ってくれました。その辺りで「どこかで重賞を勝てるじゃないかな」と思いました。
兵庫ダービーの本場馬へ向かうスマイルサルファー
兵庫ユースカップ、菊水賞とともに4着でしたが、着差は詰めてきていましたね。続く5月14日の3歳A特別は菊水賞馬シェナキングにクビ差まで迫り、兵庫ダービーを迎えました。
差が縮まったかな、とは前哨戦で思っていました。兵庫ダービーは道中は内でずっと溜めたいなと思っていたので、内枠が当たったのは良くて、最後でどこか外に出られたらと思っていました。理想的な流れにもなりました。
3~4コーナーで大外からグーンと伸びてくるシーンを見て、4年前のスリーピーアイで2着の悔しさを思い出した人も多いと思います。
僕は全然(笑)。必死で、「なんとか」という感じでした。スリーピーアイの時は着差が着差(アタマ差)でしたし、「交わせるかな」と思っていました。でも、川原(正一)さんとブレイヴコールがもうひと伸びした感じでしたね。
今回は3頭横並びでしたが、きっちり差していました。勝ったと分かりましたか?
ゴール後、ゆっくり帰ってきていて、厩舎スタッフとかみんなが「勝った!勝った!」と言っていました。僕は確定するまでは「ホンマに勝ってるんかな?」と確信は持っていませんでした。
兵庫ダービーはゴール前3頭横一線の接戦を制した(手前、写真:兵庫県競馬組合)
大山騎手はこうして豪快に外から差す印象が強いです。YouTube生配信『オッズパークLIVE』でも競馬ブック・松原秀隆トラックマンが「人気薄の無欲の差しで、外を回してくる時によく馬券に絡む印象」と話していました。
馬場にもよりますけど、勢いがついたらブレーキをかけるよりかは少々ロスをしてもいいのかなと考えています。
松原TMとは幼馴染だそうですね。立場は違えど、同じ職場ってすごいですね。
小中学校と同じで、部活も塾も一緒でした。当時、競馬の話をそこまでした記憶はないですけど、競馬キンキ(2021年2月に休刊)に入社したと聞いた時は「なんで?」って感じでした(笑)。
さて、晴れてダービージョッキーとなったわけですが、大山騎手にとって兵庫ダービーとは?
馬も一度しか出られないですし、重みがあるレースだと思います。なかなか獲るのが難しいレースじゃないかなと思いますけど、木村(健)さんは5回も勝っていますもんね(笑)。すごいと思います。
木村元騎手(現調教師)は初ダービーまでは少し時間がかかりましたが、1回勝つとポンポンと勝っていきました。大山騎手も"ポンポン"があるんじゃないですか?
そうなればいいですけど。気持ちとか乗り方に変化があるのかどうか、来年も乗っていれば分かるんじゃないですかね。
園田・姫路では新人騎手が3名デビューしました。減量を生かしたレースが目立ち、展開がこれまでとは変わってきました。
3キロ減や女性騎手は4キロ減なので、一緒のレースやったらどれだけ追いかけたらいいのかは考えますね。逃げたらなかなか止まらないので、意識します。かと言って、追いかけると自分が止まっちゃいますしね。3人もいるので、一緒に乗っていたら難しいです。
そうした中、大山騎手もどんどんキャリアを積み重ねています。今の目標などは?
最低でも年間100勝はしたいなと思いますけど、去年が勝てなかったので......。そこが最低ラインかな。あとは毎年重賞を勝ちたいなと思っています。
最後にオッズパーク会員へメッセージをお願いします。
スマイルサルファーで今後、遠征に行く予定です。7月19日には西脇へ自主参加の能検に乗りに行ってきました。相手も強くなりますけど、よその大きいレースへ使いに行っても応援よろしくお願いします。
-------------------------------------------------------
※インタビュー・写真 / 大恵陽子