混戦ムード漂った第23回兵庫ダービーをバウチェイサーで制した笹田知宏騎手。兵庫三冠の開幕直前は「ダービー最有力候補」と目された一方、菊水賞3着、兵庫チャンピオンシップ10着と敗れてしまいました。そこから見事な巻き返しに成功した喜びの声、そして若い頃はニュージーランドで騎乗し、地方競馬の騎手免許を取得して今秋で11年を迎える笹田騎手自身のことを伺いました。
兵庫ダービー、おめでとうございました。
ありがとうございます。
バウチェイサーは今春の早い段階から地元で「ダービー最有力候補」と囁かれていました。ここまでの経緯を教えてください。
昨年、2歳秋に新子厩舎に来て、移籍初戦を強い勝ち方をして兵庫ジュニアグランプリ(4着)でもいい競馬ができたので、「来年は大きなところを目指そう」という話をずっとしていました。でも、菊水賞は馬の反応があまり良くなくて、敗因もハッキリしませんでした。それを踏まえた上で兵庫チャンピオンシップでは前半から気合いをつけて出して行ったのですが、それが兵庫ダービーでは生きたのかなと思います。それに、僕らの想像以上に馬もしっかり成長してくれて、感謝しています。
改めて兵庫ダービー当日を振り返りたいのですが、返し馬の感触はどうでしたか?
いつもより落ち着いていて、それがいいのか悪いのかはよく分からなかったんですけど、笠松や川崎に遠征した時もすごく落ち着いていてゲートの出も良かったので、きっといい方に向くだろうと思いながら、自分も落ち着こうと思いました。
ニネンビーグミなど同型馬の存在もありました。レースプランはどう描いていましたか?
はじめから2番手につけるつもりでした。笠松でゴールドジュニアを勝った時も2番手外でいい形で走ってくれて、兵庫ダービーでも想像していた通り2番手で力を抜いてくれました。
そうすると、3~4コーナーの手応えは?
良かったですね。今までにないぐらいのいい手応えだったので、本当はちょっと仕掛けるのが早いんですけど、でも「この手応えなら!」と思って行きました。
ダービーの勝負所をいい手応えで回ってくる時って、胸の高鳴りとかどうでしたか?
どちらかと言うといつもより冷静でした。ダービーだからというわけじゃなく、大事なレースの時はいつもそうなんですけど、勝負所のタイミングだけは間違えないようにと思っています。いつもより冷静に、馬の呼吸と背中の感触を確かめてからゴーサインを出しました。
兵庫ダービーを制したバウチェイサー
ゴール後には関係者に向かって喜びの声を上げているのが聞こえてきました。
菊水賞が悔しい負け方で、それを踏まえてみんなでここを目指してやってきたので、そこを勝てたというのは大きくて、自然と「よっしゃ!」と言っていました。ダービーが終わってからもたくさんの人に「おめでとう」と言ってもらえました。栗東の地元の友人や、父の元にも祝福の言葉があったみたいで、本当にダービーは特別なんだなと思いました。
笹田騎手の父はオークスなどを制した笹田和秀調教師(JRA)、祖父は数々のビッグレースを制した伊藤雄二元調教師(JRA)です。勝利騎手インタビューでの「この業界に生まれ育って、ダービーの重みはすごく分かっていました」という言葉に重みを感じます。
ずっと栗東トレセンの厩舎に住んでいて、祖父が管理するウイニングチケットが勝った時は7歳でした。子供だったので、ダービー前のピリピリしている感覚はよく分からなかったですけど、中学生くらいになると競馬場の雰囲気が変わるというのが伝わってきました。それに、そういう時に武豊さんはしっかり勝っていた方なので、自然と「ああいう風になりたいな」と目指しました。
ウイニングチケットでは柴田政人元騎手が悲願のダービー制覇を果たしましたが、今年の兵庫ダービーでは新子雅司調教師が「笹田騎手をダービージョッキーにするのが目標」とおっしゃっていた夢を二人で実現されました。
先生がそうおっしゃっているのを直接は聞いていないんですけど、レース後に周りの人から聞いて、先生の偉大さを感じました。僕は勝たせてもらったという立場で、本当に感謝しかありません。
笹田騎手は園田・姫路競馬でデビュー時は重畠勝利厩舎の所属でしたが、2013年に重畠調教師逝去により新子厩舎へ移籍しました。そこから重賞を勝ったり年間100勝など、どんどん輝いていっているように感じます。
新子先生のところに所属になった当初は、ここまでしっかり「師匠と弟子」という関係ではなくて、籍だけ置かせてもらったんですけど、そんな僕を先生はずっと乗せてくださいました。先生の成績が上がるにつれて僕の成績も上がっていないと、周りからの先生を見る目もあまり良くないと思うので、僕もちゃんと成績を上げないと、という自覚が芽生えていきました。でもまだまだ未熟で、もっと上手なジョッキーはいるので、もっとしっかり任せてもらえるように頑張りたいです。
これからの目標はなんですか?
バウチェイサーはこれからも大きいレースを狙っていくと思うので、僕自身もしっかり力をつけてグレードレースで勝負ができるようになりたいです。厩舎にはイグナイターという大きな看板馬がいるので、少しでも近づけるように頑張りたいです。
最後に、オッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
今回こうしてダービーを勝たせてもらえて、周りの人のありがたみというのがよく分かりました。これからもその気持ちを忘れず、少しでも色んな人に還元できるようなジョッキーになっていきたいなと思います。これからも応援してもらえたらなと思います。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子