
2025年6月16日、デビューから9年2カ月で通算1000勝を達成した加藤聡一(かとうそういち)騎手(名古屋)に、ここまで騎手として活躍してきての思いを聞きました。
1000勝を達成しての気持ちをお話し下さい。
まずは、シンプルに目の前のレースを勝ったので、嬉しかったです。それで、引き上げてきてみんなに1000勝おめでとうと言われたので、嬉しいと言うよりホッとしました。
1000勝というのは大きな区切りですが、自身ではこの数字をどう感じていますか?
確かに数字だけ見れば大きな数字なのですが、それまで負けた回数も多いですから。それでも乗せてくださった皆さまに対する感謝の気持ちが大きかったですし、頑張ってくれた馬にも「ありがとう」と思いました。
6月16日名古屋第4レース、タマモルピナスに騎乗して通算1000勝達成
いま、レースに騎乗する上で意識しているのはどんなことでしょうか?
全部のレースで、とにかく1つでも上の着に持ってくるようにという意識を、かなり強く持っています。そのためには、その馬のレースを普段から見ているわけですから、自分だったらこうしようああしようと思ったことを、レースに行って意識しながら乗ってみます。結果が出ればいいですし、出なければ反省する。それの繰り返しですね。
デビューから9年ちょっとで、考え方とか取り巻く環境とかで何か変化はありましたか?
デビューした頃から、自分が乗せて頂いている厩舎は、結果を出さないといけない、勝ったとしても内容も求められていましたし、勝っても内容が不十分だと、よく叱られたりもしていました。それは、当時も今も変わらないと思っています。
逆に、変わった部分は?
いまは、賞金がすごく上がってきているので、やはり"変なレース"は出来ないなと自分の中では思っています。馬主さんとか、ファンの方に対しては、不完全燃焼じゃないですけど......そういうレースはしないように意識しています。
責任感みたいなものが......。
より一層増してきたなっていうのは、感じます。馬主さんも、競馬場は以前より遠くなったのに、以前よりも一層よく臨場されるようになっていますし、賞金が上がるということは、自ずとそういう風になってくるということなのかなと実感しています。
周囲の雰囲気の変化はどうですか?ご自身も年を取って、メンバーも入れ替わっていますよね?
最初の頃は一番下でしたけれども、名古屋は年下の子が多く入ってくるようになって、ひとりずつ増えていたはずなんですけれども、気づけば後輩がどんどんどんどん増えてきていて......いま中堅みたいなポジションになってきています。
中堅、ですか?まだ若いですよ、相当(笑)
中堅ですね。若い人たちに教えていかなければいけないし、自分もそれと同様に伸びていかなければいけないっていう状況にはあるんですけれども、それはそれで純粋に楽しい、っていう感覚で乗れていますね。楽しく過ごせています。あいつがいるから頑張らないとと、素直に思います。
そういうポジションに変わって、気負いのようなものは?
ないですね。
しばらく年下の騎手が入ってこない時代もあったから、年もそれなりに離れていますよね?年下の騎手は、どんな存在として見えていますか?
「下の子」っていう感じですね。商売敵、とかいう感覚でもなく、見守る、という感覚でしょうか。
自分よりも若い騎手たちに、どんなことを伝えているんでしょう。
これは、騎手になる前にいた乗馬センターの恩師から言われた言葉なのですが、「下手でもいい。応援される人間になりなさい」ということですね。どんなに上手くても、乗せたいと思われなければそれまでだから。下手でも、「あいつ頑張ってるから乗せてやってくれよ」とか、みんなからそういう風に言われるようになっていったほうがいいよと。そういういうことを伝えています。
名古屋競馬の騎手相場も今年は一気に変わって、いまリーディングを若手と争う位置にいます。(6月まで年の半分が終わって、86勝で名古屋リーディング2位)。これについての意識はどうですか?
リーディングですか?取りたいですよ。取りたいですけど......自分はプロセスを大切にしたいんですよね。現状でも、勝てていないわけではないし、一鞍一鞍、変な騎乗はしていないつもりです。でも、数字に意識がいきすぎると、自分の場合失敗する。だから、リーディングについては、きちんとレースをした結果そうなっている、というのが理想です。
6月26日、マッドルーレットでトリトン争覇を制し1年3カ月ぶりに重賞勝利
話は変わって、プライベートのお話。仕事の合間の息抜きはどんなことをされていますか?
以前からずっとやっている釣りの他に、最近はゴルフも。阪野さん(阪野学騎手)が名古屋に来てから、ゴルフに行く機会が増えました。本格的にやるようになりましたね。
スコアはどうなんですか?
言いません(笑)。行くのは楽しいです。
ゴルフは、どんなところが楽しいと感じますか?
単純に、うまく回れたらうれしいです。スコアを語れる腕前ではないのですが(苦笑)。あとは、あのロケーションの中で楽しめるというのがいいですね。スコアは全然良くないですけど、向上はしてきていて、いま「第2コーチ」に父を迎えています。道具も、初めは父のお下がりを使っていたのですが、最近全部自分で買い揃えました。
最後に、オッズパークで馬券を買って競馬を楽しんでおられるファンの方に、一言お願いします。
いま話したように、自分は最近は「1つでも上の着順」という意識で乗っていて、結果それで予想されているより良い結果、良い着順に繋がることもあります。そういう狙い方でうまく馬券に絡めてもらえれば、面白いんじゃないかなと思います。あとは、やはり実際に足を運んで生で観戦してもらいたいですね。是非名古屋競馬場にもお越し下さい。
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※インタビュー・写真 / 坂田博昭
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