2012年に厩舎を開業した新子雅司厩舎は、4年目の2015年に早くも兵庫調教師リーディングのトップに立ちました。昨年も104勝を挙げ、3年連続でのリーディングとなっています。
ここまでの道のりは開業前に思い描いたとおりだったのでしょうか。
2012年6月のスタート時は8頭分の馬房でしたから、年末までに20勝くらいできればと考えていました。それが実現できれば、馬房が16に増えたとき、年間で80勝できるという計算になります。実際は18勝でしたが、勝てる馬を年明けの開催に回した分がありましたからね。最初の半年でこれだけ勝てたのなら、次の年はリーディング上位に行けるだろうという手応えにつながりました。
厩舎開業時に苦労することとして、馬と厩舎スタッフを集めることの難しさがよく聞かれます。
調教師を目指していたときに、開業したら一緒にやりましょうと言ってくれる人もいましたし、その点に関しての不安はありませんでしたね。それで2年目はリーディング4位になりましたが、これはだいたい予測したとおりというか、そんな感じでした。
新子調教師は元ジョッキー。その後は厩務員、調教師補佐と経てきたわけですが、調教師になった今も所属馬には自らが乗るという方針を実践しています。
なんというか、僕はそれほど弁が立つタイプではありませんので、それなら実際に乗って、その感触を馬主さんに伝えていくほうが間違いないだろうということですね。そして自分が乗ることでのメリットはというと、スタッフとの結束力が強くなるということでしょうか。意見交換をするにしても、実際に乗っていないのでは、僕とスタッフとの間に温度差が出てくると思うんです。乗っているからこそわかることもありますから。
兵庫クイーンカップをタガノトリオンフで勝利(2017年11月9日、写真:兵庫県競馬組合)
新子調教師はまだ40歳ではありますが、そのためには体の維持が大切になりますね。
僕自身、馬に乗るのも好きですし、さわることも好き。そこが大きいですね。食事は1日1回にしていますが、それで問題なく過ごせています。食べ物が体に残っているときに乗りたくはないですし、内臓を無駄に動かさないという意味もあります。すべては健康で馬に乗りたいという、その思いだけです。いつまで乗れるのかとは思いますが、川原さんは元気に乗っていますし、大井には的場文男さんだっているわけですから。
新子調教師はもともと馬に携われる家庭環境だったのでしょうか?
いえ、奈良県の橿原市出身ですから、まったく関係ないですね。家庭の事情もありまして、中学を出たら働こうと考えていました。そうしたら中学3年ときに先生が「こういう職業があるぞ」と騎手を勧めてくれたんです。騎手なら早くから仕事ができますし、当時の教養センターは無料での寮生活でしたから、それで興味を持って受験したら合格できました。中学では野球をしていましたが、馬はゼロからのスタート。ですから入所後はついていくために必死でした。
そして騎手として126勝。そこからの転身となりましたが、すぐに切り替えはできたのでしょうか?
体重が増えてきた時点で、次の目標へと切り替えられました。それから厩務員、調教師補佐としておよそ10年、その経験は生きていると思います。僕が常に心がけているのは、馬の状態がいいときにレースに挑もうということです。
それが結果として、高い勝率につながっているわけですね。
常に100の状態で送り出すのではなく、レースによっては80くらいの力で、場合によっては60くらいの力でも勝てるようにしてあげたいですね。目指すところに合わせてその都度、馬のスイッチの入れ具合を考えています。
それぞれの所属馬にきめ細かく対応できるところも強みになりますね。それにしても厩舎初出走から1年弱での兵庫ダービー制覇は快挙だと思います。
ユメノアトサキが北海道から来たときの第一印象は「きゃしゃな牝馬」でした。繊細な性格も持っていましたが、乗ってみたらキャンターに移ったときの1歩目の感触が良かったんですよ。とはいえ、あれほどの活躍ができたのは、馬の気持ちにやさしく接してくれたスタッフの頑張りが大きかったのだと思います。
ユメノアトサキで兵庫ダービー制覇(2013年6月6日、写真:兵庫県競馬組合)
その翌年にはタガノジンガロでかきつばた記念を制しました。
ジンガロは育成牧場と連絡を取り合って、JRAと同じようにレース10日前に入厩して出走という形を取っていました。左に張るという課題がある馬でしたが、乗った感触としては「僕の重心のかけかた次第でなんとかなるかな」でした。
そしてその翌年、2015年には年間100勝を達成しました。
あの年は数字を意識しましたね。11月くらいに岩田さん(康誠騎手)に「年間100勝を目指せ」と言われたんです。数字を見てくださっていたんですね。でもそれを言われたときは正直、ちょっと厳しいんじゃないかと思いました。でもそれから馬とスタッフが頑張ってくれまして、そのおかげで大晦日の勝利で間に合いました。
そしてそれ以降も勝ち星は3桁を続けています。
個人的には常にキャリアハイを目指したいと考えています。2018年の目標としては、兵庫の調教師レコードの118勝を超えることですね。またダートグレードで勝負できる馬をつくっていきたいですし、兵庫ゴールドトロフィーは取らないといけないレースだとも思っています。今まで兵庫どころか地方所属馬が1回も勝っていないわけですから。昨年はエイシンヴァラーで5着でしたが、勝ち馬とは0.5秒差。今年もまた挑戦したいと思っています。
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 浅野靖典
園田競馬で今年4月にデビューしてから10月19日までで13勝を挙げている長谷部駿弥騎手。13勝のうち8勝はナイターでの勝利で"その金の長谷部"の異名も。園田の将来を担う18歳の今の心境を語ってもらいました。
4月のデビューから半年で13勝(10月20日現在)。ここまでを振り返ってみて下さい。
初勝利までが時間がかかりましたが(6月23日)1つ勝ってからは、初勝利の時ほど、間隔を空けずに勝てるようになりました。と言っても、レースでは判断が遅くて反省ばかりです。勝負どころで内を突くか、外に出すかで、迷っている間に進路がなくなったり、後ろから上がってきた馬にかぶせられたり。そのせいで勝てるレースを落としたことも多いです。あとは乗っている時の姿勢や進路の取り方など、直すところがいっぱいで、まだまだだなと思ってます。
騎手になるきっかけは?
両親が競馬が好きで、大阪の出身だったので、小さな頃から、大阪から近い中央の阪神や京都、そして園田にも一緒に行ったり、テレビで見たりしていましたので、騎手になりたいと思うようになりました。名前の駿弥も優駿の駿と、弥生賞の弥から取ったものです。
そこまで競馬に熱心なご両親なら、騎手になることには賛成してくれましたか?
はい、小さい頃から、家からは少し遠い乗馬クラブでしたが、通わせてくれたり、後押ししてもらいました。今も応援に来てくれます。
中学卒業後は教養センターに入所しました。
毎日の訓練や体重のコントロールは厳しかったですが、同期と過ごす時間が多かったので、絆は深まりました。そんな同期と一緒に行った旅行とキャンプが1番の思い出です。
師匠の小牧毅先生との出会いは?
教養センターに合格後、地元ということもあり、園田で乗りたいと思っていましたから、すぐに園田の主催者に電話して、受け入れをお願いしました。その後、小牧毅先生にお世話になることに決まりました。
小牧先生はどんな先生ですか?
基本、乗り方は任せてくれますし、細かいことを言われたことはありません。時々、気付いた時に、騎乗フォームやレースの流れのことで、アドバイスをして下さいます。
目標にする騎手は?
田中学さんです。学さんのすごいところは、ただ勝つだけでなく、制裁が少なく、フェアーな乗り方で勝っているところです。あんな騎乗をしたいと思ってます。
これまでの13勝中、8勝がナイターの日に挙げたもの。一部のファンから"その金の長谷部"と呼ばれています。
なぜかナイターとは相性がいいんですよね(笑)。昼間開催よりもお客さんが多くて、大きな歓声を耳にすると、モチベーションは上がりますし、金曜のナイターが終わったら、体を絞るのも一区切りできるので、最後にもうひと頑張りみたいな感じなんでしょうか。自分でもよく分からないんですが(笑)。
普段の生活を教えて下さい。
調教が深夜1時から始まるので、12時半に起きます。それからレースのない日は9時まで調教に乗ります。レース日は7時まで騎乗します。平均したら、1日20頭くらいに乗ります。夜に寝るのは、だいたい8時くらい。休みの日はテレビを見たり、ゲームをしたりしてますが、最近は自動車の運転免許を取るために自動車教習所に通っています。
11月15日には地元園田でヤングジョッキーズシリーズが行われます。
ここまでの成績が良くないですが(佐賀12着、8着、金沢8着)、勝負どころをよく分かっている地元なので、意地は見せたいです。このシリーズでは色んな勉強をさせてもらいましたし、学ぶことが多いです。
具体的にどういうことを学びましたか?
普段、僕は減量騎手で先輩よりも軽い斤量で乗っていますが、ヤングジョッキーズシリーズでは通常の斤量(牡56kg、牝54kg)。56kgだとゲートからの出脚や勝負どころで追い始めた時の手応えが、軽い斤量で乗ってた時とは違い、明らかに鈍いです。もっと馬に負担をかけないように乗らないといけないし、自分が馬を動かしていたのではなく、軽いから馬が動いてくれていたというのを実感しました。減量の恩恵は大きいですね。
自分を厳しく見ていますね。騎手としての自分のセールスポイントを教えて下さい。
小さな頃から、乗馬をやっていたので、拳や手首は柔らかいと思ってます。それが馬と折り合いをつける時に役立っているんじゃないかと思っています。
最後にオッズパークのファンに一言お願いします。
新人で、リーディング上位の騎手と比べると、技術面ではまだまだですが、馬券を買って下さったファンの期待に応えられるようにこれから成長しますので、見守って頂ければと思います。
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 松浦渉
2010年に園田競馬場でデビューした田野豊三騎手。今年(2017年)の7月から、門別競馬場でデビュー以来初の期間限定騎乗を行っています。8月8日の門別第7レースでは通算200勝を達成、同19日の札幌第10レース・富良野特別ではスピリアとのコンビでJRAへも初めて参戦しました。異なる環境でどのようなことに取り組み、どのような生活を送っているのかについて伺いました。
期間限定騎乗も佳境に入りました(10月12日まで)。ここまでレースに乗ってみての感想はいかがですか?
園田との馬場やコースの違いが分かってきたのかなとは思います。門別は直線が長いので、直線でヨーイドンのスピード勝負になりやすいのが大きな違いですね。
ホッカイドウ競馬は2歳戦が中心ですが、若馬が多いということで、レースの質や乗り方に違いは出てくるものですか?
古馬と違って、ハミの受けさせ方だとか、馬をフラつかせないように乗ることが注意点だと思いました。鐙も長くしないといけませんし。
調教の面での、園田と門別の違いは何ですか?
やはり坂路があるということが大きな違いですね。ただ、いろんな厩舎で調教を手伝わせていただいていると、厩舎によって調教メニューにも違いを実感できます。コース(の調教)でも結果を出されている厩舎もありますからね。
8月8日には通算200勝を達成されました。今シーズンここまでは、前年以上のペースで成績を挙げられています。
200勝はあくまで通過点なんですけど、園田の同期(杉浦健太騎手)のことを考えると、ちょっと遅いのかなと思います。年々勝ち鞍の数を増やしていきたい気持ちはあるんですが、門別に来たときに「勝ち鞍にこだわらず、自分の乗り方を一から勉強しなおそう」というつもりだったので、門別では特に成績にはこだわっていないです。たとえ成績が去年より悪くなっても、なにかいい出会いがあればそれでいいかなと。
今回の期間限定騎乗が決まったきっかけを教えてください。
今年の冬に、お世話になっている馬主さんと新冠へ2歳馬を見に行った夜に飲み会があったんですけど、田中淳司先生や川島洋人先生も同席されていたんです。それで、馬主さんから「門別で勉強したらどうだ?」と提案されて、先生がたも「来るなら面倒見るよ」と言ってくださったのがきっかけです。
実際に門別に来てみて、最初に驚いたことは何ですか?
門別はとにかく「広いな」というのが第一印象でしたね。厩舎地区なんかも広く使っている印象でしたし、馬のためにはいい競馬場なのかなと思いました。
受け入れ先の川島洋人調教師もかつては活躍されたジョッキーでした。レースや調教では、どんなアドバイスを受けていますか?
2歳馬にしても古馬にしても、馬がちょっと甘えたりじゃれてきたりしたときに、しっかり「ダメだよ」と教え込むことが重要だということはよく言われています。とにかく、馬にナメられないようにするというか。坂路の登り方だとか、とにかく調教が大事だということを教えていただきましたね。それまで何も知らなかったんだなとか、できていなかったんだなと感じさせられました。レースでも「ゲート裏で手の内に入れるように」と教えられています。馬の好きにさせてはいけないと。もちろん、園田でまったく考えていなかったわけではないんですけど、それは特によく注意してもらえますね。
その川島厩舎では、スピリアとのコンビで初めてJRAに参戦しました(8月19日札幌第10レース、富良野特別)。
王冠賞(8着)の前に、先生から「中央行くぞ」と言われたんですけど、最初に聞いたときは「本当に?」と驚きました。実際に行ってみると、施設の違いも感じましたし、芝コースでのレースに乗ること自体初めてだったんですけど、返し馬でもいくらでもスピードが出そうな感じでした。
結果は残念ながら14着となってしまいましたが。
「芝のレースだから」と思って、普段と違う乗り方にしたんですよね。言い訳になってしまうんですが、道営でもズル賢さを出す面がある馬だったので、そういう面を出さないように、普段のように、押し込むような形で乗っていけばよかったと思います。
一度JRAの競馬を経験したことはいかがでしたか?
一度芝のレースに乗ってみたいという気持ちは持っていたので、いい経験をさせてもらいました。声援の大きさも違いましたし、「JRAに乗る」ということはモチベーションになりますね。
北海道のジョッキーの皆さんとは、プライベートでもつながりはあるんですか?
北海道には同期がいなかったので、初めのうちは溶け込めるか不安もあったんですけど、若いジョッキーたちとご飯へ行ったり遊んだりとかもするので、歓迎されているのかなと思います(笑)。別に園田がギクシャクしているということもないんですけど、門別のほうがプライベートでの繋がりも多いですね。中野省吾さんがワールドオールスタージョッキーズへ乗りに札幌へ来たときも一緒にご飯へ行ったんですけど、一期上の先輩だったので、教養センターにいた馬の話とか、兵庫で一期上の先輩の山田(雄大)さん(兵庫)や山崎(雅由)さん(高知)の話になりました。
(左から)井上幹太騎手、水野翔騎手、田野豊三騎手、石川倭騎手、阿部龍騎手
期間限定騎乗も残り少なくなりました。残り少ない期間でどのようなことを得たいですか?
馬の扱い方をもっと細かく知りたいです。これまで園田で教えてもらったこととはまた別の角度から、いろいろなことを教えてもらえて、本当にいい経験になっています。園田に帰ってから、門別で得たことを試せるようにしたいですね。
最後に、オッズパーク会員の皆さまへメッセージをお願いいたします。
ジョッキーパンツにも広告を出していただいたりもして、いつもお世話になっています。このようなジョッキーについての読み物などで、僕たちを身近に感じていただければと思いますね。馬券を買いながら、僕の成長ぶりも見ていただきたいですし、機会があれば競馬場にも足を運んでいただきたいです。
-------------------------------------------------------
※インタビュー・写真 / 山下広貴
今年4月18日にデビュー以来、騎手激戦区の園田で既に5勝を挙げ、奮闘しているのが18歳の永井孝典騎手だ(6月20日現在)。幼少時から騎手が夢で、2011年にはJRAが子供を対象に行っている「ジョッキーベイビーズ」に出場経験もある。デビューまでの経緯や7月に初登場となる佐賀で行われるヤングジョッキーズシリーズへの抱負を聞いた。
騎手になるきっかけは?
小さいころから馬が好きで、騎手にあこがれてました。愛知県出身ですので、小学校時代には親に中京競馬場によく連れて行ってもらいましたし、乗馬クラブにも通って、馬に乗っていました。
ジョッキーベイビーズにも出場経験があると聞いてます。
はい、中学1年の時(2011年)に、予選を勝って、長野地区代表(愛知県は長野地区に属する)で出場しました。GIが行われる東京競馬場の芝コースで、たくさんの観衆の前で乗れたのは、すごい経験になりました。
その後は、2年間、地方競馬教養センターに入った。
JRAの競馬学校も2度受験しましたが、合格できなかったので、地方競馬でのデビューを目指しました。教養センターでは減量が厳しかったのを思い出します。
愛知県出身ですが、園田でのデビューとなりました。
教養センターに入る前、滋賀県の信楽牧場にいましたが、その時に西脇トレセンの栗林徹治先生と知り合って、お世話になる方向で話が進んでいました。その後、栗林先生が先輩の鴨宮さんを預かることになったので、栗林先生から、田村彰啓先生を紹介していただいて、所属させてもらっています。
デビューして、実際のレースに騎乗しての感想は?
まだまだ流れに乗れていないですし、無駄な動きが多いと思います。もっと馬が速く、楽に走れるように導きたいです。
師匠の田村先生からは、どんな指導を受けてますか?
行きたがる馬に乗って、抑える時に、体が起きてしまうので、そこをよく注意されます。分かっていてもなかなか難しいですが...。
好きな戦法はありますか?
騎手は馬の脚質に応じて流れに乗って、レースをするもので、騎手の好きなように乗れるものではないので、好きな戦法はありません。逃げ馬でも、追い込み馬でもその馬の個性に合わせて、力を引き出せる自在性のある騎手になりたいです。
目標とする騎手は?
下原理さんです。レースの流れを読むのが上手で、位置取りや仕掛けるタイミングなどは、レースを見て、いつも参考にしていますし、勉強になります。
勝負服(胴黒・桃のこぎり歯形、袖黒桃一本輪)のデザインを決められた経緯は?
田村先生と話し合って決めました。僕はピンクを入れたかったのと、先生はのこぎり歯形と黒を入れたいとのことでしたので、2人の意見を合わせると、このデザインになりました。
今後の目標は?
1年目で20勝して、早く減量を卒業したいです。重賞レースにも乗りたいです。
7月には佐賀でのヤングジョッキーズシリーズに初出場します。
若手騎手の集まりでも、周りはほとんど先輩騎手になりますが、JRAの騎手にも他地区の騎手にも負けないように、上位を取れるように頑張りたいです。トライアルラウンドを勝ち上がったら、ファイナルラウンドはJRAですから、JRAの競馬場で乗りたいです。
最後にオッズパーク会員に向けてメッセージを。
オッズパークの会員さんが馬券を買われるのは、当然ネット投票が中心とは思いますが、まず、ネットでレースを見られて、興味を持っていただいたら、ぜひ園田競馬場まで足を運んで、一生懸命に走っている馬や僕たち騎手の姿をライブで見ていただきたいです。
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 松浦渉
長年トップジョッキーとして活躍する兵庫の田中学騎手は、2014年全国リーディングに輝いた直後、原因不明の痛みにより長期休養を余儀なくされました。無事回復して復帰を果たした今、当時のこと、そしてこれからのことをお聞きしました。
去年は192勝を挙げて全国10位。どんな1年でしたか?
前の年がケガで長く乗れなくて、去年も途中2か月くらい乗れなかったんですけど、その割には、自分で言うのもなんですけどがんばった年だったかなって思います。ものすごく長く休んだのに、そういう人間に乗せてくれる周りの方々のお陰ですよね。本当に有り難かったです。
2015年の長期休養は、どんな状態だったんですか?
何年か前のケガとは違って、原因がわからなかったんです。100メートル歩くのもやっとで、100メートル歩いて休憩して、また歩いて休憩して、という状態で。もう乗れないかもしれないと思いました。10か所くらい病院に行ったり、ハリとか整体とか、いいと聞くと行ってみたんですけど、治療後すぐだったり、帰りの車で同じ痛みが出て、「またか...」と落ち込みました。常にネットでいろいろ調べたり、何度も病院に相談に行ったり。検査を受けても全然異常がないってなって、もうどうしたらいいかわからなかったです。
相当キツかったですよね。
すっごく病みましたね。心の支えとかもなくなった感じで、とことん凹みました。本当に長かったです。最終的には、検査をした病院の先生が連絡をくれて、「異常はないけど、手術してみるか?」って言ってくれたんです。治るのは五分五分って言われたんですけど、治る可能性があるなら手術してくださいって言いました。それが良かったのかどうかは先生もわからないって言ってましたけど、結果的に復帰できて本当に良かったです。
長い間のムリが祟ったということなんですかね?
そうですね。痛みが出て悪くなるまでの間、あちこちの競馬場に呼んでもらってた時期だったんです。自分なりには乗れるうちが華、呼んでもらえたら嬉しい、がんばりたいと思って乗ってたんですけど、まさかあそこまで悪くなるとは...。ムリしすぎるのはダメですね。改めて、自分の体は大事にしなきゃいけないなと痛感しました。
実際に復帰した時はどうでしたか?
復帰できる嬉しさと、不安もありました。年齢も40を超えて、長期休んで、またもとに戻れるのかなって。実際に乗ったら今まで通りだったのでホッとしました。病院の先生にも感謝しています。親身になって治療してもらいましたから。
そして去年の5月12日、お父様である田中道夫先生の騎手時代の記録、3164勝を超えました。
僕はあんまり数字的な目標って立てないんですけど、父の記録は目標にしてたので、なんとかそこまでは乗りたいっていう気持ちでした。無事に達成した時は嬉しかったです。父のことは何ひとつ超えることができなかったので、今でも超えたとは思っていないですけど、ただ数字だけは超えることができて嬉しいですね。父も嬉しかったと思うんです。父からは、リーディング獲った時と同じで「おめでとう」と言われたくらいでしたけど、ひとつくらい親孝行できたかなと思います。
今後の目標というのは?
年齢的にもそんなに長くは続けられないので、あと1年か2年くらいという気持ちで乗っています。もちろん、その時になってみないとわからないですけど、そうなっても悔いのないよう、目の前のひとつひとつを大切に乗っていきたいです。木村(健)くんも腰で休んだりしているでしょう。お互いに、お前おらんようになったら寂しくなるなって言い合っているんですよ。俺らポンコツだなって(笑)。
お2人のいない園田は考えられません!
今そうやって、競馬場の人でも10人いたら9人がそう言ってくれるので嬉しいことです。ただ、僕たちが抜けたら抜けたで、今は下原(理)も勢いいいし、また下の子が育って来ますから。僕らがそうだったみたいに、下が出てくるんですよ。僕が言うのもなんですけど、園田は層が厚いんでね、レースも厳しいし、園田の乗り役はレベル高いと思います。どこでも突っ込んでくるし(笑)。
ゆくゆくは調教師というお考えですか?
頭には入っています。ただ、今は目の前のレースに全力投球したいですね。今までは僕が僕がっていうのが強くて、とにかく勝ちたい気持ちが強かったんですけど、今は自分がミスしなければ、おのずとこの子は走ってくれると、余裕ではないですけど、冷静に考えられるようになりました。最近は穏やかな気持ちで、怒ることもなくなったかな(笑)。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
今、地方競馬が上がってきているじゃないですか。それは本当にネットで買ってくれている皆さんのお陰なので、とても感謝しています。それがなかったら今どうなってるんだろうって思いますよね。売り上げがあがるとモチベーションも上がるし、がんばり甲斐があります。
少しずつ、若い子らが上を目指せる環境になってきたと思うし、僕らはまだまだ若い子たちには負けないように、切磋琢磨しながらがんばります!
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 赤見千尋