NARグランプリ2022年度代表馬を受賞したイグナイター。昨年は黒船賞、かきつばた記念とダートグレード競走2勝を挙げたことに加え、南部杯4着、JBCスプリント5着とJpnIの舞台でも上位争いを演じました。レース史上初の地方馬での連覇を目指し、今年も黒船賞に挑みましたが、3着。それでも悲観する内容ではなかった、と話すレースの振り返り、そして今後について新子雅司調教師に伺いました。
NARグランプリ年度代表馬受賞、おめでとうございます。園田・姫路からはケイエスヨシゼン(アラブ系)以来26年ぶりで、サラブレッドでの受賞は初でした。
ありがとうございます。南関東の馬が受賞することが多い中、兵庫のこの施設で年度代表馬になれたことは自信になりました。昨年はサルサディオーネも活躍していましたし、他にもダートグレード競走を勝った地方馬がいましたけど、南部杯とJBCで上位に入ったことも評価してもらえたのかな、と考えています。調教施設の違いで言うと、JRAには開業前に栗東トレセンへ研修に行き、逍遥馬道の存在が大きいなと感じました。山道を登ったり下りたりすることで体のつき方が変わるだろうなと思いました。でも、調教の負荷は乗り方次第でそんなに変わらないと思います。
年末の兵庫ゴールドトロフィーはまさかの5着でしたが、今年は始動戦の黒潮スプリンターズカップをレースレコードで圧勝しました。
兵庫ゴールドトロフィーは1年ぶりの地元戦で輸送がなかった分、プラス23kgと太かったと思います。こちらが思っているより輸送で減るタイプかもしれず、黒潮スプリンターズカップは調教でもちょっと絞りましたけど、輸送でも絞れたと思います。パドックではかなり落ち着いて歩いていて、デキとしても7~8割くらい。それでもあれだけのタイムで走れたのは1年間、JRAの強い馬と走ってきたからだと思います。
それだけに、黒船賞では連覇が期待されましたが、スタートでバランスを崩してしまって......。
去年同様、目一杯の仕上げで臨んだんですけど、装鞍の時点から若干テンションが上がっていて、その分、ゲートでタイミングが合わなかったのかな、と思います。イグナイターは直線でそんなに弾けるタイプではなくて、4コーナー先頭で押し切るような競馬が理想なんですけど、一番動きたい3~4コーナーで動けず、そのまま下がってしまうと思いました。それでも直線は内を突いて3着まで来たので、そこまで悲観するような内容ではないな、と思いました。GIに行ってもやれるんじゃないかなと感じました。
黒船賞出走時のイグナイター
昨年覇者、そしてNARグランプリ年度代表馬として挑む一戦でプレッシャーなどはありませんでしたか?
ぶっちゃけ、ありませんでした。昨年勝っていることが大きいと思いますし、これまではダートグレード競走は特別なレースで気負っていましたけど、ありがたいことに5勝させていただいて、この状況に慣れてきたこともあります。それよりも、南部杯とJBCスプリントの方が「JpnIでどこまでやれるか」というプレッシャーが少しありました。
これまでから一段上がって、JpnIに手が届くところまで来たことでの心境の変化ですね。開業時から目標に掲げている海外での勝利も少しずつ近づいているように思います。
今年、サウジの招待が届きました。昨年は申し込んだものの、補欠2~30番目くらいで全然入らなかったので、今年は黒船賞に行くつもりでいて検疫をどこでするかなど何の準備もしていなくて断りました。栗東トレセンで検疫を受けられるのであればいいんですけど、無理なら栃木県の地方競馬教養センターまで行かないといけないのはハードルです。それなら、園田競馬場に検疫馬房を建ててほしい、と主催者に話しました。1年かけて準備をして、来年に行けたら行こうかなと思います。私もパスポートを取らないと(笑)。
イグナイターでのGI/JpnI制覇も期待しています。
みんな「今年、イグナイターで!」と期待してくださっていると思いますが、イグナイター以外でも近いうちにうちの厩舎から他にもそういう馬が出てくるようになるんじゃないかな、と思います。それだけ入厩予定の2歳馬の質が上がっています。
NARグランプリ表彰式にて。田中学騎手(左)、イグナイターの馬主・野田善己氏(中)と
それは『全日本的なダート競走の体系整備』や園田・姫路の賞金増額などが関係しているのでしょうか。
そうですね。これは園田・姫路競馬全体の話ですけど、これまでだとセリで1000万円する新馬が入厩することはあまりありませんでした。それが、今なら賞金が高いのでちょっと走れば回収ができるようになって、今年は1000万円以上の2歳馬が競馬場全体で10頭くらい入厩予定です。全体的に馬の質は上がると思います。
早速、肌感覚として変化を感じているんですね。最後に、イグナイターの次走とそこへの意気込みをお願いします。
5月4日かしわ記念(JpnI、船橋1600m)を予定しています。何とか勝ちたいと思っていますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
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