5月10日に地方通算1000勝を挙げた廣瀬航騎手。デビューから15年は年間25勝未満ながら、地道に努力を続けた結果、5月23日には全国の強豪が揃うオグリキャップ記念(笠松)をタイガーインディで制覇しました。飛躍的な活躍を遂げた本人は、現状をどう感じているのでしょうか。
オグリキャップ記念をタイガーインディで勝利、おめでとうございます。3頭横並びの大接戦で、ゴール直後には外の2頭を見ていましたね。
突き抜けたかな、と思って(吉原)寛人に「(僕が)勝ったんちゃうん?」と聞いたら、向こうは「負けた」と言っていました。同期なんです。
タイガーインディは2走前の黒船賞JpnIII・3着の一方、内枠だった昨年末の兵庫ゴールドトロフィーJpnIIIは内に包まれて9着。砂を被ったり、揉まれるのが苦手なのかな?と感じましたが、オグリキャップ記念で内の2番枠が当たった時はどう思いましたか?
あんまり好ましくはないなとは思いましたけど、かえって「せこく乗ったろうかな」と思いました。黒船賞では馬の後ろに入れた場面があって、その時は気になりませんでした。微妙なところですけど、兵庫ゴールドトロフィーが走らなかっただけでは、と思います。めっちゃ不思議ですけどね。
レースは序盤から4頭が競り合う形となりました。
1コーナーの時点では前が競り合ったので、前の馬が止まって相手は矢野貴之騎手(デュードヴァン)になるのかなと思っていました。4コーナーでスペシャルエックスとセイルオンセイラーの間を行く時だけちょっと怯みましたけど、直線では前の馬が少しずつ止まってきているなと思いました。吉原と笹川(翼)の追い合いを内から差し切ることは、たぶんもう騎手人生でないと思います。嬉しかったです。
オグリキャップ記念で3頭の接戦を制したタイガーインディ(左)
コースレコードに0秒4に迫る1分24秒0での勝利。レコードが出た頃とは時計の出方も異なりますし、前走・兵庫大賞典も好タイムでしたから、この先へ楽しみが広がります。
7歳と年齢は重ねていますけど、佐賀・サマーチャンピオンを目標に、と聞いていて楽しみです。
今回は馬主服を持参していたものの規定で着用できず、貸し服での騎乗となりました。サマーチャンピオンでは正規の服でいい競馬を期待しています。ところで、表彰式終了後は急いで馬場を走って帰っていました。翌朝も早くから調教だったのでは?
深夜1時からでした。調教はマックスで約23頭で、新人騎手より乗っています。最後の時間帯は他に誰もいないですね。南関東の騎手からは「日本一乗っているんじゃないですか?」と言われます。レースもほぼフル騎乗で、目指していたところなのでありがたいですけど、みんなが山道を登るところを僕だけ崖を登っています(苦笑)。
2015年までは年間平均16勝だったのが、1000勝を達成できるなんて後輩にとっては夢のある話だと思います。
後輩にも言われますけど、人にはこのやり方は勧めないです。「これは正しくないし、こんな出世の仕方はせんでええよ」と。先が見えないですし、続けたところで出世できる保証がないですから、「頑張れ」くらいしか言えないです。
個人的な印象では、木村健騎手(2018年引退)が腰痛などで騎乗数を絞りはじめた頃から技術と人望のあった廣瀬騎手がブレイクしたように感じます。
それは大きいと思います。それと、16年に35勝した時、結構穴を開けたんです。そこから変わってきた印象があります。その後、19年に怪我をしてしまって「やってもうた......」と思いました。62勝、75勝と挙げた次の年で、「最悪や」と。
いい波に乗っていても、戦線離脱で一気に騎乗馬が減ることはよくあることですものね。しかしその年を58勝で踏ん張ると、翌年は87勝とさらに伸ばしました。
そこでもう1回持ち直したのが大きいですね。
兵庫では上位3人が変わりつつも、「トップ下争い」と言われる4位争いがありますが、それを一気に制すると、5月10日には地方通算1000勝を達成。グリーンチャンネル『アタック!地方競馬』でも密着取材を受けていました。
「また暇やったら来てください」とスタッフさんに言っていたら、本当に来てくれたんです。1000勝目はめっちゃ緊張しました。なんか知らんけど出遅れましたしね(苦笑)。馬の能力が抜けていて、ゴール後はガッツポーズをしていました。この時とオグリキャップ記念を勝った時に「騎手になってよかった」と、めっちゃ思いました。
(写真/兵庫県競馬組合)
そんな今の夢を含め、オッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
もう十分やらせてもらったと思いますけど、ダートグレード競走を勝つことがいまの夢です。サマーチャンピオンはチャンスがあるんじゃないかなと思っているので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
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