
4月23日に初勝利を挙げた塩津璃菜騎手(兵庫)。乗馬を始めた頃は揺れが心地よくて馬上で寝ていたというほどの馬好きです。初勝利前には「大きな経験になった」というあるレースがありました。
4月16日に園田第1レースでマイネルシャテールに騎乗し、デビューを果たしました。デビュー戦はどうでしたか?
マイネルシャテールは16歳のベテラン馬で、調教では意外と掛かって動くんですけど、レースでは全然動く気配がありませんでした。コーナーで馬の力が強すぎて内に入れることができず、外を大きく回りすぎてしまいました。それでも最後まで頑張ってくれました。
初めてのレースで横や前後の馬との間隔はどう感じましたか?
見ているより乗った方が迫力がありました。たまに鐙がぶつかって、最初は少し恐怖もあったんですけど、調教でも併せ馬をしていて当たることが多かったので、慣れました。
デビュー3日目にディニータに乗った時はスタートを決めましたね。
自分でもビックリしました。それまでは自分で出そうとしている部分もあったんですけど、新子雅司調教師から「ゲートは馬に任せておけ」と言われたのでその通りにしたら、ちゃんと馬が出てくれたのでホッとしました。
それはいい成功体験になりましたね。
この経験は一番大きかったです。それからはスタートをちゃんと出るタイプは馬に任せちゃうようになりました。
初勝利を挙げたフィオリーノも好スタートからの逃げ切り勝ちでした。
見るからに速そうな馬体をしていて、体も仕上がっているように見えたので結構自信を持って乗れました。ゲートの中から姿勢を低くして乗って、スタートが決まりました。その後のダッシュで吉村智洋騎手の方が前に出そうかなと思ったんですけど、吉村騎手の姿勢を真似して低くして追ってみたら、こちらの方が前に出ることができました。体はめちゃくちゃ硬いんですけど、この時は自信を持っていたので全部出しきろうと思って姿勢を低くできました。
初勝利の記念撮影(写真:兵庫県競馬組合)
勝った時のお気持ちは?
嬉しいというよりは、馬が頑張ってくれたなって思いました。
検量室に戻ってくると、いろんな人から祝福を受けたでしょう。
松本幸祐騎手が「1着を取れてよかったね」と言ってくれました。お父さん感覚で、「もっとこうすればいいよ」とか細かく教えてくれていました。私の所属厩舎は西脇ですけど、園田の先輩方も優しく乗る姿勢とか色々と教えてくれます。
所属厩舎の長南和宏調教師や兄弟子の石堂響騎手からは?
先生からは「おめでとう」と、石堂騎手からも「おめでとう。よかったね」と声をかけてもらいました。
目標とする騎手には石堂騎手を掲げていますね。
石堂騎手は乗る姿勢が綺麗で、そこを目指しています。それができるようになったら、さらに下原理騎手や吉村騎手を目指していきたいです。
長南調教師もいろいろとアドバイスをしてくださるのでは?
レースで着外になった時など、細かく教えてくれます。以前は進路取りについて教えてもらって、いまは騎乗姿勢です。
ところで、ジョッキーを志すきっかけは元々馬が好きだったからだとか?
小さい頃、動物園で初めて馬を見て大好きになりました。その後、テレビでたまたま乗馬の様子をやっていて、親に「乗ってみたい」と言ってすぐに近くの乗馬クラブで乗らせてもらいました。でも、最初のうちは馬の上で寝ていたんです。
え、状況が飲み込めません(笑)。
馬の動きが気持ち良すぎて眠たくなっちゃって。鐙をしっかり踏んでいたので落ちはしなかったですけど、何ヶ月かは目が半開きになりながらも頑張って乗っていました。
好きすぎるがゆえ、なのかもしれないですね。競馬を知ったのはいつでしたか?
初めて知ったのは中学3年生の時でした。それまでは乗馬クラブで色々と大会とかに出たいなと思っていたんですけど、たまたま地上波の競馬中継を見て「ジョッキーになってみたいな」と思いました。
進路選択のタイミングで出会ったんですね。そこからジョッキーになるまでの道のりは?
中学卒業後に千葉県の馬の専門学校に何ヶ月か行きました。そこを辞めた後に地方競馬教養センターを受けたんですけど落ちて、その後はトレーナーをつけてもらったりしてずっと運動していました。そんな時、地元の銀行で元ジョッキーの方が働いていて、長南先生を紹介してもらって8ヶ月ほど厩舎でアルバイトをさせてもらって、2度目の受験で合格しました。ひと安心しました。
そういった経緯だったんですね。ご家族も初勝利は喜ばれたのではないですか?
「頑張れ」とか「勝てるまで応援するよ」と言ってくれていて、初勝利はすごく喜んでいました。
では最後に、これからの目標とオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
石堂騎手みたいな姿勢で乗れるように、まずは頑張りたいなと思っています。1鞍1鞍大切に乗って、勝てるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
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5月10日に地方通算1000勝を挙げた廣瀬航騎手。デビューから15年は年間25勝未満ながら、地道に努力を続けた結果、5月23日には全国の強豪が揃うオグリキャップ記念(笠松)をタイガーインディで制覇しました。飛躍的な活躍を遂げた本人は、現状をどう感じているのでしょうか。
オグリキャップ記念をタイガーインディで勝利、おめでとうございます。3頭横並びの大接戦で、ゴール直後には外の2頭を見ていましたね。
突き抜けたかな、と思って(吉原)寛人に「(僕が)勝ったんちゃうん?」と聞いたら、向こうは「負けた」と言っていました。同期なんです。
タイガーインディは2走前の黒船賞JpnIII・3着の一方、内枠だった昨年末の兵庫ゴールドトロフィーJpnIIIは内に包まれて9着。砂を被ったり、揉まれるのが苦手なのかな?と感じましたが、オグリキャップ記念で内の2番枠が当たった時はどう思いましたか?
あんまり好ましくはないなとは思いましたけど、かえって「せこく乗ったろうかな」と思いました。黒船賞では馬の後ろに入れた場面があって、その時は気になりませんでした。微妙なところですけど、兵庫ゴールドトロフィーが走らなかっただけでは、と思います。めっちゃ不思議ですけどね。
レースは序盤から4頭が競り合う形となりました。
1コーナーの時点では前が競り合ったので、前の馬が止まって相手は矢野貴之騎手(デュードヴァン)になるのかなと思っていました。4コーナーでスペシャルエックスとセイルオンセイラーの間を行く時だけちょっと怯みましたけど、直線では前の馬が少しずつ止まってきているなと思いました。吉原と笹川(翼)の追い合いを内から差し切ることは、たぶんもう騎手人生でないと思います。嬉しかったです。
オグリキャップ記念で3頭の接戦を制したタイガーインディ(左)
コースレコードに0秒4に迫る1分24秒0での勝利。レコードが出た頃とは時計の出方も異なりますし、前走・兵庫大賞典も好タイムでしたから、この先へ楽しみが広がります。
7歳と年齢は重ねていますけど、佐賀・サマーチャンピオンを目標に、と聞いていて楽しみです。
今回は馬主服を持参していたものの規定で着用できず、貸し服での騎乗となりました。サマーチャンピオンでは正規の服でいい競馬を期待しています。ところで、表彰式終了後は急いで馬場を走って帰っていました。翌朝も早くから調教だったのでは?
深夜1時からでした。調教はマックスで約23頭で、新人騎手より乗っています。最後の時間帯は他に誰もいないですね。南関東の騎手からは「日本一乗っているんじゃないですか?」と言われます。レースもほぼフル騎乗で、目指していたところなのでありがたいですけど、みんなが山道を登るところを僕だけ崖を登っています(苦笑)。
2015年までは年間平均16勝だったのが、1000勝を達成できるなんて後輩にとっては夢のある話だと思います。
後輩にも言われますけど、人にはこのやり方は勧めないです。「これは正しくないし、こんな出世の仕方はせんでええよ」と。先が見えないですし、続けたところで出世できる保証がないですから、「頑張れ」くらいしか言えないです。
個人的な印象では、木村健騎手(2018年引退)が腰痛などで騎乗数を絞りはじめた頃から技術と人望のあった廣瀬騎手がブレイクしたように感じます。
それは大きいと思います。それと、16年に35勝した時、結構穴を開けたんです。そこから変わってきた印象があります。その後、19年に怪我をしてしまって「やってもうた......」と思いました。62勝、75勝と挙げた次の年で、「最悪や」と。
いい波に乗っていても、戦線離脱で一気に騎乗馬が減ることはよくあることですものね。しかしその年を58勝で踏ん張ると、翌年は87勝とさらに伸ばしました。
そこでもう1回持ち直したのが大きいですね。
兵庫では上位3人が変わりつつも、「トップ下争い」と言われる4位争いがありますが、それを一気に制すると、5月10日には地方通算1000勝を達成。グリーンチャンネル『アタック!地方競馬』でも密着取材を受けていました。
「また暇やったら来てください」とスタッフさんに言っていたら、本当に来てくれたんです。1000勝目はめっちゃ緊張しました。なんか知らんけど出遅れましたしね(苦笑)。馬の能力が抜けていて、ゴール後はガッツポーズをしていました。この時とオグリキャップ記念を勝った時に「騎手になってよかった」と、めっちゃ思いました。
(写真/兵庫県競馬組合)
そんな今の夢を含め、オッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
もう十分やらせてもらったと思いますけど、ダートグレード競走を勝つことがいまの夢です。サマーチャンピオンはチャンスがあるんじゃないかなと思っているので、応援よろしくお願いします。
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アジュディミツオー(船橋)以来19年ぶりの地方馬によるドバイ遠征となったイグナイター(兵庫)。西日本の地方競馬から初の海外遠征は、ドバイゴールデンシャヒーンGI・5着と、世界への道を切り開く結果となりました。自ら輸出検疫中やドバイでの調教にも跨り続けた新子雅司調教師は、海外遠征を振り返り、どう感じているのでしょうか。
イグナイターのドバイ遠征、お疲れ様でした。ドバイゴールデンシャヒーンはJRA馬を含め日本馬が未だ勝ったことのないGI。そうした中、直線で一度は3番手に躍り出て、見せ場ある5着でした。
昨年勝ったJBCスプリントくらいのデキにはあると感じていました。スタートだけですね。1番枠で最初にゲートに入って、中で待つ時間が長くて馬が落ち着きすぎました。一歩目が遅れているわけじゃないですけど、隣のタズが速すぎて、半馬身くらいそこで相手が抜けて前に入ってきた分の差かなと思います。
パドックから本馬場へ向かうイグナイター
レース2日前、チーム・イグナイターの会食の場でも「ゲートが隣のタズはどれだけ速いんだろうか」とみんなで気にしていました。
本当にそこだけでした。結果的にドンフランキーが逃げることができていたので、フェブラリーSの位置取りから考えると、ゲートを五分に出ていればタズのポジションは取れたのではないかなと思います。
序盤で後手に回りながらも、直線は3番手に躍り出る場面もあって、興奮しました。
あのまま直線は内ラチ沿いを走っていればもうちょっと上の着順もあったかも、と思いますけど、笹川(翼騎手)もちょっと焦ったのかな、と。他の馬にも迷惑をかけてしまいました。でも、あのレースで笹川自身のスキルは上がった気がします。
直線、3番手に抜け出したイグナイター(右)
ほろ苦さや悔しさも残る結果とはなりましたが、力は見せてくれました。
全てが上手くいかないと勝てないレースだと思いました。色々あっての5着ですけど、世界の5番目。世界に通用する仕上げはできたかなと思いますし、もっと強い馬を連れてきて、どうしても勝ちたくなりました。その時のために英会話も習おうと思います。
レース後は後肢に外傷が見られました。怪我の具合はどうですか?
レース直後に診てもらい、思ったよりも傷は浅く、血はすぐに止まって塗り薬だけで済みました。いまは輸入検疫が終わり、宇治田原優駿ステーブルにいます。5月はじめに血液検査をして問題なければ、園田に入厩させてさきたま杯を目指す予定です。
レース直前、ラチ沿いから見守るイグナイター関係者(新子調教師は右から2人目)
そこでは昨年のJRA最優秀ダートホース・レモンポップとマイルチャンピオンシップ南部杯以来の再戦となりそうですね。
一緒に走れることはもうないと思っていました。JpnIに格上げされたさきたま杯に来るということで、いまのダート界で一番強い馬だと思いますが、ビビッていても仕方ないですからね。
さて、今回は海外遠征にあたってJRA栗東トレーニングセンターを借りて、JRA馬と一緒に輸出検疫を受けました。新子調教師も毎日調教に跨っていましたが、栗東での日々はどうでしたか?
前回、栗東に来たのは厩舎開業前の研修で2011年12月の約1カ月。それ以来で、施設も分からないので、研修を受けた角居勝彦厩舎(解散)で当時一緒だった前川和也調教助手(現在は友道康夫厩舎でドバイターフに出走したドウデュースを担当)に事前に連絡をして「分からないので、ついて行かせてください」とお願いしました。それで、毎日ドウデュースの後をついて角馬場や坂路に行きました。
栗東トレセンには坂路や、脚元に負担がかかりにくいウッドチップコースやポリトラックコース、また起伏の激しい逍遥馬道など様々な施設があります。イグナイターに変化はありましたか?
逍遥馬道を歩くことは本当にいいトレーニングになると改めて感じました。イグナイターはデビューから2戦目までは栗東所属だったので、ここを歩くのも初めてではないでしょうけど、ドッシリ歩ける馬じゃないと海外遠征もできないだろうなと思いました。久しぶりの栗東で最初の頃はそわそわしていましたけど、時間と共に順応してくれました。慣れない環境で気疲れする人間とは対照的に、馬はケロッとしていました。だけど、運動時間は園田にいる時よりも長いですし、場所もいつもと違うので、ちょっとしんどそうにはしていました。輸出検疫は約1週間でしたけど、もう1週滞在することができれば、馬はもっと良くなるだろうなと感じました。
そういえば、新子調教師は自厩舎のほとんどの馬の調教に跨ります。栗東で騎乗した後、急いで帰れば園田の調教にも乗れるかも、と事前に話していましたが、実際にはどうでしたか?
車で約1時間の距離ですけど、検疫中の馬が馬場を使える時間が決まっていて、そこから園田に戻るともう調教が終わる時間なので、ハシゴはしませんでした。できるとしたら、調教時間が前倒しされる土日ですけど、土曜日は園田が全休日だったので結局戻らず、期間中の厩舎の攻め馬は所属騎手の笹田に託しました。
今回のドバイ遠征で新子調教師が得られたものは?
競馬場に隣接するメイダンホテルに滞在していたんですけど、部屋から調教を見ることができました。エイダン・オブライエン厩舎は集団でしっかり溜めながら乗っていて、理に適っていると感じました。馬の後ろで我慢することも覚えますし、しっかり負荷もかけられます。一方で、スピード重視で調教する厩舎もあって、馬によって変えることも大切だと思います。そういったのを直接見ることができて、もっと調教内容について考えて乗らないといけないなと思うようになりました。
最後に、オッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
今回のドバイ遠征でイグナイター自身も厩舎も得たことがあり、これを糧にもう一段階上げていければと思います。秋はJBCスプリント連覇を目指すことになると思います。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
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昨年、ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)ファイナルラウンドへの進出を決めた長尾翼玖騎手(兵庫)。総合7位ながら、JRA中山競馬場では3着など結果を残しました。YJSの振り返り、そしてデビュー4年目を迎えようとするいま、課題をどう感じているのでしょうか。
YJSトライアルラウンドは振り返っていかがですか。
園田第2戦(ハナ差2着)は本当に悔しかったです。騎乗経験のある(田中)学さんから「いい意味で適当に乗ってこい」とアドバイスを受けていました。綺麗に乗ろうとしたら馬が動かないから、感じたタイミングで行った方がいい、という意味なんだと思います。学さんは僕が所属する橋本忠明厩舎の馬によく乗ってくださっていて、厩舎実習の頃からずっと可愛がってもらっています。だから、僕の乗り方を分かった上でそう言ってくれたのかな、と思います。
アドバイス通りに乗ってみて、レースはどうでしたか?
学さんの言った通りで、「おぉ、ホンマにハマってきた!」と感じながら4コーナーを回ってきました。勝てる手応えだったんですけど、そこで色気を持っちゃいました。右ムチを打ったら、大きく外に膨らんでしまって......。欲張りの右ステッキでした。あれがなければ、勝てていたレースでした。
次のレースが始まる頃になっても、一人パトロールビデオをじっと見て悔しさを滲ませていましたね。それをバネに笠松第1戦では2着と、着実にポイントを稼いでファイナル進出を手繰り寄せました。
僕自身、「仕掛けが早い」と言われてきていて、(橋本)先生から「待って待って、くらいでいいんちゃう。(笠松では)園田でたとえると向正面に入った1700mのスタート地点まで待って、そこから追い出すくらいでいい」とアドバイスを受けました。笠松第1戦では、しまいに動く馬だというのがレースを見て分かっていて、それがハマりました。トライアルラウンドはJRAジョッキーにばかり勝たれてしまって、本当は1つでも勝って、胸を張ってファイナルに行きたかったです。
ファイナルラウンドは1日目の川崎が7着、7着。
左回りは難しかったです。いつも乗っている右回りと逆だとは分かっていても、無意識のうちに右足に重心をかけてしまいました。第1戦はいい位置につけたんですけど、気づいたら後方になっていました。悲惨な結果で、あの日は早く帰りたかったです。
2日目は初のJRA騎乗でした。中山第1戦は2番人気に推されました。
過去にルメール騎手が乗った時などは外を回していたので、枠順はもう一つ外がよかったです。未勝利戦ではずっと上位に入っていたものの、勝ち切るのに8戦を要していて、気性とその枠と、ちょっと難しさがあるのかなとレース前に考えていました。せっかくだし、逃げて園田みたいにドスローに落とせばよかったかな、という後悔はあります。
初めての芝でのレースはどうでしたか?
なんだか変な感覚でした。レースは内々を回ってきたので、広いコースを体感できなかったですけど、返し馬は楽しかったです。あとは「芝が青いな」と思いました。
第2戦は差し脚を伸ばして3着。
タイプ的に得意な馬だな、と思っていました。でも、ペースが遅くて道中は行くところがなくてちょっとヒヤヒヤしました。2コーナーで動こうかなと思ってチラチラ周りを見たんですけど誰も動く気配がなくて、前も横もいて動くに動けませんでした。この馬はいつもしまいに動いて掲示板は確保していたので、それを信じて待っていました。最後は「勝てる」と思ったけど、離れた前方に勝ち馬がいましたね。
YJSファイナルラウンド中山第2戦
総合7位。YJSを振り返ってどうですか。
川崎で頑張っていたら、もう少し上の順位にいけていたのかな、と思います。JRAでの騎乗はいい経験になりましたし、また行きたいです。でも、YJS出場は今年で最後にしたいですね。早く100勝を達成してヤングから卒業したいです。
さらなる向上を目指して、高知競馬場で期間限定騎乗も行いました。2勝目のロンリープラネットはすごい追い込みでした。
あれは学さんの真似をして勝てました。学さんは向正面で馬場の真ん中くらいまで馬を外に出して位置取りを上げて、コーナーでグッと内に入っていく乗り方をする印象があります。ロンリープラネットは砂を被ったらダメな馬なんですけど出遅れてしまって、「そや。学さん、外に出していたな」と思って外に出すとすごく進み始めて、ハマりました。
高知での期間限定騎乗を通して変化は感じますか?
林(謙佑)さんに教えてもらって、ゲートはちょっとマシになったかなと思います。遅れなくなって、ちょっと自信がつきました。
自分の騎乗の癖は?
遠慮しがちなので、レース前はあんまり考えずに乗った方が上手くいくことが多いです。前日までにレースパターンを頭に入れて、直前は何も考えずにペースだけ判断して差しに構えたり、思いきって前に行った時の方が上手くいっているのかな、と。でも、考えないと成長しないので、今は考えるようにしています。
最後にオッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
いまの目標は減量を取ることと、もっと騎乗数を増やすことです。今年4月には園田・姫路から4人の新人騎手がデビュー予定なので、負けないように1鞍ずつ集中して頑張ります。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
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NARグランプリ2022年度代表馬を受賞したイグナイター。昨年は黒船賞、かきつばた記念とダートグレード競走2勝を挙げたことに加え、南部杯4着、JBCスプリント5着とJpnIの舞台でも上位争いを演じました。レース史上初の地方馬での連覇を目指し、今年も黒船賞に挑みましたが、3着。それでも悲観する内容ではなかった、と話すレースの振り返り、そして今後について新子雅司調教師に伺いました。
NARグランプリ年度代表馬受賞、おめでとうございます。園田・姫路からはケイエスヨシゼン(アラブ系)以来26年ぶりで、サラブレッドでの受賞は初でした。
ありがとうございます。南関東の馬が受賞することが多い中、兵庫のこの施設で年度代表馬になれたことは自信になりました。昨年はサルサディオーネも活躍していましたし、他にもダートグレード競走を勝った地方馬がいましたけど、南部杯とJBCで上位に入ったことも評価してもらえたのかな、と考えています。調教施設の違いで言うと、JRAには開業前に栗東トレセンへ研修に行き、逍遥馬道の存在が大きいなと感じました。山道を登ったり下りたりすることで体のつき方が変わるだろうなと思いました。でも、調教の負荷は乗り方次第でそんなに変わらないと思います。
年末の兵庫ゴールドトロフィーはまさかの5着でしたが、今年は始動戦の黒潮スプリンターズカップをレースレコードで圧勝しました。
兵庫ゴールドトロフィーは1年ぶりの地元戦で輸送がなかった分、プラス23kgと太かったと思います。こちらが思っているより輸送で減るタイプかもしれず、黒潮スプリンターズカップは調教でもちょっと絞りましたけど、輸送でも絞れたと思います。パドックではかなり落ち着いて歩いていて、デキとしても7~8割くらい。それでもあれだけのタイムで走れたのは1年間、JRAの強い馬と走ってきたからだと思います。
それだけに、黒船賞では連覇が期待されましたが、スタートでバランスを崩してしまって......。
去年同様、目一杯の仕上げで臨んだんですけど、装鞍の時点から若干テンションが上がっていて、その分、ゲートでタイミングが合わなかったのかな、と思います。イグナイターは直線でそんなに弾けるタイプではなくて、4コーナー先頭で押し切るような競馬が理想なんですけど、一番動きたい3~4コーナーで動けず、そのまま下がってしまうと思いました。それでも直線は内を突いて3着まで来たので、そこまで悲観するような内容ではないな、と思いました。GIに行ってもやれるんじゃないかなと感じました。
黒船賞出走時のイグナイター
昨年覇者、そしてNARグランプリ年度代表馬として挑む一戦でプレッシャーなどはありませんでしたか?
ぶっちゃけ、ありませんでした。昨年勝っていることが大きいと思いますし、これまではダートグレード競走は特別なレースで気負っていましたけど、ありがたいことに5勝させていただいて、この状況に慣れてきたこともあります。それよりも、南部杯とJBCスプリントの方が「JpnIでどこまでやれるか」というプレッシャーが少しありました。
これまでから一段上がって、JpnIに手が届くところまで来たことでの心境の変化ですね。開業時から目標に掲げている海外での勝利も少しずつ近づいているように思います。
今年、サウジの招待が届きました。昨年は申し込んだものの、補欠2~30番目くらいで全然入らなかったので、今年は黒船賞に行くつもりでいて検疫をどこでするかなど何の準備もしていなくて断りました。栗東トレセンで検疫を受けられるのであればいいんですけど、無理なら栃木県の地方競馬教養センターまで行かないといけないのはハードルです。それなら、園田競馬場に検疫馬房を建ててほしい、と主催者に話しました。1年かけて準備をして、来年に行けたら行こうかなと思います。私もパスポートを取らないと(笑)。
イグナイターでのGI/JpnI制覇も期待しています。
みんな「今年、イグナイターで!」と期待してくださっていると思いますが、イグナイター以外でも近いうちにうちの厩舎から他にもそういう馬が出てくるようになるんじゃないかな、と思います。それだけ入厩予定の2歳馬の質が上がっています。
NARグランプリ表彰式にて。田中学騎手(左)、イグナイターの馬主・野田善己氏(中)と
それは『全日本的なダート競走の体系整備』や園田・姫路の賞金増額などが関係しているのでしょうか。
そうですね。これは園田・姫路競馬全体の話ですけど、これまでだとセリで1000万円する新馬が入厩することはあまりありませんでした。それが、今なら賞金が高いのでちょっと走れば回収ができるようになって、今年は1000万円以上の2歳馬が競馬場全体で10頭くらい入厩予定です。全体的に馬の質は上がると思います。
早速、肌感覚として変化を感じているんですね。最後に、イグナイターの次走とそこへの意気込みをお願いします。
5月4日かしわ記念(JpnI、船橋1600m)を予定しています。何とか勝ちたいと思っていますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
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