ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンドで地方競馬・西日本地区2位となり、ファイナル進出を決めた松木大地騎手(高知)。昨年5位でファイナル進出を逃した雪辱を果たしました。所属するのは地方通算勝利数の日本記録を更新し続ける雑賀正光厩舎。雑賀ファミリーの"三男"は、11月13日から園田競馬場で期間限定騎乗中です。YJSにかける思い、そしてファイナルラウンドまでに園田で成し遂げたいこととは。
YJSファイナル進出おめでとうございます! まずは騎手になったきっかけから教えてください。
大阪府吹田市出身で、両親ともに競馬とは全く関係がなかったのですが、漫画『みどりのマキバオー』を読んで騎手になりたいと思いました。高校2年生でそろそろ大学について考える頃で、インターネットで騎手になる方法を調べました。その頃、野球部に所属していて体重をようやく52kgまで増やしたところだったんですが、逆行してまた減量を始めました(笑)。両親からは「大学受験もちゃんとするならいいぞ」と言われ、センター試験や私立大学も2校受験し1校は合格しましたが、地方競馬教養センターに合格したのでそちらに進みました。
高校卒業後に教養センター入学ということは年下も多かったと思いますが、センターでの生活はどうでしたか?
年下も多かったですが、僕はどこに行っても場所見知りしないので、すぐに馴染めました。入所直後、面接で「園田に行きたい」と希望を伝えたのですが、「騎手がいっぱいいて厳しいぞ」と言われ、「それなら暖かい土地の競馬場がいい」と伝えました。そうしたら、可愛がってくださっていた教官が数日後に「雑賀厩舎はどうだ?」と言ってくださいました。みんなから「すごい厩舎やぞ」とも聞いて、入所して1カ月半くらいで所属先が決まりました。
2015年4月にデビューし、初勝利は6月28日。オープンのA1クラスで自厩舎のブラックバカラに騎乗してのものでした。
上のクラスという意識は特になくて人気もしていなかったので、何も考えないでポンとゲートを出て、たまたま逃げ馬の後ろのいい所について、直線で外に出したら手応えが良くって......という感じでした。この後、ブラックバカラがあんなに走るとは思いませんでした(翌年には重賞・珊瑚冠賞を兄弟子・永森大智騎手で制覇)。僕は次の勝利までポンポンと勝てたわけではないですけど、いいきっかけをもらって感謝しています。
翌年4月24日~9月13日まで金沢競馬場で期間限定騎乗。デビュー1年でマークした通算勝利数を上回る16勝を約5カ月の間に挙げました。
他の競馬場に行って視野が広がって客観的に高知競馬のことを見ることができました。それに金沢のみなさんに良くしていただけたので、勝てたのはそのおかげですね。所属厩舎以外にも営業に行かせていただけましたし。今のように内ラチ沿いが軽い時ではなく、レースの流れ次第でどの位置からでも勝てる可能性があるという感じでした。
高知に戻って、昨年は18勝。今年も11月12日までに地元で14勝を挙げました。11月13日からは園田競馬場で期間限定騎乗中。所属するのは師匠のご子息・雑賀伸一郎厩舎です。
園田では1~2コーナーでめちゃくちゃペースが落ちるのでビックリしました。高知では引っ掛かったら内ラチの空いているところに逃げれば何とかなりますが、園田ではそういうわけにはいかないので、何が何でも抑えないといけません。今の方が1~2コーナーに向けてとか、そこでの折り合いを考えていますね。
ただ、期間限定騎乗の初日で大変なことやらかしてしまって...(苦笑)。当初はじーっとしておこうと思っていたんですが、「思ったより脚を使えそうだな」と思って出して行ったら自分の馬の右前脚と前の馬の左後肢がちょうどのところで地面について、落馬してしまいました。初めての騎乗停止で、初めてあんなことして、それが期間限定騎乗の初日。2日目には本命のハニーロコガールに乗せてもらっていたので、勝たないと園田にもおれへんし高知にも帰られへんなって思いました。結果的に勝てて、馬のおかげです。実は吉村さん(智洋騎手)にそのレースや2勝目の時にもアドバイスをいただいて、感謝しています。
吉村騎手とは調整ルームで鍋パーティーをするなど一緒に過ごしているようですね。苦い園田デビューとなってしまいましたが、籍を置く雑賀伸厩舎以外にもたくさんの厩舎から騎乗依頼を受けていますね。
先生や厩務員さんたちが「どこでも営業に行っていいよ」という感じで他厩舎の調教に乗りに行かせていただけるおかげです。でも、園田でのレースは緊張感がありますね。乗ったことがない馬というのもあるんでしょうけど、馬群が詰まる分、ずっと緊張感を持って乗っています。
さてYJSでは昨年、最終戦までファイナル進出の可能性を残していましたが、残念ながら地方競馬・西日本地区5位。同期でファイナル進出を決めた栗原大河騎手(金沢)に向けて「大河、がんばれよ!」とエールを送る姿が印象的でした。
去年は最終戦の1つ前のレースが3着で最後の最後まで望みをつないだんですよね。でも、最終戦は気持ちいいくらいサッパリ(9着)でした(苦笑)。「上手くいかんわ......」と思いました。去年はトライアルラウンドの時点ではまだピンときていない部分もありましたが、同期が中央で乗っている映像を見ていると羨ましく思いました。
今年は8月のトライアルラウンド金沢では2戦2勝。"松木旋風"を吹かせ、ファイナル進出を決めました!
金沢は短期で行かせてもらっていた分、乗りやすかったです。1レース目がグリグリ本命で緊張しました。ところがゲートで躓いて、みんな「アイツ引退や~」って騒いでいたらしいです(苦笑)。でもそこから二の脚が全然違って、馬の力が違いましたね。これならハナまで行って、有利な内ラチ沿いを取れると思いました。2戦目は短期でお世話になっていた金田一昌先生の馬で、インを取るところから狙い通りのレースができました。1戦目を勝たせてもらって落ち着いて乗れたのもあると思いますが、今年イチのレースやったかもしれないですね。
ファイナル進出を決めましたが、それよりも園田での期間限定騎乗に気持ちが向いているようにも感じました。それだけ園田への思いがあるんでしょうか?
今は園田で勝つことの方が嬉しいかもしれないです。園田の上手な人の中で揉まれて、上手く立ち回って勝つことができたら、それが一番嬉しいです。YJSファイナルまでにそういうレースができて、進化して行けたらいいですね。そして大舞台でふたたび松木旋風を巻き起こします!
YJSトライアルラウンド園田
ぜひ期待しています。では最後に、オッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
高知競馬が良くなっているのはオッズパークで競馬を応援してくださる会員の皆様のおかげです。これからも魅力あるレースを提供できるよう頑張るので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大恵陽子
宮川実騎手は、高知競馬でリーディング上位を常にキープ。キャリア20年目の今年は、初めての高知リーディングが視野に入っています。
今年は所属する打越勇児厩舎が全国リーディングを狙える勢い。宮川騎手も順調に勝ち星を積み重ねていますね。
厩舎に良い馬がいて、その馬に乗せていただけて、本当にありがたいと思います。厩務員さんがしっかりと馬をつくってくれていますし、厩舎全体がひとつになっている感じがしますね。それはもちろん、以前から変わりないことなんですが、今年はその積み重ねが実を結んでいるように思います。
それにしても、打越厩舎はかなりの好成績です。
高知のローテーションだと連戦になりがちですが、調教で僕が乗って気になるところがあるとか、厩務員さんが馬の体調に不安があるとか、感じたことを先生に伝えると、馬を休ませてくれることが多いんです。馬は本当に調子が悪くなると、立て直すのはとても難しいこと。でも、そうならないうちに休ませてもらえるんです。たとえば次の週に開催がないときなどは"もう1回だけ"と出走させるケースが多いんですが、それをガマンできているというか。1開催休んだだけでもけっこう違うものなんですよ。
そういう厩舎の好成績に、宮川騎手も乗っているところがあるのでしょうね。ただ、高知での勝ち星は永森大智騎手と競っている状況です。
年末までは時間がありますから、まだそれほどの意識はないですけれど、リーディングを取れるくらいの馬にたくさん乗せてもらっていると思います。でもまだまだミスが多いとも感じます。それを減らしていくのが第一。そういったなかでも、自分が納得できるレースができればと思っています。
ゆくゆくは赤岡修次騎手のように、高知以外でも活躍できればいいですよね。
いやいや、そこまでの余裕は今のところないですよ。でも修次さんとか、巧い人の乗りかたを間近で見るのは勉強になります。見習いたいのは精神的な勝負どころや、瞬間の判断力などですね。道中の仕掛けがほんの少し遅れるだけでも結果はすごく変わりますし、自分がちょっと気負うだけでも悪いほうに違ってきます。僕が常に考えているのは、馬のリズムを壊さないようにすること。馬を気持ちよく走らせることがいちばんだと思っています。
それは現役でいる間はずっと課題になりますね。
負けたとき、『あの場所で馬が行きたいと言っていたのに、それに対応してあげられなかったな』とか感じることがありますね。結果が伴わないことが続くといろいろと考えてしまいますので、いつも自分に対して「レースを楽しめ」と言い聞かせているんですけれど。修次さんは控室では笑っていますが、レースになるとすごく集中している顔つきになるんですよ。そういうところも見習っていきたいです。
それでも大ケガがありながら、今年でキャリア20年になりました。
年とともに、だんだんと体が張ってくる、その間隔が早まっている気がしますね。以前からマッサージや整体にはよく行っていたんですが、その回数が増えました。若いころは腰がけっこうキツくて、でもしばらくしたらあまり気にならなくなったんですが、最近また張りが出てくるようになってきて......。それがあると体のバランスが悪くなってしまうんですよね。
となると、普段の生活も変わってきましたか。
そうですね。遊びに行く回数は減ったかなと思います。とくにサーフィン。無理してケガしてもしょうがないですし(笑)。
最近の高知競馬といえば、売り上げの上昇と賞金の上昇が目につきます。
2歳の新馬戦も始まりましたし、以前よりもいい馬が来るケースが増えたことは実感しています。デビュー前の馬の調教は危険が多いんですが、昔に比べればかなりマシですよ。厩舎にもデビュー戦から連勝したグローサンドリヨンとか、期待できる2歳馬がいます。高知の馬場で鍛えられて上のクラスまで行けた馬は、県外でも通用しますからね。騎手も増えてきましたし、以前よりも活気があるのは間違いないです。
一方で、騎手が増えるということはライバルも増えるということですよね。
自分としては、前の年よりも多く勝ちたいと思っています。ただ、この世界は上を見るとキリがないですからね。それでもこの春には福永洋一記念(ティアップリバティ)を勝たせてもらいましたし、今年は厩舎の勢いをジャマしないようにできればいいかな。
そしてこの9月には別府真衣騎手との入籍が発表されました。それもプラスになっているのではないですか?
生活のリズムが同じですし、僕の多趣味に付き合ってくれているうちに自然と......という感じです。一緒にいて気持ち的に楽ですし、この夏に行ったキャンプにもついてきてくれました。普段の生活が楽しければ仕事にもつながっていきますし、いい影響が出ていると思います。でもレースではライバル。お互いに高め合っていければと思っています。
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※インタビュー・写真 / 浅野靖典
現在、調教師部門で全国リーディングを走る打越勇児調教師(高知)。開業7年目、45歳の若きトレーナーは自身初のタイトルに向け日々、奮闘しています。30代の頃は「厩務員のままでいいや」と思っていましたが、調教師だった父が亡くなり、自身も厩舎を構えることを決意しました。父の教えや、同じ高知競馬で全国リーディング常連の雑賀正光調教師を見て感じること、そして所属する宮川実騎手との夢とは。
厩舎の看板馬ティアップリバティと
8月17日時点で125勝を挙げ、全国リーディングに立っていらっしゃいます。「おめでとうございます」と言うにはまだ早いかもしれませんが、高知競馬には全国リーディングの常連・雑賀正光調教師がいらっしゃる中、開業7年目でこの成績はすごいですね。
ありがとうございます。嬉しいですが、まだ8月だからね。雑賀先生とか角田(輝也)先生(名古屋)なんかはやっぱりすごいですから、いつどこでひっくり返されるか分からないです。今までは追いかける立場で夢中でしたが、初めて自分がこの位置に立って「今が12月だったらな」って毎日思っています。
2012年4月に開業されましたが、調教師になったきっかけは何ですか?
調教師だった父(初男調教師)の厩舎で厩務員をしていました。父に1度、「調教師になったらどうか」と言われたことがありましたが、当時は高知競馬もあまりいい時ではなくて、5年か10年くらい先、いつか父が引退する時に考えようかな、というくらいにしか考えていませんでした。ジョッキー経験者じゃないから、馬を集められないんじゃないかという思いもあって、「厩務員でいいや」という気持ちがどこかにありました。ところが、父が亡くなってしまって...。それで私も調教師になりました。
お父様は高知初の2000勝ジョッキーで、調教師になられてからも重賞22勝などご活躍されたと聞きます。どんな存在でしたか?
子供の頃からよく怒られていましたが、憧れや尊敬の気持ちも持っていました。父の厩舎で厩務員をしていた頃は「馬を優先しろ」とよく注意されました。当時は人間側の都合で段取りを優先してしまっていたんです。いま責任ある立場になって、父の言っていた意味が分かるようになりました。真面目で、馬の扱いがすごいなぁと尊敬していました。
ご自身も開業1年目に船橋・クイーン賞(JpnIII)でアドマイヤインディが3着に入りました。大健闘と言ってもいいんじゃないでしょうか。
すごくビックリしました! レースを見ていて「なにか来たな...ん?俺んとこか!?」って。クイーン賞の後、TCK女王盃(JpnIII)も4着で「クイーン賞はまぐれじゃなかった」ということを証明できて嬉しかったです。アドマイヤインディのおかげで南関東や全国の人に私の名前を知っていただけましたし、とても思い入れの深い馬です。でもTCK女王盃の後、私の勉強不足でうまく調整ができませんでした。今ならローテーションを工夫するなどもう少し成績を残せていたかもしれないです。当時は経験が少なすぎたし、気負っていた部分もありました。
大井・TCK女王盃に出走したアドマイヤインディ(2013年1月23日・4着)
開業から6年が経ちましたが、現在はどういったことを大切に管理馬と向き合っていますか?
騎手や厩務員たちの意見を聞いて、個々の馬に少しでも合った調教をすることでしょうか。うーん、でも難しいですね。雑賀厩舎やいろんな厩舎を見て「いいな」と感じる点はマネをしています。何カ月か試して、うちの厩舎に合った形に変えて取り入れます。高知競馬は上位クラスの馬を除いて短いスパンでレースに使うことがほとんどなので、その難しさもあります。でも、その中でもなるべくチャンスのある時に勝てるように状態を持っていこうと考えています。また、スタッフも大切にして、1頭1頭にしっかり手をかけられるようにと思っています。
厩舎看板馬の1頭のティアップリバティは今年、重賞2勝。そのうち福永洋一記念は所属する宮川実騎手とのコンビでした。宮川騎手も現在、高知リーディング1位で、厩舎・騎手ともに好調な印象です。
ティアップリバティはJRAで期待されていた馬です。脚元のことなどがあって順調にレースに使えなかったりもしますが、他厩舎にもどんどんいい馬が入ってきていますから、負けないようにうまく調整していきたいですね。今は休養中ですが、秋以降がんばります。
(宮川)実も昔の落馬事故の影響で片目が見えないハンデがあるのに、素晴らしい結果だと思います。でも、自分が望んでここに帰ってきているから、それを言い訳にはできないですよね。レースでは優しすぎるところもある騎手ですが、2人で一緒にリーディングを獲れれば理想的です。
福永洋一記念(2018年5月3日)を制したティアップリバティ(写真:高知県競馬組合)
打越師も宮川騎手もリーディングを獲るのは初めてになりますから、期待しています。さて、今の目標は何ですか?
高知には全国リーディング常連の雑賀先生がいらっしゃいます。まずは、雑賀先生より勝ち星を挙げて高知リーディングを獲ることです。それに付随といっては失礼ですが、全国リーディングがついてくればすごく嬉しいですね。年末に1回くらい喜んでみたいなぁ。でも、勝利数では私が勝ったとしても、全国には尊敬する先生方がたくさんいらっしゃいます。中でも田中淳司先生(北海道)はJRAや地方各地に遠征して大きいレースを勝たれていますし、同い年なので「近づけるように頑張ろう」と励みになります。今は最多勝に目標がありますが、先々は遠征をして大きなレースを勝ちたいですね。
最後にオッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
オッズパーク会員のみなさんを含め全国の人が馬券を買ってくださったおかげで売り上げが伸び、昔に比べて賞金が増えました。「高知のレースは面白い」と思ってくれていたら嬉しいです。私たちもいい競馬を提供できるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大恵陽子
中西達也調教師は、フリビオンで2017年の高知優駿を騎手として制し、9月からはその馬を管理する側になりました。調教師に転身しておよそ10カ月、今の様子を中心に伺いました。
高知優駿から1年が経ちましたね。
この1年は本当に早かったですね。でも、騎手を辞めてからはずいぶんと時間が経ったような気がします。それだけ調教師になってから、濃密な日々を過ごしているということなんでしょうね。騎手時代は、馬は調教のときに乗ってレースでも乗って、という感じの接しかたでしたが、今は馬のそばにいる時間が長いですからね。現在(インタビューは6月中旬)は10馬房で、8月に15馬房に増える予定ですが、厩舎にいる10頭には全部乗っています。
調教師として初めての重賞となる珊瑚冠賞にフリビオンを送り出して勝利を挙げ、続く西日本ダービーも優勝しましたが、水沢のダービーグランプリでは2着でした。
西日本ダービーを勝ったらダービーグランプリに行きたいと思っていました。フリビオンは佐賀までの輸送でもわりとケロッとしていましたから、それより長い輸送距離でも大丈夫かなという手応えもありました。ただ、水沢は寒かったですね(苦笑)。そしてスーパーステションは強かったです。
調教師としてフリビオンで西日本ダービー制覇
騎手と調教師ではどういったところが違いますか?
まず、緊張感がまったく違います。騎手時代は午前の攻め馬が終わったら自宅に帰っていましたが、今は夕方まで厩舎にいます。馬の状態は常に把握しておかないといけないですし、小さな変化にも気づけるようにしないとダメですからね。馬には乗れても、馬を育てる引き出しみたいなものをまだ持ち合わせていないので、となりの厩舎にいる炭田先生にいろいろと教えていただきながら、そのうえで自分の色を出せていければと試行錯誤しているところです。
しかし中西厩舎の雰囲気は、高知競馬場のなかでは目立ちますね。
見ばえのよさ、そこは誰にも負けないようにしようと、調教師になる前から考えていました。壁のペンキ塗りも花壇作りも自分でやりましたよ。つい先日、テラス風に座れるところを作ったんですが、これもホームセンターで材木と屋根を買ってきて自分で作りました。やっぱり見た目、とくに入口、玄関は大切だと思うんですよ。調教師は個人商店、中西達也商店ですから、馬にも人にもいい環境を用意していかないと。そのためには普段の服装からきちんとしないと、とも思っています。
調教師として初めてとなる高知優駿には2頭を送り出すことになりました。
これはもう、馬主さんに感謝するしかないですね。今はまだ管理頭数が少ないですが、その少ないなかでも濃い内容を残していきたいと考えています。ただ、スタッフのなり手がいなくて......。人材不足ですよ。僕はなんというか、たとえば牧場に馬を見に行くとか、そういったいわゆる調教師らしい仕事をしたいと思っているんですけれどもなかなか......。
そこは課題として今後もついて回ることになるかもしれませんね。
生きものが相手ですから休みも少ないですし、福利厚生も整っているとは言えません。でも、そのあたりはこれから変えていかないと。
そういうところもこれから目指すところになりますね。ほかに調教師としての目標はありますか?
具体的な数字とか、そういう目標はとくにないですね。まずは経験を積んで、調教師としての引き出しを増やしていくことを目指したいです。また、これまでとは違って人を使う立場になったので、うまくチームワーク的な感じで進められればと思います。その上で、また県外のレースに行けるようになれればいいですね。これからも調教師として恥ずかしくないように、そして『中西厩舎っていいですね』と言ってもらえるように、頑張っていきたいです。
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※インタビュー・写真 / 浅野靖典
永森大智騎手は2017年の高知競馬でもっとも多くの勝利を挙げ、2015年から3年連続で高知リーディングとなっている。今年も狙うのは当然、その地位のキープです。
2017年も高知リーディングになりました。ただ、勝ち星(高知のみ)は一昨年の238から190に減ってしまいました。
賞金が上がったことで、いわゆる"いい馬"が入ってくることが多くなりました。その関係で以前より競馬が難しくなっています。数年前は、力の差がわりとハッキリしているメンバー構成のレースが今より多かったと思うのですが、最近は同じレースに勝つチャンスのある馬が何頭も出走している感じですからね。そのおかげで騎手が積極的に乗るようになっているので、レースの流れが変わったようにも思います。ただ、一昨年の238勝は、こう言ったらナンなのですが、ちょっとでき過ぎだったような気もしますね。
それでも高知での勝利数は高い水準を保っています。
でも振り返ってみると、去年は取りこぼしが多かったように思います。リーディング厩舎(雑賀正光厩舎)の所属騎手としてたくさん乗せてもらっているわけですから、勝てるレースを落とさないようにしていかないと。今年の目標はまず、去年達成できなかった年間200勝ですね。
それでもリーディングの座をキープしたことで、今年もいろいろな舞台が待っていると思います。
やはりスーパージョッキーズトライアル(SJT)には出たいですね。今年も出られるのかどうか、まだわからないわけですが(2017年は、前年4月1日から3月31日までの所属場での勝利数1位の騎手が出場騎手に選定)、ワールドオールスタージョッキーズのあの味、あの空気を知ってしまったら、また行きたくなりますよ。
リーディングジョッキーになると、盛岡競馬場で行われるジャパンジョッキーズカップなどの騎手交流戦に呼ばれることも多くなります。
盛岡のあのイベントは本当に楽しいので、何回でも行きたいですね。JRAの騎手とも話ができますし。SJTはかかっているものが大きすぎて、なんていうか、ピリピリとした感じがあるんですけれど、ああいった純粋な騎手交流戦はまったく違いますからね。普段と違う舞台で楽しく乗れて、刺激にもなります。レース後の飲み会も含めて(笑)。
2016年ジャパンジョッキーズカップ(盛岡)でも優勝
となると200勝という数字とともに、高知リーディングの継続も目標ですね。
そこはキープしていきたいと思っています。ただ、だんだんと勝つのが難しくなってきているのは間違いなくて。それをなんとかするために最近とくに心がけているのは、その日の馬場の変化に注意すること。第1レースから始まって、その日の天気やコンディションでインコースが使えるようになってくるとか、馬場の状況が時間とともに変わっていきます。その変化に誰よりも早く気づきたいんですよ。そして早く気づいたぶん、1レースだけでもいいから自分を有利にしたいんです。当然、ほかの騎手も同じようなことを思っているのでレース後のVTRをみんな見ていますが、それでもその一歩先を進めるようにしたいと考えているんです。
そして、重賞勝利も増やしていきたいのではないですか?
そうですね。去年はカッサイだけでしたからね(黒潮スプリンターズカップ、建依別賞)。でもそういうのはめぐりあわせもありますから。そういう意味では、これまで高知を代表する馬で大きなレースを勝たせてもらった、その経験には大きいものがあります。
そういえば永森騎手って、まだ31歳なんですよね。もっとベテランかと思っていました。初めて重賞を勝ったのが2011年。それから急上昇してきた感じがするのですが、ご本人としてはいかがでしょう。
もちろん、そのころはこんなふうになるなんて少しも思っていませんでした。赤岡さんをはじめ、巧い人がたくさんいる競馬場ですし。それでも初めて重賞を勝たせてもらったリワードレブロンから始まって、エプソムアーロン、グランシュヴァリエといった存在は、自分のなかでは特別なものですね。
最近は高知競馬でデビューした馬たちの活躍が目立っています。そういった馬との出会いにも期待したいですよね。
それもめぐりあわせですよ。ひとつひとつのレースを大切にして、その延長線上にそういう馬が出てくればと思います。そのうちに、ですね。自分自身、これまで「そのうちに、そのうちに」という気持ちでやってきました。自分なりに最善を尽くしていくということを、これからも続けていきたいと思います。
赤岡騎手は他の競馬場の重賞で乗ることも多いですが、そこも今年の目標のひとつでしょうか。
そこまではちょっとどうかなあとは思いますが(笑)、でももっと全国に名前が売れるように、ほかの競馬場から声がかかるような騎手になりたいという思いはあります。地元では自厩舎はもちろんですが、ほかの厩舎からも信頼してもらえるように。あとはケガをしないことですね。そこに気をつけて、今年も頑張っていきたいです。
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※インタビュー・写真 / 浅野靖典