現在、調教師部門で全国リーディングを走る打越勇児調教師(高知)。開業7年目、45歳の若きトレーナーは自身初のタイトルに向け日々、奮闘しています。30代の頃は「厩務員のままでいいや」と思っていましたが、調教師だった父が亡くなり、自身も厩舎を構えることを決意しました。父の教えや、同じ高知競馬で全国リーディング常連の雑賀正光調教師を見て感じること、そして所属する宮川実騎手との夢とは。
厩舎の看板馬ティアップリバティと
8月17日時点で125勝を挙げ、全国リーディングに立っていらっしゃいます。「おめでとうございます」と言うにはまだ早いかもしれませんが、高知競馬には全国リーディングの常連・雑賀正光調教師がいらっしゃる中、開業7年目でこの成績はすごいですね。
ありがとうございます。嬉しいですが、まだ8月だからね。雑賀先生とか角田(輝也)先生(名古屋)なんかはやっぱりすごいですから、いつどこでひっくり返されるか分からないです。今までは追いかける立場で夢中でしたが、初めて自分がこの位置に立って「今が12月だったらな」って毎日思っています。
2012年4月に開業されましたが、調教師になったきっかけは何ですか?
調教師だった父(初男調教師)の厩舎で厩務員をしていました。父に1度、「調教師になったらどうか」と言われたことがありましたが、当時は高知競馬もあまりいい時ではなくて、5年か10年くらい先、いつか父が引退する時に考えようかな、というくらいにしか考えていませんでした。ジョッキー経験者じゃないから、馬を集められないんじゃないかという思いもあって、「厩務員でいいや」という気持ちがどこかにありました。ところが、父が亡くなってしまって...。それで私も調教師になりました。
お父様は高知初の2000勝ジョッキーで、調教師になられてからも重賞22勝などご活躍されたと聞きます。どんな存在でしたか?
子供の頃からよく怒られていましたが、憧れや尊敬の気持ちも持っていました。父の厩舎で厩務員をしていた頃は「馬を優先しろ」とよく注意されました。当時は人間側の都合で段取りを優先してしまっていたんです。いま責任ある立場になって、父の言っていた意味が分かるようになりました。真面目で、馬の扱いがすごいなぁと尊敬していました。
ご自身も開業1年目に船橋・クイーン賞(JpnIII)でアドマイヤインディが3着に入りました。大健闘と言ってもいいんじゃないでしょうか。
すごくビックリしました! レースを見ていて「なにか来たな...ん?俺んとこか!?」って。クイーン賞の後、TCK女王盃(JpnIII)も4着で「クイーン賞はまぐれじゃなかった」ということを証明できて嬉しかったです。アドマイヤインディのおかげで南関東や全国の人に私の名前を知っていただけましたし、とても思い入れの深い馬です。でもTCK女王盃の後、私の勉強不足でうまく調整ができませんでした。今ならローテーションを工夫するなどもう少し成績を残せていたかもしれないです。当時は経験が少なすぎたし、気負っていた部分もありました。
大井・TCK女王盃に出走したアドマイヤインディ(2013年1月23日・4着)
開業から6年が経ちましたが、現在はどういったことを大切に管理馬と向き合っていますか?
騎手や厩務員たちの意見を聞いて、個々の馬に少しでも合った調教をすることでしょうか。うーん、でも難しいですね。雑賀厩舎やいろんな厩舎を見て「いいな」と感じる点はマネをしています。何カ月か試して、うちの厩舎に合った形に変えて取り入れます。高知競馬は上位クラスの馬を除いて短いスパンでレースに使うことがほとんどなので、その難しさもあります。でも、その中でもなるべくチャンスのある時に勝てるように状態を持っていこうと考えています。また、スタッフも大切にして、1頭1頭にしっかり手をかけられるようにと思っています。
厩舎看板馬の1頭のティアップリバティは今年、重賞2勝。そのうち福永洋一記念は所属する宮川実騎手とのコンビでした。宮川騎手も現在、高知リーディング1位で、厩舎・騎手ともに好調な印象です。
ティアップリバティはJRAで期待されていた馬です。脚元のことなどがあって順調にレースに使えなかったりもしますが、他厩舎にもどんどんいい馬が入ってきていますから、負けないようにうまく調整していきたいですね。今は休養中ですが、秋以降がんばります。
(宮川)実も昔の落馬事故の影響で片目が見えないハンデがあるのに、素晴らしい結果だと思います。でも、自分が望んでここに帰ってきているから、それを言い訳にはできないですよね。レースでは優しすぎるところもある騎手ですが、2人で一緒にリーディングを獲れれば理想的です。
福永洋一記念(2018年5月3日)を制したティアップリバティ(写真:高知県競馬組合)
打越師も宮川騎手もリーディングを獲るのは初めてになりますから、期待しています。さて、今の目標は何ですか?
高知には全国リーディング常連の雑賀先生がいらっしゃいます。まずは、雑賀先生より勝ち星を挙げて高知リーディングを獲ることです。それに付随といっては失礼ですが、全国リーディングがついてくればすごく嬉しいですね。年末に1回くらい喜んでみたいなぁ。でも、勝利数では私が勝ったとしても、全国には尊敬する先生方がたくさんいらっしゃいます。中でも田中淳司先生(北海道)はJRAや地方各地に遠征して大きいレースを勝たれていますし、同い年なので「近づけるように頑張ろう」と励みになります。今は最多勝に目標がありますが、先々は遠征をして大きなレースを勝ちたいですね。
最後にオッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
オッズパーク会員のみなさんを含め全国の人が馬券を買ってくださったおかげで売り上げが伸び、昔に比べて賞金が増えました。「高知のレースは面白い」と思ってくれていたら嬉しいです。私たちもいい競馬を提供できるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大恵陽子