デビュー4年目の山本咲希到騎手は、有望な若手ジョッキーを多数抱えるホッカイドウ競馬の成長株。6月のヒダカソウカップではディナスティーアに騎乗し、待望の重賞初勝利を挙げました。現在行われている2018ヤングジョッキーズシリーズでも、トライアルラウンド船橋・門別で75ポイントを獲得して地方・東日本地区のトップに立っています。
今年はこれまで22勝を挙げています(8月23日終了時点)。今シーズンの戦いぶりを振り返っていかがでしょうか。
今年は重賞も勝たせてもらったり、楽しみな2歳馬に乗せてもらったりもしていたなか、年間50勝という目標を掲げていたので、物足りなさはちょっと感じていますね。昨シーズンの末に制裁を受けたぶん、今年度最初のひと開催で騎乗停止になってしまったのも痛かったです。
昨年は32勝と、2年前の8勝から大幅に勝ち数を伸ばしました。
2年目までは「勝ちたい」という気持ちが早まってしまい、早仕掛け、止まる、負ける、乗り替わる......みたいな悪循環があったんですけど、いい意味で開き直りの気持ちを持てたのが好結果につながっているんじゃないかと思います。先生方からもよく「あの頃のお前を乗せるのは大変だったんだぞ!」って冗談っぽく言われるんですけど、見捨てずにいてくれたうちの(松本隆宏)先生や、勝てなかったころも我慢して乗せてくださった先生方には感謝しかないですね。
6月のヒダカソウカップでは、ディナスティーアとのコンビで重賞初制覇を成し遂げましたね。
今年の2月頃にうちの厩舎に来たんですけど、最初に調教で跨ったときから、牝馬とは思えないほど力のある馬だと感じていました。ただ、自分がまだ重賞を勝ったことがなく、「重賞を勝つ馬」の手応えをあまりよく知らなかったので、実際のレースでどうなるかはよく分からなかった部分はありましたね。
レースに跨っていくうちに「重賞にも手が届きそうだ」という感触は持てましたか?
短距離だと、本当に速い牡馬たちにはスピードでは一歩及ばないような感じもしたのですが、何回かレースで乗せてもらっているうちに、牝馬同士なら意外と長いところでもいけそうな手ごたえを感じていました。
ヒダカソウカップのときも、前走で1200の交流重賞を使っていたので、スピード負けすることはないと思っていました。ただ、スタートから出していったら行きたがる心配はあったので、調教師とは好位の内々で溜めていこうと。で、終いだけ出せるところに出していこうという話をして。そうしたら、本当にその通りになってくれました。本当にすべてがうまくいってくれた感じでしたね。勝った実感がわいてきたのは、ゴールして検量所へ帰ってくるときでしたね。「重賞を勝った」というよりも、馬に「ありがとう」という感じです。
重賞初制覇となったヒダカソウカップ
2歳の有力馬にも徐々に乗るようになってきましたね。
昨年ミスターバッハでデビューしてから初めてフレッシュチャレンジを勝たせてもらって、そのあとポンポンと2歳戦で勝つことができたのが自分の中でも大きかったんです。1戦ごとに競馬を覚えさせていって、馬の成長過程を体感できたという意味でも面白かったですし、勉強になりました。イノセントカップではヤマノファイトにクビ差まで迫ってくれましたし、南関東に移籍した後もいい競馬を見せていますからね。
今年の2歳戦線では、ステッペンウルフが有力かと思いますが。
この馬が厩舎に来るという話になったとき、ミスターバッハの馬主さんが「来年はこの馬でがんばれ」と言ってくださったんです。ただ、シーズンオフに馬主さんが亡くなられたので、オーナーのためにも結果を出したいとずっと思っていました。調教の動きからも能力があることは分かっていたのですが、能検で宮崎(光行)さんを落としたり、気の悪さを出すところがあって。でも、基本的には賢い馬なので、馬具で矯正したり、坂路でも馬の後ろに突っ込んでいったりして、おだてるところはおだてて......という感じでだんだんとレースを覚えさせていきました。再検も無事パスして、フレッシュチャレンジでゴールしたときはオーナーさんのことが頭に浮かんで、思わずガッツポーズが出てしまいましたね。
6月のウィナーズチャレンジ2着から栄冠賞へ。結果は3着でしたが、ゴール前の末脚はすばらしかったですね。
2戦目は初めてのナイターでしたが、脚を使えるということが分かったので、栄冠賞では変に出していかず、ミスターバッハのように終いだけしっかりと脚を使っていくようなイメージで臨みました。ところがゲートを少し潜るように出てしまい、脚もどこかにぶつけてしまったのか、思うように出脚がつかなかったので、正直「終わった......」と思いました。でもそんなことも言ってられないし、イチかバチかで内を突こうと思って直線でステッキを入れたら、「お前そんな力あるならもうちょっと出て行けよ!」と思うくらいの末脚を見せてくれて。もう1回夢を見たんですけど、勝った吉原さんの馬(イッキトウセン)とはスムーズに運べたかどうかの差が出てしまいましたね。
レースが終わってから、この馬が持っている力をあらためて感じました。だからこそ、この馬の能力をもってしても栄冠賞を勝てなかったのかと思うと、ふがいなさや情けなさ、無念さといったいろんな感情がこみ上げてきて、涙が出るほど悔しかったですね。ブリーダーズゴールドジュニアカップは5着でしたが、距離が長かった分もあったのかもしれません。まだまだここで終わるような馬じゃないと思っています。
フレッシュチャレンジを制したステッペンウルフ
今年のヤングジョッキーズシリーズでは、門別ラウンドを終わった時点で75ポイント。地方の東日本地区では首位に立っています。
船橋は1戦目で格上の馬に乗せてもらったこともあり、馬の力を信じて乗った結果勝つことができました。あまり経験したことのない左回りで、騎乗するときのバランスに戸惑うこともありましたが、エキストラで2戦乗せてもらったおかげで、だいたいリズムもつかめたんじゃないかと思います。門別も2着、3着でポイントを稼げたのはよかったんですけど、2戦とも勝つつもりで乗っていたので不満は残ります。特に初戦は人気のある馬に乗せてもらったんですけど、どうしても3コーナーからふかしていかなければならない展開でしたからね......。先行勢のなかでは一番いい着順だったので、馬はよくがんばってくれました。
今後の目標について教えてください。
一番近い目標で言えば、次に乗るレースを勝つことですね。平場でも重賞でも、100戦100勝を目指すくらいの気持ちで乗っているつもりです。1度リーディングを取ってみたいですね。桑村さんや服部さんなど、リーディングを取ったことのある方の乗り方はやっぱり「違うな」と思います。機会があれば中央や海外でもどんどん乗りたいですね。今年の開幕前にマレーシアのセランゴール競馬場を視察させてもらったんですけど、大きな刺激を受けました。
では最後に、オッズパーク会員の皆さまへメッセージをお願いします。
これからも精いっぱい頑張りますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴