山口勲騎手は、4月22日に地方通算4000勝を達成。1987年10月のデビューからまもなく30年。大ベテランではあるが今年も佐賀のリーディング争いを独走しており、まだまだその牙城は揺らぐことがなさそうだ。
まずは通算4000勝達成の感想をお願いします。
3000勝を達成したとき、4000という数字はまったく考えなかったですし、4000までがんばろうという風にも思わなかった、というのは記憶にありますね。でもそれからも積み重ねてきたら、4000になったという感じです。
となると、5000勝も?
そうですね、それも考えられません(笑)。あとどのくらいまで(騎手として)やれるかとかも考えていませんし、あまり数字を目標にするタイプでもないもので。
2017年4月22日、佐賀第5レースで地方通算4000勝達成(写真:佐賀県競馬組合)
それでも「山口勲」というネームバリューは年々上がっているような感じがあります。先日(3月12日)は阪神競馬場で騎乗して2着に2回入りました。
今回、初めてエージェントをお願いしたんです。それもあって騎乗馬がたくさん集まりました(佐賀のハクユウロゼを含めて全7鞍)。ひとつめの2着だったレースは、最後にもたれるところがあったんですよ(未勝利戦で9番人気馬に騎乗)。それがなかったら粘り切れていたかもしれないですね。
東京競馬場でのワールドスーパージョッキーズシリーズ、あのとき以来の勝利のチャンスでしたからね。
府中で挙げた1勝は、本当にミラクルという感じでしたね。あの年はいろいろとうまいこと運が向いて、かみ合っていた年だと思います。この間もJRAでまずまず成績がよかったもので、何人かの調教師さんに「次はいつ来るの?」って聞かれたんですけれど、佐賀にはJRAに遠征する馬がおらんのですよ(苦笑)。
2012年ワールドスーパージョッキーズシリーズ(東京)第2戦で勝利
でも、それだけ腕があるということが知れ渡っているということでしょう。今年もジョッキーレースの時期がやってきますね。
そうですね。ジョッキーレースで勝てばまわりに与える印象が違ってきますからね。最近は相性がよくて、ゴールデンジョッキーカップではけっこう賞金をもらえていますし、去年のジャパンジョッキーカップ(盛岡)でもポイント的には2位でしたから。
そういうレースに臨むときのコツってあるんですか?
いやまあ、あるというかないというか。個人的にはこういうところが結果につながっているんだろうなと思い当たるところはあるんですが、この記事をほかの騎手が見る可能性がありますからねえ(笑)。
なるほど、そこは明かさないということで。ということは、ワールドオールスタージョッキーズへの意欲は十分ということですね?
もちろんですよ。札幌競馬場で乗ったこともないですし、ぜひ行きたいですね。
そのためには、スーパージョッキーズトライアル(SJT)で優勝しなければなりません。まずは第1ステージが盛岡です。昨年はジャパンジョッキーズカップで1勝しました。
でも盛岡のSJTでは、散々な成績で第2ステージに行けなかったことがあるんですよ。大雨で芝のレースがダート変更になってしまったとき(2014年)。ぼくが乗る馬は芝で好成績を挙げていて、新聞のシルシもけっこうついていたのにダートがまるでダメで......。じつはそのせいで、盛岡にはいいイメージがなかったんです。まあ、昨年の勝利でそれは変わりましたけれどね(笑)。
ジャパンジョッキーズカップ2016(盛岡)でチームWESTの優勝に貢献した山口勲騎手(右端)
ちなみに前回のSJT優勝は、通算3000勝を達成した年でした(2012年)。
そうでしたっけ? もうそんなになるんですかね。あまり数字は目標にしないと言いましたけれど、年間200勝という数字は意識していますよ。だんだん体が硬くなってきているかなという気はしますが、気持ち的には年をとったとか、そんな感じは全然ないですね。
となると、若手の壁になる山口騎手というのは続いていくことになるのでしょうか。
若手も何かきっかけがあれば伸びてくる感じはありますよ。ぼくも1000勝まではけっこう時間がかかりましたし、鮫島さんを初めて抜いたのが35歳くらいですからね。毎日の調教で乗っているのは15頭くらいかな。以前よりすこし減りました。でも鮫島さんもそのくらい乗っていますから。これからもケガなく続けられればいいなと思っています。
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※インタビュー / 浅野靖典
デビュー36年の大ベテラン、兒島真二騎手は、一昨年(2015年)名古屋から佐賀に移籍しました。昨年は71勝を挙げ、佐賀リーディング6位に浮上。まだまだ進化する54歳にお話しを伺いました。
名古屋から佐賀へ移籍して丸2年になりますね。
佐賀にはもう慣れましたよ。名古屋とは競馬も全然違うし雰囲気も違いますけど、馬場が一番違いますね。名古屋は内をぴったり回って来るけど、佐賀はかなり内を開けて走りますから、やっぱり走りやすいし事故も少ないですよね。
超先行有利と言われていますけれども、その辺りはいかがですか?
もちろん先行有利ですけれども、それだけではなくて、天候や展開によっては差しも決まりますから、自分の乗る馬のことを一番に考えて、無理やり先行という風には考えていないですね。そこは臨機応変にしています。騎乗に関しては、馬の気持ちを大事に、その馬その馬に合わせられるよう考えています。
兒島騎手は36年目の大ベテランですが、名古屋から佐賀に移籍した経緯というのは?
移籍は一昨年だったんですけど、実はですね、2008年頃に一度騎手を辞めようと思っていたんですよ。あの頃は40代後半に差し掛かっていたし、乗り馬が減ってもうそろそろいいかなって。その時は騎手会長にも、今まで乗せてもらった方々にも「辞めます」って挨拶に行ったんです。もう本当に辞めるつもりで。ただ、調教師とか厩務員とか、別の競馬の道にいこうと思っていたわけではなくて。結局それだとまた朝早く起きなきゃいけないじゃないですか(笑)。競馬の世界を辞めて、一般の、普通の仕事を探そうかなと思っていました。
でも塚田(隆男)先生が「もったいない!」って引き留めてくれて、説得してくれたんですよ。先生の奥さんとうちの嫁さんと4人で夜中まで。それで、「もう少しがんばってみようかな」と思いました。その後にウォータープライドに出会って東海ダービーを勝つ(2013年)わけですから、あの時辞めなくて本当によかったです。
その後2015年に、佐賀に期間限定騎乗に行ったんですよね?
そうです。ちょうど、今度こそ本当に騎手を辞めようと思ってた頃に、佐賀で騎手がケガで少なくて、期間限定騎乗で誰かいかないかって言われて、じゃあ辞める前に行ってみようかなと。違う場所で乗ってみたいっていう気持ちもあったので。だから、期間限定騎乗が終わったら辞めるつもりで佐賀に行ったんです。そうしたら中川(竜馬)先生が、「え?辞めるの?それはもったいない!」って引き留めてくれて。それで佐賀に完全移籍して、今も続けているというわけなんです。
30年以上名古屋にいて、思い切りましたね。
心機一転と思って、思い切っていきました。新しい場所で競馬も新鮮でしたし、楽しいですね。年齢を重ねて新天地に行くのは勇気がいるって言われますけど、でも前向きに考えて、馬に乗ることは好きですし、やると決めたらすぐ行動に移しちゃう性格なので(笑)。こっちでもよくしていただいてますし、厩舎でもよくしてもらっているので、思い切って移籍してよかったです。
去年71勝で佐賀6位でした。この成績アップの要因は?
わからないです(笑)。いい馬に乗せてもらったおかげですね。僕は目の前のレース1つ1つを大事に乗っているだけなので、その積み重ねで年間の勝利数がアップしたことは嬉しいです。こちらに来てから、早い段階で九州ジュニアチャンピオン(2015年ソウダイショウ)を勝つことができましたし、本当に恵まれた環境で仕事させてもらっています。
2015年九州ジュニアチャンピオンをソウダイショウで制した
今年55歳になるんですね。
年齢的なことは全然感じないんです。体も疲れないですし。もともとの体重が軽いので、食べ放題なんですよ(笑)。この年齢までやれるっていうのは、減量がないことも大きいですから、有り難いことですね。
2度騎手を辞める決意をしていますが、現在はいかがですか?
今は辞めるつもりは全然ないんです。今年の夏に騎手候補生が競馬場実習で帰って来るんですけど、中川先生からは「一人前にしてから辞めてくれ」って言われているんで。その子のお父さんが僕と同じ鹿児島の出らしいんですよね。同郷っていうのは親近感もありますし、しっかりと育てたいと思ってます。
来年(2018年)の春デビュー予定の候補生ということですか?
そうです。まずは無事にデビューすることですけど、一人前になるまでにはある程度時間もかかりますし、まだまだ辞められないという気持ちです。2度辞めようと思ったことがありますが、今は続けていて本当によかったです。あの時引き留めてくれた塚田先生と中川先生に感謝してます。
では、今後の目標を教えて下さい。
今年に入って少し調子よかったのに、ここちょっと勝ててないんですよね。やっぱり波があって、ポンポンと勝てる時もあれば何してもダメな時もありますけど。でも一生懸命がんばっていればなんとかなりますから、これからもっと勝ち鞍を増やせるようにがんばります。まだまだ若い者には負けられませんよ。これからも佐賀競馬場をよろしくお願いします。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:佐賀県競馬組合)
昨年区切りの200勝を挙げた、佐賀の川島拓騎手。2011年にデビューし、今年で7年目。いよいよ中堅の粋に入ってきました。ベテラン勢の層が厚い佐賀の中で、さらなる飛躍を目指します。
2016年は49勝とこれまでで最高の勝利を挙げましたね。
そうですね。強い馬にたくさん乗せていただいたっていうのが大きいですが、いくらかレース中に余裕がでてきたのかなと思います。差し馬に乗った時とかも周りの馬の手ごたえが見えるようになったし、経験を積んだことで、なにより焦らなくなりました。
2011年のデビューから約6年で200勝、ここまでを振り返っていかがですか?
成績に関しては、まぁぼちぼちって感じです。まだ今も全然ですけど、デビュー当時から比べると少しは成長できているのかなとは思いますね。今もたまに昔のレースをビデオで見るんですけど、「なんでこう乗らなかったんだろう」とか、「勝負所で焦っているな...」って思います。もっとじっくり乗れれば勝てたレースもありますし。それに、ゲートの出遅れが多かったので...。今はそのあたりがだいぶ改善できたかなって。焦ってしまうと馬にも伝わってしまうので、ゲートの中ではなるべく動かないようにしています。まぁ、まだまだですけど(苦笑)。
でも毎日本当に楽しいですよ。自分で調教した馬と一緒に勝つ喜びは何物にも代えられないです。育てる楽しさというか、期待していた馬がその通りに走ってくれると嬉しいですし、気性の幼かった馬が毎日の調教で変わっていくのもすごく嬉しいです。毎日充実した時間を過ごしています。
辛いことはないですか?
強いて言えば......調教中寒いのが辛いです(苦笑)。今は朝1時前に起きて、1時から20頭くらい調教しているんですけど、明け方、太陽が昇って来る時は本当に寒いです。
1時というのは、調教時間の早い地方競馬の中でもかなり早いですね。
早いですよね。まさかこんなに朝が早い仕事だとは思っていませんでした。競馬の世界に入って、それが一番びっくりしたことですね。
川島騎手は、一般家庭からこの世界に入ったんですよね?
そうです。僕は高校を卒業してから地方競馬教養センターに入ったので、少し遅かったんですけど。もともと動物好きで、そういう仕事に就きたいなって思っていたんですけど、親が佐賀競馬のファンで、連れて行ってもらって目の前でレースを見たら、もう一目惚れだったというか。ものすごく感動して、騎手になりたい!って思ったんです。
親御さんは驚いたんじゃないですか?
最初はびっくりしていましたね。競馬ファンでしたけど、親もそうだし僕自身もまったくどういう世界かはわかってなかったので、悩んで、話し合いをしました。親からは、「自分で決めた道なら、最後まで突き進んで行け」って言ってもらって。その言葉に背中を押してもらいました。
地方競馬教養センターでの生活はいかがでした?
馬に触るのもほぼ初めてっていう感じでしたし、右も左もわからない状態だったので、とにかく覚えることがいっぱいで。乗馬の経験がある同期に追いつくのが大変でした。なかなか上手くならなくて、壁にぶつかったり、辛いこともあったけど、辞めたいと思ったことはなかったです。同期もいたし、教官たちも励ましてくれましたし、馬に乗ることが楽しかったので。
佐賀若駒賞(1月3日)ではアイディアルレディに騎乗(3着)
デビューした時のことは覚えていますか?
いっぱいいっぱいだったことを覚えています(笑)。デビュー戦は本当に緊張しましたね。初勝利の時にはファンの方から「おめでとう」って声をかけていただいて、すごく嬉しくて印象に残っています。
佐賀は上位騎手、特にベテラン勢の壁が厚いですけれども。
本当に厚いです...(苦笑)。やっぱり、山口(勲)さんは全然違いますよ。よくビデオを見て真似したいって思うんですけど、全然......。どこがっていうか、全体的にすごいです。ハミ受けとかもそうだし、レース運びも上手いし、ここぞの時、追い比べの時とか本当に勝負強いです。今は全然届かないですけど、いつかは追いつけるようにがんばります!
では、今年の目標をお願いします。
去年は49勝で、あと一歩50に届かなかったので、今年こそは50勝したいです。今はまだ足りないことが多いですけど、一生懸命努力を重ねて、いつかリーディングを獲りたいです! ファンの皆さんにも信頼していただけるようがんばります。応援よろしくお願いします!!
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※インタビュー / 赤見千尋 (写真:佐賀県競馬組合)
佐賀のベテラン真島正徳騎手。今年はドンプリムローズとのコンビで重賞4勝、九州ダービー栄城賞も制しました。来年はデビュー30周年を迎えます。一線級で活躍し続ける秘訣はどこにあるのでしょうか。
真島騎手といえば、今年はやはりドンプリムローズとのコンビでの活躍が印象に残っています。
2歳の秋に佐賀に来たんですけど、最初の頃は物見したり、調教も素直にできなかったりで、けっこう手がかかる馬でした。力はあるんですけど、まだ体が出来上がっていなかったので強い調教ができないし、難問がいっぱいでしたね。だからレース前はいつも自信がないんですけど、でもいつも想像以上に走ってくれるんです。
そんな中、移籍初戦から5連勝! 飛燕賞では2着に負けたものの、九州ダービー栄城賞では堂々の1番人気に支持されました。
ファンの皆さんからは1番人気にしてもらってるし、厩舎もね、兄の厩舎で本当にお世話になっているので、勝って恩返ししたいという気持ちが強かったです。さっきも言いましたけど、調教がすごく難しい馬で、それを兄の次男坊が毎日調教つけて仕上げてくれたんです。(大井の真島)大輔(騎手)の弟ですね。今、厩舎を半分くらい任される立場になってて、すごくがんばっているんですけど。そういうスタッフの努力に応えたいという気持ちが強かったです。
レースはハナを奪うと、まったく危なげない足取りで逃げ切りましたね。
強かったですね。怖がる面があって、あの時もゲートの中でジッとしていなくてイマイチなスタートになってしまったんですけど、出てからが速かったです。先手を取り切ってしまってからは、本当に強いレースをしてくれました。
九州ダービー栄城賞(5月29日)を制したドンプリムローズ(写真:佐賀県競馬組合)
ロジータ記念では強豪相手に5着という成績でした。
僕が南関東乗り慣れないんでね、その中であの走りができたことは本当に立派だと思います。砂を被って揉まれてしまったので、ズルズル下がって行くかなと思ったんですけど、最後も内からよく伸びてくれました。レース後に南関東(船橋・佐々木功厩舎)に移籍したんですけど、あっちでもがんばってくれると思いますよ。離れるのは残念な気持ちもありますが、今後が本当に楽しみです。
ドンプリムローズはお兄さんの真島元徳厩舎で調教担当も甥っ子さんということで、真島家の絆は強いですね。
がっちりですよ(照)。兄とは10歳離れているので、若い頃はもちろん厳しいことを言われましたけれど、今は本当に自由にさせてもらってます。そのお蔭で、ここまで続けて来られたっていうのは大きいですね。
来年はデビュー30周年ですよ。
え? 30年? 自分では全然気づいてなかったです(笑)。いつの間にかここまで来ていましたね。もうすぐ47歳ですし、周りからはよく「調教師試験は?」ということを聞かれるんですけどね。調教師転身はまったく考えていないです。本当に乗るのが好きなので。今のまま体が続く限り、騎手としてがんばっていきたいですね。幸いにも僕は骨折をしたことが一度もなくて、不死身って呼ばれているんですけど(笑)。まだまだ若いもんには負けられないですよ。
ドンプリムローズではロータスクラウン賞(10月2日)も制した(写真:佐賀県競馬組合)
長年佐賀で戦う上で、大事にしていることはなんですか?
佐賀は基本的には先行有利ですから、そこはもちろん大事にしています。それから、同じメンバーで戦っている分、同じレースばかりになってはいけないなと意識してますね。見ているお客さんもつまらないでしょう。そこを意識している上で、昔とは少し考えが変わって来ました。前は途中からでもガンガン積極的に動いたりしてましたけど、ペースとか周りの馬のことよりも、自分の馬のことをより深く考えるようになりました。たまにはめちゃくちゃもしますけどね(笑)。
ファンの方へメッセージをお願いします。
先日初めてファン投票で出走するジョッキーを決める佐賀ジョッキーズセレクションというのがあったんですよ。僕に投票してくれる人なんていないんだろうなって思っていたんですけど、3位という順位をもらって。すごく嬉しかったですね。なかなかファンの方と直接、接する機会はないですけど、こうやって応援してもらっていることを実感すると、本当にモチベーションが上がります。いい馬にもたくさん乗せていただいているので、皆さんの信頼を裏切らないよう精いっぱいがんばります!
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※インタビュー / 赤見千尋
長年佐賀のトップに君臨する山口勲騎手。NARグランプリ2015では、最優秀勝率騎手賞とベストフェアプレイ賞をダブル受賞し、改めて全国に存在感を示しました。今年もオッズパーク地方競馬応援プロジェクトで期待の新馬に騎乗予定。ご自身のことも含めてたっぷりと語っていただきました。
今年の2歳世代は、オッズパークの地方競馬応援プロジェクト第2世代になりますが、佐賀でデビュー予定のシュダイカ(牝2・父クロフネ)の様子はいかがですか?
先日能力試験を受けたんですけど、いい感触でした。今はまだソエが少し気になるので、そこまで強い調教はしていないんですよ。能力でも急かさないで馬なりで2番手に行って、そのまま素直に走ってくれました。デビューは8月頭の開催を予定しています。ここまで順調に来ていますよ。
性格的、肉体的にはいかがでしょうか?
性格はやっぱり牝馬なので、多少カーッとするところはありますね。ただ、ずっとイレ込んでいるわけではなくて、すぐに落ち着いてくれるので心配はしていません。肉体的には意外と強いみたいで、ゲート練習や能力試験をしても体が減らないんですよね。牝馬は体を保つのが大変な馬が多いですから、そこは大きな武器になると思います。
去年デビューしたローカルロマンは、そのあたりで苦労しているそうですね。
そうなんですよ。体がどうしても減ってしまって戻り切らないんですよね。だから調教でもあまり攻められなくて。レースでも他の馬を怖がる面があるので、繊細な性格が影響していると思います。ご飯を食べて体もしっかりしてくれれば、もっとやれる馬なんですけど。軽い走りをする馬で、前々から芝を使ってみたいと思っていたので、7月30日の小倉遠征は楽しみですね。
山口騎手は佐賀のトップに立って長いですけれども、今でも誰よりも長く朝の調教をつけているとお聞きしました。
頭数的には15頭くらいなので、もっとたくさん乗っている騎手もいるんですけどね。うちの厩舎は1頭に掛ける時間がかなり長いので、調教時間に換算すれば確かに一番長いかもしれません。朝1時過ぎから始めて、終わるのはだいたい8時半から9時くらいですね。
毎朝長時間の調教をする、そのモチベーションは何ですか?
なんですかねぇ。僕よりも、順番を待っている厩務員さんたちの方が大変だと思いますよ。長い時間運動しながら待っているわけですから。僕が調教するのは、他の人が乗れないような癖のある馬が多いですし、自厩舎だけじゃなく他所の馬も頼まれるので、責任感というのが大きいですかね。だからね、それもあって南関東の期間限定騎乗に踏み切れないところもあるんですよ。
佐賀はオフシーズンがないですから、長期的に競馬場を空けるのは難しいと?
行くタイミングは難しいですよね。南関東の方から「来てみないか?」とお誘いは受けるんですけど、2か月でしょう。ちょっと中途半端な期間ですよね。もっと1年とか腰を据えて行けるのならば、自分のお手馬を他の人にお願いして、思い切って挑戦してみたいと思うんですけど、2か月で終わりというのはなかなかね。だから、韓国遠征は本気で動いたことがあるんです。韓国は半年から1年行く人もいるでしょう。
実現しなかったのは何故ですか?
ちょうど鮫島(克也)さんと同時期に申請しちゃったんですよ。さすがに2人いっぺんに佐賀を空けるというのは困るということで、いったん諦めて。その後はなんとなく時間が流れてしまいましたね。やっぱり1年佐賀を空けるとなるとかなり大きな決断なので、次のタイミングが難しくて。今のところは長期的に遠征に行くプランは持っていないです。
そうなると、SJTやジャパンジョッキーズカップなどで、単発で遠征に行くことが大きな刺激になりそうですね。
ジョッキーレースに呼ばれることはかなり大きいですよ。それがないとなかなかモチベーションを保てません。SJTは勝てなくて残念でしたけど、ジャパンジョッキーズカップはあのメンバーの中で1つ勝つことができて嬉しかったですね。やっぱり、中央地方のトップジョッキーと戦うレースは面白いですし、そこで勝てたら自信になります。
ジャパンジョッキーズカップ(盛岡)第2戦を勝利(写真:岩手県競馬組合)
現在は3年連続でNARグランプリ最優秀勝率騎手賞を受賞していますが、やはり勝率は意識していますか?
勝率を意識するのは1年の後半に入ってからですね。勝ちにこだわりはするけど、今はまだそれほど意識していないです。去年はベストフェアプレイ賞を初めて受賞できたんですけど、正直そっちの方が嬉しかったです。年間を通して制裁がない全国1位の騎手ってことですから。フェアプレイで勝っているという証拠なので、とても重みのある賞だと思います。今年も勝率とベストフェアプレイ賞と、ダブル受賞できるようがんばります。
では、今後の目標を教えて下さい。
まずは休まず乗ることですね。そうすれば勝ち星などは後からついて来ますから。今は4000勝という大きな数字を目標にしています(2016年7月24日現在、地方3828勝)。僕は1000勝するまでかなり時間が掛かったんですけど、そこからは本当にたくさんの方のお蔭でペースアップすることができました。特に大きかったのは、今ほど遠征が頻繁じゃなかった時代に荒尾でたくさん乗せてもらえたことです。佐賀とは違うコースや流れを経験して、とても勉強になりました。残念ながらもう荒尾はないですけど、当時乗せてくれた方にも恩返ししたいので、まだまだ若い騎手には負けませんよ!
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※インタビュー / 赤見千尋