長年佐賀のトップに君臨する山口勲騎手。NARグランプリ2015では、最優秀勝率騎手賞とベストフェアプレイ賞をダブル受賞し、改めて全国に存在感を示しました。今年もオッズパーク地方競馬応援プロジェクトで期待の新馬に騎乗予定。ご自身のことも含めてたっぷりと語っていただきました。
今年の2歳世代は、オッズパークの地方競馬応援プロジェクト第2世代になりますが、佐賀でデビュー予定のシュダイカ(牝2・父クロフネ)の様子はいかがですか?
先日能力試験を受けたんですけど、いい感触でした。今はまだソエが少し気になるので、そこまで強い調教はしていないんですよ。能力でも急かさないで馬なりで2番手に行って、そのまま素直に走ってくれました。デビューは8月頭の開催を予定しています。ここまで順調に来ていますよ。
性格的、肉体的にはいかがでしょうか?
性格はやっぱり牝馬なので、多少カーッとするところはありますね。ただ、ずっとイレ込んでいるわけではなくて、すぐに落ち着いてくれるので心配はしていません。肉体的には意外と強いみたいで、ゲート練習や能力試験をしても体が減らないんですよね。牝馬は体を保つのが大変な馬が多いですから、そこは大きな武器になると思います。
去年デビューしたローカルロマンは、そのあたりで苦労しているそうですね。
そうなんですよ。体がどうしても減ってしまって戻り切らないんですよね。だから調教でもあまり攻められなくて。レースでも他の馬を怖がる面があるので、繊細な性格が影響していると思います。ご飯を食べて体もしっかりしてくれれば、もっとやれる馬なんですけど。軽い走りをする馬で、前々から芝を使ってみたいと思っていたので、7月30日の小倉遠征は楽しみですね。
山口騎手は佐賀のトップに立って長いですけれども、今でも誰よりも長く朝の調教をつけているとお聞きしました。
頭数的には15頭くらいなので、もっとたくさん乗っている騎手もいるんですけどね。うちの厩舎は1頭に掛ける時間がかなり長いので、調教時間に換算すれば確かに一番長いかもしれません。朝1時過ぎから始めて、終わるのはだいたい8時半から9時くらいですね。
毎朝長時間の調教をする、そのモチベーションは何ですか?
なんですかねぇ。僕よりも、順番を待っている厩務員さんたちの方が大変だと思いますよ。長い時間運動しながら待っているわけですから。僕が調教するのは、他の人が乗れないような癖のある馬が多いですし、自厩舎だけじゃなく他所の馬も頼まれるので、責任感というのが大きいですかね。だからね、それもあって南関東の期間限定騎乗に踏み切れないところもあるんですよ。
佐賀はオフシーズンがないですから、長期的に競馬場を空けるのは難しいと?
行くタイミングは難しいですよね。南関東の方から「来てみないか?」とお誘いは受けるんですけど、2か月でしょう。ちょっと中途半端な期間ですよね。もっと1年とか腰を据えて行けるのならば、自分のお手馬を他の人にお願いして、思い切って挑戦してみたいと思うんですけど、2か月で終わりというのはなかなかね。だから、韓国遠征は本気で動いたことがあるんです。韓国は半年から1年行く人もいるでしょう。
実現しなかったのは何故ですか?
ちょうど鮫島(克也)さんと同時期に申請しちゃったんですよ。さすがに2人いっぺんに佐賀を空けるというのは困るということで、いったん諦めて。その後はなんとなく時間が流れてしまいましたね。やっぱり1年佐賀を空けるとなるとかなり大きな決断なので、次のタイミングが難しくて。今のところは長期的に遠征に行くプランは持っていないです。
そうなると、SJTやジャパンジョッキーズカップなどで、単発で遠征に行くことが大きな刺激になりそうですね。
ジョッキーレースに呼ばれることはかなり大きいですよ。それがないとなかなかモチベーションを保てません。SJTは勝てなくて残念でしたけど、ジャパンジョッキーズカップはあのメンバーの中で1つ勝つことができて嬉しかったですね。やっぱり、中央地方のトップジョッキーと戦うレースは面白いですし、そこで勝てたら自信になります。
ジャパンジョッキーズカップ(盛岡)第2戦を勝利(写真:岩手県競馬組合)
現在は3年連続でNARグランプリ最優秀勝率騎手賞を受賞していますが、やはり勝率は意識していますか?
勝率を意識するのは1年の後半に入ってからですね。勝ちにこだわりはするけど、今はまだそれほど意識していないです。去年はベストフェアプレイ賞を初めて受賞できたんですけど、正直そっちの方が嬉しかったです。年間を通して制裁がない全国1位の騎手ってことですから。フェアプレイで勝っているという証拠なので、とても重みのある賞だと思います。今年も勝率とベストフェアプレイ賞と、ダブル受賞できるようがんばります。
では、今後の目標を教えて下さい。
まずは休まず乗ることですね。そうすれば勝ち星などは後からついて来ますから。今は4000勝という大きな数字を目標にしています(2016年7月24日現在、地方3828勝)。僕は1000勝するまでかなり時間が掛かったんですけど、そこからは本当にたくさんの方のお蔭でペースアップすることができました。特に大きかったのは、今ほど遠征が頻繁じゃなかった時代に荒尾でたくさん乗せてもらえたことです。佐賀とは違うコースや流れを経験して、とても勉強になりました。残念ながらもう荒尾はないですけど、当時乗せてくれた方にも恩返ししたいので、まだまだ若い騎手には負けませんよ!
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 赤見千尋