
今年(2017年)10月28日に地方競馬通算1000勝を達成した山本政聡騎手。弟の山本聡哉騎手がリーディングを守り続ける一方でやや目立たないように感じられるかもしれないが、山本政聡騎手も近年はシーズン100勝以上、リーディング上位をキープし続けている。今シーズンもリーディング3位をほぼ確実なものにしている山本政聡騎手にいろいろなお話を聞いた。
1000勝を達成して少し時間が経ったところでお話を聞いているのですが、どうでしょう、達成感のようなものははっきりしてきた?
それほど大それた感想はないですけれど、やはり節目になる事ですからできるだけ早く達成したかったし、盛岡開催のうちに達成できて良かったです。
2017年10月28日・盛岡第11レースで地方競馬通算1000勝を達成
2003年のデビューから500勝まで10年以上かかったのに、500勝から1000勝までは4年かからなかった。このペースアップぶりは見ていて凄いなと感じます。
良い馬に乗せてもらえているだけですよ(笑)
デビューから15シーズン目になりましたが、この間、自分自身が変わったとか成長したという部分はありますか。
変わったというか、考えないといけないことが増えたしうまくいかない事も増えた......でしょうか。昔よりもずっとたくさんレースに乗るようになったからそれだけ乗る馬のことや周りの馬のことも考えないといけない。乗る数が増えるということはそれだけ負けること、うまくいかないことも多くなるわけです。馬の能力をきちんと引き出してあげたいけれど必ずしも全部が全部うまくいくわけではなくて。だから自分はまだまだだなと、そう感じている時が多いです。
馬の力をきちんと引き出してあげる、というと?
よく"馬7・人3"と言うじゃないですか。その"3"の部分でどう乗るか。騎手としてはそこをできるだけ大きく使ってあげたい。"お前にはもっと力がある、もっと走れる"と馬に感じさせることができたらそれだけ力を出してくれる。
騎手が馬の力を決めつけてしまわない、みたいな?
自分も昔は"先行しなきゃダメ""良い位置獲らなきゃダメ""無理してでも前に行ってそれでバテたら仕方ない"とかそういうのにこだわっていたけど、もちろん時にはそういう乗り方も必要なんですが、今は、もっと馬の気持ちを考えてあげるとか、自分本位で競馬しないように、とか。
人間が人それぞれなように馬もそれぞれのペースの違いがあるから、そこを大事にして、余計な負荷をかけないようにして勝てるなら良いなと。
コウセン号に騎乗して盛岡芝1000mのレコードを実に21年ぶりに更新
これは山本聡哉騎手にも聞いてみたんだけど、最近、兄弟で乗り方っていうかレースの流れの掴み方が似てきたんじゃないかと思う。兄弟でワン・ツーというのも最近多いでしょう? 兄貴の方はどう感じますか?
んー。似ている感じは......しないかな。弟が良い馬に乗っている事が多いじゃないですか。だからおのずとレースの中で目標になる。だからそういう結果になる......という事はあるかもしれません。
兄から見た弟はどんな騎手ですか?
そうですね、いろいろな意味で"巧い"なとは思います。例えば馬群の中でこの位置に行きたい、あそこのポジションが欲しい、と思った時にもうそこにいる。先にいる。そういう点は巧いなと思って見ています。
絆カップ(11月5日・盛岡)ではタイセイファントムに騎乗し、ラブバレットを破って優勝。昨年の絆カップでもナムラタイタンを破って優勝しており"大物喰い"の山本政聡騎手だ
さて1000勝を達成して、さっきも言ったように最近のペースで行けるなら1500勝とか2000勝とかも決して遠い夢では無いと思うのですが、自身はこれから先はどう考えますか。
うーん。将来のことは、例えば何歳になったら騎手を辞めるとか、そういう事は考えていないです。身体の動きとかカンが鈍りはじめたら考えるのかなあ。今は、良い馬にたくさん乗せてもらっていますから、それを良い結果にできるようにしっかりやっていきたいしやっていこう......でしょうか。
あと、他所に乗りに行こうとか考えたりしない? 以前は冬場に荒尾に行ったりもしたけれど。1000勝したし、南関東で乗りたいって手を挙げれば行けないこともないと思うけども。
自分は牧場が好きなんです。牧場の仕事の流れが肌に合う感じがするし、馬を調教して仕上げていくのも好き。だから冬場は牧場に行きたいかな。
では最後にオッズパークの会員の皆さんにメッセージを。
これからも岩手競馬の応援をよろしくお願いします。
昨シーズンの『オッズパーク杯ゴールデンジョッキーズシリーズ』では総合優勝。今年も上位に付けている
同じ競馬場で戦っている以上、どうしても兄弟が対比・比較されてしまうのだが、騎手の戦いぶりとして"似ている所がありながらも違う部分は明らかに違う"というのは非常に興味深い。
大雑把な言い方かもしれないが、"理論派"の弟に対し"天才型"の兄と表現できるだろうか。ここに収まりきらなかった話の部分も含めての印象なのでうまく伝わらないかもしれないが、自分はそう受け取った。そして、遠くない将来、岩手のリーディングを争うのは山本政聡騎手と山本聡哉騎手の二人ではないか。そんな想いも強くなった。この先の兄弟の戦いはどうなっていくのかも楽しみだ。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
騎手の大記録が続く今年の岩手競馬。7月の関本淳騎手(地方通算2000勝)、9月の高松亮騎手(同1000勝)に続いて、10月1日に齋藤雄一騎手が地方通算1000勝を達成した。
その齋藤雄一騎手は今シーズン開幕直後の4月、調教中に負傷して3カ月も戦列を離れていた。そんなアクシデントを乗り越えての大記録達成でもあった。
1000勝達成おめでとうございました。さて、達成前も達成後も"1000勝は凄い記録だ"みたいな事を自らはあまり言わなかったんだけど、達成した今になってもそうですか?少し変わってきたりしていない?
特に変わっていないかな。1000勝を達成したからと言って自分が大きく変わったわけではないですし。そもそも自分が1000勝できるような騎手だとも思ってなかったですからね。達成する前も、達成した後も、今まで通り自分の仕事をするだけ、でしょうか。
そうなんだ。今までもね、厩舎の皆と一緒に仕事をして、それが良い結果につながればそれでいいんだ......と言っていたじゃない。1000勝を達成してもそれは変わりないんだ?
そうですね。ここまで来れたのは自分だけの力じゃないですからね。厩舎のためとか家族のためとかと力むのじゃなくて、みんなで力を合わせてやって来たのが良い結果につながれば"やって良かったな"って後から振り返れるし、そういうのが良いかなと。
10月1日、地方通算1000勝達成。ご家族だけでなく小西重征調教師夫妻や関本淳騎手とともに
今シーズンは開幕早々に大きな怪我をして3カ月ほど戦線離脱。1000勝を達成してその勢いで昨年以上の結果を......と期待していたシーズンだっただけに残念でした。
この春の怪我はね、そんな先の楽しみがあって仕事も楽しくできていた時の怪我でしたからちょっとね、気持ち的にガックリきたところはありましたね。でもそれ以上に、自分が怪我をして厩舎の成績が落ちたのが申し訳ない気持ちでした。
一昨年も怪我をしたことがあって1カ月ほど乗れなくて成績を落としてもしまって。もったいない感じが、どうしてもしてしまう。
でも怪我をしないと気が付かないこともいっぱいあるから。
というと?
毎日の仕事で疲れてくるとモチベーションが下がったりもするのですが、怪我をして3、4日入院しているだけで"早く仕事に戻りたい"って思うようになる。やっぱり自分は馬が好きなんだなって再確認できる時間になったりするんですよね。だから怪我する事はポジティヴに考えています。ただ今年の怪我はね、調教師や厩舎の皆に申し訳ないという気持ちが強いですね。
3カ月の戦線離脱後の復帰戦(7月8日・盛岡第2レース)を意地の勝利
改めて振り返ってみると、やはりここ何年かの、リーディング上位を常に争う成績を続けているのは立派だと思う。自身ももっと上を目指せる。自厩舎で調教師リーディングを獲るのも、昔から目標にしているけども、それもまだ諦めてほしくないと思うんだよね。
デビューしたての頃は乗せてもらえない時期が続いて投げやりになった事もありました。そんな中で結婚したり、廃止騒動があったり。自分より若い騎手がデビューしはじめたら今度は若手を引っ張る立場で、お手本になろう、周りから一目置かれるくらいの騎手にならないとと思って頑張ってきた。自分で言うのもなんだけどよくやって来たと思います。一方で勝ち星を稼ぐという事にこだわりすぎて周りに迷惑をかけていたんじゃないかなあと思う時期もあった。自分はそういう騎手じゃないなと今は思っているし、自分に力があるのなら厩舎の成績を上げる事に注ぎたいとも思うようになりました。
まだ老け込むには早いよ(笑)。では1000勝を達成した事を受けて、次の目標とすると?
今の時点では具体的な物は思い浮かびませんが、怪我をしないようにして、体のケアも気を付けて、1日でも長く乗れるように・・・でしょうか。最近は怪我が続いたし、ここまで身体を酷使してきたのは自分でも感じていますからね。先の事はもうちょっと時間をかけて考えてみます。
若駒賞(10月15日・盛岡)をニッポンダエモンで制し、今シーズン重賞初勝利
最後にオッズパーク会員の皆さんにメッセージを。
自分だけでなく若い騎手達も頑張っていますので、ぜひ競馬場にも来て応援してください。
「自分の若い頃は」「最近の若い騎手は」。インタビューの際、齋藤騎手は何度もそんな言葉を口に出す。今年まだ34歳なのに、とその度に「まだ若いでしょ。老け込むには早いよ」と口を挟むのだが、齋藤騎手に言わせると「若い騎手、新しくデビューする騎手ほど新しい技術とか自分たちの世代に無い考え方を持っている。だから若い騎手ほど伸びしろが大きいし、先々も長くやっていける可能性がある」。それゆえに自分たちは"年寄りの世代"なのだそうだ。
一方でそれは、齋藤騎手が20代の頃からリーダー格を目指し、やり抜いてきたという自負の現れとも感じる。佐藤雅彦騎手(現調教師)引退後、長く水沢所属騎手ばかり、水沢所属の調教師ばかりがリーディング上位を占めていた状況を、自身の騎手ランキング、所属する小西厩舎の調教師ランキング、共に上位に押し上げて打ち破ってきた彼だからこそ言える台詞なのかもしれない。
度重なる怪我の影響が徐々に蓄積されているんだから、とも口にする齋藤雄一騎手だが、何度も言うがまだ老け込むには早い。これからもベテラン騎手としての貫禄を見せ続けてほしい。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
7月23日、盛岡競馬第3レースにおいて関本淳騎手が地方競馬通算2000勝を達成した。昔からの競馬ファンなら関本淳騎手が元は上山競馬に所属していて、同競馬場の廃止に伴って岩手競馬に移籍してきたという事を覚えておられるだろう。2つの競馬場を股にかけた大記録達成だった。
2000勝達成(2017年7月23日盛岡第3レース)
実際に2000勝を達成してから2週間ほど経ってお話を聞いているわけですが、その2000勝が迫ってきたあたりではプレッシャーを感じたりはしました?
ないことはなかったですが変なプレッシャーではなかったですね。"2000勝に到達したらそれで終わり"ではないし、例えば重賞で1番人気の馬に乗った時のような"一発勝負"のそれとも違いますしね。近づいてくれば、普通にやればいずれ通過するわけだから。言ってみれば"良い刺激"、迫ってくるのは楽しかったですよ。
そうですよね。2000勝が迫ってきたあたりからむしろ勝つペースが上がったりしましたよね。
後輩達も早く決めろと急かすのではなくて良い感じに盛り上げてくれたりして。凄く嬉しかったです。
高松亮騎手の手作りだという"カウントダウン"。最後の一枚を剥がすと「祝2000勝」の文字が
関本淳騎手が気にされていたので調べてもらったのですが、やはり2000勝達成までに35年・36シーズンかかったという騎手はこれまでいないようです。佐賀の吉田順治騎手が31年かかっていて(1985年デビューで昨年達成)、いまのところ"最長"のようですね。
ぶっちぎりですね(笑)。こんなにかかる人はもう現れないんじゃないですか。
確かに騎手によっては14、5年で達成してしまう方もいるのですが、でも長くかかってもコツコツ積み上げてきた、そして2000勝まで届いた、というのは凄いなと思います。
そこはどうなんでしょうね。自分がデビューした時、その時から"コツコツ勝ってやろう、そしていつか2000勝達成しよう"と考えてやって来たわけではないですからね。
ああそうか。結果的にこうなった...ですものね。
他の2000勝ジョッキーのように若い頃からたくさん勝って早く達成できればそれに越したことはないわけで。あまり"コツコツ、コツコツ"と言われるのもピンとこないかな。
関本淳騎手は上山競馬から移籍してきた時点で908勝。当時"1000勝は達成したい"と言われていたのを覚えています。今になってみれば上山時代が21年で900勝、岩手では14年で1100勝ですからコツコツではなく良いペースですよね。
岩手に来てからも調教師さんや馬主さんに良くしてもらったおかげですね。そこは本当に恵まれていたと思います。
こうだったから、こんなことがあったから2000勝を達成できた、ここまで騎手を続けてこられた...そんな"何か"を挙げるとすればなんでしょう?
自分で言うのもおかしいかもしれないけど、精神力は強いと思う。少々のことでは挫けないと思うんですよね。だから、35年の間にはいろいろなことがあったけども一つ一つ乗り越えて来る事ができたんじゃないかな。
これは気が早い質問かもしれませんが節目に来たので改めて。関本淳騎手はこのあと何年、何歳くらいまで現役を続けようと考えていますか?
それは...まだちょっと見当がつかないですよ。この年になるとやっぱり1年1年、体力とかね、いろいろ変わってくるから。それを少しでも維持しようと努力はしています。"じゃああと10年"とか言われるとそれは何ともいえないですけど。騎手は腕で生きているわけだから依頼がある限りは乗っていきたいし、その依頼に応えられるように自分を維持していく、かな。
岩手には関本淳騎手のような大ベテラン騎手が少ないから、いつまでも重鎮として若手の目標であってほしいなとも思います。
今の若い騎手は何も言わなくてもきちんと乗れるから、自分が教えるようなことはないですよ。上の方で重しになるというよりは、自分を飛び越えていってくれればいいですよ。ファンの皆さんからは"その年齢でよく頑張ってるなあ!"と言われるくらいまでやっていければね。
では最後にオッズパークのファンの皆さんにひと言を。
そうですね。インターネットで購入されている皆さんは自分の顔とかあまり分からないかもしれないけれど、こんな風に頑張っていますので、これからも応援よろしくお願いします。
7月30日に行われたセレモニーには、板垣吉則調教師だけでなく秋元耕生騎手、江川伸幸騎手ら元上山所属騎手も参加
文中でも触れているが、現在までの地方競馬では30年目、31年目で2000勝達成という騎手はいたが35年目は初めて。関本淳騎手に言わせると「2000勝達成するような騎手は若い頃からリーディングを争うくらい勝ってて、20年そこそこで達成するでしょう?自分はあまり勝ってないってことだからさ」だそうなのだが、とはいえ35年もの間、毎年何十勝もできるテクニックであり体力でありを維持してきたからこそ達成できたわけで、それは立派なことだと思う。
過去の記録では"上山に在籍していた騎手"では冨士木秀四郎騎手が2,297勝、"上山デビューの騎手"なら小国博行騎手が2,093勝という記録を残している(いずれも引退)。これも関本淳騎手自身はあまり関心がないようだが、できればそれらの記録に迫るくらいまで、この先も長く戦い続けてほしい。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
デビュー24年目、今や岩手の騎手の中でも年長の方になった村上忍騎手。長く騎手リーディングでトップを争っているだけでなく騎手会長としても岩手の騎手のリーダーとして活躍している。
騎手会長として2017年度開幕の宣誓を行う
4月1日に岩手競馬の2017年シーズンがスタートしました。新シーズンを迎えての意気込みをお聞かせください。
地元での勝ち星を獲得していくだけでなく、今年は重賞を狙えそうな馬を何頭か乗せてもらっているのでそれでしっかり結果を出すということと、機会があれば遠征に行って良い結果を残すということも目標ですね。
この後ベンテンコゾウで北斗盃に挑戦という話もありますしね(※インタビューは4月9日、その後4月18日に北斗盃を勝利)。
良い形のレースができればベンテンコゾウにとっても先々の選択肢も拡がるでしょうし、そういう内容を大事にしたいです。
ベンテンコゾウ(奥州弥生賞)。その後北斗盃も制した
少し戻って2月ですね、エンパイアペガサスに騎乗して報知グランプリカップを勝ちました。村上忍騎手は南関東の重賞を勝つのはこれが初めてでしたね。
というか、岩手以外で、遠征で重賞を勝った記憶がないので、これが初めての勝利だったんじゃないかな(※記録を調べたところ、村上忍騎手の他地区重賞勝ちは初めて)。
新シーズンはそんな風に、遠征する、遠征して活躍するという機会も多くなりそうですね。
最近、馬を遠征させて戦うという機会が減ってきているんでね。今年は遠征するチャンスもありそうだから、自分にとって、もちろん馬にとっても糧になるので楽しみにしています。
話が出たので、まずベンテンコゾウについて。今の時点でこの馬の評価をしていただくとどんなコメントになりますか?
とにかく動きの良い馬ですね。走りが軽くて背中の感じが良くて。もちろん課題がないわけではないんですが、走る力に関しては僕はかなり期待をしています。その力の部分が遠征することではっきり見えてくるのではないかとも思っています。
もう1頭、エンパイアペガサスですが、こちらは既に重賞も勝っているので、そのぶん期待が高まったところから始まるわけですけども、どれくらい楽しみにしていればいいですか?
当面は地元で走るということで、その中ではマーキュリーカップも使うプランもあるそうですので、そこでどれくらいやれるか。地元馬との戦いも当然ですが、交流重賞でどんな戦いができるか?ですよね。この馬は一戦一戦力をつけてきているし、報知グランプリカップも、必ずしも高い評価ではなかった中で勝ち抜いたということが自信になった。今後はもっと強い馬と戦う機会も出てくるでしょうから、この馬自身ももうワンランク上の力をつけてくれるようなら面白いですね。
2月8日、船橋・報知グランプリカップをエンパイアペガサスで制覇
エンパイアペガサスは、ベンテンコゾウもそうなのですが、まだ力をつけそうだというのも楽しみですよね。
そうですね。どちらもまだ伸びしろはあると思いますよ。
古馬と3歳馬に良い馬がいる。これで2歳馬にも良いお手馬ができたら、今年もまた全世代で活躍できますね。
2歳馬はね、まだまだこれからで、秋になってデビューしてくる馬もいるでしょうから、本当に巡り合わせなんでね。良い馬に出会えれば良いですね。
村上忍騎手にもうひとつ聞いておきたいのが、ベテランとして、騎手会長としての立場から見た岩手競馬や各地の競馬です。新シーズンは各地で変化が多い幕開けになりました。
今年は岩手競馬でも賞金が見直されて、自分たちのモチベーションにもつながると思っているのですが、それが良い馬が集まることに、そして良いレースにつながってお客様達により楽しんでいただければ、自分たちもさらにやりがいが出てくる。そういうふうに良いサイクルになっていけば、と思っています。
村上騎手は騎手会長を務めて6年目ですか。騎手として自分のレースのことを考えるだけでなく、いろいろなことにも目を配らないといけないのは大変だなと思って見ています。変な話、自分自身の希望と騎手会としてやるべきことと、矛盾したりもするわけじゃないですか。
そんなにたいしたこともしてないんだけど(笑)、まず騎手としては事故が起こらないようにとか、騎手会としては若い騎手たちの生活を守るという方向になりますよね。競馬組合などにいろいろお願い事をしたりもあるし。それに、やはり自分たちの生活を守るための意見も言わなくちゃならないし。競馬を良くするためと思ってある程度共存していくようじゃないとうまくいかないんじゃないか......と考えているけど、自分だけ良ければっていうことを言ってしまっているかもね(笑)。
では、オッズパーク会員の皆さまにメッセージをお願いします。
オッズパークの会員の方々はね、よく盛岡に集まってくださったりとか協賛レースを行っていただいたりしてもらっています。自分たちも一緒に写真を撮ったりとかね。ネットで馬券を買っていただくのも有り難いのですが、機会があればぜひ盛岡や水沢で生のレースも見て下さい。自分たちも皆さんに楽しんでいただけるレースができるようがんばりますので。
ダンストンレガーメで留守杯日高賞を制し、この春はやくも重賞4勝目
かつて村上忍騎手にインタビューした際には菅原勲騎手や小林俊彦騎手を追いかける立場としてお話を聞くことが多かった。そんな両騎手が引退し、キャリア的にも実績的にも、また騎手会長としても岩手の騎手のトップに立って引っ張る立場になり、村上騎手の話すスタンスもかつてとは変わったように感じる。
自分のレースを戦いながら、同時に若い騎手達の相談を受けたりあるいは競馬組合や調教師会と交渉したり会議に出たり......という日常は実際非常に多忙なはず。だが村上騎手は"まだ枯れるつもりはないよ"とひと言。インタビューの中にあったような遠征での活躍もバネにして、まだまだ存在感を見せ続けてくれるに違いない。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
ファンの皆さんは岩手競馬の山本政聡騎手と山本聡哉騎手は、前者が兄、後者が弟の兄弟ジョッキーで、さらに船橋所属の末弟・山本聡紀騎手を含めて"三兄弟ジョッキー"だという事は既にご存じだろう。
山本聡哉騎手は岩手の騎手リーディング・トップの座を確かなものにしつつある。一方の兄・山本政聡騎手も近年はコンスタントにシーズン100勝以上を挙げ、リーディングでも3位を確保している(12月6日現在)。
10月の山本聡哉騎手に続いて、今回は山本政聡騎手にお話をうかがった。
まずは山本政聡騎手自身のことから聞きましょう。リーディング3位に付けていますが、その成績について。
そうですね、もう少し最初の段階で離されずに食いついていけていれば良かったですね。来年はもっと頑張りますよ。
弟の山本聡哉騎手もそうですが、ここ何年か成績が、グッと上がってきているように見えます。そのあたり、何かきっかけのようなものはありましたか?
んー、なんて言うんでしょう。最後まで脚を残しておくようにしているというか...。
乗り方を変えたということ?
乗り方は変わってないと思います。考え方じゃないでしょうか。展開をよく見て、馬と喧嘩をしないようにしてとか。必要な所でひとつひとつ気を付けてあげれば、それで結果も変わってくる。レースの流れの中のポイントポイントで、ですね。
弟・山本聡哉騎手(左)とのワン・ツーも目立ってきた
これ、最後に聞こうと思っていたんですが、山本聡哉騎手とレースぶりが似てきていない? レースぶりというか、流れの乗り方っていうか。最近2人のワン・ツーが多いでしょう? 流れのつかみ方が似てきているんじゃないかと思って。
弟も展開を読んで乗るから、例えば"展開の中で目標にする騎手・馬"の狙いが同じだったりして、一緒のポジションを狙っていることは多いですね。自分が取りたい位置に行こうとすると弟もそこに来ようとしていて、一瞬先に入られて、自分が弾かれてそこを取れなくて"あっ!こいつ!"って思うことも(笑)。自分が行こうとして動くよりも一瞬早く動き出しているんですよ弟は。弟のそういうレース中の判断、"読み"は素早いなと思って見ています。
山本聡哉騎手にも同じことを聞いたけど、兄弟として相手を、どんなふうに意識していますか? 聡哉騎手は"特に意識はしていない。でも騎手としての駆け引きで負けたくない"と言っていました。
自分も、そうですね、特別に意識はしていないかな。ただ、弟の方が力がある馬に乗っていることが多いから、それを負かした時は嬉しいって言うか"やった!"と思いますね(笑)。
絆カップで騎乗したナリタポセイドン(左)でナムラタイタンを破る
少し話を変えて。最近の山本政聡騎手とのコンビで気になる馬のことを聞きたいです。ナリタポセイドンで絆カップを勝ちましたが、あの馬にはどんな印象を持ちましたか。
距離は長い方がいいんじゃないでしょうか。瞬発力タイプというよりはしぶとく長く脚を使うタイプだと感じました。
もう1頭。コミュニティですね。5月のあすなろ賞を勝ってからは勝ち星から遠ざかっていますが(インタビュー後、11月21日に勝利)、その後も山本政聡騎手が手綱を取ってきてどんなふうに感じていますか?
一線級の中で2年間くらいずっと戦ってきて、年齢も6歳の秋ですから、若い頃のように1回走ったから急に変化するということでもないのかなと思っています。戦いながら徐々に良くなってきていると感じていますよ。
コミュニティとのコンビでは重賞7勝を挙げている
さて、岩手競馬の今シーズンもあと少しで、ちょっと気が早いけど来シーズンの目標みたいなものを聞いてみたいと思います。今シーズンはここまで怪我とか騎乗停止とか無くて順調に来ていたから、来シーズンも同じように順調に成績を上げていって欲しいなと思うけれども、どうでしょうか。
怪我しないとかっていうことはそれだけレースでも安定して乗れているっていうことで、だからこそ成績も安定するのだから、やっぱり怪我をしないように心がけたいですね。
今シーズン中の通算900勝、来シーズンの1000勝達成も見えてきました。
900勝まであと17勝(インタビュー時点)なんですよね。このまま来シーズンの1000勝達成まで行ってしまいたいです。それから、櫻田浩樹調教師には凄くバックアップしてもらっていて、他の厩舎から騎乗を頼まれてもどんどん乗れって許してくれるんです。それに自分も応えたいから、自厩舎の馬で良い結果をもっと出していきたいとも思っています。自分の1000勝と櫻田浩樹厩舎の300勝を同時に達成できたらいいですね。
青白のメンコが所属する櫻田浩樹厩舎のトレードマーク
弟の山本聡哉騎手がすでに通算1100勝を超えているのに兄の山本政聡騎手はまだ900勝手前なのか、と見られるかもしれないが、盛岡と水沢の在厩頭数の差を思えば(水沢の方が多く、自厩舎以外の騎乗依頼も受けやすい)、水沢に所属している山本聡哉騎手と盛岡に所属する山本政聡騎手の勝ち星の差を一概に比較できないし、むしろ山本政聡騎手はよく健闘していると言っていい。
実際、昨シーズンは山本聡哉騎手・村上忍騎手と互角に渡りあって一瞬ではあったもののリーディング1位に立った瞬間があったし、今シーズン序盤もしばらくの間は2位を狙う位置につけていた。
昨シーズンは山本聡哉騎手が騎手リーディングを獲得。弟がひと足先に頂点に立ったわけだが、その最大の刺客になるのは兄・山本政聡騎手なのかもしれない。
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※インタビュー・写真 / 横川典視