NARグランプリ2017で、2年連続5度目の最優秀勝率調教師賞を受賞した名古屋の川西毅調教師。2005年1月の開業以来、順調に勝利を重ね、今年2月14日には地方通算1400勝を達成した。13年間の調教師生活の中で出会った思い出の馬を振り返り、今後の目標を語ってもらった。
2年連続5度目の最優秀勝率調教師賞(29.1%)、おめでとうございます。
結果として、そうなりましたが、成績そのものは前年より下がってますので、正直、喜べないんですよね(2016年は380戦151勝に対し、2017年は357戦104勝)。勝つことにこだわりはもちろんありますが、勝率にこだわっているわけではないので、気にはしていません。まず前年の成績よりも上かどうかが大事だと思ってます。
2月14日には1400勝も達成しました。
これも、主催者発表を見るまで気が付きませんでした(笑)。大人になったら誕生日が来ても、子供のころと違って、そんなに感慨がないでしょ?そんな感じですね(笑)。
ご出身は大阪と聞いていますが、競馬との出会いや名古屋にはどのような経緯で来られたのですか?
22歳で学校を卒業するまで大阪で育ちました。高校時代にオグリキャップの競馬ブームで競馬が好きになりました。大学時代には北海道の牧場にアルバイトに行きました。馬と関わるのが楽しくて、仕事にしたいと思って、バイト先に相談したら、弥富の厩舎を紹介されました。それが、調教師になるまでお世話になった河村功厩舎でした。その後、河村先生が引退されるのと、僕が調教師に合格したのが同時だったので、うまく厩舎を引き継げたのもラッキーでした。
開業以来、重賞は61勝。重賞13勝を挙げたヒシウォーシイや、交流JpnIIIのサマーチャンピオンで2着に入ったピッチシフターなど多くの名馬を手がけてきました。
ヒシウォーシイは遠征先の福山でも2度勝ってくれましたし、ピッチシフターは小柄な牝馬で最初のころはカイバを食べないので馬体の維持が難しかった。少しずつカイバは食べるようになってきたけど、今度は食べるようになったら、走らなくなって、調整の難しさを知りました。
東海ダービー(2008年6月6日)を制したヒシウォーシイ(写真:愛知県競馬組合)
やはり、この2頭が調教師生活の中で印象に残っていますか?
この2頭も印象深いけど、一番忘れられないのはリーダーズボードですね。
新春ペガサスカップ(2014年1月17日)を制したリーダーズボード(写真:愛知県競馬組合)
名古屋で7連勝後、JpnIIの兵庫ジュニアグランプリで中央勢相手に3着。その後も3連勝で駿蹄賞を勝ちましたが、そこで屈腱炎を発症し、ラストランとなった悲運の名馬でした。
レースに前向きなところが長所でした。短距離向きのブラックホーク産駒でしたが、母父のティンバーカントリーが強く出ていたので、2000メートル前後くらいまでなら大丈夫だったと思います。兵庫ジュニアグランプリで勝ったニシケンモノノフは昨年ついにジーワン馬になりましたし、2着マキャヴィティも中央のオープンを勝ちました。この2頭と差のない競馬をしたんですから、リーダーズボードの能力も相当なものだったと思ってます。本当にもったいなかったです。今、南関東に半弟で全日本2歳優駿3着だったハセノパイロ(父パイロ、NARグランプリ2017・2歳最優秀牡馬)がいますが、あの馬もかなり走りそうですね。
昨年はドリームズラインが東海地区からは24年ぶりとなる三冠馬(駿蹄賞、東海ダービー、岐阜金賞)に輝きました。
三冠は勝ってくれたけど、その後の古馬との対戦で結果を出せなかったので、後味が悪いんですよね。今は北海道に放牧に出ていますが、今年は三冠馬の名に恥じないような結果を出せるよう、立て直したいと思っています。
岐阜金賞(2017年10月13日)を制したドリームズライン
今後の目標を聞かせて下さい。
今年は古馬ではドリームズラインが壁に当たっていますし、3歳馬も(名古屋の重賞を独占している)サムライドライブに対抗できるような存在もいません。まず、確実に勝てるレースを勝って、昨年以上の成績を挙げて、1500勝を目指します。
最後にオッズパークのファンに向けて一言お願いします。
最近は地方競馬全体がネットでの売り上げに支えられて好調ですし、ファンの方には感謝しています。賞金も上がる傾向にはありますが、厩舎経営していく上では、良くなった実感はまだありませんし、もっと努力が必要と思っています。これからも強い馬づくりを目指していきますので、ご声援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 松浦渉
9月7日に地方競馬通算3000勝を達成した愛知の角田輝也調教師。12月24日現在、熾烈な全国リーディング争いで、僅差でトップを守っています。リーディングへの想い、そして4戦無敗のサムライドライブについて語っていただきました。
3000勝達成おめでとうございます。
ありがとうございます。特に伝手もなく厩務員から調教師になって、最初はここまで数字を重ねられるとは思っていなかったです。たくさんのいい馬たちを預けてくれるオーナー、頑張ってくれる馬たち、スタッフのお陰ですね。ここまで1戦1戦前向きに取り組んで、がむしゃらにやって来ました。開業当初から名古屋でリーディングを獲りたいという夢を持っていて、「3年でリーディングを獲りたい」って最初の調教師インタビューで答えたら「生意気だ」って言われていろんな人に叩かれて(笑)。でも、それくらいの想いを持ってやらないといけないなと思いました。結局4年掛かっちゃいましたけど。
4年でリーディングを獲ったというのも十分すごいです。秘訣は何だったんですか?
荒川友司先生(笠松)も川島正行先生(船橋)もご存命で、その先生方にいろいろと教えていただきましたし、その教えを忠実に守るということを大事にして来ました。一番になりたかったら、一番の先生に聞くというのが近道だと思っているので。先生方も快く教えて下さって、本当に感謝しています。
具体的にどんなことを教えていただいたんですか?
いい運動、いい食事、いいケアという3つを教わりました。いい運動をするためにはちゃんとしたケアと食事を取らなければならないし、いい食事をするためには体のどこも痛いところがない状態にしないといけない。この3つのバランスが大事なんだと考えています。
現在は名古屋リーディングだけではなくて、全国リーディング上位の常連ですもんね。
そこはそんなに深く考えていないです。名古屋では獲りたいと思いますけど、全国リーディングは意識していません。
そうなんですか?! 現在熾烈な全国リーディング争いのトップを走っていますけれども。
周りからは言われますけど、全然意識していないです。だって、全国リーディングを獲りたいって思っていたら、前開催(12月4~8日)の笠松に使いに行ってますよ。1頭たまたま使う馬はいましたけど、先日忘年会と3000勝のパーティーをした時に「次の笠松開催は基本的に休みます。全国リーディング狙ってませんので」と公言しました。
狙っていけば獲れるところまで来ているのに何故ですか?
自分の欲でいくと馬に負担が掛かるんですよ。そこはやっぱり全国リーディングを獲らせてもらって、あの時(2015年)は馬主さんからも「どうしても獲ってくれ」と言われて厩舎一丸となって目指したわけですけど、やっぱりその後馬に負担を掛けたなと。まずは馬の体調を優先したいです。
角田調教師、高知の雑賀正光調教師、金沢の金田一昌調教師のリーディング争いを見てドキドキしているんですけれども。
もちろん獲れたら嬉しいですよ。でも本当にすごい方々を見ていると、数字は気にしていないですからね。あくまでも数字は結果論ですから。
続いてはサムライドライブのことを伺いたいんですけれども。オッズパーク地方競馬応援プロジェクトの3世代目で、デビューから4戦無敗でゴールドウィング賞を制しました。
本当にセンスがいいんですよ。だけど、これまで万全の状態で出走したのは3走目のJRA認定競走だけなんです。この時は追い切りもしっかり行くことができて、いい状態で挑めました。
10月24日、ゴールドウィング賞を制覇
体質が弱いと前々から言われていますが、ゴールドウィング賞はそこまでの仕上げではなかったんですね。
もちろん重賞ですし人気になる馬ですから、ある程度は仕上げていますけれども、まだ体質的にびっちりと攻め馬をしてレースに挑めるほどの体ではないんです。そこはこちら側が配慮をしてあげないと。
前走はゲート入りにかなりてこずったそうですね。
そうなんですよ。1600mのスタート地点が初めてだったせいか、新しい場所だとかなりイヤがってしまって。基本的に怖がりなんですよ。昨日と風景がちょっとでも違うと、納得するまで動かなくなってしまったり。馬場の中の木を少しでもカットしたら、それに気づいてびっくりしてしまうんです。認定も勝ってますし、本来ならば遠征も経験させたいんですけど、ムリをしてしまうとマイナスの方向に行ってしまうのではないかなと。体もですけど、もう少し精神的に余裕が出て来てからと考えています。
2か月間お休みしましたけれども、現在の様子はいかがですか?
馬体もだいぶしっかりして、440キロ台から今は450キロ台まで増えました。ただ、この仔の成長期はまだ先なのかなと。本当はもう少し増えて欲しいですね。今は元日のレース(湾岸ニュースターカップ)を目指して調整しています。追い切りも本数を重ねていますし、順調ですよ。休み明けというのはありますが、ここまで無敗できていますから勝ちは意識しています。
ゴールドウィング賞の記念撮影
精神的にも肉体的にも成長期がまだ先だとなると、育てて行く上でなかなか難しいですね。
そうなんです。3歳の秋頃にはもっと成長してくれると思うんですけど、今はとにかくムリしない範囲で調教を積みながら筋肉をつけていきたいです。そこのバランスは大事にしていかないと。ゆくゆくは東海ダービーを獲りたいですし、精神面が成長してゲートが安定すれば、他地区への遠征にも行きたいです。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
いつも応援していただき、ありがとうございます。うちの厩舎は調教師一人ではなくて、スタッフ全員でレースに挑んでいます。レースに出る限りは人気に関係なく精いっぱいのレースをしたいと考えていますので、応援よろしくお願い致します。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:愛知県競馬組合)
10月11日笠松競馬第3レースで、地方通算1500勝を達成した名古屋の大畑雅章騎手。地方競馬を代表する馬に育ったカツゲキキトキトとのコンビで、いよいよダートグレード制覇を目指します。
1500勝達成おめでとうございます。
ありがとうございます。区切りなので嬉しいですね。ここまで来ることができたのは関係者の方々のお陰ですし、がんばって走ってくれた馬たちのお陰です。これからも感謝の気持ちを忘れずがんばります。ただ、1500という数字はそれほど意識はしていなかったです。やはり2000勝が目標なので、ここは通過点だと思っています。
大畑騎手といえば、カツゲキキトキトとのコンビで全国的に活躍していますが、本当に強くなりましたね。
ですね。使うたびにどんどん力を付けてくれています。白山大賞典は2着にがんばってくれましたけど、レース前はJRAの強い馬たちがたくさんいるし、掲示板に乗れたらという気持ちもありました。でも最後までがんばってくれて、クリノスターオーとの叩き合いを制して2着になってくれて...。勝ち馬は強くて負けは負けですけど、本当に力を付けてくれたし、価値のある2着だったと思います。
去年の白山大賞典は6着でしたもんね。
去年と比べると相当力を付けてますね。3歳から4歳にかけてすごく強くなりました。具体的には馬が落ち着いたことが大きいです。もともとやんちゃというか、けっこううるさいんですよ(苦笑)。そのあたりが落ち着いてきて、いい方向に向かっているんだと思います。
カツゲキキトキトは、ゴールド争覇(10月27日・名古屋)でトウケイタイガーとの一騎打ちを制した(写真:愛知県競馬組合)
前々走のゴールド争覇は兵庫のトウケイタイガーとの一騎打ちを制しましたが、やはりトウケイタイガーは意識していましたか?
いや、まったく。まったくというか、ダートグレードを勝っている強い馬ですから、胸を借りるつもりで乗っていました。それに、1400mもこの馬には忙しくて苦手傾向があるので。でもレースは強かったですね。ダッシュがいまいちで後方からになりましたけど、道中は自分のリズムを大事にして進みました。3~4コーナー外からいい手ごたえで上がって行って、そこからすごく伸びてくれて。相当力をつけているなと思いました。
そして前走の東海菊花賞は6馬身差の圧勝でしたね。
得意の距離でしたし、メンバー的にも絶対に勝たないといけないと思っていました。すんなり2番手につけられましたし、最後まで手ごたえも良くて何も言うことないレースでした。
カツゲキキトキトは東海菊花賞(11月16日)で6馬身差圧勝(写真:愛知県競馬組合)
大畑騎手も自信を持って騎乗しているように見えます。
そうですね。この馬は前に馬がいればいくらでも追いかけるし、自分が先頭に立っても後ろから来る馬がいるだけ動きます。本当に根性があるし、闘争心が強いんですよ。
次は名古屋グランプリということでいいでしょうか?
はい。今年の最大目標です! 去年はまだ力をつけている段階で、たまたま3着に入れたという感じでした。今年は狙って勝ちに行きたいです。
こういう馬がいると、モチベーションも高まるんじゃないですか?
本当にすごい馬と出会うことができました。最初に乗った頃は、まさかここまで来るとは思っていなかったです。正直、なんでここまで強くなったのか(笑)。いきなり強くなりましたからね。最初は笠松デビューだったんですけど、ひ弱で体質が弱くてという感じで、負けるレースも多かった。もともと心肺機能は優れていたんですけど、3歳になってから体も増えていって、いろいろなものが身になったのかなと。ダートグレードを狙える馬に出会えるなんて、なかなかないですから。
普段の調教から大畑騎手がつきっきりだということですが、性格はどんな馬ですか?
多分やんちゃすぎて他の人では調教つけられないかもしれないですね(苦笑)。
全然落ち着いてないじゃないですか!
いや、前に比べればだいぶ落ち着いたんですけど、ちょっと油断するとどっか行っちゃいますから。力があるし、行ったらもうダメです。抑えられないです。それに、人を見て悪さをするんです。頭がいいんですよ。そういう意味でも普段から緊張感を持って乗っていますね。
ダートグレードや全国交流戦で注目されるというのは、プレッシャーもあると思いますが。
そこは以前乗せていただいていたピッチシフターでの経験が生きていると思います。いろいろな競馬場に行かせてもらって、ダートグレードの乗り方も教えてもらいましたから。やっぱりダートグレードは他のレースとは違うので。この馬にもいろいろ経験させてもらって、基本的には普段は緊張しなくなりました。ただ、地元重賞の方が緊張しますね。絶対に負けられないので。
では最後に、名古屋グランプリに向けて意気込みをお願いします。
ダートグレードでいいレースができる馬がいるというのは、周りの方々も応援してくれますし、期待していただけて嬉しいですね。去年は3着でしたけど、今年は勝ち負けを意識して乗ります。どういう競馬になるかわからないですけど、1つでも上の着順目指してがんばります。
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※インタビュー / 赤見千尋
2015年11月から、2016年7月までの約9カ月間、韓国で期間限定騎乗を続けた岡部誠騎手。その経験も活きているのでしょう。今年はハイペースで勝ち鞍を伸ばし、東海リーディングぶっちぎり。そして現在全国リーディングトップ(5月22日現在)に立っています。
どうして韓国に遠征してみようと思ったのですか?
競馬は世界中でやっていますし、もっと上手くなりたい、勉強したいと思っていて、年齢的にも動けるうちにということでこのタイミングになりました。地元を空けることになるので色んな人に相談しましたが、あの時行っておけばよかったと後悔するのは嫌だったので迷いませんでした。韓国には日本の騎手がたくさん行っていたので状況も分かっていたし、行きやすい環境でしたね。
実際に韓国での競馬はいかがでしたか?
癖のある馬も多いし、状態も日本の感覚とは違う馬も多かったのでその辺が苦労しました。目一杯追っているつもりがどこかで力が入っていたりして。馬に合わせるために鐙もすごく長くなりました。それで日本に帰って来た時に、乗り方がバラバラになっていて...。これじゃ駄目だ、一からやり直さなきゃと思いました。
どうやって乗り方を戻したのですか?
毎日木馬に乗って鏡を見ながらフォームを研究したり、筋トレをしたり色んなトレーニングをしました。結果的に、韓国に行く前より今のほうがしっくりくる乗り方になりましたね。ずっと日本にいる状況だったら以前と同じだったと思うのですが、一から見直したことによって、レベルアップしたと思います。
韓国の生活はいかがでしたか?
競馬の時は通訳がいたのですが、普段は一人でした。韓国の騎手がとてもよくしてくれて、家に招待してくれたり、みんなで飲んだり。イタリア人の騎手もいて、「イタリアの競馬はこういう乗り方をしている」などとタブレットを見ながら話したりと、色んな情報を吸収することもできました。レース以外でもたくさん勉強になりましたね。
2016年10日20日、名古屋・ゴールドウィング賞(ミトノリバー)
写真:愛知県競馬組合
その経験もあってか、今年はすごいペースで勝ち鞍を伸ばしていますね。
良い馬に乗せてもらっていますから。でも取りこぼしのレースもあるし、なるべくミスを少なくして馬の邪魔をしないレースをしないといけないと思っています。今はレースがすごく楽しくて、精神的にも充実していると思います。毎年、何勝したいとか、どのレースを勝ちたいとか目標はたてません。とにかく、上手く乗りたい、きれいに格好良くレースを勝ちたいとしか思っていないんです。
4月17日の時点で、全国リーディングトップに立ちましたよ!
らしいですね(笑)。
全国リーディグを獲りたくないんですか?!
いや、そりゃ、獲れるもんなら獲りたいですよ!(笑)
7月から南関東での期間限定騎乗が始まりますね。
地元とは違う騎手の乗り方も見られますし、頭数も多くて展開も全然違うので、とにかく様々な経験をしたいと思っています。
南関東への遠征は今回で4回目となりますが、その度に手応えのようなものは感じていますか?
人の繋がりが増えているので、以前より声をかけてもらえているのは確かですね。でも期待をしてもらっているわけですから、下手な乗り方はできません。ですからプレッシャーは感じています。でもそのプレッシャーを常に感じることは良いことだと思います。
2017年4月9日、佐賀・ル・プランタン賞(スターレーン)
写真:佐賀県競馬組合
一度聞いてみたかったんですが、岡部騎手の同期には、川崎の今野忠成騎手や高知の赤岡修次騎手、北海道の服部茂史騎手と、各地のトップジョッキーが名を連ねています。それぞれの存在を意識したりはするんですか?
もちろん活躍は知っていますが、それが励みになっているという意識はないですよ。だって上手い騎手が勝つのは当たり前ですから。むしろ、みんなは凄い騎手だけど自分なんて全然上手くないという感じです。俺は欲が深いのかもしれないけど、まだまだ上手くなりたい、世界には良い騎手がたくさんいるしこんな乗り方じゃ通用しないと思っているんです。今は名古屋で、たくさんの縁があって1位を獲らせてもらっていますが、自信は全くないんですよ。
これからチャレンジしてみたいことはありますか?
タイミングは難しいけれど、色んな国で乗ってみたいですね。
最後に、オッズパークの会員の皆さんにメッセ―シをお願いします!
みなさんオッズパークで競馬を楽しんでもらっていると思いますが、もし機会があればぜひ競馬場に足を運んで頂ければと思います。会員のみなさんに怒られないよう、頑張って騎乗していますので、負けた時は勘弁してください(笑)。
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※インタビュー / 秋田奈津子
昨年デビューした愛知の加藤聡一騎手は、初騎乗初勝利を果たすとそのままの勢いで56勝を挙げ、日本プロスポーツ大賞新人賞、NARグランプリ2016優秀新人騎手賞をダブル受賞しました。2年目の今年は、さらなる飛躍を目指します。
日本プロスポーツ大賞新人賞、NARグランプリ優秀新人騎手賞受賞、おめでとうございます。
ありがとうございます。新人賞は目標にしていたので、ダブルで受賞できたことは本当に嬉しいです。初騎乗初勝利もさせてもらって、(1年目)56勝もさせていただいて、本当に周りの方々に感謝しています。勝ち切れなかったレースもあるので、もっともっと腕を磨いて早く上手くなりたいです。
デビュー前にインタビューさせてもらった時、初騎乗初勝利が目標だと仰っていましたが、見事有言実行でしたね。
本当に馬と関係者のお陰です。デビュー戦はゲートを出るまでは緊張していました。勝負服着て、パドックで馬に跨って、たくさんのお客さんや家族が見に来ていたので、「デビューするんだ」って実感して。何が何でも前に行こうと考えていて、スタートして逃げることができたんですけど、向正面に入っても一人で走っていて誰も来ないので、ちょっと不安になりました。4コーナーでも後ろの音が聞こえなくて、「大丈夫かな?」という気持ちと、「もしかして勝てるかも?」という気持ちで乗っていました。直線に入って追い出して、最後に大畑(雅章)さんの馬の足音が聞こえて。すごい勢いで伸びて来たので、「差し切られた...。そんなに甘くないな」と思っていたら、大畑さんから「勝っているよ」って言われたんです。その時は意外に冷静だったというか、「やったー!」というよりも、あれだけバカバカ逃げて最後差されそうになってやっと勝ったわけで、「怒られるな...」と思いました。勝ったのはいいけど内容がぐちゃぐちゃでしたから。
川西毅調教師は何て言ってましたか?
その時は「おめでとう」って言ってもらいました。でも基本的に勝っても褒められませんし、毎日何かしら怒られてますね(苦笑)。でも先生には本当に感謝しています。僕が教養センターから帰って来た時、他の厩舎を一緒に回ってくれて、「乗せて下さい」って頭を下げてくれたんです。それに、自厩舎の馬で人気を背負うような馬にも乗せてもらっているし、負けても辛抱強く乗せてくれて...。感謝してもし切れません。
どういう縁で川西厩舎所属になったんですか?
実は父が騎手を目指していたんですけど、結局は別の道に進んだんです。小さい時から父に「馬に乗ってみれば?」って言われていて、最初はなんとなく反抗して「やだ!」って言ってたんですけど。中学の時に試しに乗ってみたら楽しくて(笑)。そこから中京競馬場の少年団に入って土日はみっちり乗馬をして、平日はお祭り用の馬を飼育しているところを手伝ったりしていました。中学3年からJRAを受けたんですけど落ちて、馬術部のある高校へ進学してからも毎年受けたんですけど落ち続けました...。高校2年の時には2次までいったんですけど、高校3年の時はまた1次で落ちて...。その時は相当凹みました。進路を考えた時に、地方を受けるか、馬術で大学に行くか、うちは美容院をやっているので美容系の専門学校に行くかの3択で考えたんです。父からは、「ジョッキーになるのは今しかできないだろ」って言われましたし、自分のケジメとしても、これでダメならという感じで地方を受けて。その時に父がいろいろ手を尽くして、知り合いを辿って川西先生を紹介してもらったんです。
名門厩舎に入るというプレッシャーはありましたか?
プレッシャーというか、川西厩舎に入るからにはしっかりやらないとと思いました。父もがんばって縁を繋いでくれたわけですし、川西先生も所属にしてくれるわけですから。教養センターは、馬術や馬の世話はみっちりやっていたので苦にはならなかったですね。時間に追われる生活や、好きなものが食べられないという息苦しさはありましたけど、辞めたいと思ったことは一度もないです。デビューしてからたくさんの馬たちに乗せていただいて本当にありがたいですし、自厩舎に乗せてもらえるのも嬉しくて。これだけ乗せてもらえるのは先生のお陰ですから。
1年目は見事期待に応えたんじゃないですか?
いや~、まだまだですね。先生からも言われますけど、今は馬の力で勝たせてもらっているだけなので。実際、僕は追って勝ったことってないんですよ。まぁ減量を活かして前に行くレースをしている分、仕方ない部分はありますけど、追うことが今後の課題です。
しっかり結果を出したのに、かなり謙虚ですね。
本当に周りの方々のお陰なので。実際にデビューしてみて、そういうことを実感するようになりました。最近、気が狂うんじゃないかっていうくらい「上手くなりたい!」ってずっと考えているんですよ。攻め馬中はもちろん、自分の部屋でも風呂の中でも考えます。馬のことしか考えてないですね。馬が大好きなので、今本当に楽しいです!
では、2年目の目標を教えて下さい。
数字的には去年を超えたいです。でも数字というよりも、今年はとにかく技術を磨きます。それから、周りの方々に感謝の気持ちを忘れず、気遣いができる大人になりたいです。騎手としても人間としても信頼されるようがんばります!!
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※インタビュー / 赤見千尋 (写真:愛知県競馬組合)