
8月24日、3歳三冠の一冠目『ばんえい大賞典』をカイシンゲキで勝利し、重賞2勝目を挙げた菊池一樹騎手(27)。初めての1位入線による重賞勝利でした。
おめでとうございます。2012年のナナカマド賞をショウチシマシタで勝った時は、1位入線馬の降着による繰り上がりでしたものね。
やっと周りに「タナボタだ」と言われなくなるのでほっとしました。それまで、あだ名が「タナボタジョッキー」ですよ(笑)。 レースの1週間前くらいから、どう乗ればいいのか考えていました。緊張していたんでしょうね。(カイシンゲキの)槻舘調教師に、「なるようになる」と言われて楽になりました。(2着のハクタイホウ騎乗の)赤塚健仁騎手は勝てば重賞初勝利。それに比べたら、重賞を1つ勝っているので気持ち的には楽だったと思います。
その名の通り、カイシンゲキの快進撃ぶりはすごいですね。ここまで急成長する馬は珍しいと思います。
カイシンゲキは、デビュー前の馴らしからやっていた馬です。この時から引っ張る力はそれなりにあったのですが、悪い癖があったからか、レースでは案外でした。2障害の下に着いたら、左に逃げるんです。(トップ騎手の鈴木)恵介さんが乗っても、逃げたままぐるっと1周してしまうくらい。さぼろうとするのかなぁ。 これからオープンや重賞に出ることになるし、他の馬に迷惑をかけたら危ないので、昨年の秋くらいから強いハミに変えて、しかりつけながら矯正しました。今年度初めのレースでやわらかいハミに戻したら、やる気まんまんになったんです。障害の下につけても抑えないといけないくらいがらっと変わって、行く気になりました。大外枠に入った時、左に寄れたら落ちるのではと心配していたのですが、よれずにレースができました
ばんえい大賞典ではハクタイホウに勝ちました。ゴール前、接戦でしたね。
5月の『とかち皐月賞』(特別)はハクタイホウの2着でしたが、ゴール後おしっこをしていたのは、かなりきつかったからだと思います。この時、ハクタイホウにはかなわないかな、と思いました。でも、やっとライバルと言えるようになりました。カイシンゲキの良さは、切れ味と粘り。 ばんえい大賞典は、先行したハクタイホウを見ながら障害をかけて、先に降りられたので楽でした。ゴール前、しっかりぼえ(追え)ば勝てるかな、と思いました。
3・4歳の重賞はまなす賞(2着)も惜しかったですね。
ゴール前、後ろから(勝った)コウシュハウンカイが来ているのが見えたから、どこまでもつか、と思いながらレースをしていました。もう手応えはなかったのですが、予想以上に頑張ってくれました。 カイシンゲキの性格はマイペース。急に引っかかるところがあるけど、普段はゆっくりゆっくりで、カメみたい。これからは重量が増えますね。まだ(馬体重は)1000キロないので少しずつでしょう。まだ成長の余地があります。
菊池騎手は、馬を追う時に膝を大きく上下させているフォームが印象的です。
そうですか? 無意識のうちに、そのように動いているのですね。いろいろな人の追い方を真似して試してきたら、今のフォームになりました。目標の騎手は鈴木恵介さんです。ぼったら一番。馬の反応を見て、タイミングを読むのがうまい。身長が同じくらいなので参考になります。
プライベートでは、釣り好きですよね。
先日、大津でアキアジ2本釣りました。自分でさばいて、料理しますよ。大友調教師と行くことが多いですが、最近若手騎手の中で釣りがブームなんです。西将太や島津新もやっています。
所属厩舎の田上(忠夫)調教師はどのような先生ですか。
優しいです。とても馬を大事にする。馬を叩くことを嫌がります。厩舎に入りたてのころ、調教で馬を叩いたら、その痕を見てすごく怒られました。
次の目標は、通算200勝でしょうか。(9月15日現在192勝)
特に数にはこだわっていません。騎乗している馬が勝てるところで勝ちたい。 目標のレースですか? BGIII(ばんえい大賞典)を勝ったので、BGII、BGIかな。
菊花賞、ダービーで達成できますね。では、ファンに一言お願いします。
競馬場の来場者が増えて、ありがたいです。『銀の匙』効果なのか、若い人が増えましたね。これから帯広では、収穫の秋にちなんだ食べ物のイベントが多くあります。それに合わせて本場にばんえい競馬を見に来てほしいです。
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香
今年度から、帯広競馬場内には騎手のリーディング表が数カ所に貼られるようになりました。現在のリーディングは西謙一騎手(28)。5年連続リーディングの鈴木恵介騎手を抜き、名騎手だった父・西弘美調教師とともにトップに立っています。20日には通算700勝を達成しました。
ついにリーディングジョッキーですね。
いい馬に乗っているから。自厩舎(西弘美厩舎)の調子もいい。3歳、4歳の若い馬が多く、この年齡は伸び盛りなら1年で10勝くらいするからね。障害のいい馬も多くて、乗りやすい。無理はさせずに間をあけて使っているのが、いい方向に出ているんだと思う。
厩舎には、青森の馬主さんの馬が多いですね。
出身は青森だけど、いたのは小学校までだから特に思い入れはないよ(笑)。青森は、最近馬を買う人が多いね。地元の草ばん馬に使っている馬が多くて、夏は草ばん馬に出て、シーズンが終わったら厩舎に戻ってくる。
さて、フジダイビクトリーで旭川記念を勝ちました。意外なことに重賞は2勝目なんですね。
3月から馬の厩舎が変わって乗ることになりました。思ったほどのスピード馬ではなかったけれど、やはり障害は上手。以前は障害を降りてから差されるパターンが多かったけれど、今は降りても歩くようになった。昔は行きたがっていたけれど、我慢できるようになったし。
旭川記念より馬場の重かった北斗賞(2着)でも思ったより歩けたから、重馬場でもOKだと思う。次の目標はばんえいグランプリ。夏だから暑さで弱らないように気をつけたい。体がある(大きな)馬でもないから、無理はさせない。体ができてからの馬だし、寒い時の方がいいかもしれない。ばんえい記念は、荷物に慣れてくれば楽しみだよ。
フジダイビクトリー。北斗賞は2着
ばんえい記念といえば、今年はフクドリで2着でした。
差せるかと思った(笑)。ばんえい記念は初挑戦の馬が結果を残しているから、インフィニティーは気にしていた。フクドリは、若い時はスピード馬だったけど、最近は(パワータイプに)変わってきたね。夏は弱いからここ最近はちょっと......。
最初のばんえい記念(2010年トモエパワー5着)の思い出はありますか。
1障害で止まるとは聞いていたんだけど、本当に止まった時はどうしようかと思った。ちょっとピークは過ぎていたからね。
ほかに、思い出の馬を教えて下さい。
初重賞(2009年銀河賞)を勝ったアカダケキング。2歳のテスト(能力検査)の時から手がけて、世話もしていた。真面目でおとなしかった。最後は喉鳴りがひどくてね、今年種馬になれてよかったわ。子どもも厩舎に入ってくるんじゃないかな。似るとしたら、スピード馬で、雨降り用(笑)。2歳の時は気性が荒かったから、そこが似ると大変だな。
ほかは、「ニシキ」の冠の馬。亡くなった仙頭オーナーによく乗せてもらった。ニシキダイジンは強かったね。特に、砂の中(砂の深いところ)が強い。
今後、期待している若馬はいますか。
2歳のコムギ。障害がうまいし、降りてからしっかりしている。2歳は牡馬で1頭抜けてるのがいるけど(センゴクエース)、牝馬の中に入ればいいんじゃないかな。
コムギと
フジダイビクトリーと同じ本別の本寺牧場生産の馬ですね。話は変わって、若手騎手が最近頑張っています。
もう自分は若手じゃないけど(笑)、みんな仲が良くて、楽しいよ。西将太、赤塚健仁あたりが中心になって、みんなでよくつるんでいる。遊びながらも、お互い負けないようにしている。
目標にする騎手はいますか。
鈴木恵介さんは駆け引きがうまい。後ろにいるな、と思っていたら前にいる。藤野(俊一)さんは息の入れ方と、障害がうまい。癖のある馬も上手。大河原(和雄)さんは2歳が上手。大河原さんがならしている服部厩舎の馬はみんな乗りやすいよ。レースを見て、参考にしている。
父親の西弘美調教師には何か言われますか。
最近は言われない。昔は、もっと手綱を短くしろ、とか、大きく見せないとだめだ、と言われた。手綱で叩くとき、客に背中が見えるくらいに、と。
西騎手の大きなアクションはかっこいいです。それは馬に見せるということですか。
いや、見栄え(笑)。客に見えるように、ってこと。
最近は来場者も多いですね。
人が多いね。人はいた方がいい。やる気になるし。家族連れも増えたし、本場で売れればもっとうれしいね。
今年の目標は、リーディングでしょうか。
2位も4位、5位も全部同じ。リーディングを意識したら、逆に焦って勝てなくなる。それで負けたら困るもの。こつこつやっていれば山になる。いっぺんにやっても無理だ。毎年の目標にしているのは100勝。目の前にあることを一つ一つ、だね。まず、BG1の勝利かな。
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香
ばんえい競馬は、いよいよ3月23日に大一番のばんえい記念を迎えます。1月に通算3500勝を達成し、ばんえい競馬の最多勝記録を更新し続ける藤本匠騎手(52)に話を伺いました。
1月末のヒロインズカップでは、ダイリンビューティで重賞50勝となりました。
50勝だったかい。ダイリンビューティは、この日120%、完璧のレースをしたね。最高の流れだった。運を引き寄せる物を持っている馬だと思う。オリンピックだってそうだよね。実力があっても結果を出せない人もいる。馬の性格は真面目だよ。悪い癖がなく、レース運びがしやすい。それでいて障害もいい。これは競走馬にとって大事。デビュー前の能検にも乗っていて、真面目でいいものがあるから体ができれば3、4歳で開花すると思っていた。5点満点なら4点で、残りの1点は体ができてない、ってところのみ。
「いいもの」というのは? また、成長しそう、というのはどこでわかるのですか。
触る(乗る)とセンスがわかるんだけど、長年の勘なんだよな。ベンツに乗ったことのない人は、その良さってわからないと思うんだ。サカノタイソンもすごいって言われるけど、乗ったことがある人にしか、本当のすごさはわからない。デビュー前の能検の結果がいい馬もいるけど、初めて競馬場で走るからびっくりしていいタイムが出たり、たまたまいい時計を出す馬もいる。騎手は、体に「いい馬のイメージ」が蓄積していくんだ。それが財産。乗れば乗るほど、財産は増えていくよ。トップジョッキーはみんなそうだと思う。
サカノタイソンの本当のすごさとは。
あんな強い馬、今まで巡り会ったことない。次元が違う。パワーがけた外れだし、ハナに行けて、障害もうまいし、障害を降りてからも歩ける。3拍子そろっている。 そういえぱ、ヒロインズCの前に死んでしまったブラックパールね......、(ヒロインズCに)出ていたら20キロハンデがあってもいいレースをしたと思う。体が大きくて、無理もきく。アンローズも大きかったけれど、そのくらいの馬格があった。
これから期待する馬はいますか?
コウシュハウンカイは、若馬の時からオープンで走れるかな、と思っていた。重い荷物に対応するから、(高重量戦の多くなる)今後の希望を抱かせるね。コウシュハゴールドは、素質があるから体できればおもしろいかな。
いい馬の見方というのはありますか?
長腹短背とか、見た目のバランスがいい馬っているけれど、バランスいいから能力があるというわけでもないんだ。そりをかけてみないとわからない。こればかりは、持って生まれた能力だから。見た目悪くても走る馬っている。ただ、形いい馬で引っ張った方がレースを見ていても飽きないよね。頭小さくて、目ぱっちりしてる馬とか、かっこいいじゃない。
さて、1月1日に3500勝を達成しました。勢いは止まりません。
正月に決めたなぁ、と(笑)。この時点でシーズン100勝も超えられていたことはよかった。大きな怪我をせずにここまで来られたからね。手にひびが入った時に1カ月休んだくらい。我慢強い方だから、ちょっとした痛みなら乗っていた。
健康の秘訣は何でしょう。何か、体を鍛えていたのでしょうか?
開催が12月までだった20~30代の頃は、開催がないときに帯広のアイスホッケーチームに加わってたんだよ。釧路にいた小学生の時に友達に誘われてから、ずっと好きでね。汗かいて、運動になった。アイスホッケーの靴って、リンクでなかなか立ってられないんだよ。
バランス感覚も鍛えられたのでしょうね。プレーを見てみたいです! 最近若手騎手の活躍がみられますが、いかがですか。
みんな頑張っているよね。所属する岩本利春厩舎の島津新も、運を持ってる。いつも攻め馬(調教)を頑張っているし、心配ないよ。ただ、若い騎手はもっと個性を出していいのかな、と思う。昔の騎手は、自分の「型」を持っていた。勝つためなら、人が何と言おうとね。木村卓司さん(元騎手・調教師)、金山明彦さん(現調教師)、最近ならそりの上でジャンプしていた坂本東一さん(現調教師)とかね。最終的には人に真似させるような、ぼい(追い)方になっていく。 今の若手も、中には質問してくるのもいるけど、自分は気になったらすぐに聞いていた。自分はできないのに、どうして金山さんならできるんだろう?と。
今後の目標は? やはり4000勝とリーディングでしょうか。
それよりは、あと何年乗れるか。騎手できるまでやりたいし、やれると思う限りは続けたい。1年1年体と相談しながら、人に迷惑かけないようにね。まだ長老いるからね! 山本正彦騎手(56)より先にやめるわけいかないから(笑)。レジェンド山本だよ? ばんえいの歴史の中でも最長老なんじゃないかな?
レジェンド山本、いいですね(笑)。さて、いよいよ今月末はばんえい記念です。
今年はまだ乗る馬は決まっていないけれど、乗りたいし、1回勝つとまた勝ちたいんだ。2回勝ったけれど、騎手なら何度でも勝ちたい。中央競馬でいえばダービーみたいなもの。ばんえい記念で有利なのは、障害を先に降りられる馬。だから、障害を真っすぐ進む(真面目な)性格の馬が向いている。返事遅い馬なら話にならない。キンタローやトモエパワーみたいな、ばんえい記念で差せる馬っていうのはなかなかいないんだわ。 障害を、何度も何度もチャレンジするところがこのレースの醍醐味。膝折ったりしながらも越えていく。その姿をぜひ、見に来てください。
昨年のばんえい記念はシベチャタイガーで8着
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香
デビュー年からコンスタントに活躍を続ける島津新騎手(23)。4年目を迎えた年男は、帯広記念を制し今年も良いスタートをきることができました
斎藤:帯広記念はホリセンショウで、病気の鈴木恵介騎手に乗り替わっての勝利でした。
島津:朝、乗り換わりの紙が貼られているのを見て初めて乗ることを知りました。「あー乗るんだなー」って(笑)。うちの厩舎(岩本利春)の馬だからどんな馬かもわかっているし、馬体重があるから、荷物(負担重量)にも負けないと思っていました。
斎藤:レース中は、いつ勝ちを意識しましたか。
島津:障害で膝を折ったのは想定内。レースは落ち着いて騎乗することができました。障害を最初に越えた時に、もしかしたら、と思いました。ゴールまで3回止まって、残り20メートルくらいでキタノタイショウとニュータカラコマが来ているのが見えましたが、ニュータカラコマは辛そうに頭を上げていたから止まるな、と。その後、2頭が止まった時点で行けるかな、と思いました。
斎藤:ホリセンショウの田山克廣オーナーは北斗市の方で、島津騎手のお父様とよく一緒にばん馬大会に参加していますね。
島津:小さい頃から知っている人だったので嬉しかったです。周りの人も喜んでくれました。
斎藤:乗り換わりってプレッシャーはないですか? というか、プレッシャーを感じているのを見たことがないような気がします。
島津:乗り換わりは逆に、プレッシャーなく乗ることができます。いい騎手にはいい馬が乗るのだから、馬を回してもらえるのは光栄です。印が多いと緊張しますよ。逆にいろいろと考え過ぎてしまう。
斎藤:コンスタントに活躍を続けていますが、1年前と変わったと感じるところはありますか?
島津:道中、他の馬を見られるようになりましたね。帯広記念がそうでした。それまでも見られていたと思っていたけれど、今ほどではない。自分が乗っている馬だけではなく、周りの馬もわかっていないといけないから、調整ルームでは自分が騎乗していなかったレースを見るようにしています。乗っていない馬の能力が分かるようになってから、レースがしやすくなった。調教とレースではがらっと変わる馬がいるから、レースを中心に勉強します。
斎藤:3月にはばんえい記念があります。どのような存在ですか。
島津:夢! 乗ってみたい。小学校低学年の時の文集に「ばんえい記念に勝ちたい」と書いていました。当時、(祖父が馬主の)シマヅショウリキが活躍していたからなおさら。
斎藤:今、乗ってみたい馬はいますか。
島津:キタノタイショウに乗ってみたいですね。乗るのが簡単じゃないみたいだから、挑戦してみたい。負けず嫌いなんです。
斎藤:趣味は釣りだそうですが、競馬と似ているところはありますか?
島津:集中力。あと、駆け引きかな。でかい魚を釣った時の気持ちはレースに勝った時と似ていますね。厩舎作業があるのでたまの休みにしか行けませんが。
斎藤:ところで、昨年結婚されたとか。おめでとうございます。帯広記念も勝ててよかったですね。
島津:ありがとうございます、奥さんも帯広記念を勝って安心していると思います。一緒に住むようになってからは、ご飯作ってくれるので楽。5月には子どもも生まれます。
斎藤:食べてもっと太った方がいいんじゃないですか。バレンタインのチョコは届きましたか?
島津:今は62~63キロ、ちょうどいいから大丈夫です(笑)。チョコは、ファンから届くのを期待していたのに、届きませんでした(笑)。奥さんからしかもらっていません。
斎藤:女性ファンのみなさん、来年は競馬場宛に送ってください(笑)。さて、ばん馬が登場する映画『銀の匙』が3月に公開されますね。
島津:先日、関係者で試写会がありました。面白かったです。全国で公開されますし、漫画にもたくさんばん馬が使われているので見てください。ちょっとは映りましたが、それより(赤塚)健仁がいっぱい出ています(笑)。
斎藤:目標を教えてください。リーディングですか(2月24日現在83勝、8位)。
島津:今、6~10位が接戦なんですよね。来年度は100勝が目標です。今年度の目標は90かな…。これからは、ベテラン騎手を引きずり下ろすくらいの活躍をしたいです(笑)。 今年は例年ほど帯広は寒くないんです。ぜひ本場に足を運んで、馬の迫力を感じてください。
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香
2008年度から5年連続リーディング、ばんえいのトップジョッキー鈴木恵介騎手。今年度(2013年度)も1月13日現在で143勝を挙げトップを独走、重賞でも4勝を挙げ、ばんえい界を牽引する存在となりました。
斎藤:昨年12月には3歳重賞を連勝しました。オークスのナナノチカラと、ダービーのオレノココロ。
鈴木:ナナノチカラの障害を降りてからの脚は、古馬を含めても指折りだね。馬主も厩務員も調教師もみんな、このレースを目標に力を入れていた。狙って獲った、ということがうれしい。
オレノココロは、障害は上手なんだけど、天板で膝が甘くなることがあるから、それさえなければ、と思っていた。調子はよかったし、結果ひと腰で上がった。最初はゴール前で失速するタイプだったけど、辛抱強くなってきた。体も大きいんだよね(ダービーで1106キロ)。もともと背が高かったけど、幅も出てきた。時計がかかるレースの方が向いているかも。
斎藤:3日、天馬賞(松田道明騎手騎乗)で初の4歳シーズン三冠を制したホクショウユウキも、柏林賞とはまなす賞に騎乗しています。
鈴木:松田さんが怪我をしていた時の乗替りだったからね。一昨年の年末ころから体ができてきた。真面目な馬だよ。
斎藤:多くの馬に騎乗されていますが、これからの古馬戦線はどの馬で行くのでしょう。オイドンはいかがですか。
鈴木:誰になるかな。オイドンは、スピードはもちろん、前へ、前へ、という気持ちが強い馬。でも、止めても前へ行こうとする。平地競馬でいう「かかる」状態。それが直れば、息が入る(高重量の)古馬のレースでもいける。夏場は喉の手術をして休んでいたから、これからどこを使うかな。
斎藤:3月にはばんえい記念も控えていますね。2012年には、ニシキダイジンで初めてばんえい記念を制しました。
鈴木:騎手になった時、夢はばんえい記念に出ることだった。ミサイルテンリュウでばんえい記念に乗るようになってからは獲るのが夢。だから、勝った時は騎手人生で一番嬉しかったね。ダイジンの良さは、力はもちろん障害の巧さと先行力。馬主さん(仙頭富萬オーナー)もその年に亡くなったから、獲ることができてよかった。
ニシキダイジンで2012年のばんえい記念を制覇
斎藤:ばんえい記念も獲って、次の目標は。
鈴木:2000勝かな(1月13日現在1650勝)。やってみたいのが1日全勝。1日で最大7つ乗れるから7勝。5勝と2着2回は一度あるんです(2011年7月3日)。
斎藤:それはすごい! 近年の活躍ぶり、自分で変わったと思うところはありますか。また、レースで気をつけていることは。
鈴木:いい馬に乗せてもらっているからです。前よりは、平常心を保って乗れるようになっているかな。勝てるところできっちり勝つ、というように。2着で終わっていたところを、1着に持ってこれるようになった。結果を出したから馬がまわってくる、という流れはあると思う。
レースで考えているのは200mをいかに乗るかなんだけど、1番大事なのは、障害をひと腰で上がること。2番目は、1障害から2障害の手前まで。息の入れ方に注意し、他の馬が楽にならないように駆け引きをしながらレースを進める。レースのビデオはよく見ていて、競馬場にいるうちの8割の馬の能力は頭に入っている。レースの前に大事にしているのは馬の調子がいいか悪いかを把握すること。攻め馬で1回さわればだいたいわかるから。
斎藤:ところで、今年度、騎乗がキャンセルになることが多くて心配です。
鈴木:8年くらい前かな、2歳戦でレース前に馬から落ちて、背骨が2箇所つぶれたんです。最近になって痛みが出てきて、右の肩甲骨の辺りが痛い。騎乗が増えて、きわどいレースも多い有力馬に乗るようになったことが、逆に負担になったのかもしれない。レースではアドレナリンが出て痛みは忘れるけれど、ひどい時は痛み止めを打つときもあります。
斎藤:落ち着くといいですね......。さて、最近若手騎手が伸びていますが、鈴木騎手から見て巧いと思う騎手は誰でしょうか。
鈴木:藤野さんはすごいね。馬の御し方もだし、障害上げるのも巧い。
斎藤:若手はいかがですか?
鈴木:まだまだ、俺を越せるのはいない(笑)。あいつらに抜かれたら引退するわ(笑)。勉強が足りないな。レース見たり...、うまい騎手の乗り方を何回も見たり、自分の乗っている馬が他人でうまくいった時に何回も見たりするとかしなきゃ。
誰か、と言われれば、島津新かな。まだ甘いところがあるけど、冷静だね、あわてない。
斎藤:3月には大レースも控えています。ファンに一言お願いします。
鈴木:テレビで見るのと近くで見るのとでは、馬の大きさの感じ方が全然違う。本場に来て見てほしい。特にばんえい記念。2障害で1トンを引っ張る姿や、障害を降りてからゴール前までの駆け引きも見られるから。近くで迫力を感じてほしいです。
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香