
明け3歳によるイレネー記念をオーシャンウイナーで制し、ばんえい記念ではキタノユウジロウ(牡6)で2着と、活躍が目立つ菊池一樹騎手を紹介します。
ばんえい記念は乗り替わりで2着でしたね。
(前日)朝、調教師に乗り替わりを告げられました。ばんえい記念は、年度最後の目標。お客様の数も違うし、騎手として乗りたいレースです。不安よりは、調子が上がってきている、という思いで臨みました。障害を一腰で上がった瞬間、あっ!(勝てるかも)と。軽馬場の割に道中はみな慎重で、ゆっくりしたペース。(騎乗予定だった)松田(道明)さんならもっと強気に前に行ってたかな、と今になって思います。道中はコウシュハウンカイを見ながら行き、ゴール前で差せるかな、と思っていたら外からホクショウマサルが来て2着でした。
ばんえい記念2着のキタノユウジロウ
前日はイレネー記念を制しました。乗り替わり2戦目ですね。
挑戦者という気持ちで乗りました。ゴール前は、脚がもちそうだと思ったのでハミをあてながら進みました。乗りやすいいい馬です。真面目で行きっぷりがいいし、息も入れやすい。降りてからもしっかり歩いてくれる。性格は臆病なところがあります。キタノタイショウの子はみんな父に似て、臆病なところがある。
厩務員さんが喜んでくれてよかったです。「ありがとう」って握手を求めてきました。これからはクラスも上がるので、ゆっくりと使っていくことになると思います。
イレネー記念を制したオーシャンウィナー
乗り替わりでの勝利が多いですね。緊張はしないですか?
だいぶプレッシャーはなくなりましたね。一緒に走っているクラスの馬や、前走、前々走を見るようにしています。
クセのある馬に乗ることが多いように思います。それでもけがは少ないですね。運動神経がいいのでしょうか。
一度気性の激しい馬に乗ってから「菊池に乗せれば大丈夫」というようになったのでしょうか(笑)。他の馬に近づけない、クセを出さない、など事故が起きないよう気をつけています。運動神経がいいわけではないですよ。
ばんえいも新しいシーズンが始まりました。期待馬はいますか。
ヤマトタイコー(セン4)は重賞でどのようなレースをするか楽しみですね。フクフクライデン(牡3)はまだこれから、成長に期待。サクラダイチ(牡8)は年度が変わって、重量が軽くなってからが楽しみです。
2歳はいかがですか。第1回能力検査で時計上位のキョウエイハンターは楽しみですね。ヘッチャラも障害のうまさが目立ちました。
キョウエイハンターは自信を持って乗りました。馬体が大きく期待している。ヘッチャラはセンスがありますね。バネもある。顔に大きな流星があって魚目。見た目も注目してほしいです。
2歳は、デビューするまでにソリにならす馴致を行います。所属厩舎以外からも頼まれながらやっています。1日3、4頭はいるかな。1頭に4人ほどついて行い、私は足が速い方なので、引っ張って馬と一緒に走ることが多いですね。
キョウエイハンター
先行と追い込み、どちらが好きですか。
追い込み馬というのは障害が苦手な馬が多いからなぁ。逃げられるなら、障害力を生かして先行して降りて、歩いてくれる馬がいいですね。
菊池騎手は、もともと平地競馬のファンで、インターネットの求人を見てばんえい競馬の世界に飛びこんだんですよね。
馬ならなんでも良かったんです。平地のファンだったことがかえってよかったのかもしれない。ばんえいを知っていると大変さとのギャップに悩んでいたかもしれません。今は厩務員が少なくて大変です。試しでもいいから体験してばん馬に触れてみてほしい。それから考えてもいいと思う。最初から、人生かけようと思わなくていいんです。最近は、女性厩務員が頑張っていますよ。長く働いていますね。
騎手としては、結果が出なかったり、乗れなかったりするとやめたくなるときもありました。でもそういうときに限って調子が上がってくるんですよね。
オッズパーク会員の方に一言お願いします。
なかなかコロナが落ち着かないですね。ファンの方には体に気を付けてほしいです。今ではインターネットなどの画面でも見られるので、迫力が伝わるレースをできるよう頑張ります。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
昨年12月にデビューしたばんえい競馬の新人、金田利貴騎手(23)。金田勇調教師の長男として厩舎で育った元甲子園球児は、騎乗数も着実に増やし、2月28日現在29勝。すでに関係者やファンの信頼を集め始めています。
デビューから2カ月半が経ちました。12月12日のデビュー翌日には初勝利を挙げ、1月3日はコマサンエースで重賞の天馬賞に騎乗(4着)。印象に残ったレースはありますか。
どれも経験になっていますが、強いてあげるなら初めて特別戦(2月1日ダイヤモンドダスト賞)を勝ったコマサンエースでしょうか。それまでも乗っていましたが、障害が得意なはずなのに、島津騎手や藤野騎手のように障害を上がらなかった。島津さんがゲートから2障害までの進め方や登坂時のハミ使いなどを教えてくれて、実践したら簡単に上がりました。
先輩と仲が良さそうに見えますか? 失敗をからかわれたりしています。先輩の様子を伺いながら、聞けそうなときは質問しています。
コマサンエースで4着と健闘した天馬賞
新人騎手の減量特典(10キロ減)を生かした積極策が気持ちいいですね。特典が取れる50勝も目の前ではないでしょうか。
先行は意識していますが、行き過ぎないよう心がけています。50勝まであと半分。減量特典がなくなった後が大変なので、それまでにレベルアップしていきたいです。
キタミライのレース(2月15日4レース)では10キロの差を感じました。ひと腰で上げることを考えて後ろから行き、末脚を生かして勝ちました。障害を超えた時は先頭とは距離があり、10キロ差がなかったら届いていなかったのではと思います。
堂々とした騎乗に見えます。扶助となる声が大きくて、さすが元野球部ですね。
百戦錬磨の騎手に混ざってレースをするのは、怖くなります。他の騎手は本当に上手です。声を出して馬を前に出しながら、自分自身の緊張をほぐしています。うるさいと思われるくらいに、とやっています。声が大きいのはキャッチャーだったからでしょうか。
白樺高校時代は、野球部に所属し2015年夏の甲子園に控え捕手として出場しました。
今年千葉ロッテに入団した河村説人投手ら同級生でLINEグループを作り、励まし合っています。甲子園は控えで連れて行ってもらった立場ですが、辛いこともあった中、成功体験ではありました。
同級生も(競馬を見に)来ているという話は聞きます。デビュー戦では聞き慣れた声が聞こえ、ありがたかったです。それまでばんえいに興味のなかった友達が、自分が騎手になったことで競馬場に来てくれるようになったことが嬉しいですね。
野球からばんえいの世界へ転向したきっかけは。
甲子園が終わってから、厩舎の馬糞出しなどを手伝っていました。野球をできたのも、父や馬のおかげと、卒業する頃ばんえいへの思いが強くなったんです。高校時代に活躍した馬にインフィニティー(2014年ばんえい記念)がいました。
入学した札幌大経営学部では、恩返しの意味もこめてばんえいの研究をしました。北海学園大の古林英一教授に話を聞いたこともあります。そのうち、ばん馬の生産が減っていることを知り、生産に興味を持ちましたが、父は「馬に触ってみないとだめだ、厩務員になれ」、ゼミで会った経営者には「生産者の生産者にならないと、分母が大きくならない」と言われ、思い切って退学し競馬場に入りました。
最初は騎手になるつもりはなかったのですが、もともと勝負の世界が好き。周りの誘いもあり、2度目の受験で合格しました。勝負服は、袖は青に白一本輪の父に似せて(金田騎手は二本輪)、重厚感があって好きな黒色を胴に入れました。インフィニティーに騎乗していた浅田元騎手も黒が入っていましたよね。
ダイヤモンドダスト賞 コマサンエース
ファンへのお披露目式で、2006年の存続運動に触れたコメントが印象的でした。「ばんえいを守ろうと尽力してくれた人に騎乗で恩返ししたい」と話していましたね。
存続の危機を迎えた2006年は野球を始めた年。家では父母が暗い表情をしていました。野球の少年団の人たちに存続の署名を集めていましたが、多分そんなことはしたくなかっただろうな、と子どもながらに思っていました。近くのスーパーの署名活動にもついていきました。
さて、今はデビュー前の馬が入厩し、レースを教える馴致をするシーズンです。危険が伴いますね。
自分が厩務員になって最初に馴らした2歳は、ゴールドハンターやコマサンブラック、アバシリルビーといった、(気性の激しい)そうそうたる面々で、危険というものを教えてもらった。でも、その後重賞を勝つようになった馬たちです。それに比べると、今年はまだおとなしい馬ばかりかな。
最後に、オッズパーク会員の方に一言お願いいたします。
いろいろとばんえいの良さや見てほしいところはありますが......。普通に歩いているように見えますが、馬はまっすぐに歩かせるだけでも大変なんです。難しいことを簡単にやってのける騎手ばかり。そのようなところも見て楽しんでほしいです。
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※インタビュー / 小久保友香
2020年12月19日第2レースで、通算2,500勝を達成した服部義幸調教師(74)。開業36年目の偉業達成で、ばんえい競馬調教師の最多勝記録を更新中です。名伯楽は場内にある『ふれあい動物園』の園長など、ばんえい競馬の発展のために尽くしています。
2,500勝、おめでとうございます。インタビューでは、奥様と厩務員への感謝を述べられていました。
......嫁はともかく(笑)、厩務員がいないと競馬は成り立たない。馬がいても厩務員がいないとだめ。逆もしかりだけど。馬と厩務員の存在は、厩舎経営についてまわるから。お陰さまで今は9人の厩務員がいる。馬主もだし人には恵まれて、競馬させてもらっている。
出身は道東の弟子屈町ですね。
父が家畜商でした。会社員でしたが27歳でばんえいの世界に入り、9年騎手を経験した後39歳で調教師になりました。
それから36年。インタビューでは「大変なことばかりだった」とおっしゃられていました。
若いうちは、いい馬は来ないし、良くなってきても転厩してしまい、癖馬ばかりが回ってくる。そんなことが何年も続いた。そこで一大決心をした。自分で馬主さんを見つけ、何万キロも走って自分で馬を見つける。そして育てる。そうしたら、馬主さんの馬が1頭から2頭、と増えてきた。
馬主さんとは「長い付き合いをしよう」と決めたこともあって、今では「馬をやめるまでは先生のところに預ける」と言ってくれる人もいる。コロナ禍で馬を見に来ることのできない馬主さんは「あんたがいいっていうならいいでしょう」と。馬主さんに、赤字を出さないことが一番大事だと思っています。
家族にも大変な思いをさせた。調教師になって4、5年経って「一番になるぞ!」って嫁に誓ったことがある。一生大変な思いをさせないぞ、って。振り返れば「ようし、やってやる」って気持ちがあれば、できるな、って思う。
大変なことというのは、2006年度の廃止の危機のことなのかと思いました。当時は調騎会会長として奔走されましたね。
あのときのことは、口に表せなかった。大変な思いをした。当時の砂川敏文帯広市長の言葉に、車を止めて泣いたこともある。日本中の人が応援してくれて、その気持ちを裏切ってはいけないと思った。
14年経って、馬券の売り上げがいいのは嬉しい。しかし危惧しているのは、馬券の売上がいつ落ちるのか。全国のファンなど、世話になった人たちのおかげでばんえいが続いていることを忘れてはいけないね。
服部先生だからこそ存続できたのだと思います。ふれあい動物園やエキサイティングゾーンも先生のアイディアですね。
ふれあい動物園は、子どもが来てくれる場所で十分。欲でやるところではないんだ。
ふれあい動物園といえば、先日PR馬のキングが11歳という若さで亡くなりました。
少しでも元気な姿でいてほしかったけれど、病(蹄葉炎)には勝てなかったな。言うことをよく聞く、めんこい馬だった。牧場で休養させることも考えたのだが、この場所で親しまれていたのだから。本州からもたくさん手紙や花をいただいた。俺らよりも、ファンのキングに対する思いはもっとすごいな。
(今のPR馬)フクスケにその分頑張ってほしい。静かな性格だし、ふれあい動物園向き。体も大きくないから、長生きしてくれると思う。キングは大きかったからね。
キングの馬ソリを引く服部調教師
十勝管内の牧場で余生を送る、初代PR馬のリッキーは元気ですか。
元気だよ。たまに会っている。少しでも長生きしてくれれば。
インタビューでは、馬に教えられた、という話をしていました。
こんな気性の馬はこう、緩慢な馬はこう、と、何百頭もやっているうちに教えられた。馬の付き合い方を一頭一頭合わせて向き合えるようにしている。馬には感謝しないと。
思い出の馬、というとやはり2015年にばんえい記念を制したキタノタイショウでしょうか。
勝った馬だから、というわけではないのだけど。キタノタイショウに初めて出会ったときのことは忘れられない。1歳の春、朝に豊頃町の牧場で見て「大きくないけれどいい馬だな」と思った。それから陸別まで馬を見て回って(帯広-陸別は100キロ弱)、それでもこの馬のことが気になって、その日のうちに牧場に戻ってもう一度馬に会った。
ばんえい記念をはじめ重賞12勝を挙げたキタノタイショウ
どのようなタイプの馬が好きですか。ばん馬のほか、ふれあい動物園の馬も含めて教えてください。
一生懸命引っ張っている馬。体重は大きくなくても、体に幅があり、脚は長くなく胸囲がある。
動物園は、人に優しい馬がいい。(競馬場で生まれた)ロックは乗馬調教を終えて、そろそろ乗っていい、ってお墨付きかな(乗馬体験は休止中)。
引退後のばん馬を馬車用にほしいという話もよく聞きます。馬車がうんと増えたら、引退した馬も新しい余生を送れる。
調教など、馬と接する中で大事にしていることはありますか。
「これ以上無理だな」という限界以上にやらせない。おかしな方に行くから。馬が「うれしいよ、楽しいよ」と引っ張っている方がいい。「やだよ、やだよ」という時にやると、取り返しがつかないことになる。
先生、今でもケーキがお好きですか?
甘いものはなんでも好き。ケーキは1ホール食べちゃうし、夜中でも起きて食べちゃう(笑)。その代わり、酒は飲めないんだ。
オッズパーク会員に一言お願いします。
いつも応援ありがとうございます。競馬場が楽しいと思ってもらえるよう頑張ります。コロナも早く落ち着いて、ふれあい動物園に人が来られるようになったら、入場者も増えてくるかな。
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※インタビュー / 小久保友香(写真:小久保友香・小久保巌義)
調教師生活27年目の小林勝二調教師が、9月27日にシンエイジョッパリが勝利し、通算1,000勝を達成しました。馬にも人にも優しく、真摯な仕事ぶりが光る先生です。
ばんえいの世界に入ることになったきっかけを教えてください。
(北海道上川郡)下川町出身で父は馬を飼っていました。自動車整備の仕事をしていたけれど、同級生の田上忠夫調教師に誘われて、20歳の時に競馬場に来ました。田上調教師とはお互いの父同士も馬産振興会のつながりがあったんです。
1,000勝表彰式では、調教師会会長の田上調教師から花束
それから厩務員を3年やって、騎手試験には2年目で受かりました(1982年デビュー)。当時は40人ほど騎手がいて、現調教師の金山(明彦)さん、山田(勇作)さんなどが活躍。乗れなくてね。それでも12年やったかな。1994年、調教師になりました。
馬の特性を生かせられる調教方法を考えています。障害が悪くても、降りて歩ける馬だっている。とはいえ、この世界は正解がないから手探りですね。やればいいわけでも、やらなくていいわけでもないから。だから面白い。
思い出の馬について教えてください。まずは重賞勝ちの3頭について。
初重賞制覇となったニシキタカラ(2004年ばんえい菊花賞)は、重賞でも3着と惜しいレースが続いていた。この時はチャンスが巡ってきた気がする。でもレースの日は、二人三脚でやっていた妻がちょうど実家に帰ってていなくてなぁ。電話したよ。真面目な馬だった。
04年ばんえい菊花賞を制したニシキタカラ(写真:ばんえい十勝)
その菊花賞で8着だったのがニシキダイジン。開催が終わると、地元に帰って下川町の家で預かって、調教をつけていたんだ。デビュー前からやっていた。ダイジンは2歳の時から実力があったな。頭角表したのは夏からで、だんだん強くなっていった。2006年のポプラ賞を制し、3月までうちの厩舎にいました。流れに対応できるのが強み。自分でレース作れるからね。力はあったけれどばんえい記念を勝つまでは考えていなかったな。
2006年の明け3歳重賞、ホクレン賞を勝ったニシキセンプーはやんちゃだったなぁ。軽馬場が得意だった。
06年ポプラ賞を制したニシキダイジン
そのほかでは。
アグリミズキ(2009年カーネーションカップ4着)だね。いいところまで行ったが、喉に病気があって、繁殖牝馬にするために手術をしなくてはいけなくなり、競走馬人生を終わらせてしまって、かわいそうなことをした。今でも喉に穴が空いているんだ。
アグリミズキは子どもも3頭デビューしていますね。さて、先生といえば2012年にばんえいを舞台にしたNHKドラマ「大地のファンファーレ」でも協力されていました。
主役の馬、「トヨノコトブキ」を演じたハマクリシンザンを貸したんだよ。今は建て替えたけど、昔の厩舎もね。夜の撮影があって、長引いて午後11時を回ったこともあったんだ。俺の部屋も使っていたから家に入れなくてなぁ。調教師役の杉本哲太さんが入っていたんだよ。寒くて、外で薪をくべて暖まっていた。主役で騎手の高良健吾さんが、うちの柴犬とよく戯れていたなぁ。
気を付けていることを教えてください。
健康管理だね。馬は腹痛や熱発が多いから、馬は一通り、何回も見て回る。ちょっとしたしぐさを見逃さないようにする。
現役馬について教えてください。
右目だけ、黒目の周りが白い輪眼のシンエイシルビアは、昔からやんちゃだったな。青毛登録だけど、白い差し毛が多いから、芦毛じゃないかって一度確認してもらったことがあるんだよ。やっぱり青毛だった。
ペーパンヨシヒメは小さいが、体以上の仕事ができる馬。勝負は人一倍、馬一倍やる気まんまんだね。気持ちが表に出せるような調教をしている。
シンエイジョッパリのじょっぱりは「頑固者」という津軽弁で、名前通り。右引っ張ったって右に行く馬ではないんだ。でも今後期待している。
通算1,000勝を達成したシンエイジョッパリ(写真:ばんえい十勝)
厩舎には女性厩務員さんが2人いますね。
女性厩務員も増えてきているね。馬に対する手触りが良く、優しい。それもあって馬主さんは牝馬をよく預けてくれる。馬になめられることもあるけどね。女性もできる仕事と思うから。
表彰式では、娘さんがサプライズで来ていましたね。
道内で教員をしているんだ。息子もドイツで教育学を学んでいるらしいよ。
下川町出身とのことですが、下川といえばスキージャンプですね。趣味は何ですか。
スキーに乗ったりはしていたけどね。それよりモータースポーツが好き。バイクが好きで、山道をオフロードバイクで泥だらけになって、モトクロスとかね。今は忙しくて、乗る機会もなくなってしまったから、雑誌を見たりしているよ。
では、オッズパークの会員の方に一言お願いいたします。
今年はコロナで、まいっちゃったね。不要不急の外出を避けるから、「ちょっと見に行くか」って馬を見に行けない。
売り上げは伸びているよね。今は客が入っているし、やる気が出る。新聞で売り上げを見るのが毎日の楽しみになった。この調子で伸びるようになればいいな。
今年のばんえい記念も無観客で、ファンがとかちむらで見ていたと聞いたんだ。申し訳ないな。かわいそうだった。
この状況では仕方がないですが、末永くばんえいを応援してください。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
デビュー10年目を迎えた島津新騎手が、今年大ブレイク。ミノルシャープで重賞3連勝(北斗賞、旭川記念、ばんえいグランプリ)、3歳馬のコマサンダイヤとゴールドハンターで1つずつと今シーズン9レース行われた重賞ですでに5勝しています。
すばらしい活躍ぶりですね。周りの反応はいかがですか。
周りに冷やかされています。「おかしいな」って(笑)。いい馬に乗せてもらっていますから。
7月から観客が入場できるようになり、「おめでとう」の声はうれしかったです。
有観客になってからのインタビューも島津騎手ばかりですね。それぞれの馬について振り返ります。まずはミノルシャープ。昨年秋の北見記念の前から乗り替わり、騎乗してほぼ1年です。
馬の良さは降りてからのふんばりと、伸び。馬も強くなっているが、重賞を何回か使って古馬のゆったりしたペースに慣れたのはある。若い時は2障害まで着くのも速いですからね。経験とペースです。性格はやる気満々。負けん気が強いんです。
特にばんえいグランプリは、自信が表れたレースでしたね。障害手前で横を向いていたのが気になりましたが。
思った通りのレース運びができました。これまでは「勝てるかな」と思っていたのが「勝つんだ」という気持ちで乗りました。コウシュハウンカイと並んでも、切れで勝負できると思いました。障害手前で、左向いて休む癖があるんです。前向くと行くサイン。
ばんえいグランプリを制したミノルシャープ
3歳路線一冠目のばんえい大賞典を勝ったコマサンダイヤは。藤野俊一騎手が騎乗停止で乗り変わりの勝利となりました。
イレネー記念を藤野さんが勝った時、インタビューで「(今後は)島津君に返します」と言っていたが返してくれなかった(笑)。やっと返してくれました。
レースは「この馬が一番強い」と思って騎乗しました。天板で苦労した分、馬に負担をかけて申し訳なかったが、頑張ってくれた。最近は、前に行きたい気持ちが出てきている。障害が上手ですね。
ばんえい大賞典を制したコマサンダイヤ
コマサンダイヤが回避し、騎乗した3・4歳重賞はまなす賞のゴールドハンターは、末を生かすこの馬の勝ちパターンに持ち込んだように思います。若いころは逸走もして、騎手にとって大変なイメージがありますが...。
積極的に勝ちに行ったレースでした。ご存知の通り若い時はやんちゃでしたが、厩舎が仕上げてくれて以前よりは落ち着きが出てきた。いつも120%の力で走ってくれるのがいいところです。まだやんちゃな部分はあるので、1障害まではそりに座っています。
はまなす賞を制したゴールドハンター
若い馬など、たまに騎手がそりに座ることがありますよね。なぜでしょうか。
横に逃げる馬は、手綱でお尻から挟むようにして制御します。力も入りやすい。
4歳馬は、銀河賞でコマサンブラックに騎乗しますね。
3歳になって力をつけてきた。あと重賞でどれだけ頑張れるか。
期待の2歳馬は。
アバシリサクラはまだ障害に課題があるかな。これからですね。
ミススマイルはまだ850キロくらいしかないが、切れ味があるから面白いよ。
ここ最近は、思い切りのいいレースが多いですね。
一瞬の判断ですね。インビクタ(牡4)に乗ってから思い切ったレースができるようになったのかも。道をひらいてくれた馬です。
10年経ち、自分自身の変化は感じますか。2011年度は日本プロスポーツ大賞新人賞、NARグランプリ優秀新人騎手賞受賞を受賞し、その後も70勝前後の勝利数は挙げていますが、昨年度まで重賞勝ちは2勝のみ(2011年クインカップ・キタノサクラヒメ、2014年帯広記念・ホリセンショウ)で、ちょっとさみしいように感じていました。
最近は勝ちに焦らなくなったかな。確かに、以前はもう少し勝ちたいなと思っていたが、我慢していればそのうち、と。この時代があるからの今だと思う。
藤野騎手からの乗り変わりも多いですが、同じ道南の出身でデビュー当時から憧れの騎手でしたね。勝負服も似ています。
はい、藤野さんと鈴木恵介さんのレースはいつも見ています。ゴール前や障害を見て、何か盗もうとしています。よく調整ルームでビデオを見ています。
ではオッズパークのファンに向けて一言お願いします。
長澤幸太騎手の舞(そりの上で舞うように馬を追う)を見てください(笑)。というのは冗談として、今はコロナ禍ですから、競馬場に来て迫力を見てとも言いにくいし、難しいですね。中継映像やインターネットで熱いレースを感じてほしいです。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香