ばんえい競馬で昨年12月、約18年ぶりに誕生した女性騎手です。年明けの20回開催(1月2~9日)は10勝を挙げ連対率5割でリーディング。2月13日現在33勝で、新人の負担重量10キロ減がなくなる50勝の年度内達成も見えてきました。
素晴らしい活躍ぶりですね。
いえいえ、全然思ったようにできていないです。馬が行ってくれているだけ。まだレース前は緊張しています。20キロの減量はてきめんです。ハナ速い馬が多いですし、そのような馬を選んで乗せてくれているからです。
弁当箱(77キロの騎手重量に合わせる重量かばん)は22、23キロかな。特注です。最初は二つに分ける話もありましたが、一つで収まりました。今では持つのも慣れました。
重量を調整する"弁当箱"は特注
最近は馬券でも人気になり、レース中にファンからの声援が聞こえます。
パドックで、「頑張れよ」という声は聞こえています。返事はできないけど、心の中で頑張ります、と思っています。レース中は聞こえないですね...。人気はレース前は見ないようにしています。あとで何番人気だったんだ、って知って「買ってくれる人たくさんいたんだな」って。
馬との出会いについて教えてください。
厩舎育ちで、歩けるようになった時から馬がそばにいました。夜中、そっと外に出て違う厩舎の馬を見ていて、「千尋また来てたぞ」ってその厩舎の人にだっこされて戻ってきたこともあります。ポニーばん馬は小学2年から乗り、小学4年の時にポニョというポニーが来てからは毎日乗っていました。
軽種に乗りたくて静内農業高校に進学しましたが、ホームシックで帯広に帰ってきて、それからはばん馬一筋。サラは体が細く俊敏で気が荒い。ばん馬もうるさい馬はいるけれど、おとなしくて別の生き物のようです。
乗馬経験から、ハミを使えるのが活躍の秘訣かなと思っていますが。
いえ、関係ないです。筋肉が必要。障害の下で持って行かれたり、ゴール際詰まった時、下げれなかった(手綱を引いて反動で前に出せなかった)。馬を苦労させてしまいました。筋力アップが課題です。べん打する時も、10倍以上力が足りない。力というよりは慣れでしょうか。手綱の長さを把握しないと、絡んでぐるぐるになってしまう。
6回目での騎手試験合格でした。ばんえいは競馬学校もなく、厩務作業が忙しい中試験勉強をするのも大変かと思います。デビューの日や初勝利について教えてください。
騎手試験は合格までしばらくかかって、何度もやめようと思いました。時間を見つけてこつこつ勉強しなかった自分が悪いんです。
勝負服は父(今井茂雅調教師)の現役騎手時代と、デアリングタクトからもらいました。
デビューの日は、緊張してすごかった。震えるし、頭真っ白だし。1レースはゲート前の挨拶があるのですが忘れていて、「ちー、挨拶あるんだぞ」と言われました。
初勝利の2日目も変わらず緊張していました。この日は自厩舎の馬が多くて、厩務員がなごませてくれた。初勝利は、ラコ(ホクセイサクラコ)が頑張ってくれました。
12月11日、ホクセイサクラコで初勝利
尊敬する騎手として、鈴木恵介騎手の名前が挙がりました。
厩務員時代に乗ってもらった馬が、恵介さんに乗り変わってからは全然動きが違ったんです。恵介さんが乗ったことのない馬だったので『末脚はいいがゴール前たれる』と話したら、その日は障害を降りてから緩むことなく馬の切れ味を生かしてくれた。それからは常に騎乗を見ています。藤野騎手もテン乗りの天才です。
これまで騎乗していて、印象的な馬はいますか。
ブチオですね。あの子は本当にすごい子だな、って思います。普段は一回止まるとあきらめることが多いのですが、「ぶーちゃん」と呼ぶと、こっちを見て、それから上がっていった。自分が乗っているのをわかっているんだと思います。
逆にサクラドリーマーはこっちをじーっと見て止まって「お前だもんな」って顔(笑)。でも、サクの降りてからの脚は、他の馬と全然違う! 重い荷物積んでますよね?って聞きたくなる脚です。
ブチオ
今井騎手の馬の話はおもしろいので、今井厩舎のほかの馬の話も聞かせてください。
ホクセイサクランボは、出足が遅いのでタイムの速い今は結果を残せていませんが、ゆっくりしたペースになれば期待できると思います。
サクラヒメ、ヒメちゃんはすんごくおとなしい。隣にけんかを売られても端で「ほぇー」ってしてます。
キンツルモリウチ、ツルちゃん危険です(笑)。何もないとかわいい顔ですが、機嫌が悪いと本当に危ないです。
平地競馬も見ているようですね。注目馬はいますか。
今はサリエラです。サリオスに妹がいるんだ、しかも父がディープインパクト!と、デビュー前から応援しています。スピーディキックやラッキードリームも注目しています。三冠、すごいですよね。
では最後に、オッズパーク会員に一言お願いします。
まだまだ未熟で足りないところだらけ。それでも精一杯頑張りますので、ぜひ本場に見に来てほしいです。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
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12月4日の3歳牝馬による「第47回ばんえいオークス」(BG1)は、9番人気のダイヤカツヒメが優勝。勝利に導いた赤塚健仁騎手に話をうかがいました。
ばんえいオークス優勝、おめでとうございます。普段ほめるコメントの少ない久田調教師が「完璧な乗り方」と絶賛していました。
馬場が軽く、スタートがいい馬なので馬なりで先頭に立ち、楽に障害手前につけることができました。息を入れられ、うまく障害を上がってくれた。ゴール前15メートルくらいで脚色が鈍るところがあるので、障害を降りてから(ゴールまで)もつか不安でしたが、みんな来ないし行けるかな、と思いました。オークスは定量なのでびっくりした、という気持ちが一番。馬が一生懸命頑張ってくれました。先生は、たまに褒めてくれます。
ダイヤカツヒメでばんえいオークスを勝利
2月の黒ユリ賞は2着でした。
この時も障害の下で力を溜めて、降りてからの脚を生かせるような乗り方をしました。2歳時はまだ体ができてなかったですが、馬場が軽い時はスタートが良く、障害を降りてからの脚も良かったので、力がついてきたら活躍できるのでは、と期待していました。臆病なところがあるが、まじめで頑張り屋です。
重賞勝ちは、2014年のばんえい菊花賞を勝ったハクタイホウ以来です。先日亡くなってしまったと聞き残念です。思い出はありますか。
担当厩務員にはおとなしいが、自分は遊ばれていたなぁ。機嫌が悪いと襲ってきます。もくし(無口頭絡)が脱げて脱走して追いかけまわったことも2、3回あります(笑)。
2014年ばんえい菊花賞を制したハクタイホウ
やんちゃな馬だったのですね。帯広市内で馬車を引くムサシコマにも騎乗していました。
ムサシコマは、自分が若いころに担当していましたが、なめられていました......。まだ馬車には乗りに行けてないんです。弟のムサシブラザーが厩舎にいるので、一緒に馬車できないかな(笑)。
2011年のデビュー以来、自分で変化したと感じるところはありますか。
まだまだ下手ですが、落ち着いて乗れるようになったかな。もっと勝率を上げていきたいです。
期待する馬について教えてください。1歳馬の馴致もあって大変そうです。
カツテルヒメ(牝2)はまだ幼くて、道中バイキ(バック)しないところもあるが、障害はいいし、降りてからの脚もいいので楽しみです。馴致は無理させないで、優しく教えていけば大丈夫。押し付けないように、だましながら教えていきます。
そうそう、キタノココロ(牝4)のコマーシャル出演を狙っています。脚を伸ばして"ヨギボー"のCMの馬と同じような寝方をするんです。妻の前では耳を絞るけど、自分にはその格好で甘えるので動画を撮ろうとするんですが、いざ撮ろうといるとうまくいかない(笑)。
想像するだけでかわいいですね。さて、出身は根室市です。
実家のそばに祖父の牧場があったので、小学生くらいから馬に触れ、騎手を目指していました。たまに帰って、競馬場に来る予定の馬を見に行きます。今は兄が牧場を手伝っていて、家族が馬好きでよく触るようになったからか、若馬でも扱いやすいです。
普段は寝ているか、馬好きな妻と牧場に行ったりしています。
2018年には、ばんえいグランプリの日に行われたイベントのゲストで来ていた新根室プロレスとも対戦しましたね。
当日は、松田騎手と村上騎手に連れていかれました(笑)。プロレスラーの"アンドレザ・ジャイアントパンダ"は威力がありました。代表のサムソン宮本さんが亡くなったと聞いて驚きましたが、根室の宣伝になるのでこれからも応援しています。
松田道明騎手(左)と村上章騎手(右)に連れられて入場する赤塚騎手
オッズパーク会員に一言お願いします。
競馬場では、若いファンを見かけるようになりました。いつも声援が聞こえています。まめに競馬場に来ると、馬の変化に気づくことがあります。毎週競馬場にきたり、ネットで見てくれたらうれしいです。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
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11月7日のばんえい第2レースでアアモンドノサップが勝ち、小林長吉調教師(62)は通算1000勝を達成しました。ナナカマド賞を勝ったタカラキングダムや、ばんえいダービー馬アアモンドグンシンなどを管理し、今後の活躍が期待されます。
1000勝達成おめでとうございます。ばんえいの世界に入られたきっかけを教えてください。
出身は芦別市です。高校卒業後、伯父(小林正一さん)が調教師だった縁で競馬場に入りました。父も山で馬の仕事をしていたことがあって、馬は身近だったんだよ。中西関松調教師のもとで厩務員になりました。
伝説の名騎手、中西関松さんのもとですね。
当時は騎手も目指していたけど、30人ほどが受ける狭き門。そのころ妻が入院して、子どもも小さかったから一度は競馬の世界をやめようかと思った。それでも「好きな仕事ならやればいいしょ」と、亡くなった妻が応援してくれた。「夢を追いなさい」って。
帯広駅内で酒屋を経営し、ばんえいを応援されていた明るい奥様のさゆりさん、覚えています。さて、厩舎開業は2004年でした。
デビューと初勝利のクロカミタカラは、調教師になりたての時にオーナーが馬を預けてくれた。北見産駒特別を勝つなどしたが、当時熱がはやって、その熱が抜けないまま若くして亡くなってしまった。そのオーナーのように応援してくれる人がいたから、続けられた。
ホクレン賞4着ですし、期待されていた馬だったのですね。2010年のばんえいオークスや2014年ヒロインズカップを勝つなど、長く活躍したダイリンビューティも印象深いです。
この馬が勝ったのは、賞金がゆるくない(下がって大変だった)時だったからね。2歳シーズン(明け3歳)に勝ったバレンタインカップは、黒ユリ賞の代わりに新しく作られたレースだったんだ。その後、黒ユリ賞は伝統のレースだからと元に戻りました。
所属馬について伺います。まずは2歳重賞のナナカマド賞を勝ったタカラキングダム、これまで連対率100%で楽しみな馬ですね。
能力検査では、他の馬に向かっていくところがあったが、気持ちが前向きになっている。この馬は、自分との戦いだね。骨格がしっかりしているが、荷物(重量)がどこまで耐えられるかな。
ナナカマド賞を制したタカラキングダムと小林長吉調教師
2018年ばんえいダービーなど重賞4勝のアアモンドグンシンは7月から休養に入っていますね。
牧場で休養していましたが、競馬場に戻ってきました。行きたい気持ちが強い馬。止まると障害が下手なところがあるが、気持ちでレースをしている。
4歳のイワキダイヤも力はあり、重賞では上位に入る。除外が続いているが、体調が安定すれば、かなり期待できる。
2019年ドリームエイジカップを制したアアモンドグンシン
今年は7月までリーディング1位でした。大事にしていることはなんでしょうか。
馬にあった調教をしているところでしょうか。インド人も5人いて、言葉が通じないところもありますが、コミュニケーションをとりながら調教しています。
先生といえば、イベントのボランティアで活動されている姿が印象的です。
外の人が目を向けてくれるようにしなくてはいけない。イベントを始めて10年以上経って、昔馬に乗せた子どもたちが、競馬場に戻ってきてくれている。当時は「幼稚園児にアピールしても売り上げは上がらない」という人もいたけど、今すぐつながらなくても、ばんえいをなくさないためにやっていかないと。小さいときの思い出にして「帯広にばん馬がある」って周りに言ってほしい。個人協賛レースを勝った時に、その協賛金を貯めて豚汁を作って、ファンに提供したこともある。500、600人は来たかな。
ばんえいがなくなって、調教師でなくなったらただの人だから。川崎競馬場のイベントはすごい人だよ。今は新型コロナウイルスでイベントはないけれど、できるようになったらまた多くの方にばん馬の魅力を感じてほしい。
長男の友貴さんが装蹄師として昨年から競馬場で働いていますね。最初は競馬場で働くことを反対されたそうですが。
学校を卒業した数年前は、ばんえいの状況がゆるくない時だったから......。社会人で、いい成績も残していたけど「それでも来る」っていうからね。今は、毎日家族で一緒にご飯を食べているよ。
オッズパーク会員に一言お願いいたします。
いい馬主さんと出会って、記憶に残るような馬を作っていきたい。今は馬を見に行く暇もないし、コロナで見て歩けない。協賛レースも、今はコロナで一緒に撮影ができないけど、馬のそばに来る感動は特別だと思うんだ。これから何年調教師を続けていけるかわからないけど、元気なうちに競馬場を去りたいね。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
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3月20日に行われたばんえい競馬の最高峰・ばんえい記念をメジロゴーリキで初制覇した西謙一騎手。人馬ともに父子制覇となりました。昨年度は124勝を挙げばんえいリーディング4位。コンスタントに勝利を積み重ねています。
ばんえい記念優勝、おめでとうございます。
ありがとうございます。レースでは普段通りに乗ることを心がけていました。帯広記念、北見記念と重賞は2着ばかりだったので良かったです。
昨年より楽に追走できたので、障害だけ気をつけていました。障害にかける前、軽くジャンプするような仕草があってやばいな、と思ったけれど馬場が軽い分辛抱して歩いてくれた。ゴール前は、横からメムロボブサップが来ていたのは見えていました。こちらも手応えはあり、止まりはしないだろうなと思っていた。接戦に強い馬です。
ばんえい記念を制したメジロゴーリキ
昨年の岩見沢記念でも、ゴール前3メートルでキタノユウジロウを逆転しましたね。1トンはいかがでしたか。
初挑戦の昨年、1トンでも堪えていなかった。自分は1週間前から触って調教していました。松井調教師は(ばんえい記念の)やり方をわかっているから任せています。去年よりは大人になった。昔は障害で止まったら寝るようなところもあったが、今年は止まっても次の腰が入っていた。性格は気分屋で、普段はやる気を出さず怒られながら調教しているよ。父のニシキダイジンも張り切って走る馬じゃないから、タイプは似ている。父ほど無理はきかないけどね。ばんえい記念を勝ち、ダイジンに近づいている。自分も父(西弘美元騎手、現調教師)が乗っていたトモエパワーから、いろいろな馬に乗せてもらってきた。1回でも勝てることは名誉。今年はメジロゴーリキで勝ち負けできるレースをしたいです。
牝馬ではヒロインズカップを勝ったアフロディーテが引退、繁殖入りしました。3歳ではクリスタルコルドも期待が高まります。
アフロディーテはえさを食べず体ができあがらなくて、手間のかかった馬です。病気もしなかった。
3歳は1頭抜けている馬(キングフェスタ)がいますが、クリスタルコルドも同じくらいになれば、と思います。レース中まっすぐ走れば(笑)。父のスピードフジは、産駒の頭数が少ない割に活躍している。現役時代は降りてから歩くのが特徴で、障害はあまり良くなかったのに、仔は障害がいい。みんな手間がかからず、触りやすい特徴があります。
ギンノダイマオー、トモエハイセイコーは今年度になってクラスが下がった。暑いのが苦手だから涼しいうちに結果を残したいです。5歳のトワトラナノココロは壁にぶつかっているところ。2歳馬はこれからです。
活躍が期待される3歳馬クリスタルコルド
コンスタントに結果を残している西騎手ですが、どのようにして騎乗技術を磨いてきたのでしょうか。
騎乗は、大河原和雄さん(現調教師、元騎手)や鈴木勝堤さん(元騎手)などが乗っているのを見て覚えた。言葉で聞いてもわからないから。デビューして2、3年で、いろいろと考えるようになったよ。周りの馬の脚質もだし、人間の心理も、無理しても先に行く人、馬に負担がかからないようにする人、というように大きく分類している。周りばっかり見ている。
昔はがむしゃらに乗っていた時代もあった。そのころは肩や腰に負担があったが、今は体を痛めてまでは乗らないように気をつけています。とはいえ結果は出さなくてはいけないからね。父の存在もある。終わってからならなんとでも言えるから、後悔しないように乗るだけです。
今年度からそりも黄色と赤になり、新しくなりました。勝負服の赤は同じですね。
あはは(笑)。今まではあまり目立たない色だったもんね。そりは、砂が中に入らないようになったり、すねが当たる場所にスポンジをあてたりするなど変更点がありました。
競馬場も、以前に比べたら景気はよくなってきています。厩舎に限らず、どこも人手不足の時代ですが、競馬場は、朝早いし時間制限はあるけれど、会社勤めに比べたら気楽にできる仕事だと思いますよ。
昨シーズン限りで引退したアフロディーテ
オッズパーク会員の方に一言お願いいたします。
今年の目標は怪我なくレースに乗ること。ばんえいは、目の前で見るのが一番だと思いますが、来て、とはまだ強く言えない状況ですね。早く、多くのファンの皆さんが競馬場に来れるよう願っています。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
父は名騎手の西康幸元調教師、叔父は西弘美調教師、いとこは西謙一騎手という西将太騎手(32)。2011年にデビューし、1月29日に通算1,000勝を達成した。2021年度はすでに117勝を挙げ(2月14日現在)、6年連続100勝超えとコンスタントに勝ち星を重ねています。
(写真:ばんえい十勝)
1,000勝おめでとうございます。これまで思い出に残ったレースはありますか?
どれも思い出に残っているからなぁ......。ふと思い出す、といえばばんえいオークスの2レースかな。父が亡くなったんだな(康幸さんは2020年11月逝去)、って思います。
ナカゼンガキタ(2017年)とアバシリルビー(2020年)ですね。ナカゼンガキタはゴール前の激しい追い比べを制し、康幸調教師に初重賞をプレゼントしました。
そうですね。ナカゼンガキタは素直で一生懸命。お嬢様だよ!その前のばんえい菊花賞は0秒2差の2着で、悔しくて父に聞いたら「追い切るしかない」と言われ、この日(ばんえいオークス)は追い切りました。
アバシリルビーは、父が亡くなって約2週後のレース。父は春から入院していて、11月に亡くなりました。この時は、父に「いいところ見せられたかな」って思っていました。アバシリルビーは障害がいい馬ですね。
2017年ばんえいオークスをナカゼンガキタで勝利。右が西康幸調教師
フクイチで1995年の農林水産大臣賞典(ばんえい記念)を制するなど、名騎手だった康幸調教師に言われたことで、心に残っていることはありますか。
「前でレースしなきゃ勝てねえよ」って。うまくいかなかったら、この言葉を思い出す。それで勝ったレースはいっぱいありすぎます。それがあっての1,000勝だと思います。
西騎手の先行しているイメージは、そういうことだったのですね。では、今の注目馬を教えてください。
アアモンドグンシンです。すっごい頑張り屋さん。どうやって褒めたらいいかわからないくらい、頑張っている。最近は調子いいんじゃないかな。馬に任せっきりです。2月14日のウィナーズカップで3連勝しましたが、ハンデもきつかったから堪えたと思います。頑張ったな、って自分や厩務員さんで声をかけました。
1月の帯広記念で3着となったアアモンドグンシン
3歳はサウスグリンかな。おとなしくて「なでてなでて」ってアピールしているのに、油断して目を離すといなくなっている(どこかに逃げている)。レースに行ったら障害に対して一生懸命。まだ体が小さくてついて行けないところがあるけど、大きくなったら楽しみ。クマモトイケメンも一生懸命な馬だよ。ブチ毛でかわいく見えるけど、しぐさがイケメンなんだよね(笑)。「俺かっこいいだろう」って横目で見てくる。
北央産駒特別を勝ってヤングチャンピオンシップに駒を進めたサウスグリン
レースで気を付けていることはありますか。乗り変わりに強い印象があります。
他の騎手と同じ乗り方ではなく、強めにレースを進めますね。レース展開については、馬任せ。疲れたな、と思ったら息を入れたり。行けるところまで行って休めば出て行くし。調教はレースに行ったら楽かなと思って、強めにやることが多いです。気を付けているのは「楽しく乗る」。もちろん一生懸命に乗っていますよ。思い通りに行かないと悔しいし、それであとで悩むくらいなら、楽しく乗るようにしたいんです。
西騎手は馬が好きで、競馬も好き、という印象があります。今は厩務員も少ないですから、西騎手が感じる楽しさを若い方にも感じてほしいですね。
伝えたいんだけど、乗っている人間にしかわからない楽しさがあるんです。静内農高時代には乗馬もしていましたが、背中に乗るのもばん馬の方がいい。静内に行って乗ることもあるが、景色、迫力が違う。圧迫感、というのかな。
スポーツマンが感じる楽しさですね。ばん馬は乗馬より、そりに乗ってみたいです。
そりに乗る楽しさ覚えたら、もうやめられないよ!
逆に楽しくない、って思うことはあるんですか。その時はどうするんでしょう。
「乗っていて楽しくない」と思うことはあります。その時は、モチベーションを高める。ケン(西謙一騎手)や、阿部(武臣)騎手など、楽しく乗ろうとするタイプの人と話をすると、モチベーションが上がります。あとは音楽を聴く。ノリのいい曲なら何でも。YouTubeでお薦めに出てくるので、誰、ということはなく日本の面白い歌詞の曲などを聴きます。
今は今年デビューする馬の馴致をしている時期かと思います。ばん馬は1から教えますから、若馬の調教は大変でしょう。
ケンとやっているけど、大変だとは思わないんだよな。みんな大変だっていうけど。教えるのが楽しい。ばんえいは、競走馬になるまでを1からずっと見ていられる。「この馬こんなに覚えるのが早いのか!」って。
初重賞(2012年ばんえいダービー)のアサヒリュウセイの子はまだ見ていないんだよね。思い出の馬なので、あいつみたいにきれいな色なのかな、って楽しみにしています。
休みの日の過ごし方を教えて下さい。釣りでしょうか。
秋になれば、鮭を釣りに海に行くけど今はシーズンじゃないから休みです。鮭とばを作るのが楽しいんです。部屋の踊り場に干していると、いいにおいがするからか厩務員さんがやってきて、なくなっていきます(笑)。なじみやすい味がいいと、めんつゆで味付けをするんです。あとはいくらや鍋も作ります。鮭はなげる(捨てる)ところがないからね。食べることも好きだし、楽しく料理しています。
競馬場で売ったらファンが買いますね(笑)。さて、勝利騎手インタビューを見ると、髪型もさまざまですね。
美容室で「かっこよくしてください」と言ったら、切ってくれるんです。一生に一度パンチパーマをしてみたくて、今パンチなんです。
坊主頭に見えますが、パンチなんですね。では、オッズパーク会員の方に一言お願いします。
楽しく乗っている姿を見てほしいです。自分が感じている馬や競馬の楽しさを、同じように感じてもらえればと思います。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香