
3月16日、ばんえい競馬の大一番、第57回ばんえい記念が行われ、1番人気のメムロボブサップが優勝。前日に主戦の阿部武臣騎手が怪我のため、ばんえい記念初騎乗となる渡来心路騎手に乗替り。メムロボブサップは、ばんえい競馬史上8頭目の賞金1億円獲得となりました。
おめでとうございます。今の気持ちを聞かせてください。渡来騎手は珍しくガッツポーズでした。
渡来:すごくほっとしているし、うれしいです。ばんえい記念なので(ガッツポーズしました)。すごく嬉しかったですし、本当に武さん(阿部騎手)と坂本調教師と馬主さんと、そして応援してくださるファンに、すごく感謝しています。
坂本:ありがとうございます。(感動で)言葉がでないくらいです。帯広記念以降は、これにレースを絞ってきました。前走のチャンピオンカップ(トップハンデで勝利)は、『ちょっと無理しすぎたな』という気持ちはあったのですが、後遺症も残らず、今日のレースでも前へ進んでくれた。阿部騎手が、馬の筋肉が痛まないようにトレーニングを重ねてやってくれた。すごく感謝しています。
(通算収得賞金)1億円については、気にしてはいなかったです。放送などで言われて厩舎では話題になったのですが『いや、そこを考えるな』と。一歩ずつ進んで前に行く、という気持ちを常に考えていました。
昨年の借りを返したというよりは、敗戦がすごく良い経験になりました。馬が冷静になっていた。レースを馬が心得ているんです。すごい馬です。
最高のレースで、騎手時代にはなかったくらい緊張しました。見る方が疲れます。
直前で、阿部騎手の怪我がありました。
坂本:突然で、ちょっとパニックになりました。渡来騎手も冷静に馬を持ってくるタイプなので、一番いい乗り方ができるかな、と思い、その通り冷静に乗ってきました。
いつもとはちょっとゲートの出が違ったんです。過去のビデオを見たらわかると思いますが、メムロボブサップは、出る瞬間を馬が決めているんです。渡来騎手は、手綱に力が入って下げ気味にしていたのが、阿部騎手と違うところでした。馬も阿部騎手との違いを感じ取ったと思います。
私はハナを引っ張るつもりで見ていたのですが、(いつもとスタートが)「あ、違う」と。渡来騎手もそこで気がついて冷静でした。それは重賞を乗りこなしている騎手の勘。素晴らしいものがあったと思います。
渡来騎手は、騎乗が急遽決まりました。
渡来:本当に俺でいいのかな、と。心臓バクバクで、プレッシャーでどうしようかな、って感じでした。プレッシャーを感じすぎて、一周回ってやるしかないな、という気持ちになりました。自分に声がかかるとは思っていなかったです。(これまで乗ったことのない)ばんえい記念ですし。
(阿部騎手が怪我をしたとき)救急車が来ていたのは聞こえたのですが、乗替りも発表で知り「どうしようかな」って、プレッシャーがすごくて。
坂本:そう言いますが、(渡来騎手は)わりに図太いですよ。
渡来:緊張はしなかったのですが、プレッシャーで。でも、前日の夜は思ったよりぐっすり寝れました。
レースについて教えてください。
渡来:雪が降りましたが、荷物が1トンなので焦ることなく慎重に、しっかり溜めていこうと思っていました。
強い馬で、武さん(阿部騎手)がしっかり仕上げてくれていました。スタート出た瞬間に「完璧な馬だな」というのがわかったので、馬に任せ、呼吸を見ながら乗りました。初めての1トンで、どのように乗ったらいいのか全くわからなかったですが、もうボブサップが走りたいように全部任せました。この馬が一番レースをわかっているから。
完璧な馬、とは具体的には。
渡来:スタートの良さ、1トン引っ張っても道中しっかりハミを取って騎手の言うことを聞いてくれるところ。前に行きたがる闘争心もあるし、障害力もあるし、降りてからの脚、全てがそろっている馬だと思います。
第2障害を一腰で上げたいと思い、障害の下でしっかり息を入れることを意識していました。障害は先に他の馬が越えましたが、馬が完璧だったので焦ることはなかったです。降りた時の勢いがあったので勝てるな、と。ゴール前もまだ余裕がありそうだったので、このまま止まらずに行ってくれるな、と思っていました。1トンですし、追い詰めてもつらいかなって思って(無理に追わなかった)。
初めてのばんえい記念はいかがでしたか。
渡来:急遽決まったので初めてというより、プレッシャーの方が大きくて。観客の多さなどは気にしなかったです。
直前の乗り代わりでしたが、短い間に準備したことはありますか。
渡来:何もしていません。坂本調教師が当日の朝仕上げてくれて、それまでも武さんが仕上げてくれていた馬です。
坂本:渡来騎手は一回も触らず、レースで初めて乗せたんです。これまでほとんど阿部騎手が調教を付けていて、私は健康管理に回っています。私が調教をつけたのは過去4、5回くらいかな。当日の朝は、渡来騎手も『攻め馬をする』と待っていましたが、私がやりました。馬は完璧ですから、あとはレースでの乗り方次第だと。
合図は人間が馬に伝えるのではなく、馬が出すもの。渡来騎手の乗り方もわかっていますし、馬の仕上げも私の中で考えているものがある。いちいち説明するようなレベルの騎手ではないですし、どうやって乗りこなすかを見ていました。
阿部騎手に伝えたい思いはありますか。
坂本:伝えなくてもわかっていると思います。
渡来騎手は、2020年にメムロボブサップに騎乗しています(阿部騎手がホクショウマサルに騎乗したためで、この時が過去唯一阿部騎手以外の騎乗)。
渡来:その時から強いなとは思っていたんですけど、やっぱり強いです。そのときよりは力は断然付いていますし、レースを覚えているというか、馬が自分でしっかりレースをわかっている感じですね。
坂本:それに気づいたということは、すごいジョッキーになってきたってことだ。
渡来:そんなことないですよ(笑)。
坂本:渡来騎手は追う回数は多くないけど、ああ見えて汗をかいているんです。ものすごい緊張感で、こんなに寒い日でもスタート前は寒くないんです。私も経験がありますから。
渡来:そうですね。(レースが終わって)表彰式の時は寒かったです(笑)。
成長を感じるところはありますか。
坂本:私と違って(笑)、成長が著しい。昔はやんちゃなところがあって、厩務員に危ない、と言われるくらいでした。今では、自分が歩くのを待っていてくれる。馬房に行ったら振り向いてくれるんです。私に対して優しい馬だと思っています。
まだ現役は続きますので、このまま健康を保っていきたいです。来年度は、目標を(まだ勝てていない)帯広記念に絞りたいと思います。今日のボブサップに感謝しています。皆さんの応援があったので、ボブも応えてくれたと思います。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
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昨年デビューしたばんえい競馬の新人騎手の一人、中原蓮騎手はこれまで26勝(2月24日現在)。連対率は3割、勝率も1割6分。2月9日には1~3レースで3連勝するなど勢いを見せています。
素晴らしい活躍ぶりですね。
想像したより乗せていたただいています。新人騎手の10キロ減量は効いているかな。最初のころは雨や雪が降って馬場が軽く、いい馬に乗せていただきました。
1月中旬からコース全体にロータリーハローをかけ、馬場が変わってから乗り方が難しくなりました。重い馬場は、道中の息の入れ方が難しい。攻めきれずに終わってしまうこともあります。
レースを見てもわからないのですが、聞いたら教えてくれる騎手ばかりです。聞いてよかったこともありますし、聞いてできないこともあります。
最初はなんであんなに勝てたんだろうって思います。1着が続いたら、次から3倍以上乗せてもらえるようになって緊張感が増し、プレッシャーで具合悪くなりました(笑)。勝たないといけない世界なので。
高校時代、金田厩舎で馬房掃除のアルバイトをしていたんですよね。
小、中学校と金田調教師の三男(駿人さん)と仲がよく、いつも遊んでいました。高校時代はホテルでアルバイトをしていましたが、コロナ禍でできなくなったタイミングで、「働く人が少ないから」と駿人に誘われました。外で動くのは好きなので始めましたが、昔からの友人が、馬を触っている姿は「すごいな」と印象に残りました。自分はまだ馬が怖かった。駿人にいろいろと教えてもらってここまで来ましたし、金田調教師や金田利貴騎手が馬を扱う姿にも憧れました。競馬場に来てからは4月で4年になります。駿人と仲がよかったですが、自分が騎手になるなんて考えたこともなかった。アルバイトをしていた時でさえなかったです。
騎手試験は3回目での合格でした。
最初は騎手になるのは難しすぎると思い、担当馬が勝つために厩務員として考え、仕事をしていました。騎手を目指したのは、目標があった方が楽しいし、30代でも騎手になった方がいる中で、せっかく若いうちにこの世界に来たんだから、くじけても大丈夫だし、挑戦すべきかな、と。親は「やりたいことやってほしい」と自由にやらせてもらいました。同級生に負けるのがいやだった、というのはあります。
駿人と遊んでばかりで勉強をしてこなかったので、勉強の仕方がわからなかったんです。でも騎手になるために勉強はやらなくてはいけないことだし、結果は自分次第。厩務員になってすぐに騎手試験の勉強会に参加させてもらいました。試験は勉強したところが出たかな。運もありました。新人の大友一馬騎手とは「先に勝った方がご飯をおごる」という話をしていて、同じ日に勝ったので一緒にご飯に行きました。
運は大事ですね。実技試験の前には練習もしていました。
最初に走路に入って騎乗したことは覚えていないです。毎回乗っているうちに、鈴木恵介騎手などが「こうした方がいい」と的確にアドバイスをくれました。そのおかげで、乗るごとにほめてくれるようになりました。一番言われたのは、手綱の長さです。最初に間違えるとなかなか直せないから、扱いやすい長さを覚えておけと。道中で、手綱を止めて、下げてとする時に長さが違うと時間がかかるんです。「時間取られたら負けるぞ」と言われました。手綱の余った部分で馬の臀部に気合いを入れる技術はあとでいい、と。試験は緊張しました。
勝負服はどのようにして決めましたか。
利貴さんの袖青・白二本輪をもとにして、最初は胴は黄色と黒が逆にしていたんです。でも利貴さんに似ているということで逆にしました。今思えば目立つのでいいかなと。表に出たくないタイプなんですけどね。尊敬している西将太騎手の山形にしています。
将太さんは、障害を降りてからの追い込みがかっこいいです。道中の息の入れ方は藤野さんがすごくて、担当馬が乗るとなるとワクワクします。将太さんとはいつもご飯に行ってます。特別勝ちをしたときは、調整ルームで軽くお祝いをしてくれました。
デビュー3戦目で初勝利でした。
デビュー戦のキュートアイズはただゴールに馬がつれていってくれました。初勝利のパワーハンターは担当馬なんです。現役馬の中で一番長いので、うれしかった。あとでレースを見返したら、このペースでよく頑張ってくれました。俺の初勝利を獲ってくれました。
思い出の馬は。
厩務員時代でもいいですか。アバシリルビー(2020年ばんえいオークス)です。この時に将太さんかっこいい、と思いました。重賞を経験させてくれたし、健康管理を学ばせてくれました。頭が良くて優しい馬。ガラなどの道具をかけるときは頭をさげてくれるんです。懐っこくて仕事を理解しています。レース行くときに振り落とされましたが(笑)。
デビューして少し経ってから、すでにスタンドからは「蓮!」と声がかかっていました。聞こえていましたか。
10コースの時は聞こえます。うれしいですね。上半身がまだ薄っぺらいので、鍛えないといけません。将太さんやばいです。肩幅おかしい。騎手はみんな上半身の筋肉がすごいんです。(渡来)心路騎手が一番筋肉質なんですよ。(自分は)身長がない分(166センチ)、動きを大きくして馬を動かしたいです。
帯広出身ですね。オッズパーク会員に、おすすめがありましたら教えてください。
ひいじいちゃんは競馬が大好きで、4市を回っていたそうです。生まれたころにはいなかったのですが、生きているうちに見せたかったです。じいちゃんも競馬好きで、声援が聞こえます。ラーメン店の「麺蔵」は、じいちゃんが昔経営していたラーメン店なので行ってほしいです。帯広はばんえい以外なにがあるかな。何を食べても安くておいしいですよ。
ばんえい競馬は、画面で見るのと、生で見るのとでは馬のかっこよさが倍以上違うと思います。ぜひ生で見にきてほしいです。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
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2023年度(2023年4月-3月)は135勝でばんえいリーディング2位となり、2024年度(2024年4月~)も2位につけている西将太騎手。1月2日の帯広記念ではコウテイを重賞初制覇に導いた。2016年度からコンスタントに年間100勝以上挙げ、活躍を続ける。
帯広記念の勝利、おめでとうございます。
ほっとしました。いつもあと一歩足りなかったから、1着でゴールできてよかった。馬のペースを心がけてレースを進めました。障害は上がってくれる馬だから心配はなかった。それからは、ここまで来たから『頑張ってくれ』と。思ったより馬場が軽かったからなのか、900キロという(高重量の)走りをしていない。調子も良かったんだろうし。性格は、一生懸命、障害上手。のんびりしているかな。パドックで口をパクパクするところ?気をもんでいるんだと思う。勝ったとき?『またインタビューか』って(笑)
メムロボブサップとはハンディ差もありました。思い通りの展開でしたか。
何も考えていなかったです。いろいろなことを考えるより、コウテイと自分。どのレースも周りは意識していません。自分と、乗っている馬の会話だけでレースをしている。それによって、満足いくレースをしたいと考えています。
帯広記念でコウテイを重賞初制覇に導く
いつもにも増して今年度は勢いがありますね。騎乗数も今年度トップです(1月20日現在)。
いままでよりは、自分が落ち着いているな、と思います。力を抜いてレースに向かっている。今季は春から「今年は力まない!」って決めました。頑張って負けたら悔しいから、力まずに行こうと。自分の中では、毎年の目標として『去年より勝ちたい』という思いがあります。騎乗数については、気づいたら増えていて、恵まれています。
体格ががっしりしているのは、ばんえいでは有利だと思います。
レースでは、力でしっかり押さえることはできると思います。追う時に、体を低くしているのは無意識ですね。体重制限については、レースが近くなったら野菜を多めにしています。
あらためて、大事にしていることは。
馬がいつ止まりたいか、というタイミング。その時によって違うから。馬のリズムを崩さないようにしています。「馬の感じ」でレースを進めることです。
手綱一本で、馬の気持ちをくみ取ることって、すごく難しいと思います。どのようにしているのですか。
うーん......。スタートから道中走っていたら、止まりたがるタイミングがある。だらけて見えるな、というときは気合いは入れます。ハミもあるけど......、手綱から伝わってくる。3メートル先だけど、馬とつながっているのは手綱しかないから。経験で、伝わってくるものがあるんです。
騎手ではないとわからない感覚なのですね。
父(西康幸調教師)に教えてもらったことは大きいです。今になって、馬の扱い方や騎乗について、言っていたことが理解できるようになりました。ここ、2、3年くらいかな。入院しながらも、毎回レースを見ていてくれました。生きていたら(2020年11月逝去)、だめなところをああすれ、こうすれ、と言われていると思う。
意気込みを聞かせてください。
頑張れるだけ頑張るしかないなー。このレースというのはない。勝たせたい、というよりはリズムを大事にしたい。乗っているのは楽しいよ。
休みはどうしていますか?
最近忙しいからな。釣りのシーズンも終わったし、体を休めています。乗馬もしたいんだけど。午前4時半には起きて、ズリ引きを中心に行っています。
騎乗が多いですもんね。新人騎手も頑張っています。中原騎手が尊敬していると聞きました。
頑張っているな~、とは見ています。厩舎が隣で仲良くなりました。身近な存在で、仲がいいんです。釣りにも行きますし、気が合う。レースのことは聞かれたら教えるけど、俺のこと目標にするなと言ってます(笑)
いつでも一生懸命な、西騎手の姿勢が伝わっているのでしょうね。さて、コウテイはばんえい記念に向かいます。オッズパーク会員に一言お願いします。
これからも高重量で力を発揮してくれると思う。ばんえい記念もチャンスはある。ハンデないからね。調子いいから楽しみだ。
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※インタビュー / 小久保友香、写真/ 小久保友香、小久保巌義
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12月7日、3名の新人騎手がばんえい競馬でデビューした。大友一馬騎手はばんえい初の親子三代騎手として、祖父、父と同じデザインの勝負服をまとう。12月23日現在、5勝を挙げ、人気薄も上位に持ってくる活躍ぶりだ。
素晴らしいスタートですね。練習を見ていた時からきれいなフォームだなと思っていました。あらためて、騎手試験合格おめでとうございます。
いえ、まだまだ下手です。合格については、仕事を教えてくれた厩務員のみんなやアドバイスをくれた騎手、支えてくれた家族のおかげです。感謝の気持ちを忘れずにいたいです。
父は大友栄人調教師、祖父は大友榮司元調教師で、その父は大友栄調教師ということで騎手としては三代目、馬とのかかわりという点では四代目。親子三代はばんえい初です。それでも、馬に触ったのは昨年厩務員になった時が初めてだったそうですね。
小1から大学4年まで、サッカーを頑張っていました。子どものころは4市開催だったこともあり、ほとんど厩舎に行ったことはなかったです。年末年始に集まったり、夏休みは岩見沢に行くくらいかな。小学生の頃、スーパーペガサスの表彰式(2002~05年NARグランプリ・ばんえい最優秀馬)で、東京に行ったことは覚えています。親にも、馬の仕事をしろというようなことは一度も言われませんでした。
それがなぜばんえいの世界に。
関東の大学を卒業してからは北海道に戻って営業の仕事をしていました。そこでお客さまに家族の話をすると「すごい!」と言われ、特に調教師よりは家族が元騎手、ということに驚かれました。自分にとっては当たり前だったのが、特殊な仕事なんだな、と気づいて「挑戦したいな」と騎手を目指し昨年(2023年)6月、厩務員になりました。営業の仕事をしている人はたくさんいますが、ばんえいの騎手は世界でここにしかない、という特別感があります。
ばんえいを知る人が増えたということですね。
昔に比べたら情報発信が増えたので、知っている人は増えたのだと思います。帯広単独開催になり、今では観光地ですからね。
周りは驚いたでしょう。
仲のいい友人には話していましたが、知らない人からは驚いた、と連絡がきました。身内でも驚いている人は多かったです。
騎手になったことは、祖母が一番喜んでくれました。騎手になった姿を見せることができてよかったです。自分が馬の仕事をしないと、馬の家系が途切れることになりますから。
調教師の息子、といっても初めての馬の仕事は大変だったのではないでしょうか。
朝が早いのは最初は大変でしたが、慣れました。楽しさのほうが大きかったです。担当馬が1着を獲ったり、勝つために調教やえさをどうしたらいいかと考えたり、学ぶことばかりです。厩舎に来て、父と話すことも増えました。
それはよかったですね。厩務員時代に思い出の馬はいますか。
コウシュハハイジーは初めて担当した馬でした。最初は言うことを聞いてくれなくて、わがままなところはありましたが、最後のほうはなついてくれて、かわいかった。体の半分くらいをなめてきました(笑)。ハイジーが仕事を教えてくれました。
そして12月7日、デビューを迎えました。その前にはお披露目式もありました。勝負服は、父、祖父と同じデザインですね。
生地の違いで色は少し違って見えますが、同じ勝負服です。初日は地元ということもあって家族や親戚、同級生が来てくれました。
初戦は3R、ブルーサファイアで2着。素晴らしい追い込みでした。
あまり馬との呼吸が合っていなかったです。馬が頑張ってくれました。船山騎手からスタートについてアドバイスをもらったのですが修正できなかったです。緊張して、必死だった感じです。サッカーをやっていたころから緊張してあわててしまうところがあるので、落ち着いて、冷静にレースを進めたいと思います。
2戦目の5R、ミンナノユメヲノセで初勝利です。7番人気でした。その後の活躍も素晴らしいですね。
馬のおかげです。初戦よりは少しは落ちついて乗れました。ゴールした時はわからなかったですが、周りに言われて気づきました。
まだまだ下手です。第2障害を降りてからやペース配分、ハミの当て方など、自分の中でうまくいっていない。まだ経験が浅いので、もっと馬のことを知らないと、と思います。騎手になって、厩務員の時よりも、操作や息づかいなど勉強すること、考えることが多くなりました。これからの日々も勉強です。
憧れの騎手、参考にしている騎手はいますか?
鈴木恵介騎手は憧れです。僕が2歳くらいの時に、会っていたようなのですが記憶はないんです。アドバイスをしていただくこともあります。赤塚騎手も、体型が似ているので参考にしています。自分の身長が163センチなので、(馬に対して)体を大きく見せなくては、と思います。
長年サッカーをされてきたことがプラスになったと感じることはありますか?
忍耐力、でしょうか。営業の仕事もそうですし、キャプテンだったサッカー部時代など、うまくいかないこともある中で忍耐力はついたと思います。礼儀も勉強になりました。
では最後に、オッズパーク会員の方に一言お願いいたします。
ばんえい競馬が世界でここにしかない、というのはすごいことだと思う。自分もそれが理由で競馬場に来ましたし、それを生で見られるのは魅力です。馬は大きいので、テレビよりも生で直接見た方が絶対いいと思います。足を運んで、見に来てほしいと思います。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
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昨年度、ばんえい記念を含む196勝を挙げて14回目のリーディングに輝いた鈴木恵介騎手が、7月28日第5レースをレイリーキングで勝ち3500勝を達成しました。ばんえい競馬史上3人目、現役3人目で、デビューから26年6カ月での達成は藤本匠騎手の30年8カ月を更新しばんえい競馬史上最短。騎手生活27年目を迎えるトップジョッキーに話を聞きました。
3500勝、重賞も99勝の鈴木騎手ですが、この中でも思い出に残る馬、レースを教えてください。
うーん......、ばんえい記念のニシキダイジンかな。重賞を勝てばいつもうれしいです。オレノココロはテスト(能力検査)からずっと乗っていましたし。いい馬ばかりだった。
ばんえい記念は勝てなかったけどミサイルテンリュウは、障害に先に行って、どこまで逃げられるか、という先行型。それで勝つのは難しく、勉強になりました。それは、降りてからゴールまでが近く、先手を取らなくてはいけない今の帯広の勝ちパターンでもあります。
名馬が多すぎて、私も誰の話にしようか絞れないです。今でこそばんえい記念の第2障害を一腰で上がる馬も増えましたが、私はナリタボブサップ(2010年)を思い出します。
今よりも重い馬場で、ばんえい記念を一腰で上げた時は自分でもびっくりした。
いろいろなタイプの馬がいます。センゴクエースはデビュー時から強かった。オレノココロは、最初は上位10頭に入ると感じてはいたが、あとで成長する馬だと思っていた。
キングフェスタもうるさいところがあったが、休ませながら大事に使っている。大事にしすぎるくらいで、もまれ方が足りないかも。少し体重が減りましたが、今は戻って動きも良くなってきました。今後、メムロボブサップなどの引退が近くなった時に盛り上げる馬がいないと、ファンもおもしろくないので活躍してほしいです。
2024年3月17日、ばんえい記念をメジロゴーリキで制した
恵介騎手に乗せたい、というオーナーも多く、その魅力ってなんなのかな、といつも考えています。
馬のハミざわりは普通の人よりは敏感だと思います。サラブレッドより手とハミまでの距離は何倍も遠いけど、手綱をつかんで伝わるものがある。
ハミと手綱を持つ手は、1馬身ほどの距離があると思います。しかも手綱はピンと張らず、緩んでいますよね。指に伝わるんですか。
指、手のひらに感覚が来る。ゲートを出た瞬間、馬が行きたがるくらいのちょうどいいハミざわりがあるんです。ほかの騎手がハナ行かない馬でも自分は走らせることができる。言ってできるもんじゃない。「鈴木恵介のハミ」って感じ。
ハミざわりは義父の鈴木勝堤元騎手に教わった、という話を以前聞きました。それをずっと大切にしているのですね。敏感なのは、鍛えたからでしょうか。
手綱で叩いただけで勝てるなら、誰も苦労しない。感覚は、何歳くらいかな......リーディング獲って何年もたって......30代半ばにすっごく感じるようになった。平地競馬と同じくらいの感覚で、長い手綱でも同じような感覚で伝わる。
すごいです、横から見てわかるもんですか。
馬がハミに頼ったときは、横で見ていてもわかります。
さて、これからは重賞100勝のメモリアルに期待できる馬たちが控えています。
マルホンリョウユウは、馬場が軽くなったら他の馬が出てくる(有利になる)から、重くなれば期待しています。2歳のときから見たら大人になった。油断はぜっっっったいできなかった。
若い馬など、気性の激しい馬への対処法というのはあるのでしょうか。
勝ちにいくのはもちろんだけど、まず、レースを覚えさせる。レースでは止まって、下がって、まっすぐ、を覚えさせていく。小さい子どもに何かを教える感じ。大事にして、何回か教えてやれば、他の人も乗りやすい。これを覚えたら、レースでも無理がきいて、勝ちにつながる。
ツガルノヒロイモノもあと一歩です。
同世代が強いからね。いいものは持っている。普段触るより、レースの方がまじめ。攻め馬しても「やる気あるのかな?」って。レースに来て、ゲートに入ったらやる気がでる。テストの時からそうだった。最初は目立たなかったけど、いざテストになったら、思ったよりいいじゃない、って。中にはこういう馬いる。
ライジンサンは障害と2障害を降りてからの脚が魅力。今はハンディ(収得賞金で負担重量が重い)もあって休養しているけど、レースを使わないとレースボケにもなる。でもそこは大河原調教師だから、ちゃんと考えているんだろう。
2024年3月16日、イレネー記念を勝ったライジンサン
2歳馬では、マツサンブラックで牝馬オープンのいちい賞を勝ちました。牡馬では、オレノココロの産駒のココロノニダイメの活躍がうれしいです。
マツサンブラックは障害が上手になった。ココロノニダイメはまだ体が小さいので、徐々に育てたい。
ココロノニダイメ
以前、時計を読む話をされていました。
時計も読みます。重賞は特に。この馬で、この荷物(重量)、このタイム(馬場)ならこのくらいでいくんじゃないか、と。全頭まではいきませんが、ライバルもこのくらいのタイムだな、と考えます。
3500勝の表彰式が8月末に行われましたが、けがで一度延期になりました。
脚にできものができて、腫れて膿を抜いたのですが、予後が悪くて、ずっと寝ていました。今はもう大丈夫です。普段は睡眠を大事にしています。質が大事。若い時はいつでも寝られたけどな......。
若い騎手も増えてきました。
騎手もある程度受かっていかないと、バランスが悪くなる。いつかは裏方で、強い馬を作れるような調教師をやってみたい、というのも考えています。
食べ歩きがお好きだそうですね。
ラーメンが好きです。毎日食べてもいいくらい。しょうゆ派です。お薦めは、旭川だと、つるや、大吉ラーメン。ホルモン朝吉という焼き肉屋のラーメンもおいしいです。帯広だとラーメン村、とん平、久平食堂。
自分で作ることもあります。鶏ガラからだしとって。でも最近ちょっと体重をしぼらないと......。そばに変えようかな。
温泉も好きです。登別がいい。帯広は、厩舎の銭湯が新しくなってからは、ここでいいや、と思って行ってないです。サウナもありますし。
最後にオッズパーク会員の方に一言お願いいたします。
本場に来て、エキサイティングゾーンで迫力があるばんえい競馬を見てほしいです。
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