11月7日のばんえい第2レースでアアモンドノサップが勝ち、小林長吉調教師(62)は通算1000勝を達成しました。ナナカマド賞を勝ったタカラキングダムや、ばんえいダービー馬アアモンドグンシンなどを管理し、今後の活躍が期待されます。
1000勝達成おめでとうございます。ばんえいの世界に入られたきっかけを教えてください。
出身は芦別市です。高校卒業後、伯父(小林正一さん)が調教師だった縁で競馬場に入りました。父も山で馬の仕事をしていたことがあって、馬は身近だったんだよ。中西関松調教師のもとで厩務員になりました。
伝説の名騎手、中西関松さんのもとですね。
当時は騎手も目指していたけど、30人ほどが受ける狭き門。そのころ妻が入院して、子どもも小さかったから一度は競馬の世界をやめようかと思った。それでも「好きな仕事ならやればいいしょ」と、亡くなった妻が応援してくれた。「夢を追いなさい」って。
帯広駅内で酒屋を経営し、ばんえいを応援されていた明るい奥様のさゆりさん、覚えています。さて、厩舎開業は2004年でした。
デビューと初勝利のクロカミタカラは、調教師になりたての時にオーナーが馬を預けてくれた。北見産駒特別を勝つなどしたが、当時熱がはやって、その熱が抜けないまま若くして亡くなってしまった。そのオーナーのように応援してくれる人がいたから、続けられた。
ホクレン賞4着ですし、期待されていた馬だったのですね。2010年のばんえいオークスや2014年ヒロインズカップを勝つなど、長く活躍したダイリンビューティも印象深いです。
この馬が勝ったのは、賞金がゆるくない(下がって大変だった)時だったからね。2歳シーズン(明け3歳)に勝ったバレンタインカップは、黒ユリ賞の代わりに新しく作られたレースだったんだ。その後、黒ユリ賞は伝統のレースだからと元に戻りました。
所属馬について伺います。まずは2歳重賞のナナカマド賞を勝ったタカラキングダム、これまで連対率100%で楽しみな馬ですね。
能力検査では、他の馬に向かっていくところがあったが、気持ちが前向きになっている。この馬は、自分との戦いだね。骨格がしっかりしているが、荷物(重量)がどこまで耐えられるかな。
ナナカマド賞を制したタカラキングダムと小林長吉調教師
2018年ばんえいダービーなど重賞4勝のアアモンドグンシンは7月から休養に入っていますね。
牧場で休養していましたが、競馬場に戻ってきました。行きたい気持ちが強い馬。止まると障害が下手なところがあるが、気持ちでレースをしている。
4歳のイワキダイヤも力はあり、重賞では上位に入る。除外が続いているが、体調が安定すれば、かなり期待できる。
2019年ドリームエイジカップを制したアアモンドグンシン
今年は7月までリーディング1位でした。大事にしていることはなんでしょうか。
馬にあった調教をしているところでしょうか。インド人も5人いて、言葉が通じないところもありますが、コミュニケーションをとりながら調教しています。
先生といえば、イベントのボランティアで活動されている姿が印象的です。
外の人が目を向けてくれるようにしなくてはいけない。イベントを始めて10年以上経って、昔馬に乗せた子どもたちが、競馬場に戻ってきてくれている。当時は「幼稚園児にアピールしても売り上げは上がらない」という人もいたけど、今すぐつながらなくても、ばんえいをなくさないためにやっていかないと。小さいときの思い出にして「帯広にばん馬がある」って周りに言ってほしい。個人協賛レースを勝った時に、その協賛金を貯めて豚汁を作って、ファンに提供したこともある。500、600人は来たかな。
ばんえいがなくなって、調教師でなくなったらただの人だから。川崎競馬場のイベントはすごい人だよ。今は新型コロナウイルスでイベントはないけれど、できるようになったらまた多くの方にばん馬の魅力を感じてほしい。
長男の友貴さんが装蹄師として昨年から競馬場で働いていますね。最初は競馬場で働くことを反対されたそうですが。
学校を卒業した数年前は、ばんえいの状況がゆるくない時だったから......。社会人で、いい成績も残していたけど「それでも来る」っていうからね。今は、毎日家族で一緒にご飯を食べているよ。
オッズパーク会員に一言お願いいたします。
いい馬主さんと出会って、記憶に残るような馬を作っていきたい。今は馬を見に行く暇もないし、コロナで見て歩けない。協賛レースも、今はコロナで一緒に撮影ができないけど、馬のそばに来る感動は特別だと思うんだ。これから何年調教師を続けていけるかわからないけど、元気なうちに競馬場を去りたいね。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
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3月20日に行われたばんえい競馬の最高峰・ばんえい記念をメジロゴーリキで初制覇した西謙一騎手。人馬ともに父子制覇となりました。昨年度は124勝を挙げばんえいリーディング4位。コンスタントに勝利を積み重ねています。
ばんえい記念優勝、おめでとうございます。
ありがとうございます。レースでは普段通りに乗ることを心がけていました。帯広記念、北見記念と重賞は2着ばかりだったので良かったです。
昨年より楽に追走できたので、障害だけ気をつけていました。障害にかける前、軽くジャンプするような仕草があってやばいな、と思ったけれど馬場が軽い分辛抱して歩いてくれた。ゴール前は、横からメムロボブサップが来ていたのは見えていました。こちらも手応えはあり、止まりはしないだろうなと思っていた。接戦に強い馬です。
ばんえい記念を制したメジロゴーリキ
昨年の岩見沢記念でも、ゴール前3メートルでキタノユウジロウを逆転しましたね。1トンはいかがでしたか。
初挑戦の昨年、1トンでも堪えていなかった。自分は1週間前から触って調教していました。松井調教師は(ばんえい記念の)やり方をわかっているから任せています。去年よりは大人になった。昔は障害で止まったら寝るようなところもあったが、今年は止まっても次の腰が入っていた。性格は気分屋で、普段はやる気を出さず怒られながら調教しているよ。父のニシキダイジンも張り切って走る馬じゃないから、タイプは似ている。父ほど無理はきかないけどね。ばんえい記念を勝ち、ダイジンに近づいている。自分も父(西弘美元騎手、現調教師)が乗っていたトモエパワーから、いろいろな馬に乗せてもらってきた。1回でも勝てることは名誉。今年はメジロゴーリキで勝ち負けできるレースをしたいです。
牝馬ではヒロインズカップを勝ったアフロディーテが引退、繁殖入りしました。3歳ではクリスタルコルドも期待が高まります。
アフロディーテはえさを食べず体ができあがらなくて、手間のかかった馬です。病気もしなかった。
3歳は1頭抜けている馬(キングフェスタ)がいますが、クリスタルコルドも同じくらいになれば、と思います。レース中まっすぐ走れば(笑)。父のスピードフジは、産駒の頭数が少ない割に活躍している。現役時代は降りてから歩くのが特徴で、障害はあまり良くなかったのに、仔は障害がいい。みんな手間がかからず、触りやすい特徴があります。
ギンノダイマオー、トモエハイセイコーは今年度になってクラスが下がった。暑いのが苦手だから涼しいうちに結果を残したいです。5歳のトワトラナノココロは壁にぶつかっているところ。2歳馬はこれからです。
活躍が期待される3歳馬クリスタルコルド
コンスタントに結果を残している西騎手ですが、どのようにして騎乗技術を磨いてきたのでしょうか。
騎乗は、大河原和雄さん(現調教師、元騎手)や鈴木勝堤さん(元騎手)などが乗っているのを見て覚えた。言葉で聞いてもわからないから。デビューして2、3年で、いろいろと考えるようになったよ。周りの馬の脚質もだし、人間の心理も、無理しても先に行く人、馬に負担がかからないようにする人、というように大きく分類している。周りばっかり見ている。
昔はがむしゃらに乗っていた時代もあった。そのころは肩や腰に負担があったが、今は体を痛めてまでは乗らないように気をつけています。とはいえ結果は出さなくてはいけないからね。父の存在もある。終わってからならなんとでも言えるから、後悔しないように乗るだけです。
今年度からそりも黄色と赤になり、新しくなりました。勝負服の赤は同じですね。
あはは(笑)。今まではあまり目立たない色だったもんね。そりは、砂が中に入らないようになったり、すねが当たる場所にスポンジをあてたりするなど変更点がありました。
競馬場も、以前に比べたら景気はよくなってきています。厩舎に限らず、どこも人手不足の時代ですが、競馬場は、朝早いし時間制限はあるけれど、会社勤めに比べたら気楽にできる仕事だと思いますよ。
昨シーズン限りで引退したアフロディーテ
オッズパーク会員の方に一言お願いいたします。
今年の目標は怪我なくレースに乗ること。ばんえいは、目の前で見るのが一番だと思いますが、来て、とはまだ強く言えない状況ですね。早く、多くのファンの皆さんが競馬場に来れるよう願っています。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
父は名騎手の西康幸元調教師、叔父は西弘美調教師、いとこは西謙一騎手という西将太騎手(32)。2011年にデビューし、1月29日に通算1,000勝を達成した。2021年度はすでに117勝を挙げ(2月14日現在)、6年連続100勝超えとコンスタントに勝ち星を重ねています。
(写真:ばんえい十勝)
1,000勝おめでとうございます。これまで思い出に残ったレースはありますか?
どれも思い出に残っているからなぁ......。ふと思い出す、といえばばんえいオークスの2レースかな。父が亡くなったんだな(康幸さんは2020年11月逝去)、って思います。
ナカゼンガキタ(2017年)とアバシリルビー(2020年)ですね。ナカゼンガキタはゴール前の激しい追い比べを制し、康幸調教師に初重賞をプレゼントしました。
そうですね。ナカゼンガキタは素直で一生懸命。お嬢様だよ!その前のばんえい菊花賞は0秒2差の2着で、悔しくて父に聞いたら「追い切るしかない」と言われ、この日(ばんえいオークス)は追い切りました。
アバシリルビーは、父が亡くなって約2週後のレース。父は春から入院していて、11月に亡くなりました。この時は、父に「いいところ見せられたかな」って思っていました。アバシリルビーは障害がいい馬ですね。
2017年ばんえいオークスをナカゼンガキタで勝利。右が西康幸調教師
フクイチで1995年の農林水産大臣賞典(ばんえい記念)を制するなど、名騎手だった康幸調教師に言われたことで、心に残っていることはありますか。
「前でレースしなきゃ勝てねえよ」って。うまくいかなかったら、この言葉を思い出す。それで勝ったレースはいっぱいありすぎます。それがあっての1,000勝だと思います。
西騎手の先行しているイメージは、そういうことだったのですね。では、今の注目馬を教えてください。
アアモンドグンシンです。すっごい頑張り屋さん。どうやって褒めたらいいかわからないくらい、頑張っている。最近は調子いいんじゃないかな。馬に任せっきりです。2月14日のウィナーズカップで3連勝しましたが、ハンデもきつかったから堪えたと思います。頑張ったな、って自分や厩務員さんで声をかけました。
1月の帯広記念で3着となったアアモンドグンシン
3歳はサウスグリンかな。おとなしくて「なでてなでて」ってアピールしているのに、油断して目を離すといなくなっている(どこかに逃げている)。レースに行ったら障害に対して一生懸命。まだ体が小さくてついて行けないところがあるけど、大きくなったら楽しみ。クマモトイケメンも一生懸命な馬だよ。ブチ毛でかわいく見えるけど、しぐさがイケメンなんだよね(笑)。「俺かっこいいだろう」って横目で見てくる。
北央産駒特別を勝ってヤングチャンピオンシップに駒を進めたサウスグリン
レースで気を付けていることはありますか。乗り変わりに強い印象があります。
他の騎手と同じ乗り方ではなく、強めにレースを進めますね。レース展開については、馬任せ。疲れたな、と思ったら息を入れたり。行けるところまで行って休めば出て行くし。調教はレースに行ったら楽かなと思って、強めにやることが多いです。気を付けているのは「楽しく乗る」。もちろん一生懸命に乗っていますよ。思い通りに行かないと悔しいし、それであとで悩むくらいなら、楽しく乗るようにしたいんです。
西騎手は馬が好きで、競馬も好き、という印象があります。今は厩務員も少ないですから、西騎手が感じる楽しさを若い方にも感じてほしいですね。
伝えたいんだけど、乗っている人間にしかわからない楽しさがあるんです。静内農高時代には乗馬もしていましたが、背中に乗るのもばん馬の方がいい。静内に行って乗ることもあるが、景色、迫力が違う。圧迫感、というのかな。
スポーツマンが感じる楽しさですね。ばん馬は乗馬より、そりに乗ってみたいです。
そりに乗る楽しさ覚えたら、もうやめられないよ!
逆に楽しくない、って思うことはあるんですか。その時はどうするんでしょう。
「乗っていて楽しくない」と思うことはあります。その時は、モチベーションを高める。ケン(西謙一騎手)や、阿部(武臣)騎手など、楽しく乗ろうとするタイプの人と話をすると、モチベーションが上がります。あとは音楽を聴く。ノリのいい曲なら何でも。YouTubeでお薦めに出てくるので、誰、ということはなく日本の面白い歌詞の曲などを聴きます。
今は今年デビューする馬の馴致をしている時期かと思います。ばん馬は1から教えますから、若馬の調教は大変でしょう。
ケンとやっているけど、大変だとは思わないんだよな。みんな大変だっていうけど。教えるのが楽しい。ばんえいは、競走馬になるまでを1からずっと見ていられる。「この馬こんなに覚えるのが早いのか!」って。
初重賞(2012年ばんえいダービー)のアサヒリュウセイの子はまだ見ていないんだよね。思い出の馬なので、あいつみたいにきれいな色なのかな、って楽しみにしています。
休みの日の過ごし方を教えて下さい。釣りでしょうか。
秋になれば、鮭を釣りに海に行くけど今はシーズンじゃないから休みです。鮭とばを作るのが楽しいんです。部屋の踊り場に干していると、いいにおいがするからか厩務員さんがやってきて、なくなっていきます(笑)。なじみやすい味がいいと、めんつゆで味付けをするんです。あとはいくらや鍋も作ります。鮭はなげる(捨てる)ところがないからね。食べることも好きだし、楽しく料理しています。
競馬場で売ったらファンが買いますね(笑)。さて、勝利騎手インタビューを見ると、髪型もさまざまですね。
美容室で「かっこよくしてください」と言ったら、切ってくれるんです。一生に一度パンチパーマをしてみたくて、今パンチなんです。
坊主頭に見えますが、パンチなんですね。では、オッズパーク会員の方に一言お願いします。
楽しく乗っている姿を見てほしいです。自分が感じている馬や競馬の楽しさを、同じように感じてもらえればと思います。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
今年9月、ヤマトタイコーで銀河賞を制し12年目にして重賞初制覇。その後、11月にばんえい菊花賞とドリームエイジカップ、12月にはばんえいオークスと立て続けに重賞を勝ち、今年度のばんえいリーディング2位(12月13日現在)と波に乗る渡来心路騎手(32)です。
重賞制覇は今年でしたが、2018年度は勝ち星を前年の倍に増やして78勝、19年度87勝、昨年度は122勝。6月には通算500勝達成と活躍が著しいですね。きっかけはあったのでしょうか。
それが、特にないんです。何かをつかんだ、というのもない。チャンスと馬がまわってきた。運が良かったんだと思います。
デビューした2010年度は11勝で、それから30勝前後。2015年度はわずか2勝という年もありました。
はい、この年はレースには勝てない、勝てないと乗る馬もいなくなる。この時は本当に騎手をやめようかな、と思っていました。ジムに通って体力作りもしていたのですが。なかばあきらめながらも、当時人が少なかった久田厩舎に移りました。久田先生が馬に乗せてくれて勝てるようになり、他の厩舎からも声がかかるようになりました。ただ、馬にまかせた騎乗をしているだけ。帯広出身ですが厩舎育ちではない。営業をしているわけでもなく、人付き合いがいい方ではないのですが(笑)。
下積みがあったのですね。渡来騎手といえば思い切って先行する姿が見ていて気持ちいいです。
先行しているように見えますが、自分で前に行くわけではなく、馬にまかせた結果、そうなったんです。だから失敗もありますよ。ただ、逃げ切った時の印象が強いんだと思います。
そのインパクトが強かったのが、銀河賞のヤマトタイコーですね。
7番人気で、強い馬もいるから勝つのは難しいかと思っていました。ただ、ハンディも馬場も軽いので行っちゃえ、とレースをした結果です。
真面目な馬で、切れる脚はないが止まらず歩いてくれる。障害も上手です。今年は春から馬場が軽いのもこの馬に向いていた。最近体ができてきたし、先行しても障害力があるのがこの馬のいいところです。
ヤマトタイコーで重賞初制覇
そしてばんえい菊花賞、サクラヒメで重賞2勝目となりました。3週間後にはドリームエイジカップで、10歳のシンザンボーイを優勝に導きました。
(サクラヒメは)障害も良くなってきて、タイミングがいい時から乗せてもらいました。とても気持ちが強い馬。乗りやすいです。
シンザンボーイはスタートが遅い馬ですが、この日は出だしから走ってくれたので楽にレースができました。障害はしっかり上がり、降りたら歩いてくれる。10歳になっても頑張ってくれます。
牡馬や牝馬、ということは特に気にしていないです。
シンザンボーイ
「馬にまかせる」といいますが、その見極めはどのようにするのでしょうか。
スタートしてからです。「走ってるな、行きたいな」と思ったら行かせる。辛そうなら息を入れる。馬のことを考えて騎乗します。テン乗りもありますが、その時は「最近障害上がっていないな」と思ったら無理に先行せず、障害を上げるように乗るなどしています。いちかばちかが、たまたまうまくいっているんだと思います。
サクラヒメの場合は、気持ちの上で「行かない」がない。自分のレースをすれば勝てる馬です。ばんえいオークスも、先行した馬がいましたが(イオン)、気にせずに自分のレースをした結果。
馬は、一緒にレースに乗って楽しい存在。勝つとうれしいのは重賞でも普段のレースでも同じです。成績を残してこその騎手だと思います。
瞬時の判断力なんですね。自然と馬の特徴を捉えているのでしょう。サクラヒメはばんえいダービーも楽しみです。他に期待の馬はいますか。
ウンカイタイショウは、強いんだけど......。真面目だし、いいところがある馬。ただ、荷物が重くなると少し辛いところがあるので、まだ重賞では難しい。力をつけてからですね。
2歳は、ピュアリーナナセで黒ユリ賞を狙いたいです。ヤマノコーネルは年を取ってからの方がよさそう。
テン乗りでも結果を出している渡来騎手、今年はばんえい記念の出走もあるでしょうか。
ばんえい記念は負けても拍手をもらえるし、特別なのかなと思う。1トンを引くレースは経験したことがないので、どんなものなのかという興味があります。
厩務員時代には大きなけがをされたと聞きましたが、騎手になってからはいかがですか?
大きなけがはないです。ただ、最近体重制限が厳しくなってきました。年のせいか肉が落ちにくくなりました(笑)。昨年結婚して、気持ちの面ではストレスもなく過ごしています。
サクラヒメで勝った菊花賞
家庭ができたことも結果に結びついているのでしょうね。今後の目標などはありますか。
今年が良かったから、このままいい状態を続けていきたい。乗る馬を勝たせられるように。騎手は、一時期よりは賞金も増えている。頑張り次第でいくらでもよくなる世界です。
では、オッズパーク会員の皆さんに一言お願いします。
まだ「来てください」とは言いにくい時期ですが、来られるようになったらぜひ生で見てほしい。やはり迫力が違います。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
9月12日のばんえい第2レースでフンコロガシが勝ち、西邑春夫調教師(73)は1,500勝を達成しました。開業38年目、ばんえい競馬の調教師では歴代8人目(現役5人目)の快挙です。
(写真:ばんえい十勝)
1,500勝、おめでとうございます。
ありがとうございます。年齢的にも少し焦っていたので無事達成できてよかったです。
旭川市出身ですね。競馬との関わりを教えてください。
姉が競馬場に友達がいて、その紹介です。スキーで高校に行きたいという思いもあったけれど、働いてほしいと親にも言われたから中西関松さんの厩舎に入りました。ばん馬は大きいし体重もある。家に馬もいなかったし、続けていけるんだろうか、と思ったけれど慣れてきた。
ばんえい草創期の大スターといわれる、中西関松さんのもとで働かれていたのですね。どのような方でしたか。
当時、中西さんは騎手と調教師を兼業していました。名人だ。馬に対しては厳しかった。「自分が食わなくても馬に餌やれ」と言われました。大事にするのは餌やり、運動。朝の調教、昼には外に馬を出し、夜には手入れ。きつかったですね。
教えが今の厩舎にも受け継がれているんですね。
時代が変わったから。同じことをしていたら人が長続きしないから、若い人がいなくなるよ(笑)。今厩務員は3人います。
騎手生活について教えて下さい。1973年デビューですね。
少し乗ってはいたけれど、2、3年かな。乗るのは嫌いだった(笑)。調教師のほうがいいよ。
その後、1977年に中西さんが58歳で調教師専業になり、騎手と調教師の兼業が終わりました。西邑先生の調教師開業は1984年でしたね。
中西さんはものすごく喜んでくれた。開業の時には道具を回してくれたり、たくさん後押ししてくれました。開業した年に、今厩務員をしている次男が生まれたのでよく覚えています。1カ月で競馬場に連れてきたな。所属騎手と兄弟のように育ったよ。中西さんには本当にお世話になった。1989年に調教師を引退してから1年たたずして亡くなられました。
さて、サカノタイソンについてお話を聞かせてください。3歳時に西邑厩舎に転厩し19連勝しました。
大きかったな。体高もあったし。他の厩舎から移籍して来たとき「すごいな」と。3歳だけど他の馬より大きいね、とみんなと話をした。ただ心臓が弱かった。レースが終わるたびに獣医師に見てもらって、鍼を打ったりしていたよ。夏が弱かったから、岩見沢はほとんど使っていないんだ。タイムが速い競馬もあるし。大事に使われていた。
レースは騎手に任せていた。20連勝を狙っていたけれど......(春休み明けの1999年6月のレースで4着)。調子が良くなかったけれど、連勝の期待がかかっていて使わざるを得なかったからね。
初めて勝ったばんえい記念(2001年)は、最初は使う予定がなかったんだ。だから主戦の藤本騎手はグレイトジャイナーに先約があって乗らなかった(大河原騎手騎乗)。当時5歳だったスーパーペガサスが来年はばんえい記念に出てくるだろうから、と早めに使うことにしたんだ。
勝ったときは嬉しかった。自分の厩舎でばんえい記念を勝てるとは感無量。2回目のばんえい記念(2002年、初参戦のスーパーペガサスは2着)の前は、特別戦ばかり走り、考えながら使っていた。種馬になったけれど、長生きできなかったな。心臓に爆弾抱えていたから......。
ばんえい記念を制したサカノタイソン(2001年2月18日)
一昨年、ホクショウマサルが19連勝の記録を塗り替えました。正直、その時どう思われましたか。
良かったなぁ、って。あれだけレースを使って連勝するのは大変だよね。あれくらいの馬はいない。騎手も大変だったろう。
ソウクンボーイの引退式。左端が西邑春夫調教師
過去の所属馬について教えて下さい。まずは今年引退式を行ったソウクンボーイはいかがでしょう。
障害だけが難儀するんだ。ずるいところもあった。ばんえい記念は、出る馬が少なかったから無理して使ったところもあった。2歳で重賞を勝つ(2012年ヤングチャンピオンシップ)とハンディもあってその後は大変だったが、いい思いをさせてもらった。馬主さんがとてもいい人だから、大事に使うことができた。
ユミタロウ(2003年旭川記念)は力があるが、ずるいところがあったな。種馬になろうとした矢先に事故で亡くなってしまいました。ナリタボブサップ(2010年ばんえいグランプリなど重賞6勝)もいい馬だったな。強かった。
騎手時代にはキンパイやヤマサラツキーが思い出に残っています。活躍馬ではカミチカオウですね。馬主から、周りの人たちからいい人に恵まれて、幸せだと思う。真面目な馬もいたし、いろいろと教えた馬もいたね。
ユミタロウ
現在の所属馬について教えて下さい。ビールはレースの際に、枝豆などおつまみの飾りがたてがみについていてかわいいですね。
ビールはもう少し体重があればな。これからです。
フナノダイヤモンドは馬場が軽いといいが、重くなると辛いんだ。期待はしている。
1,500勝をしたフンコロガシ、馬名の意味はわからないんだよな(笑)。
1,000勝達成時は2007年3月17日、ばんえいの4市開催が終わりを告げる頃でした。
こんなに長いことできるとは。4市による市営競馬組合が解散した時にもうばん馬は終わりかな、って思ったよ。存続して嬉しかった。願わくば、もう一箇所あればいいね。でも昔のように4市で回っていたら、体力的に続けられないと思う。昔は賞金も高かったし、いい時代だった。それでもここ最近は良くなってきたよ。
最後にオッズパーク会員に一言お願いいたします。
ファンや馬主さんに本当にお世話になった。これからも1勝1勝を大事に頑張っていきます。自分が引退してからも競馬が続くように、これからも盛り上げていただければと思います。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香