2020年、44歳のベテランジョッキーが新たな歴史を刻む。これまで地方通算1500勝以上を挙げ、韓国でも90勝の金沢が誇る名手、米倉知(さとし)騎手がトルコのイスタンブールで、日本人としては初めてとなる滞在での騎乗を開始する。前例のない挑戦ゆえの苦難も予想されるが、「不安もあるが、楽しみも大きい」と話す米倉騎手に渡航前の現在の心境を聞いた。(インタビューは2019年12月)
トルコの競馬はこれまで日本とはなじみは薄いですが、行こうと決めた経緯を。
去年(2018年)、釜山(韓国)から戻ってきた後も、どこか海外で乗れるチャンスがあればと思ってました。知り合いの記者に「どこか海外で乗れるところありませんか」と聞いたところ、日本人の女性と結婚しているトルコ競馬の調教師のハサン・バーダン先生を教えてもらいました。ハサン先生はすごく親日家で、トルコで乗りたいなら歓迎するし、サポートすると言ってもらいました。それから、トルコの競馬を調べると、賞金のレベルも悪くないので、行ってみようかなと思いました。
トルコでの拠点は?
イスタンブールのヴェリエフェンディ競馬場です。ハサン先生がここで厩舎を開業しています。競馬場は外が芝で内がオールウェザー。曜日によって昼間開催とナイター開催があるみたいです。他の競馬場に遠征することも聞いてますが、どんなふうに移動するのか、まだ想像できません。
トルコでは過去に岡部幸雄、武豊、福永祐一、川田将雅という日本人騎手が招待競走で乗ってますが、未勝利。勝ったのは北関東の伝説の騎手、福田三郎が90年に挙げた1勝のみです。
中央の有名な騎手でも勝っていないと聞くと、ぜひ勝ちたいですね(笑)。トルコで唯一勝っているのが地方の騎手なんですね。失礼ながら、福田三郎さんは存じ上げておりません。
2019年6月11日、徽軫(ことじ)賞をサノラブで勝利
トルコは米倉騎手が初めてとなる滞在での騎乗。全てが初ものづくしで不安はありませんか?
もちろん、不安はあります。過去に行ったオーストラリアや韓国では先に行った方から、色々アドバイスをもらえましたが、今回は全てが一からですから。でも、過去に誰もしたことがないことをしているやり甲斐は実感できますし、自分で道を切り開く楽しみも大きいです。
トルコでの騎乗はいつまで?
当面は、金沢の開催が始まるまでの3月中旬を予定していますが、トルコでの成績が軌道に乗れば、期間を延長したいと思っています。延長は、ビザの関係で最長1年ですが。4月以降は、トルコでも日本のようにGIレース(トルコのローカルグレード)が多く行われるので、そこで騎乗できるように、結果を残したいです。
トルコでは有力馬に騎乗するチャンスはありそうですか?
行ってみないと分からないところもありますが、ハサン先生の尽力で、所有馬が今年(2019年)のGI(トルコローカル)を4勝しているアリフ・クルテル・オーナーから「乗せてもいい」と言ってもらっていると聞いてます。最初から有力馬に乗せてもらえるほど甘くはないですが、そのオーナーの馬でいいところを見せられたら、有力馬の騎乗のチャンスも出てくるので、楽しみにしてます。
トルコのレース映像は、見ましたか?
はい、見ました。長い距離のレースでも、序盤から馬を出してるなって思いました。それから9月にヨーロッパの馬や騎手が来るボスポラスカップ(国際GII、芝2400メートル)という国際レースがありますが、その2年前(2017年)のレースも見ました。この時の2着馬に乗ってるのが、今年(2019年)のジャパンカップをスワーヴリチャードで勝ったマーフィー騎手だと教えてもらいました。ヨーロッパの一流騎手と一緒に乗ってみたいですし、楽しみです。
これまで米倉騎手は韓国の釜山で90勝、オーストラリアで1勝、今年5月にはシンガポールギニー(16頭立て10着)にも1日限定免許で騎乗しています。いつごろから海外で乗りたいと思い始めましたか?
93年にデビューした時から海外には行きたい気持ちはありました。芝のレースは魅力ですし、賞金の高いレースに乗ってみたいのは騎手はみんな一緒ですよね。金沢では、なかなか中央で頻繁に乗るのは大変だし、やはり海外に目が向きました。オーストラリアに行くきっかけは吉原(寛人)君が先に騎乗したので、その話を聞いて、中央の森(秀行)先生にお願いして乗せてもらいました。韓国には、すでに日本人騎手が活躍してたので、自分も行きたいと思い、韓国馬事会のホームページの申請書を書いて手続きしました。シンガポールは騎乗馬の馬主が日本人でしたので、依頼を受けました。
海外では言葉が通じないことで不便を感じることはよくありましたか?
韓国では調教とレースの時、通訳が付いてくれましたが、ソウルに遠征した時はひとりでした。片言の英語と少し覚えた韓国語で何とか対応しました。騎手仲間とご飯を食べたり、アルコールを飲む時も、片言の英語と韓国語でした。もちろん、不便に感じることはありますが、逆に、聞きたくない話は聞こえてこないので、レースや馬のことに集中できる。その点はむしろ、海外の方がいいかもしれないですね(笑)。
トルコでは通訳は付きますか?
最初は、ハサン先生の奥さん(日本人)にお世話になりますが、韓国の時のように、ずっとは無理と言われてます。ただ、韓国やオーストラリアで1人の時にも、調教やレースで片言の英語と身振り手振りでどうにかなりましたので、今回もそれで乗り切るつもりです。
2019年も、もう終わりですが、12年ぶりに年間100勝超えで、勝率も金沢限定では3割を超えそうです。今年を振り返ってどうですか?
久しぶりの年間100勝と言っても、去年(2018年)は5月から乗り始めて79勝でしたから、それと比べると、ペースは落ちてるので、まだまだです。勝率3割も冬に高知で騎乗した時のものを入れたら、数字は落ちますし、勝率全国1位の佐賀の山口(勲)さんと比べたら全然ダメです。満足してません。
2019年1~3月には高知で期間限定騎乗
2020年に向けての抱負とオッズパークのファンに向けてメッセージをお願いします。
トルコでは、どこまでやれるかですね。自分に合う合わないは行ってからでないと分からないところもありますし、特に数字の目標とかはなく、やれるところまでやってみようと思います。金沢は冬は休みに入りますし、僕も日本を離れますが、オッズパークで昼間もナイターも地方競馬を楽しんだ後は、時差の関係で、ネットでトルコの競馬も見ることができます。日本からも声援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 松浦渉
マイルチャンピオンシップ南部杯でJRAのサンライズノヴァに騎乗し、悲願だったJpnI制覇を果たした吉原寛人騎手(金沢)。現在の想いをうかがいました。
まずは南部杯制覇おめでとうございます!
ありがとうございます。ずっとGI(JpnI)を勝つことを目標にして来たので、すごく嬉しかったですね。頑張ってくれたサンライズノヴァ、乗せてくれた関係者の皆さん、応援してくれたファンの皆さんに感謝しています。
サンライズノヴァとは初コンビでしたが、どんな印象でしたか?
パドックで初めて跨って、体も立派だし、『こんなすごい馬がいるのか』と。これまでのレースで、この馬の末脚がすごいことは見ていましたし、この日の馬場で外を回すのはキツイなと思っていました。スタートも出てくれたし、いい形で運ぶことが出来て、この手ごたえならば負けないだろうと思いましたね。
サンライズノヴァで南部杯制覇(写真:岩手県競馬組合)
念願のGI(JpnI)制覇はいかがでしたか?
やっぱり大きいですね。僕は遠征ばっかり行かせていただいてますけど、結果が出なくて苦しい時期もありましたから、続けて来て良かったなって思います。これまでにもチャンスはいただいていて、ハッピースプリント、サトノタイガー、ノボバカラでは2着の経験があって。なかなか1着に届かなかったんですけど、そういうことが全部繋がって、今回勝つことができたんだなって思っています。
毎年活躍していますけど、今年の活躍は輪をかけてすごいですね。
本当に周りの方々のお陰です。いい馬に乗せていただいているし、馬たちも頑張ってくれるので。正直、今年はもっと苦しむかなと思っていたんです。でも南関東での期間限定騎乗でも、僕自身の歴代2位くらいの勝ち星を挙げさせてもらいましたし、重賞でも結果を出すことができて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
今年はタイセイラナキラ(しらさぎ賞)、スターキャデラック(北日本新聞杯)、クレイジーアクセル(ノースクイーンカップ、ビューチフルドリーマーカップ)、ストライクイーグル(東京記念)、スティローザ(園田プリンセスカップ)、ヴァケーション(平和賞)と、かなりの数の重賞を勝っていますね。
クレイジーアクセルはグランダム・ジャパン古馬シーズンで優勝できましたし、ストライクイーグルはJBCクラシックでも見どころのある走りをしてくれました。ちょっと寄られてしまったんですけど初めての浦和でも頑張ってくれましたし、大井の外回りならばもっとやれると思います。
ストライクイーグルで東京記念を勝利
ストライクイーグルは長距離での強さが光りますね。
今後がすごく楽しみですね。以前ユーロビートに乗せていただいていて、初めて交流重賞(マーキュリーカップ)も勝たせていただいたんですけど、長距離で強いという馬はなかなか出てこないんです。ユーロビートの引退後は淋しかったんですけど、また素晴らしい馬に巡り合えて嬉しいですね。ただ、乗せていただけるのが当たり前ではないので。地元の方が乗れないという時にチャンスをいただいたりもするので、そういう時にしっかり結果を出さないといけないなと思っています。
全国で勝ちまくっている印象なのですが、勝っていない競馬場ってありますか?
姫路、佐賀、高知で勝てていないんです。佐賀は今年佐賀ヴィーナスカップでチャンスをいただいたんですけど(ステップオブダンスで)ハナ差2着に負けてしまって......。
高知で勝っていないというのは意外ですね。
これまで行く機会があまりなくて、おそらく3、4回しか乗ったことがないんですよ。でも今度チャンスをいただいたので、しっかり結果に繋げたいです!(インタビューのあと11月17日、土佐秋月賞をモズヘラクレスで勝利)
全国で騎乗するのはもちろんですが、移動自体も大変じゃないですか? 南部杯の時には台風の影響で北陸新幹線が止まっていましたし、次の日は金沢、その次の日は大井と騎乗していました。
あの時はさすがに盛岡に間に合わないのではないかと焦りましたけど、米原から新幹線を乗り継いでなんとか間に合いました。移動はもう慣れですね。ずっとこういう環境でやらせていただいているので。
全部のレースを見ているんですか?
行く競馬場は全部チェックします。それこそ移動中とかに見ることが多いですね。家にほとんど帰れないので、ゆっくり見るということはできないんですけど。でもあんまり先入観がない方がいい時もあるので、おおまかに把握する、要点を見るという感じです。
それが南部杯でもいい方に出た印象です。
そうですね。ゲートが開いたらどうなるかわからないので。その時に判断できる引き出しを持っておきたいというくらいの感覚です。あんまり考え過ぎちゃうと動けなくなっちゃうし、馬が走るんだって思って乗ってます。
数年前、期間限定騎乗や遠征で地元を空けて、リーディングを諦めるという選択をした時は相当な葛藤があったと仰っていましたが、今のご自身はいかがですか?
大きな決断でしたけど、南関東へ行った時に恵まれて勝たせてもらって、重賞でもポンポンと勝たせてもらって。そこからハッピースプリントに出会えたことが大きかったですね。その後ソルテに繋がって、目標がGI(JpnI)を勝ちたいとなっていきました。
大きな目標を達成しました。次の目標は?
GI(JpnI)を地方馬で勝ちたいという気持ちは強いです。御神本さんのように勝ちたいですね。そういう馬に乗せていただく機会も増えましたし、勝って恩返ししていきたいです。それから、地元でもうちょっと頑張って活躍したいですね。今は開催中でも重賞で他地区に行くことが多いですし、普段の調教もしていないので他の人の馬を取るということもできないですから。その葛藤は大きいです。今はどっちもということができなくて、自分の技量不足だなと。まだまだ成長したいですし、周りの方々に恩返ししていきたいです。
全国を飛び回っていますが、得意なコースを挙げるとしたら?
やっぱり盛岡でしょう。ユーロビートで初めて交流重賞を勝たせてもらいましたし、南部杯も勝たせてもらって。想い入れは強いですね。
JRAで勝ってない競馬場はありますか?
勝ってないというか、乗ってない競馬場の方が多いんですよ。行く機会がなかなかないですし。でも京都競馬場は大好きです!ネロで勝たせてもらいましたし(2017年11月26日・京阪杯)。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
いつも応援していただき、ありがとうございます。皆さんの期待に応えられるよう、これからも頑張ります!
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※インタビュー / 赤見千尋
今冬、兵庫で初めて期間限定騎乗を行った青柳正義騎手。地元に帰ると、3月25日に開幕した金沢でリーディング2位につける好調ぶり(4月25日時点)。兵庫での期間限定騎乗でどんな変化があったのだろうか。
金沢競馬がオフシーズンになる冬はこれまで福山や笠松などで期間限定騎乗をされていましたが、今年、兵庫に行ったきっかけは何だったんですか?
昔、福山競馬に遠征した時に面識ができた高本友芳調教師(当時、福山)が今は兵庫で調教師をされていて、声を掛けていただいたのがきっかけです。園田に所属できたら高本先生のところでお世話になる予定でしたが、西脇所属でということになったので橋本忠明厩舎所属になりました。
兵庫で初めて期間限定騎乗をしましたが、金沢との違いは感じましたか?
初めは違いしか感じなかったです。金沢のコースは1周1200メートルでゆったりとしていますが、園田は1周1051メートルでコーナーが急です。1400メートル戦でテンに仕掛けていくのは一緒でも、園田は金沢ほど長いこと仕掛けずに1コーナーで息を入れることを考えます。みんな折り合いに専念して、ペースを落とすことを考えていましたね。馬場も金沢だとインが有利ですが、園田では内外の傾向が変わるので難しかったです。
レース中、騎手同士の駆け引きなども違いましたか?
金沢は騎手が20人もいないので、レース中にどういう動きをするかは10年以上乗っていればだいたい分かってきます。でも園田は騎手も多いし、1レースの馬の頭数も多いので、なかなか難しかったですね。でも、僕と同世代が多くてよかったです。プライベートでは西脇所属で同年代の中田(貴士)騎手や鴨宮(祥行)騎手、大柿(一真)騎手に良くしてもらいました。金沢ではちょうど僕の世代が空いちゃってるんですよ。
2日目に初勝利を挙げ、約1カ月半の騎乗で3勝でした。
初勝利の時はいい馬に乗せてもらっていたので、結果を出せてよかったです。初めての所なので最初は焦りや不安がありましたね。最終日に勝たせてもらったアローフロストはズブさのある馬と聞いていたので、あまり気を抜かせないように注意して乗りました。レース前に新聞を見ると、2着馬と僕の馬の2頭の時計が抜けていたので、相手は1頭かなと思っていました。レースは最後まで2着馬とビッチリ併せる形。あれを負けていたら、金沢に帰れないところでした (笑)。
金沢に帰って、今シーズンは絶好調です。開幕から1カ月で21勝。このペースを維持できれば、キャリアハイの2016年113勝(笠松での14勝を含む)を上回りそうです。園田の経験で生かせていることはありますか?
僕は逃げ・先行が多いんですが、同じ戦法でも去年より道中で息を入れることを意識して乗れています。金沢はある程度スピードを持ったまま道中流しても、ダラダラっと流れ込める競馬場なんですが、そうではなくてちゃんと息を入れて、直線でも伸びれるように、と考えています。今の成績がそれを生かせての結果だといいんですけどね。いい馬に乗せてもらっているので、なんとか...という感じです。
2016年は金沢リーディング2位であと一歩でしたから、その先も期待してしまいます。
あの年はヤマミダンスが2歳で、たくさん勝たせていただきました。プレッシャーもかかっていましたし、それによって色んな方向でいい流れになりました。あの馬に引っ張ってもらったんですよね。そんなんじゃまだまだダメで、コンスタントに勝たないといけないんですけど。逆に去年はヤマミダンスの調子が落ちた時に、僕自身もうまく持ち直せませんでした。去年は悔しい思いもしましたし、色々悩む1年でした。
金沢シンデレラカップを制したヤマミダンス(2016年10月18日)
それを乗り越えての今シーズンの好調ですね。目標を教えてください。
800勝が当面の目標です。いま677勝なんですが、兵庫で橋本先生に「早く800勝しろ」ってハッパをかけられたんですよ。800勝を挙げれば、南関東での期間限定騎乗の基準をクリアできます。そういういいプレッシャーもあって、今シーズンの好調かもしれません。
あと、いい加減リーディングも獲りたいです。毎年それなりの位置にいるんですが、抜け切れていないので。
期待している馬を教えてください。
ジュウワンローズ(牡3、中川雅之厩舎)です。まだキャリア4戦で、幼くて競馬に集中しきれない面はありますが、2連勝したように力があります。スンナリしたレースだと乗りやすいし、折り合いがつくので距離も融通が利きそうです。このインタビューが掲載される頃には重賞・北日本新聞杯の結果も出ていると思いますが、まだ胸を借りる立場。これからの成長に期待ですね。
オッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
幸いなことに、今年開幕していい馬に乗せていただき、それなりに結果もついてきています。リーディングを獲って、来年は地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップにぜひ出場したいので、応援していただけたら嬉しいです。
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※インタビュー / 大恵陽子
11月26日に地方競馬通算1000勝を達成した、金沢の藤田弘治騎手。昨年は初の金沢リーディングに輝き、今年もここまでトップを走っています。
1000勝おめでとうございます。大きな区切りですね。
ありがとうございます。でも実はあんまり気にしてなかったです(笑)。全然知らなかったくらいで。あと1勝くらいの時に、「実況で言ってたよ」って検量室にいるおばちゃんたちに聞いて、「あ、そうなん?」て。聞いてからもそんなに意識はしなかったですね。達成しても数字的なものは何も感じなかったんですけど、ここまで来られたのは本当に周りの方々のお陰だなって思いました。
1000勝の中で印象の強いレースはありますか?
やっぱり重賞を獲った馬は思い入れが強いです。去年の北國王冠を勝ったトニーポケットや、今年のサラブレッド大賞典を勝ったヤマミダンスとか。
特にヤマミダンスは金沢を代表する馬ですけれども、どんな馬ですか?
川崎のロジータ記念の時は、揉まれても普通に走っていたので、精神的に成長してくれたなと感じました。前は揉まれると本当にパッタリだったらしくて。それを考えると、着順うんぬんより内容は良かったかなと思いますね。性格的には気難しい女の子ですよ(苦笑)。ハナに行ったら強いのに、番手だと全然伸びなかったり。初めて乗ったのがMRO金賞だったんですけど、3番手について手ごたえが良くて、まくれるものだと思っていたら、追って全然伸びなくて、「あれ?」って感じでした。2戦目(加賀友禅賞)は躓いてしまって全然ダメで、3戦目のサラブレッド大賞典で逃げて勝つことができたんですけど、その後も番手だと負けてしまって。あの馬に乗ったら常に人気になるし、2着じゃダメなんですよね。
精神面がかなり大きいようですね。
そうなんですよ。相手うんぬんよりも自分との戦いなんです。すごく力のある馬ですし、注目される馬に乗せていただいて、自分にとってもいい経験をさせてもらってます。ただ...、中日杯は52キロだったので、お断りさせていただいて...。52キロでも乗れないことはないんですけど、ムリな減量で迷惑をかけてもいけないし。乗れなくて申し訳なかったですし、残念でした。
2001年にデビューして17年。ここまでを振り返っていかがですか?
1000勝するのは遅かったと思います。リーディングを獲っている人はもっと早いですからね。ここまでを振り返ると...、デビューの頃は全然乗れなかったので、よくここまで来られたなと。初勝利まで3カ月も掛かりましたし、その後も順調じゃなかったですし。
よく挫けなかったですね。辞めたいと思ったことはなかったんですか?
それはなかったんですよね。キツイ時期もありましたけど、なんだかんだやってました。やっぱり馬が好きですし、毎年去年の自分の成績を目標に、それを上回るようにとコツコツやってきた感じです。今年は去年の自分に負けそうですけど...。
去年は121勝を挙げて初のリーディングを獲得しましたもんね。
リーディングはすごく嬉しかったです。リーディングを獲りたいという意識は強いので。去年は勝ち星的に上がったんですけど、特に自分がどうとかじゃなくていい馬に乗せてもらったことが大きかったです。その馬たちががんばってくれたおかげでリーディングになることができました。
去年の飛躍は何かきっかけがあったんですか? その前の年のスーパージョッキーズトライアルで優勝して、ワールドオールスタージョッキーズに出場したこととか。
それはいい経験になりましたけど、リーディングとは特に関連はないかなと思います。常に上手くなりたいと思ってますし、どうやったら上手くなれるかというのは考えていますけど、去年に関しては流れが良くて、いい馬にたくさん乗せてもらえたというのが一番大きかったと思います。
2015年ワールドオールスタージョッキーズに出場しJRA初勝利
今年も現在リーディングを走っていますね。
今年はずっと混戦で、最近ちょこっと抜けてリーディングなんですけど、まだまだわからないですよね。まったく油断はできないです。ただ、リーディングは絶対獲りたいと思っています。そこは特別なので。
リーディングとなると、金沢の看板を背負う存在ですよ。
そういう風に見られてるんですかね? もしそうなら嬉しいですけど。気持ち的にはプレッシャーとかはないですね。
先日同じ金沢所属の吉原寛人騎手が、JRAの京阪杯を勝ちましたね。
やっぱりすごいですよね。吉原とは同期で同じ金沢所属で。デビューの頃からものすごかったですけど、今でもすごいと思います。目の前に大きな目標としていてくれるので、すごく刺激を受けますね。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
今年はもちろんリーディングを狙っていますし、来年も再来年もずっと獲り続けられるようにがんばります。そして次は2000勝を目指します。一生懸命がんばりますので、今後も金沢競馬、藤田弘治を応援していただけたら嬉しいです。
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※インタビュー / 赤見千尋
8月29日、金沢競馬第4レースのバトルオサンナの勝利で、地方通算1000勝を達成した松野勝己調教師。その想いとこれまでについて聞きました。
地方通算1000勝達成おめでとうございます。お気持ちをお聞きかせください。
ここまで長かったですね。1000勝は目標でした。達成したら引退しようと思っていたくらいです。以前の面接試験の時に試験官が「1000勝までがんばれ!」って言ってくれたんです。応援してくれる人がいるんだなと思ってがんばってきました。これまで、生え抜きの馬で重賞は全部獲ってきましたし、ほかの調教師には負けていないと思っています。
調教師として25年。どんなことを大切にこの仕事をされてきましたか?
一番大切なのは馬です。ケガをさせないように、勝てるような調教をしてレースに勝つ。これが仕事ですからね。昔は喧嘩っ早かったし厩務員とも良く口論しましたが、今は良いのか悪いのか穏やかになりました(笑)。
これまで特に印象に残る馬は?
それはもう、トゥインチアズが一番ですね。出会った時は、他の馬と比べても小さかったし、こんなに強い馬だと全く思いませんでした。ただお尻だけが大きかったんです。それでデビューからぶっちぎりで3連勝。これは走ると分かって中央に挑戦しました。初参戦のダリア賞は出遅れて、しかも前が詰まって3着で残念でしたね。
2002年2月6日、園田クイーンセレクションを制したトゥインチアズ。鞍上は吉原寛人騎手。左が松野勝己調教師(写真:兵庫県競馬組合)
そして、京都競馬場で行われた『もみじステークス』を見事に勝利。当時のことを教えてください。
その時、ちょうど吉原寛人騎手が新人で所属していたんですが、ダリア賞の後、「次はお前で行くから!」と言って連れていきました。レースのことは今でもはっきりと覚えています。先手を取って進めましたが、4コーナーを周る時に後続と5馬身くらい差があったんです。そこからは人目をはばからず飛び回って応援しました。周りには中央の調教師がいましたが、関係なくそこら中走り回って「いけー!いけー!」って(笑)これまで地元でも重賞をたくさん勝たせてもらっていますが、こんなに興奮して応援したのはこの時一回だけですね。勝った後は、「桜花賞はどうしますか?」などとマスコミの取材もすごかったです。
トゥインチアズが秀でていた部分はどんなところですか?
気性が荒い馬でした。その代わり調教に耐えてくれました。普通だったら1周か2周しかしないところを、この馬は5周半くらい乗っていましたから。中央は坂路があったりプールがあったりと色々なことができるから馬が強くなります。でも、金沢ではそれがありませんから、地元の馬と同じ調教をしていてもかないません。ですから2倍くらいの調教をして負担をかけていました。それに耐える体力と精神力を持っていた馬でしたね。この馬を管理できたことは本当に誇りです。
松野厩舎の代表馬には、金沢三冠馬のノーブルシーズもいます。この馬についてはいかがですか?
デビュー前、もともとは違う厩舎にいたんですが、ゲートがどうにもならないからと馬主さんから連絡をもらって預かることになったんです。デビュー戦の時、その馬主さんがちょうど入院をされていて、電話で勝利を伝えたらすごく喜んでくれました。実は、その後に亡くなったんです。息子さんが引き継いでくれましたが、三冠を獲った時も本当に喜んでくれましたね。この馬に関しては騎乗した中川雅之騎手の力が大きいです。レースの時に遊ぶところがある馬だったんですが、中川君が上手く乗ってくれて能力を引き出してくれました。
2008年10月12日、サラブレッド大賞典(金沢)を制したノーブルシーズ(写真:石川県競馬事業局)
今や地方競馬のトップジョッキーとして全国区の活躍をしている吉原寛人騎手は、松野厩舎からデビューしていたんですよね。
見習いの時は、家から毎日走らせて鍛えました。仕事が終わった後も、毎日追い方の練習をしましたね。やはり初めからセンスがありました。だから今みたいになったんだと思います。当時は、自分の子供だと思って一生懸命に怒りましたが、彼もまだ若かったし反発もありましたよ。今の活躍を見ると本当に頑張っているなと思います。
ほかに、注目している騎手はいますか?
中島龍也騎手は上手いですよ。まだ若手ですが、おそらく金沢競馬の看板を背負って立つ人間になるでしょう。乗り方は頑固で荒い部分もありますが、馬を動かしますから。何より、一生懸命に乗っていることが伝わってきます。他の騎手には負けないぞっていう気持ちが。やはり競馬は勝ち負けの世界です、気持ちで負けてはダメですからね。
これからの目標はいかがですか?
今は目の前のレースを勝ちたいです。勝って、また次の馬を入れてもらえるように。とにかく結果を出したいです。
最後にオッズパークの会員のみなさんにメッセージをお願いします。
お話したように、特に中島騎手の騎乗には注目する価値があると思いますのでぜひ応援してください。そして、自分も結果を出せるようにがんばっていきたいと思います。
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※インタビュー / 秋田奈津子