JBCクラシックを地方馬として初めて制覇したミューチャリー(船橋)。その鞍上は、今年JBCの舞台となった金沢を代表する吉原寛人騎手でした。地元で成し遂げた快挙について振り返っていただきました。
>JBCクラシックをミューチャリーで制覇、おめでとうございます!周囲からの反響などもすごかったんじゃないですか?
ありがとうございます。お祝いのLINEやメールをたくさんいただいて、当日の夜は返信するのに3時間くらいかかりましたが、嬉しかったですね。その夜はよく眠れなくて、深夜2時くらいまで目が覚めていて、起きたのが明け方4~5時。だんだん訳が分からなくなってきて「これは夢だったんじゃないかな?」と不思議な感じでした(笑)。レース後1週間は、これまで記憶にないくらい余韻に浸ってボーッとしていて、それだけすごいレースを勝たせてもらったんだな、と思います。
創設から20年間、幾多の地方馬が挑んでは跳ね返されてきたレースを勝ったわけですもんね。
初めて勝てたということと、地元の金沢で決められたというのがすごく大きかったです。
ミューチャリーには前走の白山大賞典から手綱をとりました。騎乗の経緯を教えていただけますか?
今年の冬に期間限定騎乗で南関東に行っていた時だったと思うんですけど、矢野義幸先生から「もしかしたら白山大賞典にミューチャリーが行くかもしれないから、その時は頼むわ」と言っていただきました。あのミューチャリーですからね、すごい依頼をいただいたな、とプレッシャーでした。いくら地元の金沢だからと言っても、御神本訓史さんが競馬を教え込みながら大事に育てていた馬なので、すぐに御神本さんに連絡して「よろしくお願いします」とお伝えしました。
白山大賞典では先行集団にいて、ミューチャリーにしては少し前目のポジションのように感じました。
そうなんですよ、もっと進んでいかないのかなと想像していました。レコードを1秒以上更新する速い馬場だったので、ミューチャリーには忙しかったですけど、それでもあの位置から上がり3ハロン最速の脚を使ってくれました。休み明けの分もあって、「もうちょっと反応がほしいな」とは感じましたが、しっかり2着を確保して、いい感触は掴めました。
そして、JBCクラシックでも3番手外という前の位置を取りに行きました。
矢野先生からは「壁1枚くらいでついて行ければ」と言われましたが、GI馬が揃っていましたし、僕は「速い流れに中途半端について行ったら、せっかくの末脚がなくなるかもしれないので、ミューチャリーのペースで行きたいです」と伝えました。当初のプランでは、あんなに前に行くはずじゃなかったんです。
中団~後方からのプランだったはずが、どこでその作戦を変えたんですか?
返し馬で感触も反応もすごく良くなっていたので、「多少無理をしてついて行っても大丈夫じゃないか」と感じました。ゲートを出ると、マークしようと思っていたテーオーケインズが出遅れて、カジノフォンテンが楽に先行してペースを落としそうだったので、「ちょっと攻めてみよう」と、外に切り替えてテーオーエナジーをさばきました。
そうして、外3番手で折り合ったんですね。そんな前の位置からミューチャリーが末脚を使えたら、もうホント強いですよね。
"こういう展開になったら、ミューチャリーが勝てる"という、絵に描いたようなレースになりました。人気馬は内で包まれていてペースを上げられず、僕が主導権を握れました。スタンド前ではめちゃくちゃペースが遅くて、「誰も後ろから動いてこないで」とドキドキしていました。向正面でマクられるのは絶対に嫌だったので、2コーナーからは、じわ~っとギアを入れていくように乗りました。焦って追うと、内の人気馬が抜け出せる進路ができそうだったので、4コーナーまで引きつけました。
向正面はライバルを封じ込めつつ、絶妙なペースアップだったんですね。直線を向けば、どれだけキレる脚を持つ馬でも、そのスピードには限界がありますからね。
ラスト3ハロンを35秒前半で来る馬がいたらめちゃくちゃ強いな、と思っていたら、それがオメガパフュームでした。それでも、ミューチャリーは4コーナーでのハミの取り方が前走とは全然違って、3ハロン36秒0で本当に頑張ってくれました。最後は位置取りの差で決まったかなと思います。
オメガパフュームを半馬身差でしりぞけJBCクラシック制覇(写真:石川県競馬事業局)
改めてJBCクラシックの勝利を振り返っていかがですか?
本当にミューチャリーに感謝しています。ここまで陣営が「ミューチャリーは絶対にジーワンを獲れるんだ」と信じ続けて、全23戦中これが11回目のジーワン挑戦でした。信じ続ける熱い思いがあってこその勝利で、挑戦しないと獲れませんからね。ミューチャリーもずっとジーワンを使われて強くなりました。「前の位置につけたから勝てた」とも言われますけど、それは金沢だからできただけであって、大井や他のコースではそうはいきません。
実はその部分、聞きたいなと思っていました。吉原騎手は2019年マイルチャンピオンシップ南部杯をサンライズノヴァで勝った時に「馬に気づかせないように前の位置を取りに行った」と話していて、今回も積極的なポジショニングがすごいなぁと感じました。
たしかにあの時のような感じで、みんなのペースが遅いところを、馬を力ませず、普通に走っている状態で位置を上げていきました。
ただ、本質的な部分では御神本さんが競馬を教え込んできたことが生きたレースだったと思います。これまでジーワンで強いメンバー相手でも、ミューチャリーのペースを優先させて最後にしっかり脚を使わせることで、馬も気分良く走っていたと思います。だから途中で変なやめ方をせず、乗りやすかったです。ジーワンにチャレンジし続けて、掲示板にも載りながらしっかり戦ってきたことがここで生きたのだと思います。
(写真:石川県競馬事業局)
さて、吉原騎手はこれからの目標はどうしましょうか?
コロナの影響で遠征に行きづらくなったのがちょっと寂しいですけど、その鬱憤をJBCクラシックで晴らせたのは大きかったです。少しずつでも解除してくれて、またミューチャリーに乗って大きいレースを勝ちたいですし、他にも乗りたい馬はいます。
この冬は、これまでとは違う競馬場へ期間限定騎乗に行きたいなとも思っています。こちらは正式決定したらリリースなどの形でみなさんにお伝えできるかなと思っています。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
8月24日に地方通算1,000勝を達成した青柳正義騎手。自身2回目の地元リーディングに向け、現在勝ち星トップに立っています。リーディングを狙う意気込みや、近年、毎年のように馬場傾向が変わる金沢の砂、11月に控えるJBCのことを伺いました。
1,000勝達成、おめでとうございます。残り3勝くらいからプレッシャーがあったとか?
ありがとうございます。100勝や200勝はそんなに気にならなかったんですけど、1,000勝となると意識しちゃいました。自覚はなかったんですけど、近づいてくるとプレッシャーが予想よりもあったのかもしれないです。
メモリアル勝利のモアナスターは移籍初戦の馬でした。逃げて4コーナーでは2着の兼子千央騎手に前に出られましたが、激しい接戦を制して勝ちましたね。
調教をずっとつけていて、条件的にも馬の能力的にも勝たなきゃいけないところだったんですけど、男馬で暑さに参っているところがあったので、少し不安な面はありました。4コーナーで兼子騎手に一瞬、前に出られましたけど、馬が頑張ってくれました。直線は「ここで負けたらマズい」と思いました。自厩舎の馬で、一番お世話になっている厩務員さんが担当されていたので、どうしても決めたかったです。ゴールの瞬間はホッとしました。
モアナスターに騎乗して地方通算1,000勝を達成
重賞戦線では今年、ファストフラッシュで金沢スプリングカップを勝ちました。
気性が素直すぎるというか、金沢だとポンと行っちゃうとハナや2番手になってハミを取ってしまうんですけど、去年1年を通してだいぶ成長して、今年はだいぶ辛抱が利くようになったので重賞も獲れたのかなと思います。いまは骨折して回復待ちなんですが、1,000勝目を挙げたモアナスターの弟で、厩務員さんも一緒なんです。
4月25日、ファストフラッシュで金沢スプリングカップを制覇
そんな繋がりがあったとは。現在、金沢ではリーディングに立っています。
まだ今年の後半戦がありますが、去年は大きなケガをして順調さを欠いたので、今年は頑張らなきゃなと思っていました。前半で思った以上に勝たせていただいた分、夏場になって少し勢いが止まり気味ではあるんですけど、後半戦に向けて巻き返していけたらと思います。
金沢は2018年は内ラチ沿いが圧倒的に有利でした。開幕前に馬場改修が実施された2019年、砂の産地が変わった今年と、毎年のように馬場傾向が変わっています。現在はどうですか?
今年は砂を変えてすごく走りやすくなりました。馬も楽そうには走っているんですけど、時計は結構出ていますよね。騎手として一番良かったなと思うのは、砂を被っても痛くないことです。以前は砂の目が粗くてすごく痛かったんですけど、いまは全然気にならなくて、砂を被るのを嫌がっていた馬でも案外辛抱できるようになったりもしています。今のように内ラチ沿いを開けると展開的には乗りづらい面が出てくるんですけど、2018年のようなレースよりは安全だなと思います。
現在の馬場での脚質や展開の有利不利はどう感じますか?
金沢はフラットで乗りやすい馬場なので、2~3番手での先行が有利で、少々外を回っても大丈夫です。ただ、ペースが速くなりすぎたら差しも決まります。枠は1~2枠だと、内の砂が重たいので乗りづらい面はあります。
今年は金沢でJBCが開催されます。前回は2013年に行われましたが、当時の雰囲気はどんな感じでしたか?
金沢にあんなにお客さんがたくさん入ったのは初めて見ましたし、あれだけの観客の中でレースに乗るのは騎手冥利に尽きます。1レースから入っている人の数が違ったので歓声もすごくて楽しかったです。
2回目のJBC開催に向けてパドックも綺麗に整備されたようですね。
馬が歩く部分のウレタン舗装を替えて、真ん中の部分も芝生から人工芝に替えて綺麗になっています。
関係者同士でJBCの話はしますか?
もちろん出ます。コロナのご時世なので何とも言えないんですけど、可能であればお客さんは入れたいですよね。
最終的には行政を含め主催者の判断になるでしょうが、コロナを抜きで考えると、せっかくのJBCですからたくさんのファンに来てもらえるのが一番ですね。さて、このあとの目標を教えてください。
いまの順位をキープしてリーディングを獲れたらな、というのと、怪我なくというのが一番です。1年を無事に終えることが成績的にも一番なのかなと思います。
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
JBCがあるので、金沢競馬場もどんどん綺麗にしていますし、僕らも気合いが入っています。普段、見ない方でもこれをきっかけに金沢競馬の馬券やレースを気にしていただければ幸いです。吉原寛人騎手もいますし、僕らも吉原さんに負けないように頑張っているので、ぜひとも金沢競馬場の応援をよろしくお願いいたします。
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※インタビュー / 大恵陽子(写真:石川県競馬事業局)
アイバンホーと共に金沢の3歳戦線をけん引する中島龍也騎手(金沢)。大目標である石川ダービーに向けてお話を伺いました。
3月から新シーズンが始まりましたが、金沢競馬場は馬場改修して砂の質も大きく変わったそうですね。
そうなんです。路盤を改修して、これまでと違う産地の砂を全面入れ替えました。キレイだし痛くないし、すごく乗りやすいです。変わって良かったなと思いますね。
ここ何年かの金沢競馬場は、内有利や外有利の傾向が極端に変わっていた印象です。
時期によってかなり極端でしたよね。内ラチ沿いぴったりがいい時期だったり、内はまったく伸びなくて外が伸びやすい時期だったり。「同じコースでこんなに変わるの?!」という感じでしたけど、新しい馬場になってからはそこまで極端な傾向はないですね。1カ月以上使って、今のところは2、3分所から外がいいかなと。一番いいのは真ん中なので、道中2、3分所を走って直線になったらちょっと外に出してというのが現状王道かなと感じています。
中島騎手は2014年のデビューで去年は500勝達成。順調にキャリアを積み上げていますね。
順調に来られたのは関係者の方々のお陰なので、とても感謝しています。今年もいいリズムで勝てたらいいなと思っていますし、一番はアイバンホーでダービーを獲ることが目標ですね。
アイバンホーで金沢ヤングチャンピオン制覇(2020年11月22日)
金沢ヤングチャンピオン、北日本新聞杯と強い勝ち方でした。ただ何というか、外から見ていると難しい馬なのかなと感じます。
めちゃくちゃ難しいですよ!特にゲートですよね。もともとそういう雰囲気はあったんですけど、川崎の全日本2歳優駿に遠征に行った時、中で何度も立ち上がろうとしたじゃないですか。あそこから覚醒したのか、ゲートは本当に大変です。
全日本2歳優駿の後は休養を挟んで、3月23日の準重賞若駒賞に登場しましたけれども、12キロ体が増えてレースも圧勝でした。
若駒賞はゲートさえ出てしまえば勝てると思っていました。多少出遅れましたけど無事に出てくれて、その瞬間「勝てる!」と。あとは馬が勝手に進んでくれましたし、休養前より乗りやすかったです。
調教も大変なんでしょうか?
調教は担当厩務員の辻加武斗君がしています。マナバレンシアも担当しているんですけど、今の金沢の中では一番調教が上手いと思いますね。僕より年下ですけど、小さい頃から馬に乗っていたし、加武斗君が乗れない馬は他の誰も乗れないんじゃないかって思うくらい信頼しています。アイバンホーに関しては、僕はたまに追い切りに乗るくらいなので、加武斗君にお任せしています。
アイバンホーは北日本新聞杯も勝利(2021年4月18日)
石川ダービーへの手ごたえはいかがでしょうか?
休み明け初戦だった若駒賞の時、返し馬で乗って、あまりにも抜群過ぎてやばいかもしれない...と感じました。我の強い馬で、ゲートも心配だし、道中もやめちゃうからやめさせないように促して。その状況で大差勝ちですからね。能力的には頭一つも二つも抜けていますし、距離が長くなっても全然大丈夫だと思います。
石川ダービーといえば、2019年にロンギングルックで勝ちましたけれども、あの時は吉原寛人騎手騎乗の1番人気スターキャデラックをがっちりマークしていって、ダービーの舞台で腹の座った騎乗をするなと感動しました。
いろいろなことがラッキーだったと思います。その前の北日本新聞杯で、3~4コーナーで上がって行くレースをしたらスターキャデラックに完敗してしまって。この形では勝てないと痛感して、「こうなったらマークして最後直線で末脚勝負や!」って思っていたら、想像以上に手ごたえが良かったですね。
ダービーで逆転出来たというのは、自信になったのではないでしょうか。
あの時は追い切りも乗せてもらって、自分なりに考えて仕上げたことが、レースで上手くハマって嬉しかったですね。勝てたのは馬の頑張りと、普段から一生懸命やってくれている厩務員さん、乗せてくれたオーナーや調教師のお陰です。初めてダービーを勝ってすごく嬉しかったですけど、あんまり実感はなくて。デビュー前の能力検査の頃から乗せてもらった馬でダービーを勝って、他にも重賞をいくつも勝たせてもらって、ロンギングルックはすごく思い入れが強いです。今も頑張っていますから、今年も一緒に勝ちたいです。
改めて、今年の目標を教えてください。
いつもコツコツ小さいところから、と思っているので、まずは目の前のことを一つ一つ積み上げて行きたいです。数字的には去年以上に勝ちたいですし、アイバンホーと石川ダービーを勝ちたいです。ダービーを勝ったら新潟のレースに挑戦するプランがあって、それで中央デビューしたいですね。中央に乗りに行くチャンスはなかなかないので、このチャンスを掴みたいです。
では、オッズパーク会員の皆さまにメッセージをお願いします。
金沢競馬を応援していただきありがとうございます。これからも一生懸命頑張っていきますので、よろしくお願い致します。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:石川県競馬事業局)
6月21日、金沢第3レースをサブノタマヒメで勝って、金沢現役6人目となる地方競馬通算1,000勝目を挙げた39歳の畑中信司騎手。2001年デビューで、今年は20年目。ナムラダイキチとのコンビで一世を風靡した名手のこれまでとこれからを伺った。
1,000勝おめでとうございます。振り返って、どうですか?
あっと言う間でしたね、デビューしたころは、ここまで勝てるとは思ってませんでした。これまで支えて下さった方々のおかげです。本当に感謝しています。
出身は大阪の岸和田。金沢でデビューとなった経緯は?
騎手になりたくて、実家の近くの牧場に問い合わせたら、師匠になる寺田茂先生(2016年引退)を紹介して下さったのがきっかけでした、師匠は元々、岸和田にあった春木競馬場の騎手で、廃止後に金沢へ移籍しましたので、岸和田とも深いつながりがありました。
高校卒業後に教養センターに入所しました。
同期には北海道の岩橋(勇二)、大井の真島(大輔)、名古屋の大畑(雅章)もいて、今、思えばまずまずのレベルでしたね。成績は同期の中では真ん中くらいだったでしょうか(笑)。
師匠の寺田先生はどんな方でしたか
厳しい方でした。ほめてもらえることはなかったですね(笑)。勝っても、下手に乗った時なんかは、よく叱られました。「好位でじっとしてたらいいのに、なんであんなに競り合って、馬に無理をさせるんだ」っていう風に。でも、しっかり僕を見てくれているというのは感じましたし、僕が下手に乗った次のレースでも、馬主さんに頭を下げて、引き続き僕を乗せて下さったり、そういう優しさもある方でした。
畑中騎手の勝負服(胴袖黄・赤山形一文字)は寺田先生から引き継いだものでしたね。
はい、そうです。「その服でブザマな競馬をして、オレの顔に泥を塗るんじゃないぞ」とよく言われました(笑)。先生は引退されましたが、今も近所に住んでおられるので、買い物の時とか、時々お会いします。その時は「しっかりやれよ」と声をかけて下さいます。自分がここまでこれたのは関係者の方々のおかげですが、その中でもやっぱり、師匠の存在は大きいですね。
畑中騎手と言えば、ナムラダイキチとのコンビで全国にその名前をとどろかせました。地元重賞12勝、笠松・オグリキャップ記念1着、白山大賞典2着の名馬ですが、やはり、一番の思い出の馬ですか。
自分が乗った馬の中ではダイキチは最高の馬ですね。けがさえなかったら、中央の馬ともいい勝負ができたはずだし、いっぱい夢を見させてくれました。特に2013年に地元金沢で行われたJBCは出たかった。あの頃のダイキチが一番強かったですね。
ナムラダイキチ(2013年5月5日、北國王冠)
ナムラダイキチとの思い出はたくさんあると思いますが、中でも印象に残っているレースはどれですか?
初めて重賞を勝った2011年暮れの中日杯ですね。前任者の中川(雅之)さんが調教師への転向が決まったので、中日杯の前のレースから乗り始めました。調教では全然走らないのに、レースとなるとエンジンが違いました。すごい反応でした。自信になりましたし、走る馬とは、こんな馬だと教えてもらいました。
ダイキチとのコンビで中日杯を勝った翌月の2012年1月から3月までの金沢の冬期休みの間、福山で短期騎乗を始めます。期間中、地元騎手を差し置いて、リーディングになるほど勝ちました。
超小回りコースの福山(1周1,000メートル)は乗っていて、勉強になりましたし、楽しかったですね。広いコースだと、どうしても馬の力通りに決まることが多くなるけど、福山ほどの小回りだと力の足りない馬でも、その日の馬場状態や位置取りや展開次第で力のある馬に勝つことができる。初めての時の福山は、それがバシバシ決まって勢いに乗れた。福山には2013年も呼ばれて、その年に福山が廃止になり、2014年には高知に呼んでもらえた。高知でもかなり勝つことができたし、高知のクロスオーバーで佐賀の花吹雪賞も勝った。今年も高知で乗ったのは、そのつながりですね。福山や高知で学んだ技術は、金沢でも活かせるし、騎手としてステップアップにつながった貴重な経験ですね。
佐賀・花吹雪賞を高知のクロスオーバーで勝利(2014年1月19日)
今、畑中騎手は昨年、金沢の年度代表馬になったティモシーブルーというお手馬がいます。6月23日には百万石賞連覇を狙いましたが、惜しくも3着でした。
急に暑くなって、昨年の状態にはなかったです。百万石賞の前のレース(利家盃)では百万石賞で1番人気になったサノサマーにぴったりマークされて2着だったので、百万石賞の本番では逆にサノサマーをマークする形でレースを進めました。レースは勝ったサウスアメリカンが向正面から動いて、押し切りましたが、ティモシーブルーの調子が良かったら、サウスが外から上がってきた時に、一緒に動けてました。それでも直線では、しぶとく3着に粘りました。先頭に立つとソラを使う乗り難しいところはありますが、最近はスタートも安定しています。自分でレースもつくれる強みもあるし、6歳と若いので、まだ強くなる余地はあります。
2021年には2度目のJBCが金沢で行われます。
前回の金沢のJBCではダイキチで出られなかったので、次は出たいですね。ティモシーはダイキチと比べるのはかわいそうですし、中央馬と渡り合うにはまだまだ強くなる必要はあります。でも、JBCが行われることで、全国から金沢が注目されますし、馬主さんがJBCのために、いい馬を入れてくれれば、盛り上がりますし、すごく楽しみですね。
ティモシーブルー(2020年4月28日、金沢スプリングカップ)
これからの目標を教えてください。
特に数字を挙げてというのはありません。ひと鞍ひと鞍、大事に乗っていきたいと思ってます。あと、もう一度、どこか海外に再挑戦したいですね。初めて挑戦した韓国のソウル(2017年1月~2018年6月)では23勝しましたが、なかなか人間関係が難しくて、いい馬に乗せてもらえず不本意でした。今すぐとなると、コロナの影響もあるので無理ですが、韓国での経験を次の挑戦に活かしたいですね。
最後にオッズパークのファンの方にメッセージを。
今はコロナの影響で無観客開催が続いて、大変ですが、オッズパークのファンの皆さんがたくさん馬券を買っていただいているおかげで大きく売り上げが減ることもなく、競馬の開催を続けられることに本当に感謝しています。これからも、よろしくお願いします。
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※インタビュー / 松浦渉(写真:石川県競馬事業局、佐賀県競馬組合)
昨年111勝を挙げて、1勝差で金沢リーディングに輝いた藤田弘治騎手。2017年以来2年ぶり3回目の栄冠でした。3月15日(日)の金沢開幕を前に、現在の心境を伺いました。
まずは2019年金沢リーディングおめでとうございます!
ありがとうございます。青柳(正義)君と1勝差なんですけど、やっぱりリーディングというのは嬉しいですね。ただ、ジョッキーズチャンピオンシップ(以下JCS)に本戦から出場するためには4月~3月の年度リーディングなんですよね。だからまだ3月の開催がありますから、そこでしっかりと結果を出したいと思っています。
JCSは大きな存在ですか?
地元開催はもちろんですけど、毎年そこを大きな目標にしています。2015年に優勝して(当時はスーパージョッキーズトライアルとして開催)、札幌のワールドオールスタージョッキーズ(以下WASJ)に参加させていただきました。この時は札幌に合った乗り方が出来なくて、地方の小回りのような乗り方をしてしまったんです。その後悔が今でもすごく残っていて......。
2015年WASJ(札幌)第1戦で勝利
第1戦で1着になってJRA初勝利を挙げたのに、ご自身では納得いかない騎乗だったんですね。
勝たせていただいたことはとても嬉しかったですけど、他のレースももっと考えて違う乗り方が出来たんじゃないかと。一度経験させてもらったことで、前よりも「行きたい!」という気持ちは強くなりました。だからこそ地元でリーディングを獲ることはすごく重要なんですよ。一昨年は怪我が多くて勝ち鞍も減ってしまったんですけど、昨年は怪我なくいいリズムで乗れたので、このまま年度リーディングが獲れるように頑張ります。
3月15日から今年の金沢競馬が始まるわけですが、約2か月半のシーズンオフはどう過ごしていたんですか?
他地区に遠征に行くタンクティーエーとグルームアイランドの攻め馬をしていました。タンクティーエーは盛岡のダービーグランプリで2着に頑張ってくれて、すごく能力は高いと思うんですけど、最近はズブさを見せるようになって、以前ほど前に行けなくなってしまったんです。年末の地元のレース(12/24クリスマスイヴ特別)では3~4コーナーでハミを取らなくなってしまって。そのままズルズル下がるのかと思ったら、渋々伸びたという感じでなんとか勝ちました。反抗してやっているのか、ちょっとまだ謎な部分が多いです。ただ能力は高いと思うし、まだ明け4歳。遠征で揉まれて経験も積みましたから、今後が楽しみです。
サラブレッド大賞典(2019年9月8日)を制したタンクティーエー(写真:石川県競馬事業局)
ちなみに、グルームアイランドのレースには一度も騎乗したことないですよね?
そうなんですよ。実は一番最初に金沢に移籍して来た頃(2015年)にも攻め馬していたんですけど、初戦で(当時の)自厩舎の馬と一緒になってしまって。それでレースには乗れなかったんですけど、攻め馬に乗っただけでもモノが違うなと感じました。南関東へ行って戻って来てからは青柳君が乗っているんですけど、このシーズンオフは乗れない日があったので僕が乗っていました。ただ、タンクティーエーと同じレースに使ったので今回もレースには乗れなかったんです。騎手として逆の立場になることもありますから、特に気にならないですよ。
同期で同じ金沢所属の吉原寛人騎手は、以前から尊敬していると仰っていましたが、昨年の活躍は凄まじかったですね。
本当に凄いですよね。全国を飛び回って、それでしっかり結果も出している。僕はデビューからしばらく乗り鞍があまりなくて、吉原とはものすごく差が開いていたんですけど、自分なりには成長出来たかなと思うと、どんどんどんどん先に行っていて。同期ですけど尊敬しているし、刺激をもらえる存在です。
では、今シーズン開幕に向けて、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
新型コロナウイルスの影響で、競馬は無観客開催が続いています。金沢の開幕もどういう形になるかわかりませんが、今はインターネットで馬券を買っていただけるので、とてもありがたいです。精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
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※インタビュー / 赤見千尋