
若干22歳で金沢リーディングに輝き、以降5年連続ぶっちぎりのトップを走り続けている吉原寛人騎手。
今年ももちろんトップ独走中で、6年連続のリーディングはほぼ確定。 これまでの騎手生活、この先の目標、そしていよいよ迫った『JBC』出場について、お話を伺いました!
赤見:まずは、11月3日船橋で行われる『JBC』について。今年は金沢の代表馬【ジャングルスマイル】と参戦しますね。
吉原:『JBC』には何度か参加させてもらったし、現地に観戦に行ったこともあるので雰囲気は知っていますが、今年は初めて船橋競馬場で開催されるということで、当日はかなり盛り上がるでしょうね。今から楽しみです。
赤見:地方競馬最大の祭典ですからね。
こういうレースに挑めるというのは、ジョッキーとしてとても大きいのでは?
吉原:そうですね。特に今年は強い馬で参加出来るというのが嬉しいです。 前走の『白山大賞典』でも、よく頑張ってくれましたから。
赤見:逃げて早めにスパートするというのは、今までの形になかったように思うんですが?
吉原:今回は内枠でしたから。それがもう痛恨でした。 ただ、枠順も含めて競馬。いろいろな条件の中で、思った通りのいい動きをしてくれました。改めて強さを感じましたね。
赤見:【ジャングルスマイル】は昨年の秋に金沢に移籍しましたが、初めの頃の印象はいかがでした?
吉原:調教では難しい面があると聞いていましたが、僕が初めて跨ったのは返し馬で、少しふわふわするところがあったけど、レースに行ってハミ取り出したらビューッと上がって行って。
5,6連勝した頃には、これはOPまで行くなと思いました。 これまでたくさんの馬に乗せてもらいましたが、金沢の中では今までにない手応えがありましたね。
赤見:いよいよ『JBCクラシック』出場です!どんなレースをしたいですか?
吉原:交流競走を荒らしている、地方所属馬たちには負けたくないですね。【マルヨフェニックス】とか強い馬なんで、意識してます。
長距離輸送もあるし、初めてのコースですし、いきなり相手も強くなりますが...僕の馬も強いので、とにかく気分よく走れれば、いいレースが出来るんじゃないかなと思ってます。
赤見:吉原騎手といえば、今では金沢を代表するジョッキーですが、そもそも騎手を目指すきっかけは何だったんですか?
吉原:昔から身体が小さかったことと、サラリーマンにはなりたくなかったので手に職を付けたいと思っていたんです。
中学の時は身長が伸びると思ってバレー部に入ったんですけど、1年くらいしても全然身長が伸びなくて...よく考えたら、バレー部に入ってた人は最初から身長が高かったんですよ(笑)。それに気づいて、退部してからは騎手学校受験のために身体を鍛えてました。
赤見:どんなことしてたんですか?
吉原:僕は滋賀県出身なんですけど、地元に猪子山というのがあって、毎日走って登ってました。
それで、頂上にある神社に行って、「合格出来ますように」って拝んでましたね。
赤見:乗馬はしなかった?
吉原:そうなんですよ。馬に乗ったことなかったんで、学校に入ってからはけっこう大変でした。
本当に憧れだけで入っちゃったから何にも知らなくて、慣れるまでは苦労しましたね。
赤見:なぜ金沢所属になったんですか?
吉原:僕は学校に入ってから所属を決めたんですけど、なるべく地元に近い方がいいし、騎手の人数とか、いろんなことを考えて金沢に希望を出しました。
入った厩舎も恵まれていたし、最初からいい方向に行きましたね。 特に、デビューした年に中央で勝ったんですけど、それが金沢所属の馬での、中央初勝利だったんです。 あのレースが、かなりのPRになりましたね。
赤見:デビューした年からリーディング3位!すごい新人が出て来たって盛り上がりましたよ。
吉原:いやいや。僕は本当に恵まれていたんです。 自分としてはやることはやっていたけど、全然技術が追いつかなくて...。もっと上手くなりたい!って、かなり悩んだ時期もありました。今でももっと上手くなりたいですけどね。
赤見:今では完全に金沢を背負って立つ存在ですよね。
吉原:そういう自覚はあります。 金沢はまだ鎖国というか、外に名前を売るのがなかなか難しい環境ですが、どんどん挑戦したいと思ってます。
今年はまだ制裁がないので、2度目のベストフェアプレイ賞を狙ってますし、オフシーズンには南関東で乗ることも決まりました。 僕にとって、これからの騎手人生を左右する遠征になると考えてます。
赤見:それでは改めて、全国のファンの皆さんにメッセージをお願いします。
吉原:【ジャングルスマイル】という素晴らしい馬に出会って、金田一昌先生と僕とで、応援したくなるような人馬になりたいと思ってます! 金沢を背負って立つような人馬になれたら、と気合入ってるんですが...【ジャングルスマイル】はそれを知ってか知らずか、かなりのほほんとしてて可愛いです(笑)。 まずは船橋の『JBCクラシック』、応援よろしくお願いします!!
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※インタビュー / 赤見千尋
金沢競馬でキャリア25年目。リーディングトップを5回獲得している2000勝ジョッキーが
中川雅之騎手だ。
今回は本人が「記憶にないなあ」という、1日5勝を達成した日に話を伺った。
まずはホームグラウンドである金沢競馬場の特徴から教えていただいた。
■ここは雨が多い土地なので、砂がとても流れやすいんです。その影響で、時期によって砂の深さが
違うのですが、ここ最近(取材日は5月14日)は内も外も平均的になっている感じです。
だから今は以前とは違って、あまり内をあけて走らせていません。この競馬場の砂は粒が粗いので、
サラッとしないんですよ。だから雨が降ったあと、路盤近くの足跡がそのまま固まって凹凸ができることも
あります(二重蹄跡とよばれる現象)し、表面だけが良馬場になっていることも多いように思います。
でも、金沢はとても乗りやすいコースだと思いますよ。カーブの傾斜も少しありますし、多少早仕掛け
しても残ることが多いように感じます。ですから、3コーナーあたりから勢いをつける乗り方をすると
好成績につながる感じがありますね。
中川騎手の父も騎手(現調教師。中川雅之騎手は厩舎所属騎手)。「ホクリク」の西村さん
曰く、『体で時計を刻める騎手』だったということだ。
■うーん。父とぼくとでは感性というものが違うような気がするんですよね。ぼくの場合、頭では理解
できていても体が自然と動いていかないことがあります。この年(44歳)まで現役をやっていますが、
なんとなく長いこと乗ってきただけという気もしますし、まだまだ超えられないなと。
今も親方(中川調教師のこと)は毎日2頭くらい攻め馬をしているのですが、67歳なのに乗る姿が
ものすごくやわらかいんです。
肩やひじのあのやわらかさ、そういうところは似なかったなあと思いますね。それにぼくは学生のときに
馬術をずっとやっていたんですよ。そのときに体にしみこんだ「型」というものの影響があるようで、
それは競馬の動きと少し違いますから、そのあたりのクセというか、そういうところも含めて、頭と体が
一体にならないというようなところで若い頃はすごく悩みました。早くそれに気づいて、とっとと馬術を
やめておけばよかったと、今でも思っているくらいです。
それでもここまで現役を続けていられるのは、トップジョッキーである証だろう。
■ぼくらの若い頃は、同世代の騎手が十数人ひしめき合っていて、そのなかでの争いがすごかった
んです。そしてそこを抜けてこられたから、今でも残れているのかなという気がしますね。
ぼくは競馬に出るときには、気持ちだけは負けないでおこうと、ずっと思っているんですよ。
もう引退とかそういうことを考えなきゃいけないくらいの年齢ですが、乗る以上は辞めるその日まで
気を張って乗っていたいので。食えないから辞めるとか、体力的にきつくなってやめるというのはイヤ。
そういうこともあって、ここ2、3年は気持ち的に開き直って乗れているように自分でも思います。
若いころも今もそうですが、父の厩舎に所属している騎手ということで、チャンスは数多くもらえる
けれども、結果を出さないと迷惑をかけるという思いも強かったですね。親方が馬主さんに
「乗り役は息子さんで」と言ってもらえるようにならなければ、とずっと思っていましたから。
そんな中川騎手は騎手会長。だからこそ言いたいこともある。
■今の若い騎手は根性やモチベーションがいまひとつという気がします。もまれる強さというか、
精神的な部分が物足りないかなと。ぼくは娘にも「勝負に勝とうと思うならば、根性を出さなければいかんよ」
とよく言っているんです。そうじゃなければ勝ち残れないでしょう。
それに若い騎手は、基礎体力もぼくらの世代に比べたら明らかにないですよね。ぼくはずっとこの
競馬場に住んでいて、小学校のときは片道1時間くらい歩いて通学していました。そういう体力的な
貯金が残っているから、十分に勝負ができているような感じもありますね。
また、若い騎手は自分の体にお金をかけていないようにも思えるんです。ぼくは接骨医なども含め、
体はしっかりチェックしていますよ。馬乗りは全身運動。少しでも痛いところやしっくりこないところが
あると、バランスが崩れますから。自分の身はやっぱり自分で守らないと。
まだまだ前向きな中川騎手。実戦での勝負ポイントはどのあたりになのだろうか。
■今の競馬はスタートがカギ。とにかく『普通に出す』ことが重要ですね。そして、今の馬場では特に
ですが、1コーナーで外を回ったらまず勝てません。馬も昔にくらべると根性がないですし、クセが
悪い馬も多いですから。1300メートル戦では特に外を回ったらダメですね。
でも、内が深い馬場になっているときは内枠だと損になりますし、あえて外を回すという競馬でも間に
合ったりします。それでも基本的には、好位置からの競馬がいちばんの理想ですね。スッと2、3番手
につけられたら最高です。
昔は広い馬場を広く使ってレースをしていたのですが、今は標準的な競馬になっている感じもします。
とにかく「自分の競馬」ができた馬が勝てる競馬場だと思います。
「金沢競馬場は残していけるし、これからもやっていける競馬場」と熱く語る中川騎手。活性化を
訴えて県庁で発言したこともあるそうだ。「もう少し競馬をとりまく環境がよければ、2、3年前に
引退していたかも」というが、「頼まれたら期待にこたえたい」という思いも強いそう。
インタビューの後半は金沢競馬のありかたについての持論をいろいろ聞かせてくれた。騎手紹介
のキャッチコピーは「頑張れマーちゃん」なのだが、「もう少しうまく生きられたらいいと思うんだけど」
というくらいのストレートな熱さに、「兄貴」と呼びたいくらいの気持ちになったのだった。
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中川雅之(なかがわまさゆき)
1963年1月31日生 みずがめ座 A型
石川県出身 中川一男厩舎
初騎乗/1983年4月16日
通算成績/13,641戦2,388勝
重賞勝ち鞍/サラブレッド大賞典2回、北日本
新聞杯、ヤングチャンピオン、JTB賞3回、中
日杯3回、百万石賞、北國王冠2回、日本海ダ
ービー2回、北國アラブチャンピオンなど54勝
服色/胴赤、そで黄
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※成績は2007年5月24日現在
(オッズパーククラブ Vol.6 (2007年7月~9月)より転載)