
今年4月に金沢競馬場でデビューした柴田勇真騎手。約4か月で16勝を挙げ(8月18日現在)、順調なスタートを切りました。騎手を目指したキッカケから今後の目標まで、たっぷりと語っていただきます。
騎手になろうと思ったキッカケは何だったんですか?
テレビで競馬を見ていて、騎手ってカッコいいなと思ったんです。高校を卒業する時に将来のことを考えて、体も小さいし挑戦してみたいなと。その時、学校からの推薦で就職が決まりそうだったので、母は安定した職業に就いて欲しいって思っていたみたいですけど。でも騎手になるには年齢制限があるので、今しかチャレンジできないと思いました。高校を卒業してから茨城にある騎手になるための勉強をする専門学校に入って、最初はJRAの試験を受けたんです。そこは落ちてしまったんですけど、騎手になりたいという気持ちは変わらなかったので、地方競馬教養センターの試験を受けました。
教養センターでの生活はどうでしたか?
茨城の専門学校で一通り馬の経験を積んだので、入所した当初はすんなりと馴染めました。ただ、1期上の先輩たちが競馬場実習に行ってしまい、作業も馬に乗る頭数も倍になってからはけっこうしんどかったです。休む間もなく時間に追われて動き続けるので、そこが大変でした。
やめたいとは思わなかったですか?
騎手になりたいっていう気持ちが強かったですし、家族や友達に応援してもらって家を出て来たので、途中で帰るという選択肢はなかったです。
群馬県出身の柴田騎手が、金沢所属になった経緯というのは?
競馬の世界に知り合いがいなかったので、なかなか所属先が決まらなかったんです。最初の頃は南関東を希望していたんですけど、受け入れてくれる厩舎が見つかりませんでした。教官から「騎手は乗ってなんぼだぞ」って言われて、チャンスの多い競馬場がいいんじゃないかと思うようになって。ちょうどその頃、僕の1期上の中島龍也騎手が金沢でデビューしてすごく活躍していたので、金沢に行ってみたいなと思うようになったんです。それで希望を出したら、高橋俊之先生が所属にしてくれると言ってくれました。高橋先生はもともと高崎の調教師でしたから、僕が群馬県出身ということで受け入れてくれたみたいで。縁があって金沢所属になれて、本当によかったです。
デビュー戦(4月4日第1Rピースピース・5着)、そして初勝利(4月14日第11Rブラッシー)は覚えていますか?
覚えていますよ。デビュー戦は思っていた以上に緊張しなかったです。今思えばただつかまっていただけなんですけど、3、4番手に付けてジッと回って来た感じです。初勝利はデビューから10日後なので、そこだけ見ると早いって言われるかもしれないですけど、それまでに何度かチャンスをもらっていたので自分としては焦っていました。最初はあまり気にしていなかったんですけど、同期の栗原大河騎手が先に勝った時(4月12日第6R)にけっこう焦りましたね。初勝利は、あれはひどいレースでしたね(苦笑)。1~2コーナーで後方からブワーッとマクって行って。先生から「一周追ってこい」と言われていたので、心の中で「行けー!」と思いながら追ってました。先頭でゴールに入った時にはすごく気持ちが良くて、「これが勝つということなんだ」と実感しました。1つ勝ってからは気持ち的に楽になった気がします。
デビューから約4か月で16勝。いいペースですね。
たくさん乗せていただいて本当に感謝しています。でも、勝ち星には満足していません。乗り馬の質を考えたら20勝は越えていないといけなかったんです。僕のミスで取りこぼしたレースもありますし、その分、2着3着が多くて申し訳ないです。
柴田騎手は一般家庭から競馬界に入って来たわけですけれども、想像と違う部分はありましたか?
ありますね。ある程度想像はしていましたけど、デビューしてみて勝負の世界は甘くないなと痛感しました。まず普段の人との関わりが大事だし、少しずつ乗り馬を増やしていくことも、たくさんの先輩方がいる中で簡単なことではないなと。それに、レースでもデビューしたての時には危ない場面があると先輩方が気を使ってくれましたけど、それも甘えていたんだなと思います。当たり前のことですけど、勝負の時はみんな本気ですから、自分で馬をコントロールして危険を回避しないといけないし、その中で勝つというのは本当に難しいです。
尊敬している騎手はどなたですか?
先輩方みんな尊敬していますけど、目標は大きくミルコ・デムーロ騎手です! 成績をしっかりと出す騎手だし、誰が見ても上手いと思うじゃないですか。日本人と体の造りが同じじゃない部分もありますが、少しでも追いつけるように目標にしています。
故郷を離れて金沢所属になったわけですけれども、すんなりと馴染めましたか?
高橋先生がすごく良くしてくれますし、厩務員さんもいい方ばかりで恵まれた環境だと思います。競馬場の雰囲気にもすぐに馴染むことができました。いい馬にも乗せてもらっているので、早く上手くなって恩返しがしたいです。勝つことが一番の恩返しだと思うので。今は、金沢所属になれて本当によかったと思っています。それと、この前のお盆開催の時に両親が見に来てくれたんですけど、やっと目の前で勝つことができたんです。これまでデビュー戦と、ゴールデンウィークの開催の2回見に来てくれたんですけど、その時は勝てなくて...。お盆の時は目の前で2勝することができたので、ちょっとは親孝行できたかなと思いました。
では、今後の目標を教えて下さい。
まずは、今年中に減量を取る(30勝)ことです! 将来的には金沢のリーディングを獲って、全国で活躍できる騎手になりたいです。そのために、1レース1レースを大事に乗って、日々成長できるよう頑張ります。金沢は若手の先輩方がすごく活躍しているので、僕もその中の一人になりたいですね。同期の栗原大河といういいライバルがいるので、常にモチベーションを持ち続けながら成長していきたいです。
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※インタビュー / 赤見千尋
スーパージョッキーズトライアル(SJT)2015で、第1ステージ11位から大逆転で優勝を果たした金沢の藤田弘治騎手。一瞬にしてシンデレラボーイとなった心境をお聞きしました。
大井の第1ステージでは4ポイント(11位通過)でしたが、第2ステージの園田で2連勝! 大逆転での優勝、おめでとうございます。
ありがとうございます。本当に奇跡が起きました。信じられないです。第1ステージでは4ポイントしか取れなかったので、さすがに優勝は絶対に無理だと思っていたんですけど、すごく嬉しいです。第2ステージの園田ではいい馬に当たったので、奇跡を信じたいという気持ちもありましたけど、まさか本当に実現するとは......夢みたいです。
まずは第1戦、華麗な差し切り勝ちでしたね。
本当は前に行く予定だったんですけどスタートで後ろ脚を滑らせてしまって......。「ああ、やばいな......」と思って、これはもうロスなく回るしかないなと腹を括って内でジッとしていました。道中で手応え良かったので「これはイケるな」って思っていたんですけど、3、4コーナーでは前で吉井(友彦騎手)くんの馬が壁になっていたので、「頼むから進んでくれ~」と後ろから応援していました。で、上手く抜けてくれたんで「やったー!」と思いながら追って。1つ勝てたことがまず嬉しかったですね。ただ、この時点で上位の方とのポイント差はかなりあったし、たとえ次も勝てたとしても、優勝までは厳しいかなと思っていました。
そして第2戦は2番手から早め先頭の強い競馬でした。
これはもう本当に上手く行きました。レース前に思っていたことが思っていた通りに上手く進んだんです。前に付けられたらいいところでジッとしていようと思っていて、その通りに上手く行きました。本当に馬が強かったです。
レース直後は村上忍騎手か藤田騎手か、どちらが優勝なのかわからなかったですけれども、1ポイント差で優勝だと知った時はいかがでしたか?
レースが終わってちょっと経ってから「優勝だ」って言われましたけど、間違いなんじゃないかって思いました(笑)。最終戦の前に、勝ってもポイント的に優勝は無理だろうなと思っていたので。それに、第1ステージの大井の時にレースが終わって鞍掃除をしている時に、下位2人は誰だって話になって、僕じゃないかって言われたんですよ(第1ステージの下位2名は第2ステージには進めない)。「園田行けないかも」ってなって、自分でも13着と9着だったんで、「だよねー...」って思ってて。結局はギリギリで第2ステージに進めたわけですけど(実際の下位2名は森泰斗騎手と岡部誠騎手)、優勝って言われてもまた間違いなんじゃないかって思って、すぐには信じられなかったです。
実際に優勝が確定して、表彰台に立った時はいかがでしたか?
まだ実感はなかったですけど、嬉しい気持ちはすごくありました。応援に来てくれたファンの方も泣いてくれていて、少しは恩返しができたのかなって。本番もありますけど、とりあえず嬉しい気持ちが強かったです。
まさにシンデレラボーイですね!
いや~...自分で「そうです」とは言いずらいですけど(笑)。こんな大きなチャンスをもらったからには、本番も結果を出したいです。今回、僕がSJTに出場できたのは、リーディングの吉田晃浩騎手がケガをしてしまって、それで2位の僕が補欠で出場することになりました。だから、吉田騎手には申し訳ないですし複雑な気持ちもあります。ただ、せっかくのチャンスなので、精いっぱい頑張ります。
藤田騎手は、金沢の顔である吉原寛人騎手と同期ですけれども、吉原騎手は2011年にSJTで優勝し、WSJSでも第2位という成績を収めました。
吉原くんは身近な存在ですけど、本当にすごいと思います。デビューした頃からバンバン勝って注目されていて、僕は全然乗り馬がいなくてものすごく差がありました。今もだいぶ差がついてますけど、今回こういう形で吉原くんが経験した大きな舞台に立てるのは嬉しいです。吉原くんは2位でしたから、もちろん1位を目指すしかないですね。
中央競馬での騎乗の経験はありますか?
一昨年の夏に、1回だけ新潟で騎乗したことがあります(2013年朱鷺ステークス マイネルルビウス・12着)。初めての芝ですごく感動したし、12着だったけどいい経験になりました。あと、金沢のオフシーズンに毎年美浦トレセンで修行しています。もう7年連続で行っていますね。施設も充実しているし、馬のレベルもすごい。視野や考え方も変わるし、すごく勉強になります。
デビューしてから約2年はほとんど乗り馬がいなくて、相当悔しい思いをしたということでしたけれども。
そうですね。あの時は本当に苦しかったですけど、黒木豊調教師が拾ってくれて、それから僕を乗せ続けてくれました。そのお蔭で今があるし、黒木先生にはいつか恩返しがしたいと思っています。ここで全国の方に名前を憶えてもらって、黒木厩舎や金沢競馬のアピールができたらと思っています。
それでは、ファンの方にメッセージをお願いします。
今回大きなチャンスをもらえたわけですけど、これまでの1つ1つのことが繋がっているんじゃないかなって思います。いろいろな方に助けてもらって、いろいろな経験をさせてもらったお蔭で今があるので。その感謝の気持ちをしっかりと持って、札幌に挑みます。それに、先日吉原くんがダートグレードを勝った(ユーロビートでマーキュリーカップ制覇)し、今回僕もSJTで優勝することが出来て、金沢にいい波が来ているんじゃないかと思っています。このチャンスを活かせるように、精一杯頑張ります!
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※インタビュー・写真 / 赤見千尋
今年4月にデビューした新人騎手は12名。その中でも順調に勝ち星を伸ばし、存在感を示しているのが金沢の中島龍也騎手。デビューしてから3カ月、明確な目標もできたようだ(インタビューは7月1日)。
4月にデビューして6月までで22勝。同期の中ではダントツの勝ち星です。特に1番人気馬では19回騎乗して、連対を外したのは1回だけです。
いや、まだぜんぜんですよ。(1番人気の連対率は)特に意識していなかったので、初めて知りました。一鞍一鞍がんばって乗るだけだと思っています。
では、まず騎手になったきっかけから教えてください。
小学6年か中学1年のころだったと思うんですけど、祖父が競馬が好きで、「運動神経も悪くないし、小さいんだから騎手でも目指してみたら」って。それまで競馬のことを意識はしてなかったんですけど、中学2年くらいから考えるようになって、そのうちに本気で目指すようになりました。中学を卒業して、茨城にある国際馬事学校に1年間行って、試験に受かって(地方競馬)教養センター入りました。
出身は千葉県ですよね。
千葉県の鎌ヶ谷市です。最初は船橋に所属したいと思っていたんですけど、教官に、「お前の人間性や技術じゃ通用しない」とか言われて迷っていました。そのうち、今所属している(金沢の)加藤和義先生が、調教師の試験を受けるための研修で3週間くらい教養センターにいらっしゃっていて、調教師試験に合格したらということで、先生から声をかけてもらいました。時期的にも1年の終わり頃で、どうしようかと思っていて、船橋だと乗り鞍に恵まれるかどうか不安だったので、それだったら金沢なら南関東より騎手の数も少ないし、乗せてもらえるんじゃないかということで金沢に決めました。
あらためて、ここまで22勝、勝率11.0%という成績はすばらしい。
(金沢では)新人が久しぶりということもあって、いろんな先生に乗せていただいてる感じで、乗り鞍には恵まれた中で、たまたま勝ててるのかなという感じです。でも乗っていて思うのは、やっぱり難しい。競馬はひとりでやってるわけじゃないので、まわりの騎手に気遣いながら乗るのが難しい。勝ち星なんて関係ないです。難しいに尽きますね。
1番人気や断然人気の馬でプレッシャーは感じますか。
そういう感じはないです。前の日に予想紙とかを見て、人気になっているときのほうがやっぱりやる気は出ます。印が付いてない馬よりは、印がついているほうがチャンスがあるってことですからね。
そういう意味では、わりといい馬に乗せてもらっていると。
「いい馬に乗りすぎてる」って加藤先生から言われます(笑)。
レースを見ていると、人気薄の馬に乗った時でも積極的に前に行こうとしているように見えます。
そうですね。やっぱりダート競馬ということと、減量のあるうちはそれを生かした騎乗もしないといけないんで。うしろのほうにいて、競馬を諦めてるんじゃないのかとか思われてマイナス評価になるんだったら、やっぱり前に行って負けたほうが悪い印象は与えないと思うので。とりあえず減量のあるうちは、減量を生かした積極的な騎乗を目指しています。
思い通りに乗れたレースはありますか。
10勝目のフレンドリーゼウスという馬で、それまで乗っていた藤田(弘治)さんから、「口が堅い」とか、「馬のうしろに入ったら掛かって乗り上げてしまうかもしれない」って言われていたので、内枠ということもあって、できれば前に行きたいと思って、いい感じに先行できたので、ペースを少し落として自分の有利なペースに持ち込んで。吉原(寛人)さんの馬がうしろから来てたんですけど、追い始めてムチを入れるとまた伸びてくれたので安心しました。
期待している馬はいますか。
3勝したグランラファルという馬と、4連勝したあと2着が続いてるんですけど、自分の厩舎で攻め馬からやらせていただいているトモヲエラババです。あと自分の初勝利で、2連勝したニシノオタフクですね。今ちょっと疲れてるんですけど、休んで調子を取り戻してくれたらまた勝ち負けになると思います。
デビュー前のインタビューでは、1年目の目標として減量がとれる30勝と言っていました。その目標はもうクリアできそうですね。
どうですかね、がんばりたいですけど。できれば(NARグランプリ)優秀新人騎手賞と、一番の目標は、プロスポーツ大賞の新人賞を狙いたいと思っています。(笹川)翼先輩(昨年のNARグランプリ優秀新人騎手賞)より上にいけばとれるのかなって。それを目指してやっています。
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※インタビュー・写真 / 斎藤修
金沢が熱い。昨秋のJBCの話ではない。今の話だ。金沢が誇る最強馬ナムラダイキチが11カ月の長い休養から復帰すると、6月15日には伝統の百万石賞を連覇し、秋の中央勢撃破へ名乗りをあげた。6月4日の東京ダービーではハッピースプリントで金沢のプリンス吉原寛人騎手が南関二冠目を制し、ジャパンダートダービーで三冠目を狙う。そして、忘れてはいけないのが、6月6日の東海ダービーで初めて金沢にタイトルを持ち帰った青柳正義騎手とケージーキンカメのコンビだ。地方では後続をすべて秒単位で突き放す"新怪物"の強さの理由や、ジャパンダートダービーへの意気込み、自身の今後の目標を青柳騎手に直撃した。
東海ダービー制覇おめでとうございます。レース前、自信はありましたか?
ありがとうございます。名古屋の強豪リーダーズボードが回避したので、一本被り(単勝1.4倍)で正直、緊張しました。輸送競馬は中央時代にも結果は出てませんし、金沢に来てからも初めてだったので、走ってみないと分からないと思ってました。
しかし、走ってみれば、金沢と同じような圧倒ぶりでした。
名古屋の馬はテンが速いと聞いていたので、位置取りが悪くなるかもと心配してました。でも、負けないくらいのダッシュができて、2番手につけられたので安心しました。道中も手応えがいいので、これなら大丈夫と思いました。3コーナー手前から先頭に立ちましたが、そこからも伸びましたし、輸送も関係なかったですね。
ケージーキンカメで東海ダービー制覇(写真:愛知県競馬組合)
リーダーズボードとの対戦が見たかったというファンの声が多く上がりました。
レース前は、不安もあって半信半疑でしたが、レースが終わった今なら、勝ち負けは分かりませんが、いい勝負にはなると思います。僕自身もすごく興味はありますし、あの馬と走ってみたいですね。
ケージーキンカメは中央では1秒1、3秒1、2秒5、4秒4、2秒3と5戦大差負けが続き金沢へ。でも金沢では1秒1、2秒4、1秒5、1秒0、2秒2、1秒3と6戦すべて圧勝と激変しました。
2月に金沢に来た時は先生(鈴木正也調教師)が攻め馬に乗ってましたが、テンションは高いし、乗り手の扶助には逆らうし、気性が難しかったです。3月から僕が乗り始めて、少しずつ走りに集中してきたのと、レースを覚えて素直になったのが大きいです。レースでも少々ハイペースで逃げてもバテないし、しまいもしっかり伸びる。とにかく心臓が強い。気性難が解消されて、強い心臓をフルに生かせるようになったのが、一変した理由です。乗り始めた頃は走らない馬とは思わなかったが、ここまで走るとは思わなかったので、びっくりです。本当に化けましたね。
普段はどんな馬ですか?
来た頃の気難しさがなくなって、今は基本的におとなしいですね。ただ、馬場に出るとテンションが高くなるところは今でもあります。
これまでの6戦の中で一番印象に残っているレースは?
やはり、東海ダービーです。会心のレースだったのもありますが、自分にとっては去年の北日本新聞杯に続く2度目の重賞制覇ですし、遠征での重賞制覇は初めてですから。
青柳騎手にとって遠征での初めての重賞制覇(写真:愛知県競馬組合)
次走はジャパンダートダービーと聞いてます。
前走後も何ともないし、輸送も大丈夫だったのは収穫。相手が強くなるので、胸を借りるつもりで挑戦しますが、僕の馬も、まだ底を見せていないので、どこまでやれるか、楽しみはあります。
金沢にはナムラダイキチという中央勢とも互角に戦える馬がいます。
いずれ対戦する日が来ると思いますが、名古屋での勝利でダイキチに挑戦する資格はできたと思ってます。ただ、時計だけを見たら差はないので、これからの成長も見込んで、いい勝負ができればいいですね(ケージーキンカメの5月13日の稍重1700mの勝ち時計が1分50秒0に対し、5日後18日の良馬場同距離でのナムラダイキチは1分50秒3。一杯に追われたキンカメと気合いをつけられた程度のダイキチとでは手応えが違い、単純比較はできないが、タイムはキンカメの方が速い)。
青柳騎手の勝負服はケージーキンカメの父キングカメハメハの金子オーナーと同じです。キングカメハメハ産駒にはよく似合う勝負服です。
ありがとうございます。教養センターにいる時、金子オーナーのクロフネが活躍していて印象的だったのと、僕の好きな青色が入っていたので、これを勝負服にしました。これからもキングカメハメハだけでなくクロフネやディープインパクト産駒の強い馬にも乗りたいですね(笑)。
今後の目標について教えて下さい。
昨年、ワイルドカード2位で出場したスーパージョッキーズトライアルに今年も出てみたいです。よその地区の上手な騎手と一緒に乗るのは、直線での追い方、コーナリング、仕掛けどころとか、勉強になったし、すごく刺激を受けました。今のところ、出場できるか微妙ですが(6月20日時点の金沢リーディングで2位とは4勝差の4位)まだ8月まで時間はあるので、2位までに入ってワイルドカードからでも出場したいです。あとは重賞の勝ち鞍を増やしたいです。今年はケージーキンカメがいるので、あと1つでも2つでも上乗せできればいいですね。
最後にファンの方へのメッセージを。
昨年には金沢ではJBCも行われましたし、ナムラダイキチも復活して、ケージーキンカメという未来のスター候補も出てきています。僕もケージーキンカメをもっと強くするように頑張りますし、馬も成長すると思いますので、これからも成長する姿を見に、競馬場に来てもらいたいですし、ネットでも見てもらいたいですね。
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※インタビュー / 松浦渉
金沢のトップジョッキー吉原寛人騎手は今年も各地へ積極的に遠征を続け、地元はもちろん全国区で存在感を示しています。そして今年、JBCが行われる金沢競馬の広告塔として様々な場所で宣伝活動も行ってきました。JBC開催目前の心境を伺いました。
秋田:今年は他地区に遠征をしながら金沢リーディングにも立ち、SJTへの出場も果たしましたね。
吉原:去年は半年ほど南関東にいましたから、金沢リーディングが獲れなかったことは悔しかったですが、自分のしたいことをした1年だったので実りある年でした。今年はその経験をもとに、遠征しつつも地元金沢でリーディングに立ってSJTに出場できました。自分の立てた目標通りに結果が出ているのは良いですね。
秋田:青柳騎手がトップの時期もありましたが、意識はしていましたか?
吉原:していましたよ! 青柳君も一生懸命でしたし、今まで立ったことないリーディングだったので『吉原さんの気持ちがすごく分かります。追われる立場って大変ですね』と話していましたよ。他の人は経験したことのない感覚だと思うので、それを青柳君と共有できることは刺激になります。
秋田:全国の競馬場に積極的に遠征している吉原騎手。そのモチベーションはどこから湧いてくるのですか?
吉原:デビュー1年目の中央遠征で初騎乗初勝利して、その後オーストラリアやドバイにも行って......。新人ではあり得ない経験ですよね。ほとんどの騎手は地元の競馬場で育って成長していくと思うのですが、初めから中央や世界を見てきた自分にとって、競馬はもっと広いんだよという感覚があるんですよ。だから若い時から、どこでも乗れるジョッキーという意識が生まれていたんでしょうね。自分のやってきた経験が今の自分をそうさせているのだと思います。
アメイジアで念願の南関東重賞初制覇(4月17日、川崎・クラウンC)
秋田:でも、正直なところ遠征が続くと疲れませんか?
吉原:移動が本当に辛くて......(笑)。慣れが一番大切ですよね。慣れていれば、移動でどのくらいの体力を使ってこのレースに臨めるなとか計算ができるんですけど、初めての場所だと移動での疲労の度合いが分からないので本当に大変です。でもいろんな場所で経験してきたので、もう分かるようになりました。日々の体調管理もすごく大事に思っていて、新人の頃よりサプリメントを飲むようになったし、ジムで体を作るようになりましたね。そういう部分ではプロ意識は高くなったかなと思います。
秋田:今年は、金沢競馬の広告塔としてJBCのピーアールもたくさん行ってきましたよね。JBC開催がすぐそこまで迫っています!
吉原:ここにきて、こういう取材が急激に増えたんですよ! だから、本当にJBCが近いんだなって(笑)。JBCにはこれまで何回か乗せてもらいましたが、すごい歓声なんですよね。僕がデビューしてから、金沢にそんなにお客さんが入った記憶がないんです。だからそれを経験できるのかなと思うとすごく楽しみです。
秋田:金沢競馬場の魅力は?
吉原:とにかく、食べ物が美味しい! 魚が美味しい! あと、良い感じの田舎なので、金沢に来たことのない人は泊まりがけで遊びにきてほしいですね。
秋田:では、JBCが行われる金沢競馬のコースについて教えてください。まず、JBCクラシックが行われる2100mは?
吉原:バックストレッチの奥からのスタートなので、直線が長いんです。だから力があればどの馬も良い位置が取りやすい。まぎれがあまりなくて力は出やすいコースですね。
馬の脚質的には、好位差しが一番良いと思います。金沢は逃げ馬がペースを握れるコースではないんですよ。どこでもマクレる広い向正面もあって、逆に逃げ馬がしんどくなるので、それをマークして競馬ができるのが理想ですね。
秋田:JBCスプリントが行われる1400mは?
吉原:オープンクラスだと、意外と(最初の)直線が短く、すぐコーナーだと思います。だから枠順も影響しますね。内に先行馬が多ければ、外から行ききれない可能性が高いです。外を回されると厳しい位置になってしまいます。だから、1400mの場合は枠順から勝負が始まりますよ。
秋田:そうすると1500mのほうが競馬はしやすそうですね?
吉原:そうですね。(4コーナー)奥からのスタートで直線が長いからまだ挽回はきくかなと。でも、1500mでも逃げ切れてしまうコースだと思うので、意外と面白くなるのではないでしょうか。
サミットストーン(7月28日、金沢スプリントC)
秋田:地元金沢からは、吉原騎手が騎乗するサミットストーンが注目です。
吉原:金沢に移籍してから具合も良いですね。ゲートに課題がある馬ですが、スタートで尾持ちするようになってなんとか形にはなったと思います。なかなか他地区の馬との力関係がわからなかったんですが、イヌワシ賞で高知のグランシュヴァリエなどに勝つことができたのは良かったですね。
白山大賞典では金沢の大将格ということで掲示板を確保できたけれど、今回の着差が中央勢との力差なのかなと。調教師ともスプリントのほうがいいかなぁとは話していますが相談ですね。ただJBCに出るならしっかり作戦を練って見せ場を作りたいと思います!
秋田:では、最後にJBCに向けてメッセージをお願いします!
吉原:金沢競馬でJBCができるなんて思っていませんでしたが、やるからには関係者一同、盛り上げたいという熱い想いがあります! 当日は、競馬の魅力を感じて欲しいですし、観光も兼ねて金沢の良い場所を巡ってもらいたいですね。そして、ファンのみなさんと一緒に盛り上がりたいです!!
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※インタビュー / 秋田奈津子