4月1日にデビューした笠松の深澤杏花騎手。すでにたくさんのレースに騎乗し、4勝(2020年5月26日現在)を挙げています。"地方競馬の深キョン"に、今の心境を伺いました。
騎手を目指したきっかけから教えてください。
小学校4年生くらいの時に、たまたま近所で配っていた(乗馬クラブの)チケットをもらって、体験乗馬をしたのが最初のきっかけです。いつか牧場で働きたいなと漠然と思っていました。その後、たまたまテレビでレースを見て、騎手という職業があるということを知り、目指してみたいなと。ただ、2、3歳の頃から水泳(背泳ぎ)をしていて、中学1年生くらいまでは乗馬と掛け持ちしていたんですけど、中学3年生までは真剣に水泳に打ち込もうと思って、乗馬を控えた時期もありました。精一杯打ち込めたので、水泳に未練はなくて、そこから教養センターを受験して、という形です。
兵庫県出身ですが、笠松所属になったのは?
騎手の人数が少なくて、チャンスを頂けるかもしれないと考えました。笠松競馬場の方々はとてもアットホームで優しくて、すぐに馴染むことが出来ました。実際、たくさんチャンスを頂いているので、もっと上手くなって結果を出したいです。
デビューしてみていかがですか?
想像していた以上に上手くいかないです。レースに乗ったら動かせると思っても全然馬を動かせなかったり、位置取りも他の人の邪魔をしてしまったり...。すごく難しいです。
4月1日免許交付で当日にデビューしました。しかも初日から7鞍に騎乗で、第1競走から第6競走まで、6レース連続騎乗というハードスケジュールでしたね。
デビュー初日からたくさん乗せていただいて、周りの方々にはとても感謝しています。体力的にはけっこうキツくて、2レースが終わった辺りで脚が辛かったですけど、気合いで乗り切りました。レースに騎乗することはもちろん、鞍を用意したり装鞍したり、パドックに行ったり、そういう一連の流れも初めて経験したので、アタフタしてしまいました。
7鞍の中で、2着、3着と上位着順もありました。初日を終えてのお気持ちは?
1日乗り切れてホッとしましたけど、反省ばっかりですね。レース映像を見直して、先輩たちにいろいろ教えてもらいました。
デビュー2日目には、第5競走で1番人気プラピルーンに騎乗。初勝利の期待が高かったですが、『カンパイ』からの全馬競走除外という、なかなかないアクシデントがありましたね。
そうですよね。本当になかなかない経験だったと思います。馬力のある馬で、後ろの馬も来ていたので止められなくて、結局1周走ることになってしまって。(井上孝彦)先生からは、「他にも強い馬がいるし、気楽に、べストな騎乗をしてこい」って言っていただいたんですけど、こういう結果になってしまって残念でした。
デビュー2日目以降は上位に入れないレースが続きましたが、あの頃はどんな心境でしたか?
メンタル的に本当にキツかったです。上位というか着内にも入れないレースが続いて、自分ダメだな...と落ち込みました。レースを何度も見て、先輩の位置取りも見て勉強するんですけど、考えていることと実際に乗るのでは全然違って。次に乗る時にはこうしようと思っても、なかなか思い通りにできなくて、騎手に向いてないのかなってすごく落ち込みました。
4月15日、デビューから36戦目で待望の初勝利
しかし、デビューから約2週間後、4月15日第6競走でプラピルーンに騎乗し、見事初勝利を挙げました!
すごく嬉しかったですし、ホッとしました。このグリグリ本命の馬で勝てなかったらどうしようって、朝からずっとプレッシャーで。周りからも、「出遅れたら負けるぞ」とか、けっこうプレッシャーになること言われて、気持ちを保つのが大変でした。だから勝ったあとは涙が出てしまって。やっぱり、たくさん乗せていただいていた分、早く勝って少しは恩返ししたいという気持ちもありましたし、自分の実力のなさを痛感して凹んでいましたから、1つ勝てたことは大きかったです。馬にも関係者の方々にも、感謝の気持ちでいっぱいです。
勝ってからは、違いがありますか?
そうですね。少し気持ちが楽にはなりました。2勝目までがまた時間が掛かったんですけど、2勝目(4月28日)を挙げた時にはちょっとリラックスして乗れたかなと思います。その時は1日2勝することができて嬉しかったですね。でもまだまだですし、特に後ろから差す時はまだ馬群を上手く捌けなくて、人より外を回ってしまったり。逃げた時も、道中息を入れられなくて、馬が賢いから自分で息を入れてくれるので、そういうところもしっかりとできるようになりたいです。
5月7日第4競走では、サノレオンに騎乗して初の差し切り勝ち! 大外から差した時はどんな気持ちでしたか?
差し切りって気持ちいいですね!(川嶋弘吉)先生からは、最初ズブくて動かないから後ろからでいいから、先頭集団に置いて行かれないようにと言われていたんです。馬群と離れず行けたので、3~4コーナーから外に持ち出して必死に追いました。
すでに124戦も騎乗していて、同期の中でも断トツの乗り数です。
とても有難いですし、恵まれているなと感じます。でもこんなに乗せてもらっているのに結果が伴っていないので、そこは反省点ですね。
教養センター時代の同期は意識しますか?
します! 同期が勝ったレースを見て研究したりもしますし、特に浦和の(北島)希望は7勝もしているのですごいなと。いい刺激をもらっているので、わたしも頑張ります!
東海には宮下瞳騎手、木之前葵騎手という活躍している女性騎手がいますが、何かお話はしましたか?
はい、しました。トレーニングや騎乗についていろいろアドバイスをいただいて。宮下さんは、デビューした頃は騎乗フォームを気にするよりも、どうしたら馬群を捌けるかなどレースに集中していたと言っていました。木之前さんはジムに行ったり、腹筋やスクワットなどで下半身を中心に鍛えていると。お2人ともそれぞれ素晴らしいジョッキーなので、しっかり吸収していきたいです。
デビューから約2カ月経ちましたが、生活には慣れましたか?
そうですね。笠松だけではなくて名古屋でも乗せてもらっていて、土日以外はだいたいレースという有難い環境です。朝は12時50分に起きて、1時半から9時まで26頭に乗っています。今は本当に競馬漬けという感じで、他のことを考える余裕はないですね。
26頭?! 20頭越えたら相当キツいと思いますが。
ずっと乗っていたら慣れて来ました。いろいろな馬に乗せていただいて、経験を積めるのは有り難いです。
今の目標は何ですか?
次の1勝、とにかく目の前のレースに向けて頑張ります。あと、まだファンの方の目の前でレースをしたことがないので、ファンの方が競馬場にいらしてくれる日が待ち遠しいです。多分、緊張すると思いますけど(笑)。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
もっともっと努力して、上手くなるよう頑張ります。笠松競馬、深澤杏花を宜しくお願いします。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:岐阜県地方競馬組合)
昨年はマカオに遠征し、初勝利初重賞制覇を果たした水野翔騎手。日本でも72勝を挙げ、デビュー6年目でキャリアハイの年になりました。
まずは地方競馬通算200勝達成、おめでとうございます!昨年は飛躍の年でしたね。
ありがとうございます。勝利数的にもこれまでのキャリアハイの年でしたし、マカオで重賞を勝たせていただいたり、とても充実した1年でした。でも自分の中では甘かったところもたくさんあったので、まだまだだなと思っています。
ホッカイドウ競馬から笠松に移籍して2年目でしたが、飛躍の要因を自己分析すると?
環境に慣れたというのもありますし、一番大きかったのは中野省吾さん(現在はマカオで騎乗中)ですね。もともと連絡は取っていたんですけど、親しくなったのが2018年頃に省吾さんが(船橋での)騎手を辞めた後です。「大丈夫ですか」って連絡したりして。ある時、「東京で飲んでるから来いよ」って言われて、笠松から新幹線ですぐに行きました。僕の中で騎乗的にも人間的にも惹かれる部分があったので、じっくりお話してみたいなと思って。
どんなお話をしたんですか?
いろいろですね。特に大きかったのは、当時の僕は騎乗面で迷いがある時で。他の先輩から、「○○した方がいい」って言われてやってみて、別の先輩からは「△△はやめた方がいい」と言われてやってみて、という感じでブレていたんです。騎手は人それぞれ体型も感覚も違いますし、アドバイス通りにすることが必ずしもいいとは限らない。どうしたらいいかわからない時で、「お前、今グチャグチャだな」って省吾さんに指摘されました。技術的なことだけじゃなくて、一般的な常識というか、土台となる考え方とかも教えてもらって。最初は上手くいかなかったんですけど、だんだんと省吾さんの言っていたことがわかるようになって、そこから自分の中ではガラッと変わりましたね。
マカオに約3カ月行っていたのに、日本で72勝挙げてキャリアハイを達成したのはすごいと思います。
マカオに何で行ったかというと、それも省吾さんのお陰なんです。笠松に移籍して2年目で、その時リーディング3位のところにいたので、正直、このタイミングじゃないだろって思った方はたくさんいると思いますし、実際周りの方からも言われました。でも省吾さんから、「お前は今マカオに来た方がいい」って言われて。(所属する)笹野(博司)先生に相談したら背中を押してもらえたので、思い切って行くことにしました。省吾さんに言われてから1カ月半で行きましたね(笑)。
行動早いですよね。新幹線ですぐに東京行ったり、マカオまで飛んで行ったり。
座右の銘は「疾風迅雷」なので!これからもそこは大事にしていきたいですね。ただ、やっぱり笹野先生が快く送り出してくれたことが大きいですし、帰って来てからも乗せていただけることに感謝しています。本当にいい環境でやらせていただいていて。だからこそもっと頑張って結果を出したいです。
ファスバに騎乗しマカオでの初勝利が重賞(サマートロフィー・G2)初勝利(2019年6月29日)
マカオでは初勝利が重賞制覇ということで、とてもびっくりしました!
僕もびっくりしました(笑)。でも自分ひとりで出来たことではなくて、頑張ってくれた馬と、乗せてくれた関係者の方々、そして省吾さんの存在が大きかったです。マカオで乗り出した時には、日本の馬とあまりにも違っていて、全然上手くいかなくて。日本の馬とは走りの重心が違うので、これまでの乗り方だとバランスが取れないくらいだったんです。そこから毎日のように省吾さんに木馬の練習に付き合ってもらって、それを録画して見比べて。言葉でもいろいろなことを教えていただきました。
最初は大変なご苦労をされたのですね。ただ、マカオでの初勝利初重賞制覇は7戦目、騎乗を初めてから1カ月経っていませんでした。努力を重ねて、短期間に適応したんですね。
そうですね。マカオではレースに乗る機会がものすごく少ないんです。なので、1レースに懸ける集中力が、これまで以上に研ぎ澄まされたというか。レースに向けていろいろシミュレーションをして、実際のレースでいかにすべて当てはめて成績を残すか、ということをこれまで以上に考えるようになりました。
では、今年の目標は?
去年マカオに行く前は3位だったので、今年は(笠松リーディング)1位を目指したいです!
水野騎手と言えば、髪の毛の色が特徴的、という印象が強いです。
以前はなかなか思うようにいかない反動でやってたのもあるんですけど、今はいい波に乗せてもらっていて、自分の気持ちというよりも、見た目で判断されるということを変えていきたいなと。騎手として黒髪で短髪で爽やかで、そういう人もすごくいいと思うけれど、僕みたいなのもいてもいいかなって思うんです。
周りからいろいろ言われませんか?
「見た目で損してる」とは言われますね。でも僕の人生なので、これからもいろんなカラーにして派手なピアスつけてって感じで行こうと思っています。地方競馬は中央競馬に比べて知名度が低いじゃないですか。特に若い人からももっと認知して欲しいですし、例えば僕の写真を見て、「こんな奇抜な人が騎手なの?」「地方?笠松ってなに?」っていう、そういうきっかけになったら嬉しいです。
正直、これまでの印象と、お話を伺ってみての印象が変わりました。
昔は頭が悪かったので(笑)。今も良くはないですけど、いろいろな経験を積ませてもらって、少しは変われたかなと。自分なりに勉強したり、言葉使いに気をつけたり、いろいろ考えるようになりました。日本人は周りに合わせる習性が強くて、ちょっと違うと浮くじゃないですか。でも僕みたいなのがいて、後輩とかにも、「こんな感じでいいのか」って思ってもらえたら。ただ、それには成績を挙げないと説得力がないので、もっと成績を挙げないといけないと思っています。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
マカオから帰って来てからも、どうしたら馬は動くのかということをいろいろ研究しています。今は、前までの僕には考えつかなかった引き出しが出来て、精神的にも技術的にも多少は成長出来たんじゃないかと。今年はさらなる技術向上を目指していますので、注目していただけると嬉しいです。宜しくお願いします。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:本人提供)
4月2日に笠松競馬場でデビューした東川慎騎手。デビュー当日のメインレースで初勝利を挙げると、父である東川公則騎手は涙を流したとか。笠松で生まれ育ち、「父を超えたい」と目を輝かせるルーキーに生い立ちや目標について伺いました。
■お父様は現役で2700勝以上を挙げる笠松の名手・東川公則騎手。騎手になろうと思ったきっかけはやはりお父様だったんでしょうか?
はい、父に憧れてですね。小さい頃から「騎手になりたい」と思っていたわけではなくて、中学校に入ってから次第に父がカッコよく感じてきました。僕は6人兄弟の5番目なんですが、兄弟の中では一番体格が恵まれていたんです。
それでしたら、「騎手になりたい」と言った時にはお父様は喜ばれたんではないですか?
よくインタビューで聞かれるんですけど、父はそんなに大きなリアクションはしていなかったと思います。「一緒に乗れるのが嬉しい」とは言っていて、それは自分も嬉しかったです。
地方競馬教養センターに入所前から乗馬は習っていたんですか?
一応、小学生の時にやっていたんですけど、そこまで本格的にはやっていませんでした。地方競馬教養センターへは1回目は面接でダメで、2回目で合格しました。
デビュー初日の4月2日、5戦目での初勝利
デビュー初日のメインレースで初勝利。家族が応援に来ていたそうですね。直線では歓声など聞こえましたか?
もう必死過ぎて、全然聞こえなかったです。1800m戦だったので、正直「どうなのかな?」と思っていたのですが、少し追ったら馬が応えてくれてビュンッと行ってくれました。勝ったという実感はなくて、「え、マジで!?勝ったしまった!」って感じでした。ゴール後に(佐藤)友則さんが馬上から手を差し伸べてくれて、泣きそうになりました。バレンティーノの調教には友則さんが乗ってくれて、(尾島)徹先生にもお願いしてくださいました。ホント、友則さんに感謝ですし、徹先生にも馬主さんにも全員に感謝です。でも、もっと楽に勝たせてあげたかったな、と思うので、そういう意味ではこのレースはあんまり見たくないんです。
お父様と同じ職業に就きましたが、家ではどんな感じなんですか?
父は仕事では真面目ですけど、家ではワイワイしています。兄弟同士イジり合ったりしますし、家族みんな仲がいいですね。いまこうして父と一緒に乗れて、迷惑しかかけていないですが、最近は競馬の話もするようになりました。まだ僕は全然競馬のことは分からないですが、調教の話とかするのが楽しいですね。
(5月1日現在)デビューして1カ月が経ちましたが、どうですか?
まだ2勝目を挙げれていないんですよね......。厩務員さんには「勝つのが早すぎたな」って言われました(苦笑)。初勝利はホントみなさんに感謝です。
となると、今の目標は?
とりあえず2勝目ですね。初勝利を挙げたバレンティーノはこないだ(4月23日)2着やったんですよ。
(編集部注:5月9日笠松第7レースで2勝目を挙げました)
将来的な目標は何ですか?
ぶっ飛んでいますけど、父を超えたいです。通算勝利数もですし、笠松リーディングも獲りたいですね。父がリーディングを6回獲っているので、僕は7回!そのためにはもっと勉強します。
笠松には東川騎手が2人いるわけですが、ファンのみなさんには何て呼んでほしいですか?
好きな呼び方で呼んでいただければと思います。「ジュニア」はなんか照れ臭いですけどね。みなさんの応援にこたえて、どんな人気のない馬でも勝てるようになりたいです。
初勝利セレモニーでプラカードを持つ父、東川公則騎手
勝負服の胴に入っている菱形はお父様と同じですしね。
はい、この菱形でがんばっていきたいです。とにかく、勝ちたいです!笠松のない週は名古屋にもレースに乗りに行くんですけど、楽しいです。いっぱい乗せてもらえるので、がんばります。
最後にオッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
いつも同じことしか言えないのですが、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大恵陽子(写真:岐阜県地方競馬組合)
笠松の騎手として初めてNARグランプリ優秀新人騎手賞を受賞した渡邊竜也騎手。まもなくデビュー3年目を迎える彼は、重賞初制覇にあと一歩まで手が届きかけています。また、ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)を経験したことであどけなかった表情は凛々しくなってきました。着実に成長を遂げている彼に、現在の心境を伺いました。
NARグランプリ優秀新人騎手賞の受賞、おめでとうございます!笠松の騎手がこの賞を受賞するのは初めてです。
ビックリしました。他の先輩方が受賞されてそうですけどね。加藤聡一先輩(名古屋)や鈴木祐先輩(岩手)が新人賞を獲ったのを見て、勝利数で一番になればいただけるのかな、と考えていました。なので、「獲れるんじゃないかな」と思っていました。デビューした時からずっと新人賞を獲りたくて気にしていたんです。嬉しいですね。
デビュー2年目となる昨年は64勝。前年の38勝から大幅に勝ち星を量産しました。振り返ってみてどうですか?
去年は取りこぼしが多かったなって思います。所属の笹野博司厩舎は昨年、笠松リーディングですし、先生がいい馬に乗せてくださるのでもうちょっと勝つべきですね。
昨年は笹野厩舎にホッカイドウ競馬から水野翔騎手が移籍してきました。3年先輩にはなりますが、年が近くて仲が良く、ライバルとしてもいい刺激になっているように見えます。
刺激は少なくともあるかもしれないですね。僕の中では水野さんと競争しているって感じは特別ないですが、水野さんから学ぶこともあります。技術的な面は向山(牧)さんとかに聞くことが多いです。一緒にレースビデオを見ている時に「こうですかね?」とか「あそこはこうした方がよかったですかね?」と聞くと、答えてくださることもあります。
昨年は年末に重賞で惜しいレースが2つありました。まずはボルドープラージュ。ライデンリーダー記念では7連勝中だったエムエスクイーンにクビ差まで迫って2着でした。エムエスクイーンより内の枠で、同馬より前でレースを進めましたが展開としてはどうでしたか?
枠の並びが逆だったら、エムエスクイーンをマークしたかったですね。ボルドープラージュは先頭に立ったり、距離だったり、何かしらの理由で最後に止まるところがあるんです。枠順が逆だったら、ぴったりマークしてレースができたかな、と思います。
2月には遠征して園田ユースカップでも惜しい2着。レース後は悔しそうな表情が印象的でした。
1400メートルでしたし、馬場も味方して最後までもってくれました。でも、この距離でも直線は止まってしまうので油断はできなかったです。決め手勝負になると、勝ったジンギの方が断然上ですし。勝てなくてめっちゃ悔しかったですが、ビデオを見ると楽に交わされてしまっていましたね。園田には同期が2人(長谷部駿弥騎手、永井孝典騎手)いるので、同期の前で重賞を勝ちたかったです。検量室前に戻ってきたら長谷部に満面の笑みで「惜しかったな」って言われて、余計に悔しかったですね。
ボルドープラージュで惜しくも2着だった園田ユースカップ(写真:兵庫県競馬組合)
昨年末にはもうひとつ、カガノカリスマで東海ゴールドカップ3着がありました。カガノカリスマではその後、川崎記念や佐賀記念など全国に遠征に出ていますね。
いろんなところに連れて行ってくれる馬ですね。以前はあまり歩様が良くなかったんですが、僕のところに回ってきてから調教でしっかり乗ったら結構良くなってきて、いろんな競馬場に行けるようになりました。ダートグレードレースで上位争いに加わることはなかなか難しいですが、こうして馬と遠征できるのってすごく楽しいですね。
YJSでも全国の競馬場で騎乗し、2年連続でファイナル進出を果たしました。振り返ってみていかがですか?
YJSは僕のモチベーションでした。この2年間はYJSを追いかけていたら終わっていましたね。「今度YJSで乗る競馬場ってどんな感じなんだろうな?」とイメージして、笠松のレースでもそれに例えて乗ってみたりしました。イメトレの効果があったかどうかはわからないですが、いい馬が当たって予選も突破できたので、やっておいて良かったかなと思います。昨年は予選ラウンド地方全国1位で行きたかったんですが、最後の最後に櫻井(光輔)にやられちゃいましたね(苦笑)。
昨年12月に通算100勝を挙げ、減量を卒業しました。先輩たちと同じ条件でレースに騎乗することになりますが、これからの目標はなんですか?
やっぱり重賞制覇ですかね。ボルドープラージュは水沢に移籍しちゃうそうなのですが、そろそろビップレイジング(東海ダービーなど重賞2勝)が帰ってくるらしいので、期待しています。あとは、また先生がいい馬を連れてきてくださると思うので、そこで期待にも応えたいですね。今年は尾島(徹)先生も勢いがあって笠松リーディングなので、自厩舎がリーディングになれるようがんばりたいです。
最後にオッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
YJSには出場できなくなって、いろんな競馬場に行くことがなくなったので、みなさんに忘れられないようにしたいです。笠松に引きこもっていても仕方がないので、いろんな所に行って顔と名前を覚えてもらえるように頑張りたいと思うので、僕を忘れないでください。
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※インタビュー / 大恵陽子
昨年はキャリアハイの122勝を挙げ、笠松リーディング第2位の成績を残した筒井勇介騎手。12月30日には地方通算1000勝を達成し、大晦日には久しぶりの重賞制覇。最高の形で2018年を締め括ったように見えますが、実際はどうだったのでしょうか。
まずは、1000勝達成おめでとうございます!
ありがとうございます。1000勝という数字は前から意識していました。実際に近づいて来て2カ月くらいはなかなか勝てなくなって...。11月の半ばくらいから全然勝てなくて、12月の最初の開催なんて1勝しかできなかったんです。その開催くらいで達成できるかななんて思っていたのに全然勝てなくて、足踏み状態が本当に苦しかったです。
やはり数字というのは大きいんですね。
そうですね。自分ではそこまで意識しないようにと思っていたんですけど、振り返ってみるとだいぶ意識していたのかなと。1000勝を達成するまでは苦しんだのに、勝った次の日からはポンポンポンといきましたから(苦笑)。
地方通算1000勝達成(2018年12月30日、笠松第7レース)
12月30日、笠松第7レースのゴッドミラクルに騎乗しての達成でした。
デビュー当初からお世話になっている馬主さんの馬で、自厩舎で達成できたので、そこはすごく嬉しかったです。嬉しいの一言ですけど、いや~長かったなって思いました。1000勝もありましたし、同じ時期にリーディング争いもあったので、そういうのもいろいろ重なって。勝てないし、どんどん差は広げられるし...。いろいろと考えさせられる時期でした。
昨年は122勝を挙げ、笠松リーディングは2位という輝かしい成績でしたけれども。
一応キャリアハイだったのでありがたいです。たくさんいい馬に乗せてもらったので、そのお陰でたくさん勝つことができました。まだ取りこぼしも多いですし、実際に後半勝てない時期もあった中で、本当にたくさんの方々に支えていただいたなと。感謝の気持ちでいっぱいです。
リーディング2位というのも初めての経験でしたが、トップが見えた位置での騎乗というのはいかがでしたか?
やっぱり今までとは違った感じで、周りも『リーディング獲れるぞ』っていう目で見てくれるので、いろいろと考えるところはありました。気にしないようにはしていましたけど、どうしても意識していたんだと思います。
先ほども仰っていましたが、1000勝を達成した次の日には4勝の固め打ち。しかも東海ゴールドカップで久しぶりの重賞制覇を果たしました。
1000勝も達成して、リーディング争いも決着して、気持ちが落ち着いたからなのか...まぁ、こんなもんなんだなって(笑)。久しぶりの重賞はすごく嬉しかったです。(2013年のライデンリーダー記念以来)5年ぶりですから。
ダイヤモンドダンスは6番人気でしたけれども、レース前の雰囲気というのはいかがだったんですか?
調子がすごく良かったんですよ。追い切りも今までで一番良かったので、いい走りができるんじゃないかと期待していました。人気はあんまり気にしていなくて、最初からああいうレースをしようと思っていて。落馬のアクシデントもあったけれど、人気どころが前でやり合う形になって、思った以上に流れが向きました。向正面からすごい手ごたえで上がって行って、マクり切ったところでなんとかなるなと。あとは後ろから来ないでくれと思いながら追いました。すべてが上手く行ったし、上がって行った脚がすごく良くて、本当に気持ち良かったです。
2018年大晦日の東海ゴールドカップをダイヤモンドダンスで制覇
ゴール板のところでは気持ちの入ったガッツポーズが飛び出しましたし、その後流していって1コーナー過ぎでもガッツポーズしていましたね。
はい。嬉しくて自然に出ていました。1コーナー過ぎの外側には装鞍所があって、あそこにも厩務員さんたちがいたので「やったー!」って。馬主さんにとっても花本厩舎にとっても初重賞制覇だったし、最近笠松の馬が重賞を勝てなかったので、みんなに向けてという気持ちもありました。
お世話になった方々に、いい恩返しができましたね。
まだまだ足りないですけど、でもすごく嬉しかったです。馬主の安東純二さんにはとてもお世話になっていて、よくご飯とかにも連れていっていただくんですけど、笠松の表彰台に立つのが夢だって仰っていたので、叶えることができて嬉しくて。花本正三厩舎にもすごくお世話になっているし、僕にとっては義理のお父さんなので。
え?そうだったんですか?!
そうなんですよ。花本先生の娘さんと結婚しているので。嫁さんもすごく喜んでくれました(照)。
2018年は苦しみながらも最高の締め括りでしたね。2019年はどんな年にしたいですか?
毎日の仕事をコツコツ積み重ねていくというのは当然ですが、やっぱりリーディングは狙っていきたいです。(佐藤)友則さんが抜けているので難しいところもありますけど、諦めずに食らいついて行きたいですね。去年は友則さんが南関東に行っていた時期があって、だからこそ大きなチャンスだったのに、僕が勝てない時期があって、友則さんがポンポンポンと勝っていったので差を広げられてしまいました。今年も遠征に行くことも多いだろうし、友則さんからも「がんばれよ」って言ってもらっているので、なんとか食らいついて行きたいです。
佐藤騎手が全国的に活躍して、地元を空けることが多くなると、筒井騎手にかかるプレッシャーも大きくなりそうですね。
そうですね。去年はそこでプレッシャーを跳ね返し切れなかったなと。簡単なことではないですが、一度経験したというのは大きいので、今年こそはと思っています!
では、オッズパーク会員の皆さんに笠松のPRとメッセージをお願いします。
笠松のレースでのポイントは、まずスタートと、向正面の仕掛けどころです。前に行っていてもスローに落とすと一気にマクッて来る人もいるので、そこをどう対処するか。油断しているとマクり切られたりするし、でも前に行って楽をしたいので、そこの攻防が一番の見どころだと思います。僕自身のことは、ありきたりなんですけど、これからも1つ1つ丁寧に乗って、全力で頑張りますので長い目で見て応援していただけたら嬉しいです。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:岐阜県地方競馬組合)