今年も笠松リーディングを独走中の笹野博司調教師。第1回ネクストスター笠松をワラシベチョウジャで制覇するなど、絶好調な1年でした。
まずは第1回ネクストスター笠松制覇、おめでとうございます。
ありがとうございます。目指していたレースでしたので、勝つことができて嬉しいです。
レースぶりも強かったですね。
そうですね。仕掛けが早めになってしまったので、最後いっぱいにはなりましたが、早めに仕掛けて勝ち切るわけですから、たいしたものだなと改めて感心しました。
ネクストスター笠松(10月12日)を制したワラシベチョウジャ
今年から始まったネクストスターは1000万円の高額賞金が設定され、インパクトが大きいレースだと思いますが、笹野先生も早い段階で目標にしていたレースでしょうか?
昨年発表された時から注目していましたし、私だけではなく周りの方々も目標にされていたのではないでしょうか。全国的に開催されて注目度も高いですし、そういうレースを勝てて嬉しいです。
ワラシベチョウジャとの出会いはどういう経緯があったのでしょうか。
昨年のサマーセールでオーナーが気に入って選んだ馬です。1歳の冬の頃はずいぶん小さかったのですが、育成公社で育成をしていただいて、ひと冬超えて2歳の春頃になったらだいぶしっかりした印象です。ただ正直、その頃はここまで走るとは思っていなかったというか。丈夫そうな足元をしていて、長く走ってくれそうだなという印象でした。
いつ頃から能力の高さを感じましたか?
入厩してからです。走りに無駄がなく、余計な仕草がないんですよね。まだ体ができていない2歳の頃は、例えば頭が高かったりという無駄な動きがある馬が多いのですが、あの仔にはそれがないんです。飛びは芝でもやれそうな素軽い走りをしますし、1本目の追い切りから時計が良くて、ひょっとしたらモノが違うかもしれないと感じていました。期待通りデビュー戦の800mで勝ってくれましたが、私が一番驚いたのは2戦目のレースです。
7月20日の芙蓉特別ですね。
1400mに距離が延びて、内枠だったのですがゲートの出が悪く、逃げ馬の後ろに控える競馬になりました。ポケットに入る形で4コーナーまで外に出せず砂を被る競馬になって、これは厳しい競馬になったなと。さすがに2歳の女の子でまだ2戦目、距離延長で砂を被ってということで、ちょっと諦めムードだったわけですが、直線で外に出したらピュッと伸びたので驚きました。メンバーも強かったですし、2戦目でこういう競馬ができるというのは、あまり私の経験上なかったものですから、これはモノが違うなと。控えてもいいし、行ってもいいし、競馬に注文がつかない馬だなと思いました。
そこからはずっと順調に過ごして来たのでしょうか。
順調といえば順調ですが、3戦目の秋風ジュニアの時に、どういうふうに仕上げて使うのがいいのかまだ少し手探りの状態だったんです。JRA認定競走で準重賞ということもあり、しっかりと追い切りをかけて仕上げた方がいいのではないかと、最終追い切りを強めに行ったのですが、勝つには勝ったものの余力を残して勝てなかったという経験がありました。渡邊竜也騎手とも話して、そこからは1週前にびしっと行くようにして、本追い切りはなるべく余力を残すようにしようというふうにしたら、それが合うのか勝ち方が変わってきました。まだ2歳ですし、今後も馬の様子を見ながらこの仔に合う調整方法を探っていきたいと思います。
残念ながら12月7日のジュニアキングで連勝はストップしてしまいましたが、来年はどんなイメージをお持ちでしょうか。
ジュニアキングの後は休養するとレース前から考えていて、今は放牧中です。2月頃から始動して、地元のレースを使ってからネクストスター中日本(3月28日・名古屋)を目指すプランです。結果次第では、いつかは芝にも挑戦してみたいですね。
距離適性はどのくらいの範囲だとお考えでしょうか。
1600mは大丈夫だと思います。それ以上はやってみないとわからないですね。今のところ真面目にがむしゃらに走ってしまうので、道中もう少し力を抜いて走ることを覚えていけば、距離の融通は利くのではないかと。レースはすごく真面目ですが、普段は気が強くて厩務員さんは手を焼いています。そういう気の強さも勝負に行っていい方に出ているのではないでしょうか。
ワラシベチョウジャ、というお名前はインパクトがありますね。
最初にオーナーから聞いた時には驚きましたが、とてもいい名前だなと思います。デビュー戦からどんどん勝ち上がって重賞制覇までしましたから、まさに名前のように前に進んでいるなと。前走は負けてしまって悔しいですが、また立て直して来年活躍できるよう頑張ります。
では笹野先生ご自身のことを伺います。今年ここまで167勝(2023年12月11日現在)を挙げて、全国リーディング第3位、笠松リーディング第1位です。毎年好成績を残す秘訣は何でしょうか。
スタッフが毎日一生懸命頑張ってくれますし、今は怪我でお休みしている渡邊竜也騎手や、騎乗してくれるジョッキーの存在も大きいですね。そして、馬主の方々がいい馬を預けて下さることにとても感謝しています。
調教師として、大切にしていることは何ですか。
一番は故障しない馬を作りたい、ということです。故障してしまうと馬自身にとっても辛いことですし、馬主さんにとっても我々にとってもいいことがないですから、そこを大切にしながら、どうすれば強い馬作りができるかということを厩舎一丸となって話し合っています。
以前所属していたオマタセシマシタはとても話題になりました。
斉藤慎二オーナーの馬で、あの仔が走る日はお客様も多く来場されました。2つ勝たせていただいて、笠松競馬場の盛り上がりもすごかったです。我々にとってもいい経験をさせていただきました。今は船橋に移籍しましたので、また新たな舞台で頑張って欲しいです。
笠松では今年の春から調教時間のルールが変わったそうですね。
笠松の場合は他の競馬場と違い、外厩から道路を歩いて競馬場まで競走馬を連れていきますから、放馬防止策の一つとして、朝の調教を7時までに終えるというルールができました。そのため、我々は夜中の12時から調教をスタートしています。最初はちょっと大変でしたが、みんな頑張っていますよ。
では、オッズパーク会員の皆さまにメッセージをお願い致します。
いつも笠松競馬を応援していただき、ありがとうございます。お陰様で売上も好調で、一時期は開催自粛などもあった中で、こうして競馬を開催できることに感謝の気持ちでいっぱいです。これからも強い馬、話題になるような馬作りを心がけていきますので、笠松競馬をよろしくお願いいたします。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:岐阜県地方競馬組合)
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2023年4月1日付けで、ホッカイドウ競馬から笠松競馬に移籍した馬渕繁治騎手(笠松)。10月13日笠松競馬第6レースをメイショウヒエイ(森山英雄厩舎)で勝利し、地方競馬通算1000を達成しました。御年57歳のベテランに現在の胸の内を語っていただきました。
地方競馬通算1000勝達成、おめでとうございます。
ありがとうございます。目標にしていたというか、区切りのいい数字なので、達成できて嬉しかったです。周りからも「おめでとうおめでとう」と言っていただきましたし、達成した次の日が笠松競馬場のお祭りだったんですよ。その次の日が自分の誕生日で、なんだか嬉しいことがたくさん重なりました。この年になってもこういうことがあるんだなと、しみじみしました。
10月13日、地方競馬通算1000勝達成
馬渕騎手は1984年に上山競馬場で騎手デビューし、2003年の廃止後はホッカイドウ競馬で騎乗されていました。今年の4月から笠松へ移籍されたというのは、どんな経緯があったのでしょうか。
40代の中盤から後半くらいの頃、騎乗馬が集まらなくて乗れない時期が続きました。自分の中でもなんとなく中だるみしてしまった時期で。でも2020年に森山雄大調教師(北海道)が開業して、いい馬に乗せていただいたりしたんです。その年から笠松へ期間限定騎乗に出かけたりして、気持ちの方も前向きになりました。私生活では子供が手を離れたので、自分の好きに時間を使えるようになりましたし、タイミング的にもとてもいい時に、森山雄大調教師のお父さんである森山英雄調教師のところに所属させていただくことになりました。
笠松にはご縁がある方がたくさんいらっしゃるそうですね。
田口(輝彦調教師)君とは騎手時代の同期なんです。あとは(向山)牧さん。私より一つ年上で、牧さんが新潟にいらした頃から知っていました。牧さんも新潟が廃止になって笠松に行きましたし、森山英雄先生も高崎の廃止後に笠松にいった経緯がありますから、そういう方々から「来たらいいよ」と言っていただいて、とても嬉しかったです。
デビューから40年目ですけれども、まさに激動の騎手人生ですね。
乗り役ってこんな感じじゃないですかね。廃止になったのはすごく残念ですけど、我々にはどうすることもできなくて。競馬がなければ乗れないですし、乗せてくれる人たちがいなければ騎手を続けられないですから。だから今回、「うちに来たら」と言ってくれた森山先生にはとても感謝しています。恩返しがしたいという気持ちで乗っています。
長く続けられる秘訣は何ですか?
正直に言うと、途中で中だるみがあったからかなとも思います。あの頃「辞めようかな」と何度も思いましたが、結局辞めなかった。馬に乗るのが好きだし、自分にはこれしかないんですよね。この馬をどう調教したら良くなるか、考えながら乗るのはとても楽しいです。笠松や名古屋は若手騎手がどんどん増えていて、体力的なことを言えば若手には敵わないところもあります。でも自分より年上の牧さんは今でも低い姿勢で馬を追って、姿勢がブレないんですよ。牧さんを見ていると刺激になりますし、自分ももっと上手くなりたい、もっと頑張ろうと思います。
笠松に来てからの生活はいかがですか?
楽しいですよ。もともと期間限定騎乗で来ていたので慣れていますし、今は午前1時前に起きて、だいたい16、7頭調教しています。北海道時代は厩舎から乗っていたのですが、笠松は馬場で待っていればいいので頭数を乗ることができますね。
では、今後の目標を教えてください。
目標はまだ考え中です。とにかく馬を走らせることだけ考えて乗っています。これからも体が続く限り、一生懸命乗っていきます。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:岐阜県地方競馬組合)
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渡邊竜也騎手は2022年9月23日に通算500勝を達成。2017年4月のデビューから5年半での達成ですが、およそ8カ月の開催自粛期間がありましたから、実質的には5年弱のスピード記録。今年は笠松で2位以下に大差をつける成績で、初めてのリーディング獲得が濃厚です。
今年の好成績の要因はどのようなところでしょうか。
いい馬にたくさん乗れたことが最大の要因ですね。今年は3歳馬が古馬戦に入るといまひとつという感じで、自分が続けて乗せていただいている馬で多く勝てたという感じもあります。
昨年はケガもあって3位でした。
今年はその影響はほとんど感じないですね。いまのところ、不安なく乗れています。これから寒くなってくると分からないですが......。
さらに名古屋競馬場でも、笠松所属騎手としては抜けて多い勝ち星を挙げています。
新しい名古屋競馬場は、最初のころは馬場が安定していませんでしたが、徐々に落ち着いてきた感じがします。個人的には、名古屋はむしろ乗りやすいというイメージです。景色が広く感じるので、心に余裕ができるといいますか。
10月5日に行われた通算500勝達成セレモニー(写真:岐阜県地方競馬組合)
その名古屋競馬場では、惜敗だった東海ダービー(笠松のイイネイイネイイネに騎乗してアタマ差2着)が思い出されます。
あのレースはくやしい結果でしたし、今でも『あれがああだったら......』とか思うのですが、自分でもあのレースで一皮むけたな、という感覚があります。あの経験は本当に大きな収穫でしたし、あれからいろいろと考えるところもありましたから、今の自分なら着順が変わるかもしれません。
それにしても今の勢いは驚異的。10月5日と6日の笠松では4勝ずつを挙げました。
今のクセが少ない馬場は乗りやすいですね。馬場にクセがあると人間が考えすぎてしまいますし、危ない競馬につながる可能性も出てきます。1日4勝は出来過ぎだとは思いますが、でも今日(10月6日)の競馬は楽しかったです。今日もそうですが、勝っても負けても岡部(誠)さんと勝負をするのは楽しいですね。同じレースに乗るたびに岡部さんを意識しますし、岡部さんを少しでも多く負かそうと考えます。岡部さんは大きなカベであると同時に、大きな目標。間近で見ることが勉強になります。
10月6日の最終レースでは岡部誠騎手を1馬身差でしりぞけ勝利
リーディングを獲れば、岡部騎手をはじめとした名手と別の競馬場で乗る機会も得られます。
そのために、とにかくケガをしないように気をつけたいですね。来年、トップジョッキーのみなさんと乗る機会があることは意識しています。そこで笠松競馬の代表として、笠松競馬をアピールしたいと思っていますから。そういう舞台に向けてという意味でも、引き続き頑張っていきたいです。
今年の冬は各地からたくさんの騎手が笠松に来ましたが、いかがでしたか?
笠松は騎手が少ないので、とてもありがたかったです。新型コロナで陽性になった人が多くて、一緒に乗れる期間は短かったですが、ほかの騎手の乗りかたを見るのは面白かったです。こんどの冬も各地から来てくださると聞いていますので、楽しみにしています。
渡邊騎手は昨年9月の笠松競馬再開のとき「新人騎手が笠松で乗りたいと思ってくれるような競馬場にしたい」と話していました。
ファンのみなさんにはぜひ、若手騎手に注目していただければと思います。地元の騎手はもちろんですが、デビューからそれほど経っていない騎手が期間限定騎乗で来てくれるケースも増えて、チャンスと騎乗技術の向上を求めているという気持ちを感じます。それも含めて、笠松競馬に注目していただけるとうれしいです。
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※インタビュー / 浅野靖典
4月1日にデビューした笠松の深澤杏花騎手。すでにたくさんのレースに騎乗し、4勝(2020年5月26日現在)を挙げています。"地方競馬の深キョン"に、今の心境を伺いました。
騎手を目指したきっかけから教えてください。
小学校4年生くらいの時に、たまたま近所で配っていた(乗馬クラブの)チケットをもらって、体験乗馬をしたのが最初のきっかけです。いつか牧場で働きたいなと漠然と思っていました。その後、たまたまテレビでレースを見て、騎手という職業があるということを知り、目指してみたいなと。ただ、2、3歳の頃から水泳(背泳ぎ)をしていて、中学1年生くらいまでは乗馬と掛け持ちしていたんですけど、中学3年生までは真剣に水泳に打ち込もうと思って、乗馬を控えた時期もありました。精一杯打ち込めたので、水泳に未練はなくて、そこから教養センターを受験して、という形です。
兵庫県出身ですが、笠松所属になったのは?
騎手の人数が少なくて、チャンスを頂けるかもしれないと考えました。笠松競馬場の方々はとてもアットホームで優しくて、すぐに馴染むことが出来ました。実際、たくさんチャンスを頂いているので、もっと上手くなって結果を出したいです。
デビューしてみていかがですか?
想像していた以上に上手くいかないです。レースに乗ったら動かせると思っても全然馬を動かせなかったり、位置取りも他の人の邪魔をしてしまったり...。すごく難しいです。
4月1日免許交付で当日にデビューしました。しかも初日から7鞍に騎乗で、第1競走から第6競走まで、6レース連続騎乗というハードスケジュールでしたね。
デビュー初日からたくさん乗せていただいて、周りの方々にはとても感謝しています。体力的にはけっこうキツくて、2レースが終わった辺りで脚が辛かったですけど、気合いで乗り切りました。レースに騎乗することはもちろん、鞍を用意したり装鞍したり、パドックに行ったり、そういう一連の流れも初めて経験したので、アタフタしてしまいました。
7鞍の中で、2着、3着と上位着順もありました。初日を終えてのお気持ちは?
1日乗り切れてホッとしましたけど、反省ばっかりですね。レース映像を見直して、先輩たちにいろいろ教えてもらいました。
デビュー2日目には、第5競走で1番人気プラピルーンに騎乗。初勝利の期待が高かったですが、『カンパイ』からの全馬競走除外という、なかなかないアクシデントがありましたね。
そうですよね。本当になかなかない経験だったと思います。馬力のある馬で、後ろの馬も来ていたので止められなくて、結局1周走ることになってしまって。(井上孝彦)先生からは、「他にも強い馬がいるし、気楽に、べストな騎乗をしてこい」って言っていただいたんですけど、こういう結果になってしまって残念でした。
デビュー2日目以降は上位に入れないレースが続きましたが、あの頃はどんな心境でしたか?
メンタル的に本当にキツかったです。上位というか着内にも入れないレースが続いて、自分ダメだな...と落ち込みました。レースを何度も見て、先輩の位置取りも見て勉強するんですけど、考えていることと実際に乗るのでは全然違って。次に乗る時にはこうしようと思っても、なかなか思い通りにできなくて、騎手に向いてないのかなってすごく落ち込みました。
4月15日、デビューから36戦目で待望の初勝利
しかし、デビューから約2週間後、4月15日第6競走でプラピルーンに騎乗し、見事初勝利を挙げました!
すごく嬉しかったですし、ホッとしました。このグリグリ本命の馬で勝てなかったらどうしようって、朝からずっとプレッシャーで。周りからも、「出遅れたら負けるぞ」とか、けっこうプレッシャーになること言われて、気持ちを保つのが大変でした。だから勝ったあとは涙が出てしまって。やっぱり、たくさん乗せていただいていた分、早く勝って少しは恩返ししたいという気持ちもありましたし、自分の実力のなさを痛感して凹んでいましたから、1つ勝てたことは大きかったです。馬にも関係者の方々にも、感謝の気持ちでいっぱいです。
勝ってからは、違いがありますか?
そうですね。少し気持ちが楽にはなりました。2勝目までがまた時間が掛かったんですけど、2勝目(4月28日)を挙げた時にはちょっとリラックスして乗れたかなと思います。その時は1日2勝することができて嬉しかったですね。でもまだまだですし、特に後ろから差す時はまだ馬群を上手く捌けなくて、人より外を回ってしまったり。逃げた時も、道中息を入れられなくて、馬が賢いから自分で息を入れてくれるので、そういうところもしっかりとできるようになりたいです。
5月7日第4競走では、サノレオンに騎乗して初の差し切り勝ち! 大外から差した時はどんな気持ちでしたか?
差し切りって気持ちいいですね!(川嶋弘吉)先生からは、最初ズブくて動かないから後ろからでいいから、先頭集団に置いて行かれないようにと言われていたんです。馬群と離れず行けたので、3~4コーナーから外に持ち出して必死に追いました。
すでに124戦も騎乗していて、同期の中でも断トツの乗り数です。
とても有難いですし、恵まれているなと感じます。でもこんなに乗せてもらっているのに結果が伴っていないので、そこは反省点ですね。
教養センター時代の同期は意識しますか?
します! 同期が勝ったレースを見て研究したりもしますし、特に浦和の(北島)希望は7勝もしているのですごいなと。いい刺激をもらっているので、わたしも頑張ります!
東海には宮下瞳騎手、木之前葵騎手という活躍している女性騎手がいますが、何かお話はしましたか?
はい、しました。トレーニングや騎乗についていろいろアドバイスをいただいて。宮下さんは、デビューした頃は騎乗フォームを気にするよりも、どうしたら馬群を捌けるかなどレースに集中していたと言っていました。木之前さんはジムに行ったり、腹筋やスクワットなどで下半身を中心に鍛えていると。お2人ともそれぞれ素晴らしいジョッキーなので、しっかり吸収していきたいです。
デビューから約2カ月経ちましたが、生活には慣れましたか?
そうですね。笠松だけではなくて名古屋でも乗せてもらっていて、土日以外はだいたいレースという有難い環境です。朝は12時50分に起きて、1時半から9時まで26頭に乗っています。今は本当に競馬漬けという感じで、他のことを考える余裕はないですね。
26頭?! 20頭越えたら相当キツいと思いますが。
ずっと乗っていたら慣れて来ました。いろいろな馬に乗せていただいて、経験を積めるのは有り難いです。
今の目標は何ですか?
次の1勝、とにかく目の前のレースに向けて頑張ります。あと、まだファンの方の目の前でレースをしたことがないので、ファンの方が競馬場にいらしてくれる日が待ち遠しいです。多分、緊張すると思いますけど(笑)。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
もっともっと努力して、上手くなるよう頑張ります。笠松競馬、深澤杏花を宜しくお願いします。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:岐阜県地方競馬組合)
昨年はマカオに遠征し、初勝利初重賞制覇を果たした水野翔騎手。日本でも72勝を挙げ、デビュー6年目でキャリアハイの年になりました。
まずは地方競馬通算200勝達成、おめでとうございます!昨年は飛躍の年でしたね。
ありがとうございます。勝利数的にもこれまでのキャリアハイの年でしたし、マカオで重賞を勝たせていただいたり、とても充実した1年でした。でも自分の中では甘かったところもたくさんあったので、まだまだだなと思っています。
ホッカイドウ競馬から笠松に移籍して2年目でしたが、飛躍の要因を自己分析すると?
環境に慣れたというのもありますし、一番大きかったのは中野省吾さん(現在はマカオで騎乗中)ですね。もともと連絡は取っていたんですけど、親しくなったのが2018年頃に省吾さんが(船橋での)騎手を辞めた後です。「大丈夫ですか」って連絡したりして。ある時、「東京で飲んでるから来いよ」って言われて、笠松から新幹線ですぐに行きました。僕の中で騎乗的にも人間的にも惹かれる部分があったので、じっくりお話してみたいなと思って。
どんなお話をしたんですか?
いろいろですね。特に大きかったのは、当時の僕は騎乗面で迷いがある時で。他の先輩から、「○○した方がいい」って言われてやってみて、別の先輩からは「△△はやめた方がいい」と言われてやってみて、という感じでブレていたんです。騎手は人それぞれ体型も感覚も違いますし、アドバイス通りにすることが必ずしもいいとは限らない。どうしたらいいかわからない時で、「お前、今グチャグチャだな」って省吾さんに指摘されました。技術的なことだけじゃなくて、一般的な常識というか、土台となる考え方とかも教えてもらって。最初は上手くいかなかったんですけど、だんだんと省吾さんの言っていたことがわかるようになって、そこから自分の中ではガラッと変わりましたね。
マカオに約3カ月行っていたのに、日本で72勝挙げてキャリアハイを達成したのはすごいと思います。
マカオに何で行ったかというと、それも省吾さんのお陰なんです。笠松に移籍して2年目で、その時リーディング3位のところにいたので、正直、このタイミングじゃないだろって思った方はたくさんいると思いますし、実際周りの方からも言われました。でも省吾さんから、「お前は今マカオに来た方がいい」って言われて。(所属する)笹野(博司)先生に相談したら背中を押してもらえたので、思い切って行くことにしました。省吾さんに言われてから1カ月半で行きましたね(笑)。
行動早いですよね。新幹線ですぐに東京行ったり、マカオまで飛んで行ったり。
座右の銘は「疾風迅雷」なので!これからもそこは大事にしていきたいですね。ただ、やっぱり笹野先生が快く送り出してくれたことが大きいですし、帰って来てからも乗せていただけることに感謝しています。本当にいい環境でやらせていただいていて。だからこそもっと頑張って結果を出したいです。
ファスバに騎乗しマカオでの初勝利が重賞(サマートロフィー・G2)初勝利(2019年6月29日)
マカオでは初勝利が重賞制覇ということで、とてもびっくりしました!
僕もびっくりしました(笑)。でも自分ひとりで出来たことではなくて、頑張ってくれた馬と、乗せてくれた関係者の方々、そして省吾さんの存在が大きかったです。マカオで乗り出した時には、日本の馬とあまりにも違っていて、全然上手くいかなくて。日本の馬とは走りの重心が違うので、これまでの乗り方だとバランスが取れないくらいだったんです。そこから毎日のように省吾さんに木馬の練習に付き合ってもらって、それを録画して見比べて。言葉でもいろいろなことを教えていただきました。
最初は大変なご苦労をされたのですね。ただ、マカオでの初勝利初重賞制覇は7戦目、騎乗を初めてから1カ月経っていませんでした。努力を重ねて、短期間に適応したんですね。
そうですね。マカオではレースに乗る機会がものすごく少ないんです。なので、1レースに懸ける集中力が、これまで以上に研ぎ澄まされたというか。レースに向けていろいろシミュレーションをして、実際のレースでいかにすべて当てはめて成績を残すか、ということをこれまで以上に考えるようになりました。
では、今年の目標は?
去年マカオに行く前は3位だったので、今年は(笠松リーディング)1位を目指したいです!
水野騎手と言えば、髪の毛の色が特徴的、という印象が強いです。
以前はなかなか思うようにいかない反動でやってたのもあるんですけど、今はいい波に乗せてもらっていて、自分の気持ちというよりも、見た目で判断されるということを変えていきたいなと。騎手として黒髪で短髪で爽やかで、そういう人もすごくいいと思うけれど、僕みたいなのもいてもいいかなって思うんです。
周りからいろいろ言われませんか?
「見た目で損してる」とは言われますね。でも僕の人生なので、これからもいろんなカラーにして派手なピアスつけてって感じで行こうと思っています。地方競馬は中央競馬に比べて知名度が低いじゃないですか。特に若い人からももっと認知して欲しいですし、例えば僕の写真を見て、「こんな奇抜な人が騎手なの?」「地方?笠松ってなに?」っていう、そういうきっかけになったら嬉しいです。
正直、これまでの印象と、お話を伺ってみての印象が変わりました。
昔は頭が悪かったので(笑)。今も良くはないですけど、いろいろな経験を積ませてもらって、少しは変われたかなと。自分なりに勉強したり、言葉使いに気をつけたり、いろいろ考えるようになりました。日本人は周りに合わせる習性が強くて、ちょっと違うと浮くじゃないですか。でも僕みたいなのがいて、後輩とかにも、「こんな感じでいいのか」って思ってもらえたら。ただ、それには成績を挙げないと説得力がないので、もっと成績を挙げないといけないと思っています。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
マカオから帰って来てからも、どうしたら馬は動くのかということをいろいろ研究しています。今は、前までの僕には考えつかなかった引き出しが出来て、精神的にも技術的にも多少は成長出来たんじゃないかと。今年はさらなる技術向上を目指していますので、注目していただけると嬉しいです。宜しくお願いします。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:本人提供)