笠松のトップトレーナーである笹野博司調教師は、一風変わった経歴の持ち主。競馬界に入ったきっかけ、そして短期間にトップに上り詰めた要因を伺いました。
笹野先生は今や笠松のトップトレーナーですけれども、経歴が珍しくて、なんとピザ屋の店長から脱サラして競馬の世界に入ったそうですね。
そうなんですよ。就職してピザ屋の店長を何年間かやってまして、27歳の時に「自分が本当にやりたいことは何かな」と考えた時、僕にとってはそれが競馬の世界だったんです。小さい時から親父に連れられて笠松競馬場や名古屋競馬場に行っていて、ずっと憧れがあったので。
社会人として仕事をしている中で、一大決心だったと思うんですけど、何が一番背中を押したんですか?
ピザ屋さんの仕事も楽しかったんですけど、「ずっと今のままでいいのだろうか」って考える時がありまして。母親に相談したら「やってみなさい」と言ってくれて、いろいろ考えた結果、思い切ることにしました。それで、仕事を辞めて、千葉にある乗馬の学校に入って。まったくの素人だったので、基本乗馬や馬学的なことを習いました。
思い切りましたね。
そうですね。かなり(笑)。なかなか僕みたいな経歴の人は少ないと思うんですけど。ただ、その頃は調教師を目指そうとは思っていなかったんです。とりあえず競馬の世界にって考えた時に、JRAの厩務員過程は年齢的に無理だし、地方競馬の厩務員になれればと思っていて。それにはまず馬に乗れないとダメだなと思って、乗馬の学校へ行きました。そこで1年ほど勉強したんですけど、馬に乗るって難しいですね。思っていたよりも全然難しかったです。
挫けそうにはならなかったですか?
それはないです。思うようにいかなかったですけど、競馬の世界で働きたいという意思は強かったので。そこで1年やって、笠松の井上孝彦厩舎に厩務員としてお世話になることになりました。それが28歳の時です。競馬の世界の中では遅いスタートですよね。
実際に競馬場で働いてみて、いかがでしたか?
初めてのことばかりで難しいこともありましたけど、自分で世話した馬がレースで勝つと本当に嬉しくて。サラリーマン時代には味わえない気持ちでした。すごく楽しかったですね。
そこから調教師を目指すことになるわけですね?
厩務員を始めてだいぶ時間が経ってからなんですけど、結局厩務員をやっている以上は調教師さんに馬を任されるわけで、限りがあるわけじゃないですか。3頭、4頭という決められた枠の中でしかできないので。時間が経つにつれて、「もっといろいろな馬を触りたい」「もっと広い視野で馬と関わりたい」という気持ちが大きくなったんです。それには調教師になって、自分で馬を見つけて、馬主さんを見つけてやるしかないなという思いに至りました。
調教師というと、また大きな決断だったと思いますが。
そうですね。僕はまったく馬主さんの知り合いもいなかったですし、本当にゼロからのスタートでした。競馬の世界に入る時もそうですけど、割と決めたらパッと行っちゃうタイプなんですよ。あまり難しくは考えなかったです(笑)。
2012年に開業した時はどんな状況だったんですか?
5月20日に免許が下りて、「すぐ6月から開業していいよ」って言われたんですけど、最初はまったくコネもなくて、厩務員の時に担当していた馬を1頭預けていただけることになったんです。だから1頭からのスタートでした。
そこからどうやって増やしたんですか?
一番大きかったのはトウホクビジンですね。開業して1か月くらいの頃にうちに転厩してきて、3か月目の時に姫路チャレンジカップを勝ったんですよ。それが大きかったです。トウホクビジンにいろいろな競馬場に連れて行ってもらって、いろいろ行くうちにその土地の調教師さんなり知り合いができて、徐々に名前を知ってもらったという感じです。
トウホクビジンはものすごく丈夫でしたよね。
そうですね。なかなかいないですよね。牝馬でしたけど、どれだけ遠征しても食欲が落ちないんですよ。牝馬はレースを使ったり遠征すると食欲が落ちる馬が多いですけど、あの子はまったくなかったです。普段はあんまり余分なこともしないし、馬房の中で寝ることも多くて、自分で疲れをしっかり取っているという感じで賢い馬でしたね。最後は引退式までさせていただきましたし、ファンの方にたくさん応援していただきました。あの馬には本当に感謝しています。
引退レース(2015年1月9日、笠松・白銀争覇)を終えたあとのトウホクビジン
そして開業5年目の去年勝ち星が一気に倍近く増えて、笠松リーディングに輝きました。
要因はと聞かれると、正直よくわからないんですけど、頭数が増えて来て、その中で戦えているのかなと。自分としては、「壊さない」ということを大切にしています。JRAと違って休養のために放牧へということもなかなかできないですから、いかに馬の体調をコントロールして調子を維持するかということを大事にしています。
そこが難しいと思うんですけど。
難しいですね。だいたい隔週で競馬をやっているので、維持するのはなかなか大変ですけど。でも地方の調教師さんはそれぞれ自分なりのコツがあると思うんですよ。そこはそれぞれですけど、自分なりの形を考えて維持しています。もちろん、重賞や大きいレースがある場合は別ですけど、普段のレースはそこを大切にしていますね。
調教師になって、5年でリーディングになれるって思ってましたか?
全然思ってないです。その年その年で目標を立てるんですけど、去年はベスト3に入りたいというのが目標でした。そしたら自分の思う以上に馬ががんばってくれて。厩務員さんも人数が増えて、みんなよくがんばってくれてます。そこが大きいです。
一般社会から競馬の世界に入って来て、年数も短い中で、ここまで結果を出すというのは本当にすごいことだと思います。
いやいやいや。僕の場合は、サラリーマンを経験したことが良かったんじゃないかなって思っています。もちろん、長年競馬界にいる方や、ジョッキーから転身された方にはそれぞれの良さがありますけど、自分の場合は社会経験ができたことは大きかったなと。馬主さんたちは社会的に成功した方々ですし、僕はサービス業だったんですけど、いかにお客様を大事にするかなんですよ。今も調教師というのはある意味サービス業だと思っているので、馬主さんに満足していただけるかを大切に考えています。
今後の目標というのは?
何回かJRAに挑戦させてもらっているんですけど、全然結果が出せていないので、JRAで勝つことを目標にまた挑戦していきたいです。
今特に期待している馬はいますか?
2歳のビップレイジングです。8月に転厩初戦でJRA認定競走の秋風ジュニアを勝つことができました。もともと僕が見つけて来て買っていただいた馬で、門別の齊藤正弘先生のところで鍛えていただいて。いい感じで笠松に来てくれました。デビュー1、2戦は結果が出なかったんですけど、距離が延びて頭角を現して来ましたね。
秋風ジュニア(8月31日・笠松)を制したビップレイジング
写真:(C)fanfan/H.Taniguchi
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
地方競馬の売り上げが好調なのは、ネットで買っていただいているファンの方の存在が大きいと思います。いつも応援していただき、ありがとうございます。笠松競馬、一生懸命がんばっていますので、ぜひこれからもよろしくお願い致します。
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 赤見千尋
2005年の調教師デビュー以来、7月8日に通算1000勝を達成。騎手としてもスーパーペガサスなどで通算2085勝を挙げた岩本利春調教師(59)に話を伺いました。
1000勝おめでとうございます。
偉そうに1000勝っていっても、一つ一つの勝ち星は縁の下の力持ちである厩務員のおかげ。一癖ある厩務員ばかりだけど、それが逆にいい(笑)。
管理はどのようなことに気をつけていますか。
飼い付け、体重だね。これから涼しくなってくるけど、体重が増えない馬や、脚や爪を痛める馬が増えてくる。
今年は7月が特に暑かった。みんな状況は同じだが、36度とかが1週間続くと、馬はがくっと弱る。調教の時間を早めたり、荷物を軽めにしたりしてやってきた。
ばん馬の場合は古馬になれば、サラブレッドほど手をかけることはない。それでも、2歳馬やデビュー前の馬が環境に慣れるまでは気を遣うね。慣れるまで時間がかかる。
先生は道内各地の草ばん馬でも姿をお見かけします。
会場に馬主さんがいることもあるけれど、各地方のばん馬が盛り上がってほしいと思って、現役馬も連れていきます。これからは牧場で調教中の1歳もいるからね。
2017年7月8日第7レース、センショウニシキで通算1000勝達成
この世界に入るきっかけは。
出身は札幌の北側にある当別町で、父が牧場で繁殖牝馬や種馬を持っていました。子供の頃から周りに馬がいて、世話もやらされた。その影響で、中学卒業後に競馬場に入りました。
騎手時代の先生といえば、スーパーペガサスの印象があります。
そうだ。携わることができて最高だった。ばんえい記念はなかなか乗れるものではないし、勝ちたいと思って勝てるものではない。
ミドリゴゼンなど、松田昇さん(松田道明騎手の父)の馬にもお世話になった。ペガサスに限らず、馬にはいろいろと教わった。
厩舎でやることは単調だけど、体調や食欲は厩務員の方がわかっている。だから厩務員の性格を理解して、レース内容によっては担当馬を変えたりもする。せっかちもいればマイペースもいるからね。今は厩務員4人、騎手2人(藤本匠、島津新)で、午前2時半ころから調教をつけている。俺は逆に馬に調教つけられているよ(笑)。
騎手や厩務員に指導することはありますか。
初めての人には言うけど、厩務員は(経験が)長い人ばかりだし、匠にはもう言うことはない。見た通り、一生懸命でまじめ。真っすぐだから。常に1着を取りたがるところが4000勝に結びつくんじゃないか。
新もあえて言うことはないが、まだ若いからしくじることはあるな。もうちょっと考えて乗れば、と思うことがある。普段馬触っているわりに軽率だものな。
なかなか厳しいですね。
誰もが最初からトップジョッキーだったわけじゃない。新人の頃、周りには喜来光雄さんや水上勲さん、木村卓司さんなど、腕の立つ人が多かった。まねをしたり、見る角度を変えたりしてやってきた。兄弟子の金山明彦さん(現調教師)に教えてもらったりして、競馬場で培ってきたものがある。腹時計、みたいなものがね。
こういうのはセンスだから。どこかで気づいたり、攻め馬で、触って見抜く力というのがある。それぞれの個性や感覚があるから、自分のポイントを振り返って、常に平常心で馬に携わっていないと。
2011年(2010年度)のイレネー記念をニュータカラコマで勝利
調教師生活で思い出に残る馬はいますか。
今は転厩したけれど、2011年のイレネー記念を勝ったニュータカラコマ(2017年ばんえいグランプリなど重賞8勝)だね。能力はあるが、障害が気ままだったりと癖があった。手をかけた馬だったね。今はそんなところはないけれど。
フウジンライデンは、2、3歳の時に重賞を取ったから昨年は重量に苦戦していたけれど、今年は対応してきている。
ホンベツイチバン(牡10)は、大きな病気もなく、まじめな馬。こういうのも名馬といえるな。種畜検査も通ったので、来年から種馬になる予定。爪もきれいだし、健康なのは内臓がいいってことだね。
イレネー記念やナナカマド賞など、若馬での重賞勝ちが目立ちます。今後の期待馬はいますか。
それは、担当厩務員が手塩にかけたから。そのたまものだな。1000勝を達成したセンショウニシキ(牡3)は涼しくなれば楽しみ。2歳では、センショウブルーやブラックエースは馬格がある。ツガルノボブは障害がいい。
入厩する馬は、草ばん馬を経験して春から馬ができている馬が多いけれど、今から秋にかけては未経験馬の伸びしろがある。体も増えてくる。どんな馬でも、馬主からの指示はあるけれど、それぞれ作戦を考えているよ。
2016年のイレネー記念を制したフウジンライデン
馬主さんの相手、大変そうですが......。
ゴール入らないうちから怒りの電話が来る(笑)。早いから。仲間で話が盛り上がって、俺のところに「まだまだあんなもんじゃない」って電話してくる(笑)。
普段の生活は。
じーちゃん(笑)。タブレットで、孫とLINEだよ。3歳になって、しゃべるようになったから面白いよ。
釣りは普段はしないけど、これからシーズンのアキアジ釣りはするんだ。
今後の目標は。
目標はいろいろあるけれど、若馬がうまく成長してくれること。あせって仕上げてもだめだし。自然体でうまく仕上げていきたい。
馬は、人の手を借りないとえさをもらえない。レースは辛いかもしれないが、1日でも長く競馬場にいた方が幸せだと思う。
ばんえいは、最近売り上げもいいし、ファン層も若くなっている。もっと競馬場に足を運んでもらって、ばん馬をなくさないようにしたい。帯広は寒いけど、生活しやすい。学校も近いから帯広でよかったよ。
少しでも出走手当が上がってくれればいいけれど、一時より良くなっている。ぜいたく言えないよ。
-------------------------------------------------------
※インタビュー・写真 / 小久保友香
5月27日に通算3016勝を挙げ、地方競馬通算勝利数の日本記録を達成した、高知の雑賀正光調教師。1985年の調教師デビューから32年。常にトップとして走り続けて来た競馬人生を振り返っていただきました。
まずは通算勝利数の日本記録更新、おめでとうございます。
ありがとうございます。自分としてはあんまり意識していなかったんですけど、記録に近づいて来た頃から、3014勝くらいからかな、うちの乗り役たちがそわそわしだして、いつも以上に力が入っていましたね。
弟子の永森大智騎手で見事達成しましたね。
そうですね。記録よりも、弟子が一生懸命がんばってくれたことが嬉しかったです。
ズバリ、何でこんなに勝てるんですか? 地方競馬の年間の最多勝利記録(2012年・290勝)も持っているじゃないですか。
あの時は何が何だかわからなかったですけど(笑)。とにかくいい馬を預けてもらっているということです。それが一番ですよ。オーナーの皆さんには本当に感謝しています。それに、弟子たちも一生懸命がんばってくれますし、スタッフのみんなも真面目にやってくれますから。そのお陰でこうしてたくさん勝たせてもらっているんです。わたしよりすごい先生がまだまだたくさんおられますし、自分は普通のことをしているだけだと思います。
普通のこと、と言われますが、その中で大切にしていることは何ですか?
馬の調子のいい時を持続させる、くらいかな。それは結局やれることをやるだけなんです。例えば、追い切りの後、レースの後に馬の脚の確認を慎重にすることですね。走った後の確認、レースが終わったら次の競馬のための確認、1頭1頭丁寧に確認することが大事です。
管理する40頭を全部先生が確認するんですか?
疲れますけど(笑)。そこは大事にしています。もちろんスタッフも真面目にがんばってくれてますけど、最終的な判断はわたしがしています。
雑賀先生は勝ち星もすごいですが、ジョッキーも育てていますよね。現在所属は4人です。
なんでかわからないですけど、4人いますね(笑)。最初は永森大智で。中学生の時に見学に来て、何かの縁でうちに入ることになったんです。今はトップになりましたけど、あいつは這い上がって来たんですよ。本橋(孝太)や御神本(訓史)なんかもそうですけど、腕が立つ奴は気性が激しいのが多いし、腕がない奴は大人しいのが多くて、よそから来る子には細かいことも教えるんですけど。でも自分のところの騎手にはあんまり教えないんですよ。自分で考えて、ある程度のところまで育ってこないと。勝つっていう意識を強く持てとは言うんですけど、それ以外は言わないです。
3年前に、「今年は永森と心中するから」って仰ってましたね。
そうそう。それまではいい馬には他の乗り役を乗せていたんですよ。でも、ポートジェネラルという馬に乗せたら、勝ってきたんです。乗り役が少なかったんでたまたま乗せたんですけど、「お、だいぶ乗れるようになったな」と。そこから少し手を差し伸べたら、リーディングになってくれました。
2016年12月31日、高知県知事賞(リワードレブロン)。一番弟子の永森大智騎手とのコンビで高知県知事賞4勝を挙げた(写真:高知県競馬組合)
永森騎手は、「雑賀先生に褒められるとすごく嬉しい」と仰っていましたし、師匠と弟子のいい関係ですね。
まぁ今の時代は環境的に育てるというのは難しいですけどね。わたしは這い上がってきたら手を差し伸べますけど、そこまではほっときますから。這い上がってきた奴をそこから育てるんです。なかなかリーディングを育てるっていうのは、一生に一度あるかないかじゃないですか。それに、自分の厩舎でリーディングを育てるっていうのは今はないでしょう。他のリーディングの人たちを見ると、自厩舎だけじゃなくていろいろな厩舎に乗せてもらってという形じゃないですか。
永森騎手はトップに育ちました。下の3人(岡村卓弥騎手、松木大地騎手、塚本雄大騎手)はどうしましょう?
みんなで一緒にご飯を食べる時があるんですけど、「永森がもし乗れない時には、次は岡村、お前だぞ」って。「いつでも永森の替わりになれるよう努力しとけ」って言ってます。岡村が乗れない時には次は松木、塚本、と、うちは順番が決まっているんですよ。ただ、さっきも言いましたけど、自分で這い上がってこない限りは手を差し伸べるつもりはありません。
松木騎手、塚本騎手も金沢で期間限定騎乗をしましたが、先生の方針ですか?
そうです。永森も岡村も福山行ったり金沢行ったり、あっちこっち勉強に行かせたんです。他の競馬場を見てくることもすごく大事ですし、他に行くことで高知の良さも感じることができますから。2人とも、その経験を活かしてすごく成長しましたから、下の2人にもがんばって欲しいですね。
高知は今かなり売り上げが上がっていますね。
有難いことに、ファンの方に注目していただいて、こちらも張り合いがありますよ。全体的に出走頭数も増えましたし、賞金諸手当も増えました。どこの厩舎でも馬がたくさん入るようになりましたし、雰囲気はすごくいいですよ。いいスパイラルになっていると思います。でも、ここからですよ。お陰様でいい形になったので、これからもっとがんばって恩返ししていかないと。
32年間、第一線で競馬を引っ張ってきていますが、秘訣はなんですか?
秘訣なんてないですよ。わたしは親父が調教師だったので、親の引いた線路を歩いてきただけです。実をいうと、もともとは競馬が好きじゃなかったくらいですから。他の人は、競馬が好き、馬が好きってこの世界に入って来るけれども、たまたま生まれたところに馬がいて。若い頃はそれが嫌で嫌で仕方なかったんですけどね(笑)。でも気が付いたらこうなってました(笑)。血ですね。今はやりがいのある道に進ませてもらって、親にも感謝してます。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
皆さまのお陰で、高知はなんとか盛り返すことができました。インターネットを通して買ってくれるお客様一人一人に、とても感謝しています。これからも結果を出して、皆さまの馬券に貢献できるようがんばりますので、どうぞよろしくお願い致します。
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 赤見千尋
今回は番外編! ジョッキーインタビューではなくトレーナーインタビューです。
昨年から始まった、オッズパーク地方競馬応援プロジェクト(オッズパークとグリーンファーム愛馬会が共同で行っている、地方競馬向け競走馬ファンド)。その第一弾としてデビューした佐賀のローカルロマンは、新馬戦こそ3着に負けたものの、その後3連勝で見事JRA認定競走を制覇しました! 管理する東眞市調教師に、ローカルロマンについてたっぷりとお聞きしました。
まずは、3連勝でのJRA認定競走制覇(8月30日佐賀8レース)おめでとうございます! 1番人気に支持されての見事な勝利でした。
ありがとうございます。認定を勝つことを最初の目標にしていたので、勝ててホッとしました。ファンの方に人気にしてもらっていたので、期待に応えられて嬉しいです。初めて控える競馬をして、前の馬を差し切る競馬ができたので、勝ち方にも満足しています。今後が余計に楽しみになりました。
具体的にレースを振り返っていただきたいんですけれども、スタートはあまりダッシュが付かずに離れた3番手からとなりました。
最後にゲートに入れる順番だったので、山口騎手とも『ちょっと嫌だな』って話していたんです。というのも、デビュー戦の時に最後入れで全然ダッシュが付かなかった経験があったので。一番最後に入れるとすぐにゲートが開くので、そのタイミングだとまだボーっとしてしまうみたいなんです。2戦目3戦目は速かったけど、今回はちょっと怪しいぞと思って山口騎手も気合を入れて出していました。それでもやっぱりダッシュがイマイチでしたね。
2番人気のラヴインアクションと、同じ東眞市厩舎のガンバルスマート(3番人気)の2頭がハイペースで引っ張る展開になりました。
ガンバルスマートの方も勝ちに行く競馬で積極的に乗ってくれました。前半は少し速いペースでしたが、ローカルロマンにとってはいい展開になりましたね。エンジンが掛かってからは長くいい脚を使ってくれたし、山口騎手は『抜け出してから遊んでいた』と言っていましたから、まだまだのびしろがあると思います。
ローカルロマンはJRA認定競走(8月30日)で5馬身差圧勝。
レース後の様子はいかがですか?
さすがに食が細くなりました。牝馬特有のテンションの上がり方をしていて、なかなかご飯を食べないんです。まぁ、今回は絶対に勝ちたいということで調教でもけっこう攻めましたし、追い切りも好タイムで動いていたので、ある程度の反動は仕方ないと考えています。今後は馬の様子を見ながらゆっくりのペースで乗り始めて、次のレースを決めるつもりです。
具体的な予定というのは?
オーナーサイドと相談になりますが、直近の大目標は10月の九州ジュニアチャンピオンです。そこが1750mなので、その前に一度距離を経験させたいなという気持ちもありますね。馬の回復次第では、1開催休ませて9月の後半の開催でもう一度認定を使うかもしれません。
JRA認定競走を勝ったということで、先々にはJRAへの遠征も視野に入りますね。
意外と芝が合いそうな走りをしていますし、父スペシャルウィークで血統的にも合いそうですよね。デビュー前から認定競走を勝って芝で使ってみたいという気持ちはありました。なので、最初はフェニックス賞(8月15日小倉)を目指したいと思っていたんです。牧場さんやオーナーサイドと相談してかなり早めに入厩させていただいたんですけど、最初の新馬戦が頭数不足で成立しなかったのが痛かったです。認定競走は新馬戦を4レース消化しないと組めないので、今年は8月の終わりになってしまって...。例年通りだったら間に合っていたんですけどね。
となると、今後遠征に行くのは難しいですか?
権利はあるので、あとは時期と場所だけですね。阪神まで行くのはこの馬には厳しいと思うんです。輸送が長くなりますし、食の細い馬ですから。そうなると選択肢は2月の小倉になりますが、その頃は地元の牝馬重賞も始まってくるので。芝に挑戦してみたい気持ちと、牝馬重賞を獲りたい気持ちと...。嬉しい悩みですけど、どちらのローテーションを選ぶのかは難しい選択です。
今後の課題というのはありますか?
今回のレースで控える競馬で勝てたことはすごく大きいです。逃げても番手でもレースができるというのは大きな強みになりました。ただ、予想よりも時計が遅かったので、肉体的にも精神的にも、もう一段階パワーアップして欲しいです。とにかく一番は、ご飯を食べてくれることですね。厩務員さんが工夫して一生懸命食べさせてくれているので、少しずつ体ができてきましたが、将来的には450キロ台(前走434キロ)になって欲しいです。性格もまだ子どもで、他の馬を怖がって怯んだり、かといって誰もいなくなると遊んでしまったり...。まだ真剣に走ったことがないので、本当にこれからの馬だと思っています。
では、ファンの方にメッセージをお願いします。
オッズパークさんの地方競馬応援プロジェクトが始まって、第一弾の馬を預けていただけると聞いた時には、本当にうちでいいのかと恐縮しました。新馬からいい馬を預けてもらえるというのはとても有難いですし、本当にやりがいを感じています。ローカルロマンは入厩当初から高い能力を感じていましたから、ここまで無事に来て、結果を出すことができてホッとしています。ファンの方の期待に応えられるよう、スタッフ一同精一杯頑張りますので、これからもローカルロマンと佐賀競馬をよろしくお願い致します。
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 赤見千尋 (写真:佐賀県競馬組合)