ホッカイドウ競馬所属の石川倭騎手はこのオフシーズン、3度目となる佐賀競馬場での期間限定騎乗に臨んでいます。最近はシーズン中も積極的に佐賀へ参戦しており、今年はウルトラノホシとのコンビでネクストスター佐賀、カペラ賞と2歳の重賞を連勝しました。
門別のシーズン中、週末に佐賀で騎乗する機会も増えてきましたね。
個人的には休んでいるよりも馬に乗っている環境の方がよかったので、真島(元徳)先生からオファーをいただけてありがたかったですね。馬に乗せていただけることにしっかりと感謝をすることで、初心に戻るというか、いろいろなことを考える契機になりました。
その真島厩舎所属のウルトラノホシとのコンビで、今年は重賞を連勝しました。まず、初コンビとなったネクストスター佐賀を振り返ってください。
パドックで初めて跨ったとき、背中の感触が良く、馬体からも能力を感じました。それがプレッシャーにもなりましたが、しっかりと結果を残さなければならないとあらためて感じさせられましたね。
それまでの2戦を見た限りだと、行き脚があまり良くないようだったので、ゲートを出てからある程度の位置を取ることを意識していました。砂を被ることを嫌がる印象もあったのですが、ポジションを下げるまでの嫌がり方ではなさそうだったので、道中では外を回るロスと天秤にかけて内のほうに入れ、勝負どころでは前に壁を作らないように誘導できました。そこからはもう、馬に頑張ってくれというか、あとは追うだけでしたね。
ウルトラノホシでカペラ賞制覇(写真:佐賀県競馬組合)
カペラ賞は400mの距離延長、初めての1800mを克服しての連勝となりました。
乗った感触として、距離が延びるのはプラス材料だと思っていましたし、その辺りはレース前に不安はありませんでした。レース当日は少しテンションが上がっており、その点だけは少しイメージと違っていたのですが、砂を被るのを気にする面がテンションの高さをうまく緩和してくれたような感じで、却ってプラスに働いてくれたのはよかったですね。プラン通りに2周目の向正面で仕掛けていくことになりましたが、前に目標としていた馬もいたので、スタミナ勝負になればこちらに分があると考えていました。
あらためて、この馬の良いところと、今後の展望について聞かせてください。
トビが大きくてフットワークが軽く、スタミナが豊富なところですね。馬格に恵まれてはいますが、それでいて走りに重苦しさがないのも心強いです。今後は佐賀の三冠を目指すことになると思いますが、現時点で十分に賞金や実績も積んでいますし、昨年のネオシエルのように、他地区へ遠征して経験を積むのも面白いんじゃないかと思っています。まだ緩みが残り、体の軸というか芯ができておらず、馬体的にも全然完成されていない印象なので、今後もっと良くなってくるのが楽しみです。このような素質のある馬に依頼をいただけて、本当に感謝しています。
佐賀競馬場での期間限定騎乗は2年連続となりました。
今年の冬場もどこかで乗っていたいと思っていたので、真島先生にお願いして受け入れていただきました。もう馬場の形状やコースの特徴などはある程度熟知しているつもりですが、馬にも様々な性格や特徴があるので、いろいろな馬と接しているなかで日々勉強というか、得るものは大きいですね。
門別と佐賀では、コースの特徴はもちろん、馬のつくり方なども違うと思います。
坂路の有無はやはり決定的な違いですね。佐賀では馬場での調教を主体に馬を作っていきますが、期間限定騎乗の短いスパンでは、調教で試行錯誤したことの答え合わせをするのがなかなか難しいです。オフシーズンに継続して来させていただいたことで、今後につながるような知識を得られたらと思っています。
現在、佐賀では飛田愛斗騎手や山田義貴騎手など若手騎手の活躍が目立ちます。後輩たちとレースに騎乗して感じることはありますか。
自分が彼らと同じキャリアだった時と比べてどうだったかという視点で見ることが多いですが、自分の時と比べても上手ですね。もちろん、まだ改善すべき点もありますけれど、今後どういった風に成長していくか楽しみもあり、少し脅威でもあり......といった感じです。一緒に乗ったり、レースの前後に話したりしていても「頑張っているな」と感じるというか、"ライバル"というよりは"弟子"みたいな感覚です。
佐賀で乗っていると、以前よりも内を締めてコーナーを回るケースが多くなった印象です。若いジョッキーたちが減量を生かして成績を伸ばしても、減量が取れれば、以前のようにただ内を突けば勝てるというわけでもなくなってきますし。多少内側が重たいとはいっても、小回りのぶん勝負どころで内外の差は出るので、その辺りの駆け引きが、佐賀の魅力というか面白さなんじゃないでしょうかね。
石川騎手自身について、今年はシルトプレとのコンビで初めて道営記念を制したり、遠征にも積極的に挑戦しました。また、ユメノホノオで土佐秋月賞(高知)を勝利するなど、北海道や佐賀に限らず、活躍の舞台が広がっている印象です。
今年は門別以外の競馬場で乗せていただくことも多く、大きなレースへの騎乗機会があると、周囲からの反響も大きかったですね。やりがいや達成感につながります。今年はエルムステークスの日にエキストラ騎乗で勝たせてもらいましたが(8月6日・札幌7レースをサンダビュークで勝利し、JRAで6年ぶり2勝目)、普段とは違った環境で、大勢のお客さんに応援してもらえたのは大きな刺激になりました。
ユメノホノオについては、地元であれだけの成績を挙げている馬に依頼をいただけたということで、楽しみ半分、プレッシャー半分という感じで、自分が騎手として経験したことを冷静に発揮できればいいなと思っていました。出遅れるにしてもパターンはたくさんあるので、実際にゲートの中でどう対応するかまでは、当日跨ってみないとわからない部分だったのは正直なところでしたが、馬がしっかりと実力を見せてくれました。吉原(寛人)さんの代役という務めを無事果たすことができ、ホッとした気持ちが大きいです。
ユメノホノオで土佐秋月賞制覇(写真:高知県競馬組合)
地方競馬通算1000勝の大台も見えてきましたが(11月22日現在988勝)、意識されていますか。
区切りは近づいていますが、だからと言ってレース中に意識するわけではなく、その辺は特に考えていないですね。あくまでひとつひとつのレースに向き合い、結果を積み重ねていくうえでの「おまけ」みたいなものかなと思っています。
では最後に、今回の期間限定騎乗への意気込みと、オッズパーク会員の皆さんへメッセージをお願いします。
まずは無事にケガなく、心身ともに良いコンディションで来年のホッカイドウ競馬開幕を迎えられるよう、佐賀でいい時間を過ごせればと思います。メッセージは......何だろう、僕の名前をひとりでも多くの方に覚えていただけるように(笑)。
もう皆さんだいたい覚えていると思いますよ!
本当ですか?(笑)。じゃあ......少しでもレースでの人気に応えられるよう、これからも頑張っていきたいと思いますので、ご声援いただけたら嬉しいです。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴
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若杉朝飛騎手は今年4月14日に門別競馬場でデビュー。地方競馬教養センター時代のケガなど、さまざまな苦労を乗り越え、ホッカイドウ競馬では2シーズンぶりの新人騎手となりました。7月28日門別9レースではラテルネラに騎乗し、待望の初勝利を挙げています。
出身が長野県とのことですが、競馬に興味を持つきっかけについて教えてください。
もともと体を動かすのが好きで、小1から小6までは野球をやっていて、中学ではソフトテニス部に所属していました。それで漠然と「スポーツを仕事にしたいな」と考えていたときに知ったのが、騎手という職業だったんです。中学3年生で「騎手になろう」と考えてから、父と祖父に連れられて中京競馬場へ行き、競走馬に乗って走っている騎手の姿がかっこいいと思ったのがきっかけです。
その後すぐに騎手を目指したのでしょうか。
ちょうど進路を決める時期だったので、すぐ行動に移すことになりました。中央も1回だけ受けたのですが、1回目の受検で教養センターに合格できたので、そちらでお世話になることになりました。
所属先をホッカイドウ競馬に選択された理由は何だったのでしょう。
配属を決める際、実際に門別競馬場へ連れていってもらったのですが、2歳の馬が多いことや坂路コースがあることが珍しく、とても良い環境だと思ったからです。
教養センター時代に大変だったことはありますか。
入学が決まった後、実家近くの乗馬クラブに少しだけ通っていたのですが、いざ入ってみると、周囲が乗れる子ばかりだったので、最初のうちはついていくのにとても苦労しました。あと、もともと競馬に詳しいほうではなかったので、法規などを一から覚えるのも大変でしたね。
肩を骨折してしまったり、折れた箇所を修復するときに、骨が筋肉を挟んでしまったらしく、その治療をしなければならない影響があって留年をしていまいました。センターに戻るときに復学試験のようなものを受けなければならず、試験までに体を馬に乗れる態勢まで戻さなければなりませんでしたし、休んでいた期間に他の子たちにどんどん技術で置いていかれたので、その遅れを取り戻すことも大変でしたね。卒業試験をパスできたときは「すごく長かったな」と感じましたし、無事試験を乗り越えられた安堵の気持ちが大きかったです。
実際に騎手になってみて感じたこと、デビュー前に想像していたこととのギャップはありましたか。
想像していた以上に、実際のレースはシビアだと思いました。センターでの訓練とは違い12頭立てのレースもあり、しっかりと周りを見なければ事故につながりますので、レース中も注意深く周りを意識していかなければならないと感じました。
7月28日、初騎乗から87戦目での初勝利
そんななか、デビューからおよそ4カ月半、7月28日の門別9レースで初勝利を挙げました。ラテルネラに騎乗しての白星でしたが、レースについてあらためて振り返ってください。
それまでの3戦が、先輩のジョッキーが騎乗して上位に入る結果が続いていたので、ある意味ではプレッシャーを感じながらレースに臨んでいました。レース前、佐久間(雅貴)先生から「出遅れるのは仕方ない」と言われていたので、出たなりでも、とにかくコースロスがないように乗ることだけを心がけました。
直線では鋭い末脚で差し切りましたね。
直線ではとにかく「着を拾わなければ」と必死に追っていたので、まず入着できたことへの安心感が大きく、ゴールした瞬間はあまり勝った実感がわかなかったんですよね。検量棟に戻ってから、いろんな方に「おめでとう!」とか「長かったな」と声をかけられて、ようやく「勝てたんだなあ」というふうに思えたという感じです。
初勝利の記念撮影
初勝利を挙げたラテルネラはどんな馬ですか。
デビューして間もない頃から乗せていただいていた馬で、レースが決まってから、調教にも乗せてもらいました。普段はうるさいときはうるさいですけど、元気がよくてかわいい仔ですね。直線は追えば追っただけ反応してくれるので、勝ったレースもこの馬も良いところが前面に出てくれたのだと思います。
この馬みたいに、先生から「レースに乗せるから調教来いよ」と依頼してくださるパターンもあれば、調教に乗せてもらって「じゃあレースに乗ってみれば?」と言ってくださるパターンもあって、どちらかと言えば後者の方が多いですね。調教は多い日で12~3頭くらいに騎乗していますが、自厩舎(櫻井拓章厩舎)以外の馬にもなるべく乗せてもらうようにしています。ホッカイドウ競馬は2歳の若馬が多く、坂路コースでの調教が中心ですが、まずは馬に変な癖をつけないよう心がけています。
先輩ジョッキーや、所属先の櫻井拓章調教師からは、普段どのようなアドバイスを受けていますか。
ゲートを出たあとにしっかりと勢いをつけること、コーナーリングで膨れてロスをしないことの2点です。まだアドバイスされた内容をできたりできなかったり......という感じで、デビュー当初と比べて成長しているかどうかは、自分のなかでは何とも言えないところの方が大きいですが、日ごろ言われていることを少しでも取り入れて、試行錯誤しているつもりです。
8月18日にはヤングジョッキーズシリーズのトライアルラウンドが、地元の門別競馬場で行われました。東日本はホームでの開幕となりましたが、いかがだったでしょうか。
普段から騎乗している競馬場だったので、気分的にはだいぶ楽な気持ちでレースに臨むことができました。ただ、1戦目(5着)も2戦目(11着)も、それまでの課題が出てしまい、上位着を取ることができなかったので、もっと欠点を改善していかなければならないとあらためて感じさせられました。
卒業以来、センターの同期とはバラバラになってしまっていたのですが、一緒にレースに乗って「上手になっているな」と感じました。YJSは1戦目と2戦目の間に1レースあいていたんですが、自分はレースに騎乗していたのでバタバタしてしまい、あまり話ができなかったのは残念でしたね。
船橋(10月26日)、浦和(11月24日=1レースのみ騎乗予定)と、まだトライアルラウンドを控えています。抱負を教えてください。
これまで他の競馬場で騎乗する機会がなかったので、今まで経験したことを生かし、少しでも上の着順を取れるようにしたいです。左回りのレースに参加するのは初めてだと思うので、コーナーリングを意識しながら、注意して乗っていかなければなりませんね。
若杉騎手自身の、今後の目標についてはいかがでしょう。
現状、まだ他のジョッキーの方に迷惑をかけてしまうことも少なくないので、まずは周囲の方に「まあ大丈夫だな」と思ってもらえるよう、技術を磨いていくことです。1勝できてひとまずホッとしていますが、11月の閉幕まで開催も残っているので、もう少し勝ちたいという気持ちもあります。ありがたいことに、上の着順を狙えそうな馬も少しずつ任せていただけるようになってきたので、そういったチャンスをモノできるようがんばりたいですね。
目標としているのは、岩橋勇二騎手です。競馬場実習の頃からいろいろと声をかけてくださり、今もレースの合間に、コーナーリングの際の手綱の長さや、直線で追うときの姿勢など、わかりやすく教えてくださっています。
では最後に、オッズパーク会員の皆さまにメッセージをお願いします。
まだまだ未熟者ですが、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴
林和弘調教師は6月24日の門別第6レースで通算1,000勝(地方・中央)を達成。ホッカイドウ競馬では現役6人目の快挙を達成しました。今シーズンはラッキードリームでホッカイドウ競馬の3歳三冠制覇を達成し、史上4人目の"三冠トレーナー"の称号も手にしています。
97年の初出走から、およそ24年で通算1,000勝の大台に到達されました。この数字についての率直な印象はいかがでしょうか。
まあ長くやっているのでね。数字はともかくとして、ここまでやってこられたのは、馬主さんやスタッフのおかげだと思っています。
8月5日終了時点で重賞競走も42勝されています。これまでの調教師人生のなかで、印象に残っている馬やレースがあれば教えてください。
バンブーボカで交流重賞をクビ差負けした(2004年宇都宮・とちぎマロニエカップGIII)ですかね。道営記念を勝つようになる(05年)まで成長してくれただけに、グレードレースを勝たせてあげられなかったのが悔いとして残っています。もちろん、勝ったレースはどれもうれしいですが、負けてしまったレースでいちばん思い出に残っているのは、やはりそれでしょうかね。
元々JRAでデビューできず、ホッカイドウ競馬へ移籍した馬だったかと思います。調教するにあたって、難しい点などはなかったのでしょうか。
それは特に感じなかったですね。持って生まれた力を出してくれましたから。馬の能力は生まれつきである程度決まっていて、それを「調教で走らせた」というのは、人間のおごりではないかと思うんです。馬を調教していくにあたっては、馬の能力、成長力を阻害しないことが一番大事でしょうね。
以前は門別や旭川、札幌など、各競馬場を移動する開催形式でしたが、現在は門別に開催が一本化されました。調教のスタイルなども変化はあったのでしょうか。
門別に集約されたのもそうですが、やっぱり屋内坂路コースができたのが大きいですよね。馬場での調教だと6~7くらいしか出せなかった能力が、坂路で調教できるようになると、9~10の力を出せるようになったような気がします。
ホッカイドウ競馬は2歳馬の入厩頭数が多いですが、例えば若い馬を扱ううえで意識していることは何でしょうか。
「2歳馬だから」といって特別に気をつけるようなことはありませんが、2歳のうちに力を出し切ってしまって、古馬になって能力を発揮できないということにはならないようには意識しています。早い段階からあまり無理使いをしないように。古馬になってからも力を発揮できるよう、態勢を整えるようにはしているつもりです。
ショウリダバンザイやリンノレジェンドなど、2歳時に林厩舎のもとでデビューし、古馬になってから活躍する馬も多いですよね。そういった意味では、昨年JBC2歳優駿を制したラッキードリームが、今年のホッカイドウ競馬3歳三冠を達成しました。同世代のリーチともども、セリで購買された馬だったと思いますが、第一印象はどうだったのでしょう。
2頭ともセリの段階から見てきたんですが、馬体の見た目が良かったですよね。馬の好みは人それぞれの部分もあるので、いい馬の定義っていうのはなかなか難しいですが、ラッキードリームのほうは、親父(林正夫オーナー)もひと目見て気に入ったみたいでね。リーチに関しては、オーナーが芦毛の馬を欲しがっていたんですが、セリに出ていた芦毛の馬のなかでは「いい馬だな」と思いましたし、値段を考えてもちょうどいいと思ったんですよね。オーナーや佐賀の真島(元徳)調教師とも一緒に見たんですが、皆さん気に入ったようでした。2頭とも期待以上の活躍をしてくれましたし、特にラッキードリームは、JBCまで勝ってくれましたからね。
王冠賞(7月22日)を制して三冠を達成したラッキードリム。リーチ(右)は3着
ラッキードリームの三冠までの道のりについて教えてください。
うちの厩舎にいた厩務員が不祥事を起こしてしまい、昨年の12月から1年間、北海道と岩手の限定免許になってしまったんです。リーチもそうだったんですが、全日本2歳優駿に向かう際は櫻井拓章厩舎に転厩して臨むことになりました。馬に罪はないんですが、転厩せざるを得なかったことで、オーナーに迷惑をかけてしまいましたね。
ラッキードリームについてはかねてから、今年は北斗盃から始動するつもりで考えていました。レースを1回使うと、我々が思った以上に負担がかかるものですから、無理使いせず、馬のことをいちばんに考えたローテーションで臨んだつもりです。
北斗盃は初の内回りを克服しての快勝でした。
やはり今年初戦ということもあったので、正直なところ、力関係がどうなっているのかというところが不安だったんですよね。それがいざレースになると、能力の高さをあらためて証明してくれる内容だったので、ホッとしましたね。
それからほぼ1カ月間隔で三冠制覇となったわけですが、中間の馬の様子はどうだったんでしょう。
いい意味で大きな変化はなかったんじゃないでしょうかね。調子の波もなく、順調に来てくれたと思います。馬体重が500キロを超えたので、そういう意味では、2歳の頃と比べての成長もあったんじゃないでしょうかね。
リーチも三冠戦線で2、2、3着と安定した走りを続けました。2頭の今後について教えてください。
ラッキードリームはダービーグランプリ(10月3日、盛岡競馬場)へ直行しようと思います。少しレース間隔はあきますが、無理せず、いつも通り進めていければいいですね。各地の力のある馬も出てくると思いますが、うちの馬でも十分通用するような力はあると期待しています。
リーチについては、三冠では距離が伸びたなかでもいい結果を出してくれたと思いますが、本質的には1400から1600くらいまでの方がいいのではないでしょうかね。今後については、門別では短めの距離を中心に使っていって、もし出られるようであれば、楠賞(11月2日、園田競馬場)へ出走できればと思っています。
三冠で2、2、3着だったリーチ
林調教師自身の、今後の目標についても教えてください。
目標......何だろう?(笑)。まあ馬も人間も健康で、1日でも長く続けられたらと思いますけどね。これから1歳馬のセリも本格化しますが、いい馬を見つけて、自分の厩舎で結果を出していければ喜ばしいですよね。
林調教師は北海道調騎会の会長も務めていらっしゃいます。昨年はホッカイドウ競馬の馬券発売額がレコードを更新し、今年の売り上げもそれを上回るペースです。
コロナがきっかけで、多くのお客さんに知ってもらえたのが大きいですよね。そんななかでも、お客さんの期待に応えるべく、馬に携わっている一人ひとりと、公社(ホッカイドウ競馬を運営する一般社団法人北海道軽種馬振興公社)の皆さんががんばっているおかげだと思います。
ラッキードリームはホッカイドウ競馬史上6頭目の三冠馬
では最後に、オッズパーク会員の皆さんへメッセージをお願いします。
いつもホッカイドウ競馬の馬券を買っていただき、本当にありがとうございます。これからもみんなで一生懸命やって、少しでも、皆さんに楽しい競馬を見せられるようがんばりますので、これからも応援のほどよろしくお願いします。
林和弘調教師は、令和3年9月4日(土)にご逝去されました。
故人のご功績を偲び、心より御冥福をお祈り申し上げます。(2021年9月6日追記)
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※インタビュー・写真 / 山下広貴
石川倭騎手は今シーズン、ホッカイドウ競馬で113勝。今年も3ケタの白星を挙げ、2年連続でリーディングジョッキーの座に輝きました。門別競馬場で行われた第1回のJBC2歳優駿では、地元馬ラッキードリームとのコンビで勝利。現在は佐賀競馬場で期間限定騎乗を行っており、1カ月弱のうちに49戦13勝(12月6日終了時点)という好成績を挙げています。
2年連続リーディング獲得おめでとうございます。今シーズンの戦いぶりをご自身で振り返っていかがでしょう。
途中ケガで2週間ほどレースに乗れない時期があったので、今年は諦めかけていたんですが、復帰後も順調に勝ち星を重ねることができ、なんとかリーディングを獲れたというのが正直な感想です。
終盤は2位の桑村真明騎手も追い上げていましたね。
最後のほうは桑村さんの勝ち星の勢いが特にすごく、その頃にはリーディングへの意識も強くなっていたので、気持ちの面でも少なからず疲れを感じていました。そこが去年との大きな違いだったと思います。ただ、レースを離れたところでは壁がないというか、普段は上下関係なく接してくれるので、勝負をしながらも楽しめる雰囲気は感じていました。
基本的に、門別でのレースは理不尽な面がないというか、それぞれの騎手がクリーンに乗っていると思います。僕の下の世代でも、(落合)玄太にしろ(小野)楓馬にしろ、大きなレースでも普通に結果を残しているので、刺激を受ける部分ももちろんあります。
リーディングを獲得してからの、周囲の反応はどうだったのでしょう。
周囲の方からすごく祝福を受け、2年連続でリーディングを獲るということが、すごく価値のあることだったんだと改めて実感しました。去年は重賞をひとつしか勝てなかったので、今年は大きいところでも結果を残したいと思っていたんですが、JBC2歳優駿を勝てたことが特に影響があって。他場に乗りに行った時も、他地区の乗り役さんからも「おめでとう」と声をかけていただいたんです。記念すべき第1回のJBCで、誰もが注目していたレースだったと思いますし、あらためてラッキードリームに乗せてもらえたという状況に感謝したいですね。
そのラッキードリームでは、サッポロクラシックカップ、JBCと重賞を連勝しました。
サッポロクラシックカップで初めて乗せてもらったんですが、3コーナーで内に閉じ込められてしまい、自分としては正直あまりいい乗り方ができなかったんです。それでも直線で前の馬を競り落とし、馬に助けられて勝つことができたので、能力の高さを感じました。
JBCへはそのサッポロクラシックカップから直行でしたね。
坂路での追い切りで跨ったときも良い動きでしたし、そこまで上位の人気というわけでもなく、JRA勢相手にどれだけやれるか......という評価だったので、ある意味では気楽にレースに臨むことができました。
レースは中団から運びました。
先生からは「行きたい馬を行かせてその後ろで」という指示だったんですけど、新聞を見た限りでは前に行く馬が多そうだったので、ゲートを出てからの展開次第では下げるつもりだったんです。1~2コーナーで砂をかぶると多少手応えがなくなったので、そこは促して......という感じではありましたが、道中も予想通りペースが落ちなかったなかで、あまり前についていかなかったのが良かったのか、3コーナーに入っても馬自身には余裕がありましたね。その辺りで仕掛けて、4コーナーから直線に入るくらいでは前が射程圏に入っていたので、よほどバテなければ大丈夫だろうという手応えがありました。
ラッキードリームでJBC2歳優駿制覇
ゴール直後、ギガキング(6着)に騎乗した山本咲希到騎手とも馬上でハイタッチをしていました。
その瞬間は、騎手になってからこれまでで一番かと思うくらい嬉しかったです。馬の上で、自分自身かなり興奮していたと思います。レース前は周りも「やっちゃってくださいよ!」みたいな感じで応援してくれていて、そんななか強い中央の馬を相手に勝つことができたぶん、喜びもひとしおだったんだと思います。
あらためて、ラッキードリームの良いところを教えてください。
勝負どころで乗り手の扶助にすぐ反応してくれて、追えばしっかりと前に進んでくれるところですね。2歳の段階だと普通、そういうのは経験を積まないとなかなか勉強できないと思うんです。
現在は佐賀競馬場で期間限定騎乗を行われています。佐賀へ行くことになったきっかけを教えてください。
僕はあまり体重が軽いほうではなく、オフシーズンが長くなると、どうしても体が重くなってしまうんです。ちょうど佐賀で所属することになる真島(元徳)先生からお話をいただき、なるべく長い時間レースに乗っていたかったので、騎乗することを決断しました。
佐賀のコースは1周距離も短く、門別のコース形態とはだいぶ違うのではと思います。
1周1600メートルの門別とは、全くの別物と考えなくてはなりません。(門別の)内回りに近いような感じだとは思うんですけど、それと比べてもコーナーがキツいですからね。佐賀は1300、1400メートルのレースが多いんですけれど、門別の1200で距離が短いと思う馬のことをイメージしつつ、マイルではちょっと距離が長いと思う馬のイメージも取り入れつつ......という感じで、その中間くらいの乗り方を心がけているつもりです。
川崎から佐賀で期間限定騎乗中の池谷匠翔騎手(右)と(写真:佐賀県競馬組合)
そんな中でも、さっそく4割近い連対率を挙げており、11月15日には地方・JRA通算600勝を達成されました。
数字的には、コースが変わってもそれなりに対応できているのではと感じています。ただ何しろ、これだけの成績を挙げられているのは、いい厩舎に所属させてもらい、いい馬に乗せてもらっているおかげです。
600勝は門別の終盤あたりから意識していましたが、残り2勝でシーズンを終えたので、佐賀で達成できるだろうとは思っていました。取りこぼしてしまったレースもあったんですけど、佐賀での最初の週で達成できてよかったです。
期間内の目標やテーマを教えてください。
当初は特に目標やテーマを決めずに来たのですが、逆にそれを探しながらというか、新しい目標やテーマを見つけて、そこから何かを学んで帰れればと思います。
最後にオッズパーク会員の皆さまへメッセージをお願いします。
いい時もあれば悪い時もあるので、馬券の頼りになるかどうかはわかりませんが(笑)、なるべく期待に応えられるよう頑張りますので、これからも応援していただけるとありがたいです。こういうご時世なので、現地での応援は気軽にはできないかもしれませんが、パソコンやテレビの前でも、ぜひレースを観ていただきたいと思います。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴
デビュー3年目の落合玄太騎手は、6月に行われたダートグレードの北海道スプリントカップJpnIIIをメイショウアイアンとのコンビで勝利。地元北海道勢に、同競走では00年オースミダイナー以来20年ぶりとなる栄冠をもたらしました。
今シーズンはここまで門別では23勝を挙げてリーディング7位(7月9日終了時点)ですが、ご自身の戦いぶりを振り返っていかがでしょうか。
ここまでいい馬に乗せていただき、恵まれた環境にもいさせてもらっているなかで、本来ならばもっと上にいなければならないと思っています。個人的には、今の順位には満足していないですね。
オフシーズンは南関東で期間限定騎乗を行い、10勝を挙げました。何か得るものはありましたか?
競馬場が4場それぞれでコースが違いますし、普段一緒に騎乗しないジョッキーたちとレースに乗ったので、一人ひとりの乗り方の特徴が分からないなか、一からレースを組み立てなければならなかったのが勉強になりました。川崎とか浦和のような小回りの競馬場は普段乗ってこなかったので、特に難しかったですね。浦和は気がついたら位置取りが後ろになることが多く苦労しました。
10歳のメイショウアイアン(右)で北海道スプリントカップを勝利
6月の北海道スプリントカップではメイショウアイアンとのコンビでダートグレード初制覇。昨年(2着)のリベンジを果たしました。
去年も馬が本当によくがんばってくれたおかげで2着に来てくれたんですけど、あとひとつ着順が上だったら......と考えたら悔しかったんですよね。コーナーでもかなり外を回されてしまって、1着の馬(ヤマニンアンプリメ)からは離されてしまったのは確かですが、2着となるとやっぱり欲がちょっと出てしまったというか。これが3着だったら違ったかもしれないんですけどね。
今年は牧場から帰ってきた当初は状態面も正直なところひと息だったんですけれども、トライアル(5月5日キンシャサノキセキ・プレミアム=3着)を叩いてから調教での動きや体の使い方がどんどん変わってきて、抜群と言っていい状態でレースを迎えることができました。
今年のレースではどのようなことを意識されていたのでしょうか。
いつも通りにはなるんですけど、とりあえず出していって、あとはあまり外々を回って、ポジションを下げないようにすることは意識しました。去年と同じで、砂を被らずにすむ外枠が引けたのはよかったですね。マテラスカイがテンから飛ばす展開になって、ある程度前がバラける展開になって、コーナーであまり外々を回らずに済んだのも、この馬にとっては好都合でした。仕掛けたときの反応や、直線の手応えなんかも、変わらず良かったです。
ゴールの瞬間は、正直勝ったのかどうか自分では分かりませんでした。でもコースから引き上げるとき、マテラスカイに乗っていた武(豊)さんから「おめでとう」と声をかけていただいたので、そこで「ああ、勝ったのかなあ」と。厩務員さんも笑顔で出迎えてくれて、厩舎のみんなでひたすら喜んで、ようやく勝ったことを実感することができました。自分自身、まだ3年目で特に力があるわけでもないのに、こんな大きなレースでこれほどの馬に乗せていただけるなんで滅多にないと思うんです。オーナーさんや先生や、関係者の皆さんには本当に感謝しかないですね。
それにしても、10歳にしてこの走りというのは驚くべきものがあります。あらためて、メイショウアイアンの良さを教えてください。
オンとオフの切り替えがはっきりとしているところですね。厩舎にいるときや普段の運動では牛みたいにボーっとしていて、誰でも乗れる乗馬みたいな感じなんですけど、追い切りやレースになると、ガチッとハミを取って走ってくれるんです。無駄な力を使わないのは、競走馬としてすごく大事な資質なんじゃないかと思います。
グランシャリオ門別スプリント(7月2日)は2着でした。
去年も不良馬場でレコードタイム(58秒6)で勝っていましたし、状態も前走くらいの高いレベルをキープしていたので、期待はしていたのですが、勝ったアザワクは軽量(51kg)でしたし、スピードも一枚上でした。去年と同じくらいの上がりの脚(上がり3ハロン34秒6)を使ってくれて、この馬もよく差してはいるんですけれど、ポジションの差も出てしまいましたね。ただ、やっぱりこの馬にとってのベストは1,200mなので、負けたのはもちろん悔しいですが、結果に関してはそんなに悲観しなくてもいいのかなとも感じています。
次はクラスターカップ(8月10日、盛岡競馬場)ということになると思います。また強いメンバーを相手にしなければなりませんが、いつも一生懸命走ってくれる馬ですし、相手が強くなった方がこの馬の持ち味が生きるんじゃないかと期待しています。
今年は所属の田中淳司厩舎の勢いが凄いですね。騎乗している2歳馬のなかで、特に期待している馬を教えてください。
短いところで言えばトンデコパですね。栄冠賞では11着に負けてしまいましたが、抜群のスタートセンスとスピードを見せてくれました。レースを使っていくうちに少し気持ちが入ってきたかなとも思いますが、それでも乗り手がコントロールできない範囲ではないですね。次の牝馬重賞(8月12日、フルールカップ)は1,000mなので、この馬にとってはベストな条件だと思います。
長い距離の馬で言えば、シビックドライヴですね。能検の走りから「長いところの馬だな」とは思っていましたが、2戦目の1,700m戦で変わり身を見せてくれました。しまいの脚もしっかりしていますし、相手が強くなってもがんばってくれるんじゃないかと思います。牝馬だったら、5月28日のフレッシュチャレンジ(1,500m)を勝ったケープホーンも、競馬が上手な馬ですね。
厩舎の2歳馬には、乗り慣らしを含めてもひととおり乗っていますが、今は自分が乗ってレースに行く馬はできる限り自分で調教をつけているという感じです。今年はJBC2歳優駿もありますが、まずは1頭1頭が目の前のレースを勝てるように、先生とも相談しながら調教を進めているところです。
4月23日のフレッシュチャレンジを制したトンデコパ
今シーズンもいよいよ中盤に入ろうとしています。今後の目標を教えてください。
まずは勝ち星を重ねて、去年(北海道で63勝)以上の勝ち星を挙げたいですね。まだ2歳重賞を勝ったことがないんですが、今年はチャンスのある馬に乗せていただいているので、結果を出せるようにがんばっていきたいです。もちろん、メイショウアイアンもそうですし、古馬も楽しみな馬がいるので、そういった馬たちでも大きいところを狙っていきたいと思います。
リーディング5位以内に入れば、また南関東への期間限定騎乗という道も見えてくると思います。
リーディングの順位は、ジョッキーみんなが意識しているところだと思います。5位以内とは言わず、ひとつでも上を目指さなければいけませんし、そのためにはレースの大小にかかわらず、ひとつひとつ勝ち星を積み重ねていかなければなりません。
今シーズンのホッカイドウ競馬は開幕からずっと無観客競馬が続いていますが、馬券の売り上げは極めて好調です。応援してくれるファンの皆さんへメッセージをお願いします。
こういった大変な状況のなかでも、馬券を買って楽しんでくださり、とても感謝しています。これからもファンの皆さんに楽しんでいただけるような競馬をしていこうと思います。
無観客競馬というのは、レースそのものには直接的な影響はないと思いますが、やっぱり盛り上がりに欠けますよね。パドックでもコースから引き上げるときでも、お客さんがいてくれた方がいいですね。ファンの方も早く生で競馬を観たいでしょうし、僕も早くたくさんの方に競馬場に来ていただけるようになってほしいです。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴