この4月に55歳を迎えた井上俊彦騎手は、ホッカイドウ競馬の最年長ジョッキー。5月に行われた3歳クラシック第一関門・北斗盃では紅一点レッドカードに騎乗し勝利しました。自身にとっておよそ4年ぶりの重賞タイトルは、ホッカイドウ競馬最高齢重賞勝利記録を55歳1カ月0日に更新する白星となりました。
今年でデビュー38年目を迎えました。これほど長くジョッキーを続けられる秘訣は何でしょうか。
ただただ馬乗りが好きだったということじゃないでしょうかねえ。競馬に乗るのが楽しいというのは若い頃から変わらないですし、レースで勝ったときの喜びっていうのが一番なんじゃないかと思います。
ホッカイドウ競馬では、2歳馬を育成していくというプロセスが重要だと思います。
やはり2歳の新馬が多いので、古馬とは違って神経質な面があったりして、レースへ行くために教えなければならないことがたくさんあるのが大変ですが、そのぶんやりがいは大きいんじゃないかと思いますね。今は自厩舎(林和弘厩舎)に仲原大生騎手(大井)が期間限定騎乗で来ていますが、若馬の扱い方をアドバイスすることが多いです。
今シーズンここまでご自身の騎乗ぶりを振り返っていかがでしょう。
久々に重賞を勝たせてもらったからというわけではないですけど、今のところはまずまず順調に行かせてもらっていますね。まあ、いつも通りやっていますよ(笑)。
2歳の頃から跨ってこられたレッドカードで北斗盃を勝利。久々の重賞タイトルを獲得されました。
自厩舎の馬だったので、乗り慣らしの段階から乗ってきたんですけど、その当時から乗りやすくて素直だなという印象でしたね。それが2歳の秋にウィナーズチャレンジを勝ったあたりから、ちょっと期待できそうな雰囲気になってきたんです。距離を伸ばしたブロッサムカップでも2着といい競馬をしてくれていたので、「これはもしかしたら、来年あたり重賞戦線でも楽しみが持てるんじゃないか」と思いましたね。
冬場から春先にかけて川崎・水沢と遠征したのですが、調教に跨っていても、順調さをキープしていたように感じました。
北斗盃のレース当日はどうだったのでしょう。
返し馬からちょっと入れ込んでいたんですよね。それでゲート裏でもちょっとテンションが高かったので、もしかしたら引っかかってしまうかもしれないな、と思っていたんですが、ゲートを出てしまったらいつも通りだったんで安心しました。
「ある程度前は速くなるだろうな」と予想していたので、後方2番手というのはイメージ通りでした。直線半ばで先頭に立って、1頭になったときはちょっと遊ぶようなところが出てしまったんですけど、最後は2着の馬(アッカレッツァーレ)が迫ったところをよくしのいでくれました。
北斗盃を制したレッドカード
レッドカードの成長ぶりと、今後の展望について伺います。
2歳の頃から大きく変わった印象は感じないんですけど、2歳の秋ごろから、いい雰囲気通りの走りはできているんじゃないかと思います。この後は北海優駿(6月18日)になるのかヒダカソウカップ(6月17日)になるのかは未定ですが、北海優駿の2,000mという距離はもしかしたら多少長いのかもしれません。ただ、折り合いの心配はありませんから、このまま無事に行ってくれればと思います。
期待している2歳馬についても教えてください。
おかげさまで、これまで自厩舎の3頭でフレッシュを勝たせてもらっています(5月28日終了時点)。厩舎の2歳馬としては、全体的なレベルとしては例年と同じくらいかなという印象ですが、期待している馬も結構いますね。
リーチ(5月6日6R・1着)は能検を受けた頃から馬がかなり変わってきて、走りそうな雰囲気が出てきました。直前の調教ではまだトモ(後肢)に緩さが残る点が気になったんですけど、レースではしっかりと、気持ちを入れていい時計(1分00秒5・重馬場)で走ってくれましたよね。素直で乗りやすい馬ですし、馬格もあるぶんどっしりと構えているというか、頼もしさを感じます。
5月6日のフレッシュチャレンジを制したリーチ
ラッキードリーム(5月26日6R・1着)も調教からいい動きをしていたので、デビュー戦の前から期待をしていました。初戦はコーナーで少々外に張る面があったんですけれども、直線に入るとまっすぐ走ってくれましたね。普段はおとなしい馬なんですけれども、少しスイッチが入るとカッとなる面があるので、そのあたりが成長してくれればと思います。
セカイノホシはまだちょっと気性が幼いというか、おてんばな感じですけれども、デビュー前から坂路で3ハロン36秒を切るくらいでしたからね。デビュー戦(5月14日5R・1着)はテンの速い馬がそろったなかでハナに立ったので、ラストで脚が上がらないか心配していたんですけど、よく最後までこらえてくれたと思います。
2歳馬については、いつもまずはフレッシュチャレンジを勝つことを目標に調教しています。今年はJBC2歳優駿(11月3日)が行われますが、自厩舎でも出走できたら最高ですよね。
門別競馬場では今年から、2歳新馬戦限定で1,100mコースが新設されました。
1,200mは2コーナー奥のポケット部分からの発走なので、2歳の幼い馬だと2コーナー側に突っ込んでいく馬もいたりして、特に内枠だと僕らも少し気が引けるようなところがあったんですよね。100m短くなってそれが解消されるようになったので、乗っている側としても、内枠が当たっても安心してレースに向かうことができます。
乗った感触としては、1,000か1,200かで言えば、どちらかと言えば1,000mに近いような気がします。何回か乗せてもらってなんとなくペースもつかめてきましたが、行き脚のある馬が残るケースも増えてきたんじゃないですかね。
井上騎手自身の今後の目標について教えてください。
目標らしい目標は特にないですね(笑)。年も年なんで、乗れるうちは普通に、しっかりと乗っていくことが一番なのかなと思います。
レースが終わっても、深く考え込みすぎないようにはしています。あまり引きずっても、そんなの仕方ないですから。
平常心でいることも長く続けられる秘訣なのかもしれませんね。では最後に、オッズパーク会員の皆さんへメッセージをお願いします。
早くコロナウイルスが収束して、門別競馬場にたくさんのお客さんが来てくださることを待っています。門別は今年開幕からずっと無観客競馬が続いていますが、レースでも能検に乗っているみたいな感覚で、なんか寂しいですね。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴
2019年に門別競馬場でデビューした小野楓馬(おのふうま)騎手は、両親が日高の牧場スタッフという"馬産地競馬"ならではの出自。ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンド門別当日(8月21日)にはその第2戦を含む1日5勝、翌週29日のリリーカップでは、デビューからわずか4カ月で重賞初制覇を果たすなど、1年目からめざましい活躍を見せています。
ご両親が牧場にお勤めとのことで、名前にも「馬」がついていますが、小さいころから馬には興味があったのでしょうか。
小さいころは父が勤めていた牧場の社宅に住んでいて、玄関を出たら目の前に牧場があるような環境でした。名前は両親が一緒に考えて、母が「楓」という字を使いたかったそうなんですけど、「馬」の字も自然とついたんでしょうね。この牧場で育った馬が将来競馬場を走るということは子どもながらに理解していましたし、小学1年生くらいのときから、テレビでディープインパクトや武豊さんを観て「強いんだなあ」と思っていました。その頃、家の近所にあったカントリー牧場で生まれたウオッカがダービーを勝ち、なおさら親近感が湧いてきましたよね。
騎手を目指したのも自然な流れだったんでしょうか。
もともと体が小さくて、両親から「ジョッキーになったら?」と勧められた影響もあって、4~5歳の頃から「大きくなったら騎手になる」と周囲に言い回っていました。小学生のころから三木田乗馬学校というところでポニーに乗っていて、馬に乗る楽しさは感じていたんですけど、本当に決意を固めたのは中学生になって進路を考え始めたときですね。小さい頃から言ってきたせいで周りからも「騎手になるんでしょ?」っていう雰囲気が固まっていて、今さら後に引けなかったのもあるんですけど(笑)。
最初は中央を目指していたんですけど、高2のはじめに母の知り合いから「小野望先生が騎手を欲しがっている」という話を聞いて、ホッカイドウ競馬に目が向くようになりました。ちょうど門別競馬場で子どもたちのポニーレースがあって、ゴールした馬を捕まえるバイトで行ったときにレースを観たんですけど、「地元から近くて、歓迎も応援もしてもらえるなら、ここで騎手になるのもいいな」とシンプルに思いましたね。
教養センター時代大変だったことを教えてください。
ホロシリ乗馬クラブや静内農業高校の馬術部でも経験があったので、乗馬に関しては未経験の子よりは余裕があったつもりでしたけど、だんだん技術が追いつかれるにつれて焦りを感じたことですね。自分がケガをして2週間くらい馬に乗れなかったときに、他の子たちはどんどん訓練を進めて巧くなっていきましたからね。そのぶん、自分ももっと頑張らなければと思えたのはプラスでしたし、同期とはお互い助け合って、一緒に高め合っていけるような関係でした。
デビュー当初はどうだったのでしょう。
デビュー戦(4月17日門別3R・ジェイドリームで2着)は田中淳司先生がいい馬を用意してくださったんですけど、馬に遊ばれてゴール前に差し返されてしまい、改めて自分の力不足に気づかされました。最初のころは緊張もしましたけど、周りからの歓声も届いていましたし、テレビで見ていた騎手の方々と一緒にレースをしているというのは新鮮な感覚で、そのとき騎手になった実感がわいてきましたね。
師匠の小野望調教師からはどのような指導を受けているのでしょう。
基本的に馬のリズムに合わせ、馬の気持ちを尊重することを教えていただいています。レース前には「この馬がこういうレースをするだろう」とか、レース後も「こうすればこうなるからこういう結果になる」と、1年目の自分でもイメージしやすいように馬のことやレースのことを教えてくださるのは本当にありがたいですね。自分が馬の上にいるだけでは気づかないような視点をいつも与えてくださっています。
1年目から当初の目標としていた30勝をクリア。8月にはプリモジョーカーとのコンビでリリーカップを制し、重賞も勝利しました。
キッカケを与えてくださった関係者の皆さんと馬に感謝というか、本当にいい経験をさせてもらっているということを実感しています。1年目から重賞に乗せてもらえるということ自体なかなかないことだと思いますし、馬が走ってくれたおかげというのはもちろん大きいですが、ひとつ重賞を勝たせてもらったおかげで、気持ちの面でも少しゆとりを持ってレースに臨めることができるようになった気がします。
プリモジョーカーのグランド牧場の伊藤社長は、自分が所属していた柔道の少年団で会長をなさっていて、社長のお子さんともよく一緒に練習していたんです。実績のある馬だったので、乗せていただけるという話を聞いたときはさすがにビックリしましたが、変に緊張とかプレッシャーとかを考えたりせず、角川(秀樹)先生から要求されたことを当たり前に実行して、馬の力を信じてさえいれば、少なくとも馬の能力を出し切ることはできるとすぐ切り替えたつもりです。
レースでは内目の枠から果敢に逃げました。
先生からは「最初はハナを取るつもりで出していって、自分よりも速い馬がいたら2番手でも仕方ないね」という話を聞いていましたが、この週はインコースが特に軽かったので、「行けるならハナへ行ってやろう」というつもりで乗っていました。ゲートを出てから自然といいハミがかりで行けたので、コーナーに入っても馬の邪魔をせず、気持ちだけは抜かさないようにすることをいちばんに意識していましたね。直線はとにかくしっかり追うことだけを考えていたんですけど、最初聞こえていたムチの音や足音がだんだん聞こえなくなってきたときは内心とても驚きましたし、馬に対して「お前すごいんだな」っていう思いを抱えながらゴールまで乗っていました。検量室で出迎えてくれた小野先生もすごく喜んでくれましたし、ほかのジョッキーからも「おめでとう」と声をかけられて、やっと緊張がほぐれて喜びを噛みしめられましたね。
プリモジョーカーでリリーカップを制し重賞初制覇
地元で行われたヤングジョッキーズシリーズでは第2戦を勝利。この日は5勝を挙げる活躍でした。
2戦目で騎乗したレルシュタープは転入初戦で、中央では馬なりでもハナに立つような競馬をしていたので、無理しなくても逃げられるかなと思っていましたが、2番手の馬が引っかかってきたので、流れは速かったですよね。道中はなるべくリラックスさせることに専念し、勝負どころで抑えていた手綱を放して「気持ちよく行ってもいいよ」と合図を出して最後は馬の力を信じたら、直線ではこちらの叱咤にもしっかり応えてくれました。
それまでの4勝は、人気になるような馬も多かったですからね。そういう馬を任せてもらえるのは本当にありがたく思いますし、だからこそ気をさらに引き締めて、期待に応えていくしかないと。ちょうど当日、同期の福原杏(浦和)もYJSに乗りに来ていて、「昨日ようやく楓馬に勝ち星で追いついたんだ」という話を聞いていたので、「自分も負けてられないぞ」と余計に燃えました(笑)。
YJSトライアルラウンド門別第2戦を制して、1日に5勝
次のトライアルラウンドは11月19日の川崎です。
門別で1回勝たせてもらって、いい位置にいさせてもらえる以上、ファイナルに残れるようにしたいですよね。川崎は最後のトライアルラウンドなので、あと何ポイント必要か計算しやすいのはありがたいです。左回りのレースはおそらく初めてになりますが、いい経験をさせてもらいながら、冷静に、ひとつでも上の着順を目指したいと思います。去年は(山本)咲希到さんと落合(玄太)さんがファイナルに進出されたので、自分もそれに続きたいです。
今シーズンもあと2か月を切りました。今後の目標と課題を教えてください。
当初の目標だった30勝は達成できましたが、これからも目の前の勝利を1つ1つ積み重ねていき、今度は50勝を目指したいですね。去年落合さんが1年目から57勝(門別のみ。ほか1勝)を挙げられたので、「もっと上がある」と考えられるのは、自分にとって恵まれた環境だと思います。まだ臨機応変さが足りないというか、レース中に慌てて、中途半端な位置取りになることもあるのが課題ですね。あとはやっぱりスタートですかね。ゲートの中で同じ体勢を取っても出たり出なかったり、「どうして今回は出なかったんだろう」とか試行錯誤しています。やっぱり考えて乗るのはいちばん大事だなと思います。
では、最後に、オッズパーク会員の方へメッセージをお願いします。
これからも馬主さんや厩舎スタッフの方、そしてファンの方に、見ていて面白いと思ってもらえるような、魅力ある騎乗を心がけたいです。乗せていただけることを当たり前だと思わず、謙虚に、ひとクラひとクラしっかりレースに臨みたいですね。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴
石川倭騎手はデビュー7年目の今シーズン、155戦32勝(6月13日終了時点)という成績でホッカイドウ競馬のリーディング単独首位をキープ。一昨年はダブルシャープでクローバー賞(JRA札幌)を制してJRA初勝利。昨年はアークヴィグラスとのコンビでエーデルワイス賞JpnIIIを制しダートグレード初制覇と、近年は大きな舞台での活躍も目立ち、トップジョッキーへの階段を着実に上り続けています。
前年と比べて大幅に成績を伸ばしています。ここまでのご自身の戦いぶりを振り返っていかがですか。
いい馬にたくさん乗せていただいたなかで、リーディングトップという位置に立つことができているのは素直にうれしいですね。もちろん、「もう少しここをこうしていればこのレースも勝てたんじゃないか」と思うこともありますが、自分のなかでやれることはできているんじゃないかという手応えはあります。
一昨年はJRA初勝利、昨年はダートグレード制覇と、ここ最近は大きな舞台での活躍も目立ちます。
何事でも経験があるというのは自信になります。アークヴィグラスもデビュー3戦目(7月31日・カーネリアン特別5着)がチグハグな内容になってしまったんですけど、そこでの経験が重賞3連勝につながったんだと思います。当時はまだ小柄でテンションも高かったなかで、厩舎の皆さんがいい状態をキープしてくださったおかげです。
これから週3日間開催が中心になると思いますが、ご自身のコンディションについてはいかがでしょう。
今シーズンに関しては、今のところ体の状態をうまくキープできているのではと思います。自分は身長が高いほうなので、体重管理には特に気をつけています。他の人より手が長く、馬を追うときにより腕を伸ばせるというメリットもあるんですけどね。あと、自分は体が硬くなりやすいので、特に股関節のストレッチを入念に行うようにしています。
自厩舎のお手馬・オヤコダカも、復調の兆しを見せていると思います。
昨シーズンは思うような結果を残せなくて、もちろん原因はひとつではないと思うんですけど、特に秋の2戦がどうしてここまで負けたのかよくわからなかったんです。今年は2月から坂路で乗り込みを始めたんですけど、普段の調教でも、牝馬を見ると色気を出すようなうるささが戻ってきていると感じました。毛ヅヤも良くなり、歩様に柔らかみも出ていましたが、なにしろ去年のことがあったので、コスモバルク記念のレース前も半信半疑でした。
コスモバルク記念では1コーナーで速い流れになったこともあって、普段より後ろの位置取りになってしまったのですが、道中のハミがかりはいい頃にだいぶ近づいていました。向こう正面では進路が開かなくてそのままジッとしていたんですけど、3~4コーナーの手ごたえは「いつものオヤコダカ」という感じでしたね。
ノヴェリスト・プレミアム(5月22日)で久々の勝利を挙げたオヤコダカ
5月のノヴェリスト・プレミアムでは、一昨年の旭岳賞以来の白星を挙げました。
本当は前々で運びたかったのですが、テンに出ていかなかったので、控える形に切り替えました。道中で砂を被ってもモチベーションが全く変わらず、引っかかるほどの行きっぷりでしたし、勝負所での反応もいいころの感じにだいぶ戻ってきた印象です。
次走は星雲賞(7月17日)になると思います。今の少し行き脚がつかなくなってきた状態で内回りのマイルに対応できるかどうかですけど、促さなくても自分からハミを取って動いていけるので、いかにオヤコダカ自身のリズムを邪魔しないかをいちばんに意識したいですね。
2歳馬についてもうかがいたいと思います。開幕日のスーパーフレッシュチャレンジ競走では、石川騎手が鞍上のヨハネスボーイが勝ちました。
1歳の12月ころ、桧森邦夫きゅう舎で調教を手伝わせてもらったときに初めて跨ったんですけど、そのころから背中の感触が良くて、いいイメージを持っていた1頭でした。3月の能検でも道中で砂を被せることができ、試したかったことは試せたつもりでしたし、スーパーフレッシュでもその期待通りの走りをしてくれたと思います。血統的なものなのかはわからないんですけど、ちょっと気が強くてテンションが高いのは課題ですね。まだ余裕のある範囲内だと思いますが、ムダな力は使わないに越したことはないので。
2戦目のウィナーズチャレンジは、パドックからちょっと馬がトボけていたような感じで、返し馬のアクションや仕掛けどころの手応えなんかも多少反応が薄かったですね。ただ、レース間隔が開いていたので、使われた分の上積みはあると思います。体も成長途上で、まだベスト体重がどれくらいかは分かりませんけど、460kgくらいはあってもよさそうです。次は栄冠賞(6月27日)になると思いますが、芝が合いそうなフットワークをしているので、何とか夏の北海道シリーズに挑戦できたらいいですね。
スーパーフレッシュチャレンジ(4月17日)を制したヨハネスボーイ
2歳の牝馬で楽しみな馬はいますか。
6月6日のフレッシュチャレンジを勝ったモリデンナイスですね。これも桧森邦夫厩舎で手伝わせてもらった時に初めて跨ったんですけど、能検や調教の時点からとにかく悪いところがなく、注文のつく点が何もなかったので、デビュー戦は自信をもって臨むことができました。トビが大きくて、スピードやスタミナといった全体的なポテンシャルが高いですね。デビュー戦ではちょっと引っ掛かるところもあったんですけれど、オープンのペースなら却ってすんなりと追走できるのではと思います。
フレッシュチャレンジ(6月6日)を制したモリデンナイス
今シーズンこれからの目標について聞かせてください。
開幕当初は特に具体的な目標を決めずにいたんですけど、おかげさまで今の位置に立たせてもらっているので、シーズン終了までこの位置をキープしたいですね。1日1日、1つ1つのレースにしっかりと取り組めば、結果はおのずとついてくると考えています。2年前はいい流れで来ていたときにケガをしてしまったので、ケガをしないようにレースに集中して臨み、またレースに集中できるように自分自身の調子を整えていきたいですね。
最後に、オッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
これからも迫力のあるレースを皆さんにお見せできればと思うので、機会があればぜひ現地までレースを観に来てください。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴
2018年、ホッカイドウ競馬から3季ぶりの新人としてデビューした落合玄太騎手は、 ルーキーイヤーから57勝でホッカイドウ競馬の新人騎手最多勝記録(1977年以降)を更新。その活躍ぶりが認められ、同年度の日本プロスポーツ大賞新人賞を受賞しました。昨年末に大井・中山競馬場で行われたヤングジョッキーズシリーズ(YJS)ファイナルラウンドでも全国各地のホープとしのぎを削りました。2年目のさらなる飛躍が期待されています。
1年目から57勝(北海道のみ)を挙げ、阿部龍騎手が持つホッカイドウ競馬新人騎手の最多勝記録(52勝)を塗り替えました。
阿部さんの記録を抜くことを目標に1年間やってきたので、達成できてよかったと思います。馬主さんや調教師さんをはじめとする関係者のみなさんが、いい馬に乗せていただいたおかげです。うちの先生(田中淳司調教師)も勝てる馬をたくさん用意してくださいましたし、他の厩舎でも1頭でも多くの馬に乗せていただけるよう、調教を手伝わせてもらったり、自分なりに努力してきたつもりです。
1年目で印象に残っているレースはありますか。
初勝利(2018年5月3日門別2R・クィーンアリス)ももちろんなんですけど、やっぱり初騎乗(2018年4月18日門別2R・エンジェルアイズ・3着)ですかね。スタートで立ち遅れてしまって、「そんなにうまくいかないな」とプロの厳しさを感じました。
アポロストロングとのコンビで1年目から道営記念にも出走しました。
6勝もさせてもらいましたが、先生とも「ここまで勝つようになるとは思わなかった」と話しています。レースでは結構トボけるところがあって、出だしはけっこう前に行けるんですけど、隊列が落ち着くと気を抜くんです。2番手の馬が追い付くとまたハミを噛んで、僕が離したらまた抜いて...というのを繰り返して。でも、道中抜いて走るぶん、逆に最後の脚が溜まったのが好結果につながったんでしょうね。
昨年、落合騎手で6勝を挙げたアポロストロング
所属先がリーディングの田中淳司厩舎、兄弟子の服部茂史・岩橋勇二両騎手もリーディング獲得経験があるということで、身近なお手本にも恵まれていると思います。
1年目はレース後によく先生の家にお招きいただき、レースのVTRを見ながら「ここはこうだった」「ここはこうすればよかった」とアドバイスをいただいたのがとても助けになりました。レース前に乗り方を細かく指示されることは少ないですが、「落ち着いて乗れ」ということはよく言われますね。競馬が始まる前には、自分が乗る馬の過去のレースを観て、前回のことを思い出しながら「今回はこうしようかな」と考えたりします。あらかじめ馬の情報を入れておくことが、落ち着いて乗れることにもつながると思うので。
服部さんや岩橋さんは、ゲートを出るときから道中の運び方まで、もう自分とは全然違います。これまで前に行っていた馬でも後方から追い込んで結果を出したりするのは、なかなか真似できないですね。
2018年10月9日、落合騎手騎乗のドラゴンハートで田中淳司調教師が通算1000勝達成
オフシーズンは浦和競馬場・野田トレセンでも調教に騎乗したとのことですが、門別との違いはありましたか。
門別の開催が終わってすぐに、「休みに入るから、少しでも多く馬に乗っていた方がいい」という先生からの勧めもあり、小久保智厩舎で1週間ほどお世話になりました。ちょうど浦和でのYJSトライアルラウンドも控えていたので、1頭でもエキストラ騎乗があれば、ということも考えてくださったみたいです。門別では基本的に坂路での調教が主体なので、馬場での調教とか、馬の抑え方を勉強することができたのかなと思います。
その浦和でも騎乗したYJSは、トライアルラウンドが東日本4位という成績でファイナルラウンドに進出しました。川崎(10月16日)で3、2着とポイントを加算できたのが大きかったと思います。
左回りコースの実戦自体が初めてだったのですが、当日エキストラで乗せていただいたのがプラスになりました。1レースでブースターという馬に騎乗して勝たせてもらったんですけど、1コーナーでうまく回り切れなかったんです。門別とコーナーの回り方が全然違うなと思って、YJSではなるべく膨らまないよう意識することができました。
そして年末のファイナルラウンドへ。JRAでの騎乗も初めてでしたね。GIデーということもあり、多くのファンの方が来ていたと思いますが。
楽しかったです。それほど緊張もしませんでしたし、自分ではあまりプレッシャーとかは感じない方なのかなと思います。元々仲が良かった同期の吉井(章・大井)や、学校ですごく良くしてくださった渡邊(竜也)さん(笠松)とも一緒に出られましたしね。あと、JRAの服部(寿希)君のお父さんとうちの父が同じ職場で、少し話しました。レースの合間とか表彰式の前とかもいい雰囲気で、みんなでワイワイしていましたね。
総合成績は10位でしたが、ファイナルラウンド中山・第2戦(ダート1800メートル)ではマルヨシャバーリーに騎乗し3着。あわやの場面もありました。
コーナーでちょっと外を回りすぎてしまいました。あれがなければ少なくとも2着はあったと思いますし、ちょっと悔いが残ります。今年もYJSに参加させていただきますが、またこの舞台に立って今度は1着を獲りたいですね。
いよいよ2年目が始まりました。どのような目標をもってシーズンに臨みますか。
昨年はNARグランプリの優秀新人騎手賞を取ることができなかったので、今年はそれを目標にしています。今年までは受賞の対象になっているようなので。去年の渡邊竜也さんがシーズン64勝だったので、それくらいの勝ち星を目指したいです。
オフシーズンの門別競馬場で、初めて馴致に関わった2歳馬もデビューします。
それまで乗ってきた馬は全部「出来上がっている馬」で、そういうところを教えなくても動いてくれる馬だったので、まだ何もわからない馬に人が乗るところから教えて、1頭の競走馬を作っていく過程の難しさを感じました。ただ人を落とさずに乗るだけでは勝てませんし、扶助を使って前に行かせることを教えるのが特に苦労しました。全部が全部というわけにはいかないかもしれませんが、やっぱりそういったところから苦労してきた馬でフレッシュチャレンジを勝ちたいですよね。今シーズンは船橋での期間限定騎乗もあるので、門別で跨ってきた馬にも乗れるんじゃないかという楽しみもあります。
では、オッズパーク会員の皆様にメッセージをお願いします。
これからも頑張ってホッカイドウ競馬を盛り上げられるようなレースをしたいと思いますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴
デビュー4年目の山本咲希到騎手は、有望な若手ジョッキーを多数抱えるホッカイドウ競馬の成長株。6月のヒダカソウカップではディナスティーアに騎乗し、待望の重賞初勝利を挙げました。現在行われている2018ヤングジョッキーズシリーズでも、トライアルラウンド船橋・門別で75ポイントを獲得して地方・東日本地区のトップに立っています。
今年はこれまで22勝を挙げています(8月23日終了時点)。今シーズンの戦いぶりを振り返っていかがでしょうか。
今年は重賞も勝たせてもらったり、楽しみな2歳馬に乗せてもらったりもしていたなか、年間50勝という目標を掲げていたので、物足りなさはちょっと感じていますね。昨シーズンの末に制裁を受けたぶん、今年度最初のひと開催で騎乗停止になってしまったのも痛かったです。
昨年は32勝と、2年前の8勝から大幅に勝ち数を伸ばしました。
2年目までは「勝ちたい」という気持ちが早まってしまい、早仕掛け、止まる、負ける、乗り替わる......みたいな悪循環があったんですけど、いい意味で開き直りの気持ちを持てたのが好結果につながっているんじゃないかと思います。先生方からもよく「あの頃のお前を乗せるのは大変だったんだぞ!」って冗談っぽく言われるんですけど、見捨てずにいてくれたうちの(松本隆宏)先生や、勝てなかったころも我慢して乗せてくださった先生方には感謝しかないですね。
6月のヒダカソウカップでは、ディナスティーアとのコンビで重賞初制覇を成し遂げましたね。
今年の2月頃にうちの厩舎に来たんですけど、最初に調教で跨ったときから、牝馬とは思えないほど力のある馬だと感じていました。ただ、自分がまだ重賞を勝ったことがなく、「重賞を勝つ馬」の手応えをあまりよく知らなかったので、実際のレースでどうなるかはよく分からなかった部分はありましたね。
レースに跨っていくうちに「重賞にも手が届きそうだ」という感触は持てましたか?
短距離だと、本当に速い牡馬たちにはスピードでは一歩及ばないような感じもしたのですが、何回かレースで乗せてもらっているうちに、牝馬同士なら意外と長いところでもいけそうな手ごたえを感じていました。
ヒダカソウカップのときも、前走で1200の交流重賞を使っていたので、スピード負けすることはないと思っていました。ただ、スタートから出していったら行きたがる心配はあったので、調教師とは好位の内々で溜めていこうと。で、終いだけ出せるところに出していこうという話をして。そうしたら、本当にその通りになってくれました。本当にすべてがうまくいってくれた感じでしたね。勝った実感がわいてきたのは、ゴールして検量所へ帰ってくるときでしたね。「重賞を勝った」というよりも、馬に「ありがとう」という感じです。
重賞初制覇となったヒダカソウカップ
2歳の有力馬にも徐々に乗るようになってきましたね。
昨年ミスターバッハでデビューしてから初めてフレッシュチャレンジを勝たせてもらって、そのあとポンポンと2歳戦で勝つことができたのが自分の中でも大きかったんです。1戦ごとに競馬を覚えさせていって、馬の成長過程を体感できたという意味でも面白かったですし、勉強になりました。イノセントカップではヤマノファイトにクビ差まで迫ってくれましたし、南関東に移籍した後もいい競馬を見せていますからね。
今年の2歳戦線では、ステッペンウルフが有力かと思いますが。
この馬が厩舎に来るという話になったとき、ミスターバッハの馬主さんが「来年はこの馬でがんばれ」と言ってくださったんです。ただ、シーズンオフに馬主さんが亡くなられたので、オーナーのためにも結果を出したいとずっと思っていました。調教の動きからも能力があることは分かっていたのですが、能検で宮崎(光行)さんを落としたり、気の悪さを出すところがあって。でも、基本的には賢い馬なので、馬具で矯正したり、坂路でも馬の後ろに突っ込んでいったりして、おだてるところはおだてて......という感じでだんだんとレースを覚えさせていきました。再検も無事パスして、フレッシュチャレンジでゴールしたときはオーナーさんのことが頭に浮かんで、思わずガッツポーズが出てしまいましたね。
6月のウィナーズチャレンジ2着から栄冠賞へ。結果は3着でしたが、ゴール前の末脚はすばらしかったですね。
2戦目は初めてのナイターでしたが、脚を使えるということが分かったので、栄冠賞では変に出していかず、ミスターバッハのように終いだけしっかりと脚を使っていくようなイメージで臨みました。ところがゲートを少し潜るように出てしまい、脚もどこかにぶつけてしまったのか、思うように出脚がつかなかったので、正直「終わった......」と思いました。でもそんなことも言ってられないし、イチかバチかで内を突こうと思って直線でステッキを入れたら、「お前そんな力あるならもうちょっと出て行けよ!」と思うくらいの末脚を見せてくれて。もう1回夢を見たんですけど、勝った吉原さんの馬(イッキトウセン)とはスムーズに運べたかどうかの差が出てしまいましたね。
レースが終わってから、この馬が持っている力をあらためて感じました。だからこそ、この馬の能力をもってしても栄冠賞を勝てなかったのかと思うと、ふがいなさや情けなさ、無念さといったいろんな感情がこみ上げてきて、涙が出るほど悔しかったですね。ブリーダーズゴールドジュニアカップは5着でしたが、距離が長かった分もあったのかもしれません。まだまだここで終わるような馬じゃないと思っています。
フレッシュチャレンジを制したステッペンウルフ
今年のヤングジョッキーズシリーズでは、門別ラウンドを終わった時点で75ポイント。地方の東日本地区では首位に立っています。
船橋は1戦目で格上の馬に乗せてもらったこともあり、馬の力を信じて乗った結果勝つことができました。あまり経験したことのない左回りで、騎乗するときのバランスに戸惑うこともありましたが、エキストラで2戦乗せてもらったおかげで、だいたいリズムもつかめたんじゃないかと思います。門別も2着、3着でポイントを稼げたのはよかったんですけど、2戦とも勝つつもりで乗っていたので不満は残ります。特に初戦は人気のある馬に乗せてもらったんですけど、どうしても3コーナーからふかしていかなければならない展開でしたからね......。先行勢のなかでは一番いい着順だったので、馬はよくがんばってくれました。
今後の目標について教えてください。
一番近い目標で言えば、次に乗るレースを勝つことですね。平場でも重賞でも、100戦100勝を目指すくらいの気持ちで乗っているつもりです。1度リーディングを取ってみたいですね。桑村さんや服部さんなど、リーディングを取ったことのある方の乗り方はやっぱり「違うな」と思います。機会があれば中央や海外でもどんどん乗りたいですね。今年の開幕前にマレーシアのセランゴール競馬場を視察させてもらったんですけど、大きな刺激を受けました。
では最後に、オッズパーク会員の皆さまへメッセージをお願いします。
これからも精いっぱい頑張りますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴