ホッカイドウ競馬所属の石川倭騎手はこのオフシーズン、3度目となる佐賀競馬場での期間限定騎乗に臨んでいます。最近はシーズン中も積極的に佐賀へ参戦しており、今年はウルトラノホシとのコンビでネクストスター佐賀、カペラ賞と2歳の重賞を連勝しました。
門別のシーズン中、週末に佐賀で騎乗する機会も増えてきましたね。
個人的には休んでいるよりも馬に乗っている環境の方がよかったので、真島(元徳)先生からオファーをいただけてありがたかったですね。馬に乗せていただけることにしっかりと感謝をすることで、初心に戻るというか、いろいろなことを考える契機になりました。
その真島厩舎所属のウルトラノホシとのコンビで、今年は重賞を連勝しました。まず、初コンビとなったネクストスター佐賀を振り返ってください。
パドックで初めて跨ったとき、背中の感触が良く、馬体からも能力を感じました。それがプレッシャーにもなりましたが、しっかりと結果を残さなければならないとあらためて感じさせられましたね。
それまでの2戦を見た限りだと、行き脚があまり良くないようだったので、ゲートを出てからある程度の位置を取ることを意識していました。砂を被ることを嫌がる印象もあったのですが、ポジションを下げるまでの嫌がり方ではなさそうだったので、道中では外を回るロスと天秤にかけて内のほうに入れ、勝負どころでは前に壁を作らないように誘導できました。そこからはもう、馬に頑張ってくれというか、あとは追うだけでしたね。
ウルトラノホシでカペラ賞制覇(写真:佐賀県競馬組合)
カペラ賞は400mの距離延長、初めての1800mを克服しての連勝となりました。
乗った感触として、距離が延びるのはプラス材料だと思っていましたし、その辺りはレース前に不安はありませんでした。レース当日は少しテンションが上がっており、その点だけは少しイメージと違っていたのですが、砂を被るのを気にする面がテンションの高さをうまく緩和してくれたような感じで、却ってプラスに働いてくれたのはよかったですね。プラン通りに2周目の向正面で仕掛けていくことになりましたが、前に目標としていた馬もいたので、スタミナ勝負になればこちらに分があると考えていました。
あらためて、この馬の良いところと、今後の展望について聞かせてください。
トビが大きくてフットワークが軽く、スタミナが豊富なところですね。馬格に恵まれてはいますが、それでいて走りに重苦しさがないのも心強いです。今後は佐賀の三冠を目指すことになると思いますが、現時点で十分に賞金や実績も積んでいますし、昨年のネオシエルのように、他地区へ遠征して経験を積むのも面白いんじゃないかと思っています。まだ緩みが残り、体の軸というか芯ができておらず、馬体的にも全然完成されていない印象なので、今後もっと良くなってくるのが楽しみです。このような素質のある馬に依頼をいただけて、本当に感謝しています。
佐賀競馬場での期間限定騎乗は2年連続となりました。
今年の冬場もどこかで乗っていたいと思っていたので、真島先生にお願いして受け入れていただきました。もう馬場の形状やコースの特徴などはある程度熟知しているつもりですが、馬にも様々な性格や特徴があるので、いろいろな馬と接しているなかで日々勉強というか、得るものは大きいですね。
門別と佐賀では、コースの特徴はもちろん、馬のつくり方なども違うと思います。
坂路の有無はやはり決定的な違いですね。佐賀では馬場での調教を主体に馬を作っていきますが、期間限定騎乗の短いスパンでは、調教で試行錯誤したことの答え合わせをするのがなかなか難しいです。オフシーズンに継続して来させていただいたことで、今後につながるような知識を得られたらと思っています。
現在、佐賀では飛田愛斗騎手や山田義貴騎手など若手騎手の活躍が目立ちます。後輩たちとレースに騎乗して感じることはありますか。
自分が彼らと同じキャリアだった時と比べてどうだったかという視点で見ることが多いですが、自分の時と比べても上手ですね。もちろん、まだ改善すべき点もありますけれど、今後どういった風に成長していくか楽しみもあり、少し脅威でもあり......といった感じです。一緒に乗ったり、レースの前後に話したりしていても「頑張っているな」と感じるというか、"ライバル"というよりは"弟子"みたいな感覚です。
佐賀で乗っていると、以前よりも内を締めてコーナーを回るケースが多くなった印象です。若いジョッキーたちが減量を生かして成績を伸ばしても、減量が取れれば、以前のようにただ内を突けば勝てるというわけでもなくなってきますし。多少内側が重たいとはいっても、小回りのぶん勝負どころで内外の差は出るので、その辺りの駆け引きが、佐賀の魅力というか面白さなんじゃないでしょうかね。
石川騎手自身について、今年はシルトプレとのコンビで初めて道営記念を制したり、遠征にも積極的に挑戦しました。また、ユメノホノオで土佐秋月賞(高知)を勝利するなど、北海道や佐賀に限らず、活躍の舞台が広がっている印象です。
今年は門別以外の競馬場で乗せていただくことも多く、大きなレースへの騎乗機会があると、周囲からの反響も大きかったですね。やりがいや達成感につながります。今年はエルムステークスの日にエキストラ騎乗で勝たせてもらいましたが(8月6日・札幌7レースをサンダビュークで勝利し、JRAで6年ぶり2勝目)、普段とは違った環境で、大勢のお客さんに応援してもらえたのは大きな刺激になりました。
ユメノホノオについては、地元であれだけの成績を挙げている馬に依頼をいただけたということで、楽しみ半分、プレッシャー半分という感じで、自分が騎手として経験したことを冷静に発揮できればいいなと思っていました。出遅れるにしてもパターンはたくさんあるので、実際にゲートの中でどう対応するかまでは、当日跨ってみないとわからない部分だったのは正直なところでしたが、馬がしっかりと実力を見せてくれました。吉原(寛人)さんの代役という務めを無事果たすことができ、ホッとした気持ちが大きいです。
ユメノホノオで土佐秋月賞制覇(写真:高知県競馬組合)
地方競馬通算1000勝の大台も見えてきましたが(11月22日現在988勝)、意識されていますか。
区切りは近づいていますが、だからと言ってレース中に意識するわけではなく、その辺は特に考えていないですね。あくまでひとつひとつのレースに向き合い、結果を積み重ねていくうえでの「おまけ」みたいなものかなと思っています。
では最後に、今回の期間限定騎乗への意気込みと、オッズパーク会員の皆さんへメッセージをお願いします。
まずは無事にケガなく、心身ともに良いコンディションで来年のホッカイドウ競馬開幕を迎えられるよう、佐賀でいい時間を過ごせればと思います。メッセージは......何だろう、僕の名前をひとりでも多くの方に覚えていただけるように(笑)。
もう皆さんだいたい覚えていると思いますよ!
本当ですか?(笑)。じゃあ......少しでもレースでの人気に応えられるよう、これからも頑張っていきたいと思いますので、ご声援いただけたら嬉しいです。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴
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