2006年にデビューした愛知所属の今井貴大騎手は、『日本で初めての平成生まれの騎手』。2012年には東海ダービーを勝利して、最近2年は年間100勝前後と愛知のリーディング争いを狙える位置まで来ています。
マイネルセグメントで東海ダービーを勝ったとき、ものすごくフワフワしている様子でしたが、実際はどうだったんですか?
ゴール地点では外の馬の勢いが上だったので、交わされたと思ったんですが、検量のところに戻ってきたら、厩務員さんが1着のところで待っていたんですよ。ですから「え? 勝ったの?」という感じでした。だからそのあとの出来事に自分の気持ちが全くついていけなくて。インタビューでも何を言ったのか、ぜんぜん記憶にないんです。
あのとき川西毅調教師は「そのうちジワジワとくるんじゃない?」とおっしゃっていました。
その日の夜、布団に入ってからレース内容を振り返って、「勝ったんだな……」という気持ちが改めて出てきました。競馬場でもうるっとしたんですが、そのときもまた。
2012年東海ダービーを制覇(写真:愛知県競馬組合)
ダービーを勝つと、周りの目も違ってくるんじゃないですか?
そうですね。いろいろなかたに声をかけていただいて、逆にそれがプレッシャーみたいな感じになったこともありました。でもそれを前向きな意識に変えられることができたかなとは思います。
そのあとマイネルセグメントとは、大井のジャパンダートダービー、盛岡のダービーグランプリにも参戦しました。
大井はパドックの人の多さに圧倒されましたし、初めてのナイターもいい経験になりました。盛岡は芝で乗ったことはあったんですが、ダートは初めて。大きいコースで坂もありますし、名古屋の競馬とは全然違いましたね。マイネルセグメントは移籍してきて2つくらい勝ったあたりで、この馬で重賞を取りたいなと意識し始めました。
それが自分自身にとっても初めての重賞勝利(2011年ライデンリーダー記念)につながったんですね。でも今井騎手は、デビューから1年以内に通算50勝を達成。日本プロスポーツ大賞新人賞を受賞しています。
デビュー前は「やってやろう」的な気持ちだったんですが、そう簡単にはいかなかったですね。ただ、名古屋は上手な騎手が多いので、見ているだけでも勉強になりましたし、厩舎のみなさんにもよくしていただいたので恵まれていたんだと思います。それでも騎手のレベルが高い場所で、ある程度の勝ち星を挙げられたということは自信になりました。
馬には小さいころから親しめる環境だったんですか?
いえ、ウチは両親が平日休みの仕事をしていまして、小学校のころから夏休みとかに、父に名古屋、笠松に連れて行ってもらっていたんです。それで中学に入ったあたりから、騎手というのは自分に合った仕事かなあと思い始めました。でも教養センターに入る前、当時は入所試験が年に2回あったんですが、春のときは1次試験に受かったのに、2次試験の直前に左手の甲を骨折して不合格。それで秋にも試験を受けたんですが、そのときも試験の1ヶ月前に左手首を骨折してしまったんです。それでもなんとか合格できたんですが、教養センターでも左手の指を骨折。左ばかりですね(笑)。
ということは、左利きなんですか?
箸や字を書くのは右ですが、包丁は左ですね。ムチも左のほうが持ちやすい感覚があります。でも、騎手になってからは大きなケガをしていないんですよ。馬にアゴを蹴られて骨折したのが唯一です。
ということは、デビュー前にかなりの厄落としができたのかもしれないですね。そして成績も徐々に上昇してきました。
今年の正月に「リーディング3位以内」という目標を立てたんですが、今年はちょっと調子が出てこないんですよね……。もっとがんばらないとダメだなと思います。
自分自身では、どのあたりがセールスポイントだと思っていますか?
えーっと、どこなんでしょうねえ。教養センターでは教官にスタートセンスがいいと言われましたけれど、競馬場に来てみたらそうでもないなあと感じましたし。そうですねえ、レースで乗る馬の癖などを把握することはいつも考えていますね。トップを守っている岡部(誠)騎手の域には、並大抵の努力ではとても追いつけないと思いますが、そこに少しでも近づけるようにしていきたいです。
自分自身の性格はどのように分析されていますか?
そうですねえ、負けずぎらいなのかなあ。カードが出てくるゲームをやると、いいカードが出てくるまで続けてしまうことがあったりして……。そういう意味ではあきらめも悪いですね(笑)。子供の頃はそんな感じではなかったと思うんですが、やっぱりこの世界に入ったからですかねえ?
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※インタビュー / 浅野靖典
9年連続高知リーディングに向かって、今年も勝ち星を積み重る赤岡修次騎手。今年1月には、地方通算2500勝を達成した。高知の顔として活躍する赤岡騎手が語る、「高知競馬の魅力」とは?
2500勝、おめでとうございます。高知で2500勝を達成したのは、歴代最多勝を更新中の西川敏弘騎手と、赤岡騎手のみ。西川騎手との差が、少しずつ詰まっています(3月24日現在、20勝差)。
でも、すぐには抜けないと思います。いま、西川さんがすごく頑張ってますから。高知は調教をつけないとレースに乗せてもらえないところがあるんですけど、西川さんは以前よりも、攻め馬の数を増やした。めちゃめちゃ働いてますからね。僕があの年齢で、もう一度、あれぐらいやる気を出せるかというと、自信がない。西川さんの姿を見て「すごいなあ」と思いますし、刺激を受けます。西川さんと同世代のユタカさん(武豊騎手)の影響も、あるんでしょうね。高知には、見るべき部分がある騎手が多いと思います。こないだの真衣ちゃん(別府真衣騎手)も、中央遠征で見せ場を作りましたからね!
別府騎手は、クロスオーバーでチューリップ賞に参戦。結果は12着でしたが、積極果敢に先行して、高知競馬をアピールしましたよね。
よくやったと思います。高知のジョッキーらしいレースをしてくれた。一鞍入魂で、3番手から行って、魅せてくれました。あの騎乗を見て感動しない人は、競馬人じゃないでしょう。
大舞台の緊張感や、「有力馬を邪魔してしまうんじゃないか」という不安を感じさせませんでした。
あたりさわりのないレースをしても、見ていて面白くない。ケツから行って、なにも伝わってこない競馬をしてしもうたら、話題にもならない。「真衣ちゃんは先輩らがやってきたことを、ちゃんと見ちゅうな」と思いました。
別府騎手いわく、「JRAの騎手が気さくに話しかけてきてくれて、リラックスしてレースに臨めた」と。JRAジョッキーズと高知ジョッキーズは、朝まで飲み明かすほど仲がいいですもんね。武騎手には、「化粧、濃いんとちゃうか?」とからかわれたそうです(笑)。
ユタカさんがいたら、まちがいないんでねえ(笑)。
赤岡騎手と武騎手の親交が、有形無形、様々な財産を生んでいますね。
いやいや。そうやって縁を生かしてくれれば、一番いいんですよ。
武騎手が騎手仲間と共に高知にやってくる夏の「夜さ恋フェスティバル」のトークショーは、今年で5回目を迎える福永洋一記念(4月28日)が創設されるきっかけにもなりました。
すごくありがたいですよね。みなさんが快く協力してくれるおかげで、高知競馬の認知度が上がりました。
高知競馬に、「また行きたい」と思わせる魅力があるからだと思います。みんな明るくて朗らかだし。関係者のみなさんは、馬券の売り上げが回復したことで、よりいっそう明るくなったんですか?
いや、ぜんぜん変わらないですね。県民性じゃないですか? 高知の人って、ポジティブな人が多いと思います。僕なんかもそうですけど、「どうにでもなるろう」って考えている人が多い。高知県民は、いきあたりばったりですから。坂本龍馬が計算づくで動いていたとは、僕には思えません(笑)。
そうなんですか!?
高知県民は、人と付き合うのが好きなんです。だから自分の流れに、人を巻き込んでいくんですよね。坂本龍馬は、それがたまたま上手く流れたから、歴史に名を残しているんじゃないでしょうか。
赤岡さんも、誰とでもすぐ友達になりますもんね。Facebook等を通じて、ファンとさかんに交流しているとか。
北は北海道から、南は沖縄まで、インターネットを通じて馬券を買ってくれている人がいますからね。こんな交通の便のよくない競馬場まで足を運んでくれる人の存在も、本当にありがたい。色んな人が応援してくれているのを感じるようになって、「自分ひとりで乗ってるわけじゃない」という想いが、強くなりました。
そういう想いが、高知競馬の復活に繋がっているんでしょうね。そして、競馬をネット観戦する人にとって、レース実況はすごく大事だと思うんです。橋口浩二アナウンサーの実況は素敵ですよね。
僕らがゲート裏で待機している間も、出走馬の血統背景などを紹介してくれますからね。勉強になりますし、ファンの方も、飽きないんじゃないでしょうか。生産牧場の名前なども出てくるから、牧場関係者の皆さんも、喜んでいるそうです。橋口さんは競馬のことを本当に考えてくれていますし、アナウンサーっていう立場だけじゃなくて、高知競馬の一員という感じです。高知競馬には、みんなに「なんとか盛り上げていこう」っていう気持ちがある。一体感がありますし、変えるべきところを、すぐに変えていける気質がありますからね。
一体感やチャレンジ精神があるからこそ、高知の人馬は遠征で活躍するんでしょうね。だからファンもメディアも、高知競馬から目が離せない。
いきあたりばったりで危なっかしいところもあるから、見捨てきれないのかもしれません(笑)。
母性本能を......。
くすぐるような(笑)。「危なっかしいな、この競馬場」って。遠征で活躍すると、喜んでくれますしね。やっぱり、愛されてるんでしょうね。高知の馬や騎手が、時々すごい活躍をするところに、面白味があるのかも。波があるけど、爆発力がありますよね。
今、期待している馬を教えてください。
アイアムルミエール(牝3、田中守厩舎)という馬ですね。まだぜんぜん完成されていないので、これから成長してくれれば、楽しみはあると思います。
ところで、検索サイトで「赤岡修次」と入力すると、「結婚」という単語が自動的に表示されました。「赤岡修次 結婚」で検索している人が多いんですね
ホントに!?
あと、「赤岡修次 独身」とか、「赤岡修次 年収」とか、すごくリアルです(笑)。周りの人に、「結婚はまだ?」って言われませんか。
言われますねえ。そりゃ言われるでしょうね。まあ、結婚はタイミングじゃないですか。流されていくんですよ、高知県民は。きっと坂本龍馬も、流されたんですよ。って、坂本龍馬のせいにしゆうけど、怒られますね(笑)。
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※インタビュー・写真 / 井上オークス
ばんえい競馬は、いよいよ3月23日に大一番のばんえい記念を迎えます。1月に通算3500勝を達成し、ばんえい競馬の最多勝記録を更新し続ける藤本匠騎手(52)に話を伺いました。
1月末のヒロインズカップでは、ダイリンビューティで重賞50勝となりました。
50勝だったかい。ダイリンビューティは、この日120%、完璧のレースをしたね。最高の流れだった。運を引き寄せる物を持っている馬だと思う。オリンピックだってそうだよね。実力があっても結果を出せない人もいる。馬の性格は真面目だよ。悪い癖がなく、レース運びがしやすい。それでいて障害もいい。これは競走馬にとって大事。デビュー前の能検にも乗っていて、真面目でいいものがあるから体ができれば3、4歳で開花すると思っていた。5点満点なら4点で、残りの1点は体ができてない、ってところのみ。
「いいもの」というのは? また、成長しそう、というのはどこでわかるのですか。
触る(乗る)とセンスがわかるんだけど、長年の勘なんだよな。ベンツに乗ったことのない人は、その良さってわからないと思うんだ。サカノタイソンもすごいって言われるけど、乗ったことがある人にしか、本当のすごさはわからない。デビュー前の能検の結果がいい馬もいるけど、初めて競馬場で走るからびっくりしていいタイムが出たり、たまたまいい時計を出す馬もいる。騎手は、体に「いい馬のイメージ」が蓄積していくんだ。それが財産。乗れば乗るほど、財産は増えていくよ。トップジョッキーはみんなそうだと思う。
サカノタイソンの本当のすごさとは。
あんな強い馬、今まで巡り会ったことない。次元が違う。パワーがけた外れだし、ハナに行けて、障害もうまいし、障害を降りてからも歩ける。3拍子そろっている。 そういえぱ、ヒロインズCの前に死んでしまったブラックパールね......、(ヒロインズCに)出ていたら20キロハンデがあってもいいレースをしたと思う。体が大きくて、無理もきく。アンローズも大きかったけれど、そのくらいの馬格があった。
これから期待する馬はいますか?
コウシュハウンカイは、若馬の時からオープンで走れるかな、と思っていた。重い荷物に対応するから、(高重量戦の多くなる)今後の希望を抱かせるね。コウシュハゴールドは、素質があるから体できればおもしろいかな。
いい馬の見方というのはありますか?
長腹短背とか、見た目のバランスがいい馬っているけれど、バランスいいから能力があるというわけでもないんだ。そりをかけてみないとわからない。こればかりは、持って生まれた能力だから。見た目悪くても走る馬っている。ただ、形いい馬で引っ張った方がレースを見ていても飽きないよね。頭小さくて、目ぱっちりしてる馬とか、かっこいいじゃない。
さて、1月1日に3500勝を達成しました。勢いは止まりません。
正月に決めたなぁ、と(笑)。この時点でシーズン100勝も超えられていたことはよかった。大きな怪我をせずにここまで来られたからね。手にひびが入った時に1カ月休んだくらい。我慢強い方だから、ちょっとした痛みなら乗っていた。
健康の秘訣は何でしょう。何か、体を鍛えていたのでしょうか?
開催が12月までだった20~30代の頃は、開催がないときに帯広のアイスホッケーチームに加わってたんだよ。釧路にいた小学生の時に友達に誘われてから、ずっと好きでね。汗かいて、運動になった。アイスホッケーの靴って、リンクでなかなか立ってられないんだよ。
バランス感覚も鍛えられたのでしょうね。プレーを見てみたいです! 最近若手騎手の活躍がみられますが、いかがですか。
みんな頑張っているよね。所属する岩本利春厩舎の島津新も、運を持ってる。いつも攻め馬(調教)を頑張っているし、心配ないよ。ただ、若い騎手はもっと個性を出していいのかな、と思う。昔の騎手は、自分の「型」を持っていた。勝つためなら、人が何と言おうとね。木村卓司さん(元騎手・調教師)、金山明彦さん(現調教師)、最近ならそりの上でジャンプしていた坂本東一さん(現調教師)とかね。最終的には人に真似させるような、ぼい(追い)方になっていく。 今の若手も、中には質問してくるのもいるけど、自分は気になったらすぐに聞いていた。自分はできないのに、どうして金山さんならできるんだろう?と。
今後の目標は? やはり4000勝とリーディングでしょうか。
それよりは、あと何年乗れるか。騎手できるまでやりたいし、やれると思う限りは続けたい。1年1年体と相談しながら、人に迷惑かけないようにね。まだ長老いるからね! 山本正彦騎手(56)より先にやめるわけいかないから(笑)。レジェンド山本だよ? ばんえいの歴史の中でも最長老なんじゃないかな?
レジェンド山本、いいですね(笑)。さて、いよいよ今月末はばんえい記念です。
今年はまだ乗る馬は決まっていないけれど、乗りたいし、1回勝つとまた勝ちたいんだ。2回勝ったけれど、騎手なら何度でも勝ちたい。中央競馬でいえばダービーみたいなもの。ばんえい記念で有利なのは、障害を先に降りられる馬。だから、障害を真っすぐ進む(真面目な)性格の馬が向いている。返事遅い馬なら話にならない。キンタローやトモエパワーみたいな、ばんえい記念で差せる馬っていうのはなかなかいないんだわ。 障害を、何度も何度もチャレンジするところがこのレースの醍醐味。膝折ったりしながらも越えていく。その姿をぜひ、見に来てください。
昨年のばんえい記念はシベチャタイガーで8着
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香
デビュー年からコンスタントに活躍を続ける島津新騎手(23)。4年目を迎えた年男は、帯広記念を制し今年も良いスタートをきることができました
斎藤:帯広記念はホリセンショウで、病気の鈴木恵介騎手に乗り替わっての勝利でした。
島津:朝、乗り換わりの紙が貼られているのを見て初めて乗ることを知りました。「あー乗るんだなー」って(笑)。うちの厩舎(岩本利春)の馬だからどんな馬かもわかっているし、馬体重があるから、荷物(負担重量)にも負けないと思っていました。
斎藤:レース中は、いつ勝ちを意識しましたか。
島津:障害で膝を折ったのは想定内。レースは落ち着いて騎乗することができました。障害を最初に越えた時に、もしかしたら、と思いました。ゴールまで3回止まって、残り20メートルくらいでキタノタイショウとニュータカラコマが来ているのが見えましたが、ニュータカラコマは辛そうに頭を上げていたから止まるな、と。その後、2頭が止まった時点で行けるかな、と思いました。
斎藤:ホリセンショウの田山克廣オーナーは北斗市の方で、島津騎手のお父様とよく一緒にばん馬大会に参加していますね。
島津:小さい頃から知っている人だったので嬉しかったです。周りの人も喜んでくれました。
斎藤:乗り換わりってプレッシャーはないですか? というか、プレッシャーを感じているのを見たことがないような気がします。
島津:乗り換わりは逆に、プレッシャーなく乗ることができます。いい騎手にはいい馬が乗るのだから、馬を回してもらえるのは光栄です。印が多いと緊張しますよ。逆にいろいろと考え過ぎてしまう。
斎藤:コンスタントに活躍を続けていますが、1年前と変わったと感じるところはありますか?
島津:道中、他の馬を見られるようになりましたね。帯広記念がそうでした。それまでも見られていたと思っていたけれど、今ほどではない。自分が乗っている馬だけではなく、周りの馬もわかっていないといけないから、調整ルームでは自分が騎乗していなかったレースを見るようにしています。乗っていない馬の能力が分かるようになってから、レースがしやすくなった。調教とレースではがらっと変わる馬がいるから、レースを中心に勉強します。
斎藤:3月にはばんえい記念があります。どのような存在ですか。
島津:夢! 乗ってみたい。小学校低学年の時の文集に「ばんえい記念に勝ちたい」と書いていました。当時、(祖父が馬主の)シマヅショウリキが活躍していたからなおさら。
斎藤:今、乗ってみたい馬はいますか。
島津:キタノタイショウに乗ってみたいですね。乗るのが簡単じゃないみたいだから、挑戦してみたい。負けず嫌いなんです。
斎藤:趣味は釣りだそうですが、競馬と似ているところはありますか?
島津:集中力。あと、駆け引きかな。でかい魚を釣った時の気持ちはレースに勝った時と似ていますね。厩舎作業があるのでたまの休みにしか行けませんが。
斎藤:ところで、昨年結婚されたとか。おめでとうございます。帯広記念も勝ててよかったですね。
島津:ありがとうございます、奥さんも帯広記念を勝って安心していると思います。一緒に住むようになってからは、ご飯作ってくれるので楽。5月には子どもも生まれます。
斎藤:食べてもっと太った方がいいんじゃないですか。バレンタインのチョコは届きましたか?
島津:今は62~63キロ、ちょうどいいから大丈夫です(笑)。チョコは、ファンから届くのを期待していたのに、届きませんでした(笑)。奥さんからしかもらっていません。
斎藤:女性ファンのみなさん、来年は競馬場宛に送ってください(笑)。さて、ばん馬が登場する映画『銀の匙』が3月に公開されますね。
島津:先日、関係者で試写会がありました。面白かったです。全国で公開されますし、漫画にもたくさんばん馬が使われているので見てください。ちょっとは映りましたが、それより(赤塚)健仁がいっぱい出ています(笑)。
斎藤:目標を教えてください。リーディングですか(2月24日現在83勝、8位)。
島津:今、6~10位が接戦なんですよね。来年度は100勝が目標です。今年度の目標は90かな…。これからは、ベテラン騎手を引きずり下ろすくらいの活躍をしたいです(笑)。 今年は例年ほど帯広は寒くないんです。ぜひ本場に足を運んで、馬の迫力を感じてください。
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※インタビュー・写真 / 斎藤友香
昨年は137勝を挙げ、高知リーディング3位と躍進した西川敏弘騎手。騎手会長も務める28年目のベテランに、現在の心境を語っていただきました。
赤見:昨年の成績は、一昨年の80勝と比べて倍近い勝ち鞍でしたね。
西川:倉兼(育康)くんが海外に行っているので、そこの厩舎に乗せてもらえたっていうことが大きかったです。たくさんいい馬に乗せてもらいましたから、その分責任感も大きかったですし、きっちり仕事せなという気持ちで乗っていました。だから、結果を出せて嬉しいですね。自分では、今までも自信がなかったわけやないんですけど、なかなかいい馬に巡り会えなかったりして、低迷していた時期が続いていたので。久しぶりに昔の感覚に戻ったというか、やっぱり勝ち負けの馬に乗ってると楽しいやないですか。緊張感があって、充実した一年でしたね。
赤見:今年でデビュー28年目に突入しますが、西川さんの原動力はなんでしょうか?
西川:何ですかねぇ。あの、僕、武豊騎手がすごく大好きなんですけど、高知に乗りに来た時とかに一緒に飲んだりするやないですか。その時に競馬の話になって、「まだまだやってやる」という話をよくするんですよ。年齢も僕の方がひとつ下やし、あの人が頑張ってるうちは諦めたらあかんて思いますね。長い間ずっと競馬界を引っ張って来た人で、僕もたくさん感動をもらいましたから、その武さんが頑張ってるうちはっていう。いい刺激をもらってます。
赤見:西川騎手は長く高知の騎手会長をしていますけど、高知は他場からのジョッキーの受け入れがとても頻繁ですよね。
西川:そうですね。他の競馬場から来るのは、けっこう自由です。最近人数が増えて来て、さすがに考えなきゃあかんのやないかっていう話もチラホラ出てますけど、それもなあなあな感じで。今の競馬界は騎手の移籍や他場での騎乗に対して制限がありますけど、全国でひとつくらい自由な競馬場があってもいいのかなと思ってます。
赤見:高知のジョッキーたちは、本当に仲がいいですよね。
西川:仲いいですね。もちろん、レースはキッチリやって、そこは絶対になあなあになったらいかんということはいつも言ってますけど、普段ギスギスしても何の意味もないやないですか。やっぱりね、県外に行くとお金のいっぱい掛かってるところほどギスギスしてますよ。レース上がりとか見てても、高知とは違うんやなって思う時はあります。
赤見:高知はもともと仲が良かったんですか?
西川:昔は違う時期もありました。僕がデビューした頃は人数ももっと多かったですし、調整ルームでしょっちゅう喧嘩があったり、上の人から説教されたり。すごい嫌やったから、自分が上になったらそういうのは絶対にやめようと思ってて。結局、誰かがやめないとずっと続いて行くし、自分がやられて嫌やったことを他人にするのは嫌やないですか。
赤見:でも、なかなかやめられないのが人間のような気もします。西川さんは子供の頃からそういう考えだったんですか?
西川:いや、全然(笑)。子供の頃はつっぱっとったし、やんちゃばっかりしよって色々ありましたよ。両親も放任主義やったし、自由奔放に振る舞ってました。でも社会に入ってみて、大人の世界は腐っとるって(苦笑)。当時は言葉で威圧したり、力で抑えつけようとする人が多かったもんで、自分はそういう風にはなりたくないって思ったんです。
赤見:昔、赤岡修次騎手が低迷していて騎手をやめようかと悩んでいた時に、西川さんに救われたって言ってました。
西川:あの子は才能あったんやけど、人間関係で腐ってた時期があったんです。せっかく技術はあるのに、かわいそうやって。毎日呼んで、一緒にご飯食べに行きました。今はすごい人になりよって。僕の出来ないようなことも出来るし、人脈も色々作ってくれて、本当にすごいなと思ってます。この世界は足の引っ張り合いみたいなところもあるけど、それだけじゃダメやないですか。とにかく、人付き合いと、チャンスをもらえるかなんです。一回芽が出れば波に乗っていけるので、その波を引き出すキッカケが欲しい。今ね、田舎はまだマシですけど、南関東の子らにはチャンスが少ないやないですか。競馬界全体で若手を育てていかないといけないのに、そこをどう考えてるのかなって思いますよ。自分も含めて、いつまでも爺さんが頑張ってる時代やないですから。チャンスあげなきゃ、育つもんも育たないですから。
赤見:高知では何人もの若手騎手が、期間限定騎乗で武者修行をしていますよね。
西川:ただ、やる気で来る子と、そうでもない子がいるんで、最初にちょっと言って何も答えを出して来ない子には、押しつけがましいことは言わないです。高知なら乗せてもらえるっていうだけで来る子もいるので。でも、ここで上手くなりたい!って思ってる子には、どんどんアドバイスします。本橋(孝太)くんや山中(悠希)くんなんかは素質も高いから、乗り出したらどんどん勝つんですよ。そうすると顔つきまで変わっていって。そういうのをそばで見られるのは嬉しいですね。ただ、山中くんは戻ってから厳しいみたいで。この前の新人王で久しぶりに高知に来た時、顔つきがまた変わってました。ゲッソリした感じになってて。
そしたら、乗り方まで違うんですよ。こっちで気持ち良く乗ってた乗り方と違って、ちょっとリズムが良くなかった。改めて、環境と気持ちで、乗り方も変わるんやなって痛感しましたね。
赤見:高知から巣立って行ったジョッキーたちのことは、その後も気になりますか?
西川:それは気になります。何鞍乗ってるかなとか、レース見たりとかね。頑張って努力してる子らは、報われて欲しいですから。
赤見:では、ご自身の目標を教えて下さい。
西川:目標っていうのは、特に考えてないんですけど。無事に乗って行きたいっていうのが一番ですかね。高知はお蔭様で売り上げが伸びていて、一時期のいつ廃止になる?っていう状況ではなくなりました。ずっと低迷してた頃からみんなが真面目にやった結果やと思いますし、赤岡くんが県外に行った時に宣伝してくれたり、主催者の努力もあります。でも一番は、ファンのみなさんが高知を見てくれるようになって、馬券を買ってくれるお蔭なんでね、それに応えられるようにこれからも頑張ります!
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※インタビュー / 赤見千尋