12月8日第8レース、キタノオーロラで通算1000勝を達成した工藤篤騎手(44)です。
1000勝達成おめでとうございます。11月30日の999勝から、待ち遠しかったですよ。
自分は冷静だったけど、周りが「(お祝いの)花が枯れる」って冷やかすんだよね(笑)。キタノオーロラは、馬場も合うし、うまくいったら穫れるかな、と思っていました。1000勝といっても、年数かかっているからね。(デビューから)22年、尾ヶ瀬さん(馨騎手)と同期なんだ。最初は1000勝できると思っていなかった。これからは1勝1勝大事に勝つことだね。地道に、です。
出身は弘前ですね。
家に草ばん馬用の馬がいて、父と祖父が世話していました。騎手になりたいと思ったのは小学校の高学年のころかな。ばんえい競馬のビデオや本を見て、こういう仕事があるんだ、馬が好きだから、なれたらいいな、と思っていた。
親は違う仕事をしてほしかったみたいで高校にも行ったけれど、頭の片隅にはずっと騎手になりたい、というのがあったんだよね。なぜか、ずっと頭から離れなかった。
たまたま、ばんえいの開催がない冬に湯治で近くに来ていた橋本豊調教師に会って、そのうち「来ないか?」って言われて。若いときしかできないし、挑戦してだめなら、また考えよう、と競馬場に行きました。縁なのかな。
橋本厩舎に入ってからのことを教えてください。
3年目で騎手試験に合格しました。橋本厩舎の兄弟子は大河原騎手。厳しかったよ。でも、そのおかげで早く騎手になれた。「追える騎手になれ」って言われたな。
初勝利はコーネルトップ(97年ばんえいグランプリなど重賞8勝)です。市場で破格の1000万がついて、うちの厩舎で育成、テストと関わった。怪物だったね。同世代にはダイヤキャップ(98年帯広記念など重賞5勝)やヨウテイクイン(95、96年ばんえいグランプリなど重賞10勝)と、強い馬が多かったけど、それでも同じ年の馬とは頭一つ大きさが違う。並んでいたら親子みたいだもの。デビューして1カ月、なかなか勝てない時に乗せてもらった。乗ってたら知らんうち1着になってた(笑)。
帯広競馬場にある「ばんえいギャラリー」に昔のポスターが貼られていますが、よく登場していますね。
なんでポスターに使われたかわかんないんだわ(笑)。当時はパーマかけてたんだよ(笑)。2年後に橋本先生が定年になって、三浦孝幸厩舎に移籍しました。三浦先生(2013年に急逝)は面倒見のいい先生だった。若手を大事に育ててくれた。先生のおかげで、馬主さんとか、いろんな人と知り合えた。
コーネルトップのほかに思い出の馬はいますか?
コーネルトップの子で重賞を2つ取った、カネサリュウ(2007年ホクレン賞、イレネー記念)だね。重賞これしかないんだよ。子どもだからって特に意識したことはないけれど、似ているところはあるかな? 言われてみれば、おっとりしているところが似ているかな。
これからの期待馬は。
ニシキエーカンは、先行力があって障害も上手。いいところまで行くんだけど、なかなか勝てないね。岩見沢記念(3着)は悔しかったな。ちょっとゴール前焦ってしまったかな。気ムラなところがある。本気出したら力があるのに。でも、年々良くなってるよ。(管理する)村上慎一調教師は橋本厩舎で1年下の弟弟子になるんだ。同じ釜の飯食べてね。
ここ最近期待しているのは、サカノテツワン。パワーアップしているよ。地味だけど派手に勝つ! 末脚がしっかりしている。上のクラスに行ってもいいレースするしね。
北央産駒特別を勝ったサカノメイホウは末脚が光りましたね。30日のヤングチャンピオンシップが楽しみです。
オープンは初めてだったけれど、降りてからしっかり歩いて、思ったより頑張ったね。出られるのが名誉なレースだから楽しみだね。
好きな脚質はありますか。また、心がけていることは。
レースとしては好位差しが理想。抜け出すのが好き。
心がけていることは、馬優先。馬の調子には波がある。絶好調は続かないから、仕草を見ることを心がけています。生き物だからね、しゃべらないだけで。いい時には目が輝いている。目がとろーんとして、腐った魚のようになっていたらだめ。パドックで背中に乗ったとき「あれ?」ってわかるよ。いい時の感覚は体で覚えているからね。馬は一頭一頭違うから、それぞれの特徴を頭に入れている。馬も減っているから、できるだけ大事にしてあげたい。
最近若手が伸びてきていますが。
若い騎手は、もうちょっと派手さがあってもいいかなと思う。久田守、金山明彦(元騎手、現調教師)は豪快な騎乗だった。今は個性的な騎手が少ない。松田さんのアクションすごいしょ。西将太はぼえてる(追えてる)な。
ファンに一言お願いします。
売り上げが伸びているし、競馬場に来るファンも増えてきた。ピークには戻らないかもしれないけど、いいことだね。ファンに見て欲しいのはゴール前の接戦かな。止まったり、入れ替わったり。1人でも多くの人に、熱い、いいレースを楽しんでほしい。
-------------------------------------------------------
※インタビュー・写真 / 斎藤友香