昨年は137勝を挙げ、高知リーディング3位と躍進した西川敏弘騎手。騎手会長も務める28年目のベテランに、現在の心境を語っていただきました。
赤見:昨年の成績は、一昨年の80勝と比べて倍近い勝ち鞍でしたね。
西川:倉兼(育康)くんが海外に行っているので、そこの厩舎に乗せてもらえたっていうことが大きかったです。たくさんいい馬に乗せてもらいましたから、その分責任感も大きかったですし、きっちり仕事せなという気持ちで乗っていました。だから、結果を出せて嬉しいですね。自分では、今までも自信がなかったわけやないんですけど、なかなかいい馬に巡り会えなかったりして、低迷していた時期が続いていたので。久しぶりに昔の感覚に戻ったというか、やっぱり勝ち負けの馬に乗ってると楽しいやないですか。緊張感があって、充実した一年でしたね。
赤見:今年でデビュー28年目に突入しますが、西川さんの原動力はなんでしょうか?
西川:何ですかねぇ。あの、僕、武豊騎手がすごく大好きなんですけど、高知に乗りに来た時とかに一緒に飲んだりするやないですか。その時に競馬の話になって、「まだまだやってやる」という話をよくするんですよ。年齢も僕の方がひとつ下やし、あの人が頑張ってるうちは諦めたらあかんて思いますね。長い間ずっと競馬界を引っ張って来た人で、僕もたくさん感動をもらいましたから、その武さんが頑張ってるうちはっていう。いい刺激をもらってます。
赤見:西川騎手は長く高知の騎手会長をしていますけど、高知は他場からのジョッキーの受け入れがとても頻繁ですよね。
西川:そうですね。他の競馬場から来るのは、けっこう自由です。最近人数が増えて来て、さすがに考えなきゃあかんのやないかっていう話もチラホラ出てますけど、それもなあなあな感じで。今の競馬界は騎手の移籍や他場での騎乗に対して制限がありますけど、全国でひとつくらい自由な競馬場があってもいいのかなと思ってます。
赤見:高知のジョッキーたちは、本当に仲がいいですよね。
西川:仲いいですね。もちろん、レースはキッチリやって、そこは絶対になあなあになったらいかんということはいつも言ってますけど、普段ギスギスしても何の意味もないやないですか。やっぱりね、県外に行くとお金のいっぱい掛かってるところほどギスギスしてますよ。レース上がりとか見てても、高知とは違うんやなって思う時はあります。
赤見:高知はもともと仲が良かったんですか?
西川:昔は違う時期もありました。僕がデビューした頃は人数ももっと多かったですし、調整ルームでしょっちゅう喧嘩があったり、上の人から説教されたり。すごい嫌やったから、自分が上になったらそういうのは絶対にやめようと思ってて。結局、誰かがやめないとずっと続いて行くし、自分がやられて嫌やったことを他人にするのは嫌やないですか。
赤見:でも、なかなかやめられないのが人間のような気もします。西川さんは子供の頃からそういう考えだったんですか?
西川:いや、全然(笑)。子供の頃はつっぱっとったし、やんちゃばっかりしよって色々ありましたよ。両親も放任主義やったし、自由奔放に振る舞ってました。でも社会に入ってみて、大人の世界は腐っとるって(苦笑)。当時は言葉で威圧したり、力で抑えつけようとする人が多かったもんで、自分はそういう風にはなりたくないって思ったんです。
赤見:昔、赤岡修次騎手が低迷していて騎手をやめようかと悩んでいた時に、西川さんに救われたって言ってました。
西川:あの子は才能あったんやけど、人間関係で腐ってた時期があったんです。せっかく技術はあるのに、かわいそうやって。毎日呼んで、一緒にご飯食べに行きました。今はすごい人になりよって。僕の出来ないようなことも出来るし、人脈も色々作ってくれて、本当にすごいなと思ってます。この世界は足の引っ張り合いみたいなところもあるけど、それだけじゃダメやないですか。とにかく、人付き合いと、チャンスをもらえるかなんです。一回芽が出れば波に乗っていけるので、その波を引き出すキッカケが欲しい。今ね、田舎はまだマシですけど、南関東の子らにはチャンスが少ないやないですか。競馬界全体で若手を育てていかないといけないのに、そこをどう考えてるのかなって思いますよ。自分も含めて、いつまでも爺さんが頑張ってる時代やないですから。チャンスあげなきゃ、育つもんも育たないですから。
赤見:高知では何人もの若手騎手が、期間限定騎乗で武者修行をしていますよね。
西川:ただ、やる気で来る子と、そうでもない子がいるんで、最初にちょっと言って何も答えを出して来ない子には、押しつけがましいことは言わないです。高知なら乗せてもらえるっていうだけで来る子もいるので。でも、ここで上手くなりたい!って思ってる子には、どんどんアドバイスします。本橋(孝太)くんや山中(悠希)くんなんかは素質も高いから、乗り出したらどんどん勝つんですよ。そうすると顔つきまで変わっていって。そういうのをそばで見られるのは嬉しいですね。ただ、山中くんは戻ってから厳しいみたいで。この前の新人王で久しぶりに高知に来た時、顔つきがまた変わってました。ゲッソリした感じになってて。
そしたら、乗り方まで違うんですよ。こっちで気持ち良く乗ってた乗り方と違って、ちょっとリズムが良くなかった。改めて、環境と気持ちで、乗り方も変わるんやなって痛感しましたね。
赤見:高知から巣立って行ったジョッキーたちのことは、その後も気になりますか?
西川:それは気になります。何鞍乗ってるかなとか、レース見たりとかね。頑張って努力してる子らは、報われて欲しいですから。
赤見:では、ご自身の目標を教えて下さい。
西川:目標っていうのは、特に考えてないんですけど。無事に乗って行きたいっていうのが一番ですかね。高知はお蔭様で売り上げが伸びていて、一時期のいつ廃止になる?っていう状況ではなくなりました。ずっと低迷してた頃からみんなが真面目にやった結果やと思いますし、赤岡くんが県外に行った時に宣伝してくれたり、主催者の努力もあります。でも一番は、ファンのみなさんが高知を見てくれるようになって、馬券を買ってくれるお蔭なんでね、それに応えられるようにこれからも頑張ります!
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※インタビュー / 赤見千尋