今年4月にデビューした新人騎手は12名。その中でも順調に勝ち星を伸ばし、存在感を示しているのが金沢の中島龍也騎手。デビューしてから3カ月、明確な目標もできたようだ(インタビューは7月1日)。
4月にデビューして6月までで22勝。同期の中ではダントツの勝ち星です。特に1番人気馬では19回騎乗して、連対を外したのは1回だけです。
いや、まだぜんぜんですよ。(1番人気の連対率は)特に意識していなかったので、初めて知りました。一鞍一鞍がんばって乗るだけだと思っています。
では、まず騎手になったきっかけから教えてください。
小学6年か中学1年のころだったと思うんですけど、祖父が競馬が好きで、「運動神経も悪くないし、小さいんだから騎手でも目指してみたら」って。それまで競馬のことを意識はしてなかったんですけど、中学2年くらいから考えるようになって、そのうちに本気で目指すようになりました。中学を卒業して、茨城にある国際馬事学校に1年間行って、試験に受かって(地方競馬)教養センター入りました。
出身は千葉県ですよね。
千葉県の鎌ヶ谷市です。最初は船橋に所属したいと思っていたんですけど、教官に、「お前の人間性や技術じゃ通用しない」とか言われて迷っていました。そのうち、今所属している(金沢の)加藤和義先生が、調教師の試験を受けるための研修で3週間くらい教養センターにいらっしゃっていて、調教師試験に合格したらということで、先生から声をかけてもらいました。時期的にも1年の終わり頃で、どうしようかと思っていて、船橋だと乗り鞍に恵まれるかどうか不安だったので、それだったら金沢なら南関東より騎手の数も少ないし、乗せてもらえるんじゃないかということで金沢に決めました。
あらためて、ここまで22勝、勝率11.0%という成績はすばらしい。
(金沢では)新人が久しぶりということもあって、いろんな先生に乗せていただいてる感じで、乗り鞍には恵まれた中で、たまたま勝ててるのかなという感じです。でも乗っていて思うのは、やっぱり難しい。競馬はひとりでやってるわけじゃないので、まわりの騎手に気遣いながら乗るのが難しい。勝ち星なんて関係ないです。難しいに尽きますね。
1番人気や断然人気の馬でプレッシャーは感じますか。
そういう感じはないです。前の日に予想紙とかを見て、人気になっているときのほうがやっぱりやる気は出ます。印が付いてない馬よりは、印がついているほうがチャンスがあるってことですからね。
そういう意味では、わりといい馬に乗せてもらっていると。
「いい馬に乗りすぎてる」って加藤先生から言われます(笑)。
レースを見ていると、人気薄の馬に乗った時でも積極的に前に行こうとしているように見えます。
そうですね。やっぱりダート競馬ということと、減量のあるうちはそれを生かした騎乗もしないといけないんで。うしろのほうにいて、競馬を諦めてるんじゃないのかとか思われてマイナス評価になるんだったら、やっぱり前に行って負けたほうが悪い印象は与えないと思うので。とりあえず減量のあるうちは、減量を生かした積極的な騎乗を目指しています。
思い通りに乗れたレースはありますか。
10勝目のフレンドリーゼウスという馬で、それまで乗っていた藤田(弘治)さんから、「口が堅い」とか、「馬のうしろに入ったら掛かって乗り上げてしまうかもしれない」って言われていたので、内枠ということもあって、できれば前に行きたいと思って、いい感じに先行できたので、ペースを少し落として自分の有利なペースに持ち込んで。吉原(寛人)さんの馬がうしろから来てたんですけど、追い始めてムチを入れるとまた伸びてくれたので安心しました。
期待している馬はいますか。
3勝したグランラファルという馬と、4連勝したあと2着が続いてるんですけど、自分の厩舎で攻め馬からやらせていただいているトモヲエラババです。あと自分の初勝利で、2連勝したニシノオタフクですね。今ちょっと疲れてるんですけど、休んで調子を取り戻してくれたらまた勝ち負けになると思います。
デビュー前のインタビューでは、1年目の目標として減量がとれる30勝と言っていました。その目標はもうクリアできそうですね。
どうですかね、がんばりたいですけど。できれば(NARグランプリ)優秀新人騎手賞と、一番の目標は、プロスポーツ大賞の新人賞を狙いたいと思っています。(笹川)翼先輩(昨年のNARグランプリ優秀新人騎手賞)より上にいけばとれるのかなって。それを目指してやっています。
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※インタビュー・写真 / 斎藤修
金沢が熱い。昨秋のJBCの話ではない。今の話だ。金沢が誇る最強馬ナムラダイキチが11カ月の長い休養から復帰すると、6月15日には伝統の百万石賞を連覇し、秋の中央勢撃破へ名乗りをあげた。6月4日の東京ダービーではハッピースプリントで金沢のプリンス吉原寛人騎手が南関二冠目を制し、ジャパンダートダービーで三冠目を狙う。そして、忘れてはいけないのが、6月6日の東海ダービーで初めて金沢にタイトルを持ち帰った青柳正義騎手とケージーキンカメのコンビだ。地方では後続をすべて秒単位で突き放す"新怪物"の強さの理由や、ジャパンダートダービーへの意気込み、自身の今後の目標を青柳騎手に直撃した。
東海ダービー制覇おめでとうございます。レース前、自信はありましたか?
ありがとうございます。名古屋の強豪リーダーズボードが回避したので、一本被り(単勝1.4倍)で正直、緊張しました。輸送競馬は中央時代にも結果は出てませんし、金沢に来てからも初めてだったので、走ってみないと分からないと思ってました。
しかし、走ってみれば、金沢と同じような圧倒ぶりでした。
名古屋の馬はテンが速いと聞いていたので、位置取りが悪くなるかもと心配してました。でも、負けないくらいのダッシュができて、2番手につけられたので安心しました。道中も手応えがいいので、これなら大丈夫と思いました。3コーナー手前から先頭に立ちましたが、そこからも伸びましたし、輸送も関係なかったですね。
ケージーキンカメで東海ダービー制覇(写真:愛知県競馬組合)
リーダーズボードとの対戦が見たかったというファンの声が多く上がりました。
レース前は、不安もあって半信半疑でしたが、レースが終わった今なら、勝ち負けは分かりませんが、いい勝負にはなると思います。僕自身もすごく興味はありますし、あの馬と走ってみたいですね。
ケージーキンカメは中央では1秒1、3秒1、2秒5、4秒4、2秒3と5戦大差負けが続き金沢へ。でも金沢では1秒1、2秒4、1秒5、1秒0、2秒2、1秒3と6戦すべて圧勝と激変しました。
2月に金沢に来た時は先生(鈴木正也調教師)が攻め馬に乗ってましたが、テンションは高いし、乗り手の扶助には逆らうし、気性が難しかったです。3月から僕が乗り始めて、少しずつ走りに集中してきたのと、レースを覚えて素直になったのが大きいです。レースでも少々ハイペースで逃げてもバテないし、しまいもしっかり伸びる。とにかく心臓が強い。気性難が解消されて、強い心臓をフルに生かせるようになったのが、一変した理由です。乗り始めた頃は走らない馬とは思わなかったが、ここまで走るとは思わなかったので、びっくりです。本当に化けましたね。
普段はどんな馬ですか?
来た頃の気難しさがなくなって、今は基本的におとなしいですね。ただ、馬場に出るとテンションが高くなるところは今でもあります。
これまでの6戦の中で一番印象に残っているレースは?
やはり、東海ダービーです。会心のレースだったのもありますが、自分にとっては去年の北日本新聞杯に続く2度目の重賞制覇ですし、遠征での重賞制覇は初めてですから。
青柳騎手にとって遠征での初めての重賞制覇(写真:愛知県競馬組合)
次走はジャパンダートダービーと聞いてます。
前走後も何ともないし、輸送も大丈夫だったのは収穫。相手が強くなるので、胸を借りるつもりで挑戦しますが、僕の馬も、まだ底を見せていないので、どこまでやれるか、楽しみはあります。
金沢にはナムラダイキチという中央勢とも互角に戦える馬がいます。
いずれ対戦する日が来ると思いますが、名古屋での勝利でダイキチに挑戦する資格はできたと思ってます。ただ、時計だけを見たら差はないので、これからの成長も見込んで、いい勝負ができればいいですね(ケージーキンカメの5月13日の稍重1700mの勝ち時計が1分50秒0に対し、5日後18日の良馬場同距離でのナムラダイキチは1分50秒3。一杯に追われたキンカメと気合いをつけられた程度のダイキチとでは手応えが違い、単純比較はできないが、タイムはキンカメの方が速い)。
青柳騎手の勝負服はケージーキンカメの父キングカメハメハの金子オーナーと同じです。キングカメハメハ産駒にはよく似合う勝負服です。
ありがとうございます。教養センターにいる時、金子オーナーのクロフネが活躍していて印象的だったのと、僕の好きな青色が入っていたので、これを勝負服にしました。これからもキングカメハメハだけでなくクロフネやディープインパクト産駒の強い馬にも乗りたいですね(笑)。
今後の目標について教えて下さい。
昨年、ワイルドカード2位で出場したスーパージョッキーズトライアルに今年も出てみたいです。よその地区の上手な騎手と一緒に乗るのは、直線での追い方、コーナリング、仕掛けどころとか、勉強になったし、すごく刺激を受けました。今のところ、出場できるか微妙ですが(6月20日時点の金沢リーディングで2位とは4勝差の4位)まだ8月まで時間はあるので、2位までに入ってワイルドカードからでも出場したいです。あとは重賞の勝ち鞍を増やしたいです。今年はケージーキンカメがいるので、あと1つでも2つでも上乗せできればいいですね。
最後にファンの方へのメッセージを。
昨年には金沢ではJBCも行われましたし、ナムラダイキチも復活して、ケージーキンカメという未来のスター候補も出てきています。僕もケージーキンカメをもっと強くするように頑張りますし、馬も成長すると思いますので、これからも成長する姿を見に、競馬場に来てもらいたいですし、ネットでも見てもらいたいですね。
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※インタビュー / 松浦渉
大物新人を輩出し続けるホッカイドウ競馬で、今年デビューしたのが水野翔(かける)騎手(17)。中学時代にはレスリングで全国3位になった実力の持ち主です。5月5日にデビュー14戦目で初勝利を挙げました。
出身は神奈川県川崎市ですね。競馬の世界を志したきっかけは。
家は競馬場にも小向厩舎にも近いんですが、家族は競馬をやらないので行ったことがなかったんです。レスリングは5歳から中学3年までやっていました。インターハイで2位にもなった、5つ上の兄の影響です。でも、レスリングは、体重が足りなくて出られない試合もある。中学3年の時に、小さい体を生かせるのは騎手か競艇の選手だと思い、動物好きなので騎手になろうと思いました。
今思うと、動物を相手にするのは難しいですね。JRAと地方の違いもわからなかったし、インターネットで調べて地方競馬を受験しました。試験の前に初めて川崎競馬場に行き、レースを見て『かっこいいな』と思いました。結局(地方競馬教養)センターに入ってからも、身長は2センチしか伸びなかったんです(現在158センチ)。
レスリングをしていたことで、プラスになったことはありますか。
受け身は身についているかもしれません。落馬しても大きな怪我はないですね。
教養センターの思い出はありますか。
馬に触ったのも、この時が初めて。下手な方だったので、ぼろくそ言われていた。失敗ばかりしていました。同期は仲が良くて、今もよく連絡をとっています。高知の妹尾(浩一朗)とか、結構勝っている金沢の中島(龍也)とか。
なぜ北海道を希望したのでしょうか。川崎ではないのですね。
最初は川崎を希望したのですが、先生に厳しいと言われたことと、北海道は2歳の調教があってうまくなる、と言われたからです。その特徴にひかれました。決まったら、1つ上の井上(幹太)さん、石川(倭)さんに「早く来いよ」と言われました。優しくて、今でもよく話します。
所属の村上正和調教師はどのような先生ですか。勝負服は先生のものを受け継いでいますよね。
厳しくて怖いけど、技術を教えてもらえるのでためになります。活躍されていた人だから、言うことがすごいし、追い切りのフォームもきれい。尊敬しています。レースが終わったら、先生のところに行って感想を言い、指導してもらいます。
勝負服は、「もらえませんか」と言ったら最初は渋っていましたが、それから「自分の好きなの作れ」って。
実習で初めて競馬場に来て、いかがでしたか。
馬のパワーが違う。センターでは同じ馬ばかり乗っていましたが、癖もそれぞれ違うので苦戦しました。
能検で騎乗して1着入線でしたね。
(レースのような雰囲気は)新鮮でした。大きな競馬場なので楽しい! 能検なので受からせることが大事なのですが、引っかかってしまったので1着でした。
デビュー以降のことを教えて下さい。
デビュー戦(4月23日第2レース)は、ゲートに入るまで緊張しましたが、入ってからはそうでもなかった。それより初勝利(5月5日第2レース、スマートアゲイン)が、二重丸の印ばかりついていて緊張しました。出遅れてしまい、勝てないかもと思いましたが、馬の力のおかげで勝てました。五十嵐さんが初勝利のプラカードを持ってくれたのでびっくりしました。
2勝したマダムバタフライは顔がかわいいし、素直でおとなしいんです。頑張ってくれる。外厩の平岡牧場に連れていってもらったとき、ありがとう、って言ってきました。
5月22日は、マダムバタフライで3勝目を挙げましたが、騎乗停止になってしまいました。
直線で追うのに必死になってしまって、(内によれていたのに)自分が左鞭を入れたのが悪かった。みんなに怒られました。村上先生には、姿勢のことと、負けてもいいレースをしろ、勝つレースはかっこよく勝て、と言われています。なので、ものすごく怒られました。
まだまだ未熟です。乗せてもらっている感じ。そのほかでは、カゼヒカルが人気薄で3着にきたのが思い出です。
スマートアゲインもそうでしたし、自厩舎以外の馬にも乗っていますね。
いろんな厩舎に攻め馬乗りに行って手伝っています。自分から「空いてないですか」と声をかけています。
普段の生活を教えて下さい。音楽鑑賞が趣味だそうですね。
自由時間はランニングしています。屋内坂路を走るんです。それと、筋トレですね。レースで引っかかってしまうことがあって、先輩や厩務員さんに「筋力がない」と言われます。食が細いこともあって、筋肉がつかないんです。海鮮も苦手だし...。パワーつけないといけないから、レースの日だけ食べるんです。食べないとすぐ体重が減る。音楽は、ロックやメタルなど、激しいのを聴きます。マキシマムザホルモンさんが好きです。AKB48の島崎遥香さん、かわいいですね。推しメンです(笑)。
目標としている騎手はいますか。
五十嵐(冬樹)さんですね。中央でも活躍しているし、乗り方に迫力がある。それと、年が近くて活躍している阿部(龍)さんや石川さん、井上さんです。道営の先輩達は優しくて、いろいろと教えてくれます。JRAでは、田辺(裕信)さんの追い方が迫力あってきれい。あのように追いたい。人馬一体でありたい。藤田(伸二)さんや武豊さんはもちろん、いろんなフォームを勉強して、姿勢をきれいにしようと思っています。
村上先生のレースを見たいんですが、ビデオやインターネットの動画がないんですよ。千葉(津代士)さん、松本(隆宏)さん(現調教師)のレースも見たいです。
これからの目標を教えて下さい。
判断が遅れるレースが多いので、レースでの冷静な進路取りができるよう頑張りたいです。30勝が目標。将来的には、中央の芝で乗ってみたいですね。
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※インタビュー / 斎藤友香 (写真:斎藤友香、小久保巌義)
タガノジンガロで4月29日のかきつばた記念を制した木村健騎手。兵庫所属馬としては佐賀記念を制したチャンストウライ以来のダートグレード競走勝利を実現。自身としても初めてのダートグレード競走の優勝となりました。(5月17日にインタビュー)
かきつばた記念のゴール前は接戦でした。
最後は余裕がなかったですね。タガノジンガロは外に張るクセがあるんですが、3コーナーでそれが出て、修正するのに必死でした。道中はダノンカモンの後ろで『いい位置が取れたな』と思っていたら、勝負どころで外に張ってしまって。ノーザンリバーの邪魔をしたかと思ってヒヤッとしました。
それにしても最後はきわどいところでした。
いやあ、本当にギリギリ。それでも勝ちは勝ちやね(笑)。チューリップ賞(2010年3月6日JRA阪神競馬場、ショウリュウムーンに騎乗)を勝ったときもうれしかったですが、今回の勝利は格別です。
かきつばた記念(写真:愛知県競馬組合)
タガノジンガロの転入初戦のレース(3月27日)は圧勝でした。
あれ、楽勝という感じに見えたでしょう。でも馬に馬場の真ん中くらいまで持っていかれているんですよ。かきつばた記念のときはハミを替えてもらって、多少はマシになったので最後まで追うことができたんですが。あの外に張るクセさえ直れば、乗りやすい馬だと思いますよ。ただ、そのクセがなければ、兵庫には来ていないんでしょうけど......。
でも、だからこそ、かきつばた記念の結果につながったということも言えますよね。タガノジンガロは、JRAでは中距離で好成績を挙げていました。
でも、牧場からは「短い距離のほうが走る」と聞いていたんですよ。かきつばた記念のときも、成績的に一発があるかもとは思っていました。それにしても園田に戻ってきたら、たくさんのファンが単勝馬券を持っていてくれたのはうれしかったですね。それにサインさせてもらいましたが、ありがたいなと思いました。
そして地元では、今年も田中学騎手、川原正一騎手と、ハイレベルなリーディング争いをしています。
いい刺激になっていますね。順位がどうなるかは、最終日までのお楽しみってことで。でも自分としては、1頭1頭しっかり乗って、ファンの期待に応えるだけだと思っていますよ。腰がいつダメになるか、わからないですし。
それでも木村騎手といえば、全身で馬を追う姿が代名詞です。
あのアクションが僕なんで。あれができなくなったら僕じゃなくなりますからね。本当に1戦1戦、がんばっていくだけです。
タガノジンガロ、さきたま杯の1周目
タガノジンガロは、かきつばた記念のあと浦和のさきたま杯に出走しましたが、7着という結果。木村騎手はレース後、「内にササって追えなかった......」とコメントしていました。
インタビューのとき、さきたま杯については、「(新冠の)タガノさんの牧場は坂路が左回りなんですが、どうもそこでは内にササるらしいんですよ。そこが心配ですね。でも馬の力を信じて臨みたいです」と話していた、その不安が的中する形となってしまいました。とはいえ、実力があることは証明済み。今後は「少し早い夏休み」(新子雅司調教師)に入るそうです。
しかしさきたま杯の1週間後、木村騎手は兵庫ダービーを制して、改めてその存在感を示してくれました。タガノジンガロとのコンビもまた、引き続き期待できることでしょう。
6月5日、トーコーガイアで兵庫ダービーを制覇
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※インタビュー / 浅野靖典
南郷家全騎手というとデビュー20年目を迎える"ベテラン"なのだが、他地区で騎乗する姿を見ることはあまりなかった。それが今年1月、一念発起して高知競馬で期間限定騎乗し、約2カ月で7勝を挙げる活躍を見せた。今回はそのあたりのお話を聞いてみよう。
今回はどうして高知競馬で乗ってみようということになったんですか? そこから始めましょうか。
高知では打越(勇児)調教師が受け入れてくれたのですが、打越師と自分が所属している菅原勲調教師が親しいんですよね。それで菅原調教師が高知行きを勧めてくれたんです。
調教師になったのが"同期"なんだよね(共に2012年の調教師デビュー)。それで仲がいいと聞きました。
そう。それで、高知は昔は希望を出せばたいてい通ったんですが、最近は期間限定の行き先として人気があって簡単に入れてもらえない。今回行った時もすでに3人かな? 期間限定騎乗している騎手がいて、普通なら断られるのですが、菅原調教師と打越調教師がやりとりして話を付けてくれた。二人のおかげで実現した遠征でしたね。
全日本新人王争覇戦には出場してないから、高知は初めてでしたよね。乗ってみてどうでしたか?
レースの流れとかコースの傾向とかが全く違うから、月並みな言い方ですが凄く勉強になりました。
自分も現地で南郷騎手のレースぶりを見ていましたが、正直言って"苦心してるなあ"と感じました。
レースの流れが違うのは、それは競馬場によって全然違うのは分かっていたからある程度想像して行ったけれど、それでも厳しかった。コースの傾向も、高知競馬場は内の方が深くて重いからできる限り内に入らないよう、内に押し込められないように進まないといけない。その辺が分かるまではなかなか思うような戦いができませんでした。
高知では激しい競り合いの中で揉まれるシーンが多かった
南郷騎手は岩手ではスタートが結構早い方なんだけど、高知だと早くない......というか遅いくらいになる。それも実際に見てちょっと驚きました。
高知では「スタートでレースが決まる」ってみんな言っていましたね。全体的に勝負付けが早い展開になりがちだから、良いスタートを決めて良い位置を獲らないと勝てない。だからスタートダッシュと競り合いが激しい。
道中の流れとか勝負所の動きとかもずいぶん違っていましたよね。
岩手だと「ここではまだ......」という所で一気に動いてきますからね。それで被されたり捲られたりすると、直線で簡単に差せるような形にならないから、巻き返せなくなりますね。わりと内の方をあけて走ることが多いから馬群が詰まってごちゃごちゃになることが少ないのは乗りやすかったですけども。
遠征の前半はなかなか勝てなくて、後半になってポンポンと勝ったり上位に入ったりしたのは、やっぱりレースの流れに慣れたから?
そういう面はありますね。あと、高知は特に下の方のクラスは馬の力の差が大きい。クラスがひとつ違うんじゃないか?という馬が普通に混ざっているから、そういう馬を負かすのは簡単じゃなかったですね。
2月16日第10レース。トウカイルノンに騎乗して、高知での3勝目
そもそもナイター競馬も騎乗するのは初めてですよね。レースもそうだし、1日の仕事の流れとか、けっこう違ったんじゃないですか?
高知では朝の2時くらいから調教が始まって、それがだいたい9時半とか10時くらいまで。開催がある日はレースの時間まで待機して、レースが終わるのが夜の9時頃、ひととおり片付くのが10時とか。それですぐまた調教がある時もあったりするから1日中起きているような感じで。岩手とは生活リズムも全然違うから、身体が慣れるまではちょっとたいへんでした。
レース以外の部分はどうでしたか? なかなか楽しそうにしていたように見えましたが?
高知は騎手達の仲がいいし、土地柄もあるのか人が明るくて、楽しかったし過ごしやすかったですね。自分なんかもすぐ受け入れてくれて。赤岡騎手が率先して輪に入れてくれたんですけど、赤岡騎手は騎手としては先輩だけど年齢は一緒なんで自分も話しやすかったですしね。そういう雰囲気の良さが、高知が人気ある理由のひとつだと思いますよ。
さて、今回の高知遠征をまとめるとしたら?
レースは厳しかったし結果も決して満足できませんが、違う競馬場のレースを経験できたし、新しい人の繋がりもできた。いい経験ができたと思います。
これまではあまり他地区に行くことがなかったけど、また行ってみる?
そうですね。機会があればまた行ってみたいですね。行ってみて分かったことも色々ありましたしね。
それから、今年は盛岡で12年ぶりのJBCがあります。南郷騎手は前回のJBCの時は?
JBCのレースには乗ってないですね。その前にあった重賞(オパールカップ)にも乗ってない。平場にちょっと乗ったけど、その日は勝ち星はなかったですね。
12年経ってベテランになった南郷騎手は、今年のJBCをどう迎えますか?
自分もJBCに乗れたらいいですね。ファンの皆さんも、せっかくの"お祭り"ですから、ぜひたくさんの方に来ていただいて、盛岡のJBCを楽しんでいただけたらいいと思います。ぜひ来て下さい。
"南郷騎手、20年目の初遠征"はどうなる事か?とちょっと心配しないでもなかったのだが、実際に現地で見ていると、高知の騎手たちにもとけ込んで上手く乗りこなしていたようだった。それはもちろん、赤岡騎手をはじめ高知の騎手たちのフレンドリーさにも助けられた事だろう。そう思えば"初遠征"の場所が高知競馬だったのは南郷騎手にとって幸運だったし、だからこそ得るものもより多くなったのではないだろうか。
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※インタビュー・写真 / 横川典視