ウノピアットブリオとのコンビで中島記念を制した、佐賀の山口勲騎手。昨年の勝率は31.3%で、NARグランプリでは7年連続7回目の最優秀勝率騎手賞を受賞しました。
ウノピアットブリオでの中島記念制覇、おめでとうございます!8連勝で一気にグランプリ制覇とは、すごい勢いですね。
ありがとうございます。実は去年初めてB級を使った時(9月7日、仲秋特別)から「中島記念を目標に」という話をしていたんですが、まさか本当に勝ってしまうとは......。すごい馬ですね。
仲秋特別は5馬身差の圧勝でしたが、その時に相当な力を感じたということですか?
そうですね。佐賀に来た最初の頃は僕は乗っていないのでわからないんですけど、蹄が悪くて1年くらい休んでいたんです(2018年6月~2019年5月)。休養から帰って来てから乗せていただいたので以前とは比較はできないですけど、僕が乗せていただいた時点で相当な力はあると思いました。特に仲秋特別を圧勝した時には、「オープンでも勝ち負けできるな」と。
雲仙岳賞では、ハッピーハッピーとスーパージンガという佐賀が誇る牝馬二強と初対戦でしたが、ここもあっさり勝利しました。
あの時は3番人気でしたが自信がありましたね。格付けはB級だったのですが、中島記念を使う前にA級のペースを経験させておきたくて、格上挑戦になるけれどこのレースを使わせて欲しいと進言したんです。初めてのオープンのペースでも戸惑うところはなかったですし、改めて強い馬だなと感じました。
そして中島記念ではグレイトパールを破っての勝利。一気に佐賀を代表する馬になりましたね。
正直、普通に走ったらグレイトパールに勝てないのではないかと思いますが、向こうの動きがいまいちだったこともあったし、斤量も軽かったですし。それでもまさかあんなに楽に勝てるとは思わなかったですね。
中島記念を制したウノピアットブリオ(写真:佐賀県競馬組合)
どんな性格の馬なんですか?
ゲートが悪いので先に入れるのと、中では尾上げをしています。スタートがあまり上手じゃないんですけど、マイナス面はそこだけですね。どこからでも競馬ができるのは大きな強みです。
今後の予定は決まっていますか?
ウインターチャンピオンに行こうかという話もあったんですけど、さすがに中島記念の後に少し疲れが出て、今はゆっくりしています。佐賀記念を目標にするという話もあるので、どんな競馬をするか楽しみですね。
佐賀記念でもJRA勢と戦える手ごたえはありますか?
いきなりはペースも違うし荷が重いかなとは思いますけど、この馬は強い馬と戦ってもへこたれるタイプではなくて、根性があるのでもっともっと強くなるんじゃないかと。そういう意味でも先々楽しみにしています。
山口さんが今まで乗って来た中では、どのくらいの評価ですか?
けっこう強い馬に乗せてもらいましたから、まだこれからでしょう。ただ競馬に注文がつかないというのは大きいですし、距離も長いところもこなせそうですね。これからいろいろな選択肢があると思います。
蹄の状態は大丈夫なんでしょうか?
今は落ち着いています。裂蹄というのは乾燥する冬場の調整が難しいので、中島記念の時にどうかなと思いましたが、全然問題なかったです。普段は手島(勝利)調教師が攻め馬をしていて、「乗り切れなくなったら頼む」と言われていますが、今のところ順調にいっていると聞いています。
山口騎手は昨年も勝率31.3%と断トツの成績を残しました。普段から意識していることは何ですか?
一番は「邪魔をしない」ということです。去年は騎乗停止は一度もなくて、1日も休まず競馬に乗れました。とにかく1年休まず乗る、というのが目標です。勝率は普段の結果の積み重ねですから、そこはあまり意識はしていないですね。フェアプレイで勝ちたいというのが大きくて、その結果が勝率に繋がれば嬉しいです。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
いつも応援していただき、ありがとうございます。ウノピアットブリオという楽しみな馬が出て来たので、注目していただけると嬉しいです。皆さんの馬券に貢献できるよう、今年も頑張ります。
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※インタビュー / 赤見千尋
昨年はマカオに遠征し、初勝利初重賞制覇を果たした水野翔騎手。日本でも72勝を挙げ、デビュー6年目でキャリアハイの年になりました。
まずは地方競馬通算200勝達成、おめでとうございます!昨年は飛躍の年でしたね。
ありがとうございます。勝利数的にもこれまでのキャリアハイの年でしたし、マカオで重賞を勝たせていただいたり、とても充実した1年でした。でも自分の中では甘かったところもたくさんあったので、まだまだだなと思っています。
ホッカイドウ競馬から笠松に移籍して2年目でしたが、飛躍の要因を自己分析すると?
環境に慣れたというのもありますし、一番大きかったのは中野省吾さん(現在はマカオで騎乗中)ですね。もともと連絡は取っていたんですけど、親しくなったのが2018年頃に省吾さんが(船橋での)騎手を辞めた後です。「大丈夫ですか」って連絡したりして。ある時、「東京で飲んでるから来いよ」って言われて、笠松から新幹線ですぐに行きました。僕の中で騎乗的にも人間的にも惹かれる部分があったので、じっくりお話してみたいなと思って。
どんなお話をしたんですか?
いろいろですね。特に大きかったのは、当時の僕は騎乗面で迷いがある時で。他の先輩から、「○○した方がいい」って言われてやってみて、別の先輩からは「△△はやめた方がいい」と言われてやってみて、という感じでブレていたんです。騎手は人それぞれ体型も感覚も違いますし、アドバイス通りにすることが必ずしもいいとは限らない。どうしたらいいかわからない時で、「お前、今グチャグチャだな」って省吾さんに指摘されました。技術的なことだけじゃなくて、一般的な常識というか、土台となる考え方とかも教えてもらって。最初は上手くいかなかったんですけど、だんだんと省吾さんの言っていたことがわかるようになって、そこから自分の中ではガラッと変わりましたね。
マカオに約3カ月行っていたのに、日本で72勝挙げてキャリアハイを達成したのはすごいと思います。
マカオに何で行ったかというと、それも省吾さんのお陰なんです。笠松に移籍して2年目で、その時リーディング3位のところにいたので、正直、このタイミングじゃないだろって思った方はたくさんいると思いますし、実際周りの方からも言われました。でも省吾さんから、「お前は今マカオに来た方がいい」って言われて。(所属する)笹野(博司)先生に相談したら背中を押してもらえたので、思い切って行くことにしました。省吾さんに言われてから1カ月半で行きましたね(笑)。
行動早いですよね。新幹線ですぐに東京行ったり、マカオまで飛んで行ったり。
座右の銘は「疾風迅雷」なので!これからもそこは大事にしていきたいですね。ただ、やっぱり笹野先生が快く送り出してくれたことが大きいですし、帰って来てからも乗せていただけることに感謝しています。本当にいい環境でやらせていただいていて。だからこそもっと頑張って結果を出したいです。
ファスバに騎乗しマカオでの初勝利が重賞(サマートロフィー・G2)初勝利(2019年6月29日)
マカオでは初勝利が重賞制覇ということで、とてもびっくりしました!
僕もびっくりしました(笑)。でも自分ひとりで出来たことではなくて、頑張ってくれた馬と、乗せてくれた関係者の方々、そして省吾さんの存在が大きかったです。マカオで乗り出した時には、日本の馬とあまりにも違っていて、全然上手くいかなくて。日本の馬とは走りの重心が違うので、これまでの乗り方だとバランスが取れないくらいだったんです。そこから毎日のように省吾さんに木馬の練習に付き合ってもらって、それを録画して見比べて。言葉でもいろいろなことを教えていただきました。
最初は大変なご苦労をされたのですね。ただ、マカオでの初勝利初重賞制覇は7戦目、騎乗を初めてから1カ月経っていませんでした。努力を重ねて、短期間に適応したんですね。
そうですね。マカオではレースに乗る機会がものすごく少ないんです。なので、1レースに懸ける集中力が、これまで以上に研ぎ澄まされたというか。レースに向けていろいろシミュレーションをして、実際のレースでいかにすべて当てはめて成績を残すか、ということをこれまで以上に考えるようになりました。
では、今年の目標は?
去年マカオに行く前は3位だったので、今年は(笠松リーディング)1位を目指したいです!
水野騎手と言えば、髪の毛の色が特徴的、という印象が強いです。
以前はなかなか思うようにいかない反動でやってたのもあるんですけど、今はいい波に乗せてもらっていて、自分の気持ちというよりも、見た目で判断されるということを変えていきたいなと。騎手として黒髪で短髪で爽やかで、そういう人もすごくいいと思うけれど、僕みたいなのもいてもいいかなって思うんです。
周りからいろいろ言われませんか?
「見た目で損してる」とは言われますね。でも僕の人生なので、これからもいろんなカラーにして派手なピアスつけてって感じで行こうと思っています。地方競馬は中央競馬に比べて知名度が低いじゃないですか。特に若い人からももっと認知して欲しいですし、例えば僕の写真を見て、「こんな奇抜な人が騎手なの?」「地方?笠松ってなに?」っていう、そういうきっかけになったら嬉しいです。
正直、これまでの印象と、お話を伺ってみての印象が変わりました。
昔は頭が悪かったので(笑)。今も良くはないですけど、いろいろな経験を積ませてもらって、少しは変われたかなと。自分なりに勉強したり、言葉使いに気をつけたり、いろいろ考えるようになりました。日本人は周りに合わせる習性が強くて、ちょっと違うと浮くじゃないですか。でも僕みたいなのがいて、後輩とかにも、「こんな感じでいいのか」って思ってもらえたら。ただ、それには成績を挙げないと説得力がないので、もっと成績を挙げないといけないと思っています。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
マカオから帰って来てからも、どうしたら馬は動くのかということをいろいろ研究しています。今は、前までの僕には考えつかなかった引き出しが出来て、精神的にも技術的にも多少は成長出来たんじゃないかと。今年はさらなる技術向上を目指していますので、注目していただけると嬉しいです。宜しくお願いします。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:本人提供)
2020年、44歳のベテランジョッキーが新たな歴史を刻む。これまで地方通算1500勝以上を挙げ、韓国でも90勝の金沢が誇る名手、米倉知(さとし)騎手がトルコのイスタンブールで、日本人としては初めてとなる滞在での騎乗を開始する。前例のない挑戦ゆえの苦難も予想されるが、「不安もあるが、楽しみも大きい」と話す米倉騎手に渡航前の現在の心境を聞いた。(インタビューは2019年12月)
トルコの競馬はこれまで日本とはなじみは薄いですが、行こうと決めた経緯を。
去年(2018年)、釜山(韓国)から戻ってきた後も、どこか海外で乗れるチャンスがあればと思ってました。知り合いの記者に「どこか海外で乗れるところありませんか」と聞いたところ、日本人の女性と結婚しているトルコ競馬の調教師のハサン・バーダン先生を教えてもらいました。ハサン先生はすごく親日家で、トルコで乗りたいなら歓迎するし、サポートすると言ってもらいました。それから、トルコの競馬を調べると、賞金のレベルも悪くないので、行ってみようかなと思いました。
トルコでの拠点は?
イスタンブールのヴェリエフェンディ競馬場です。ハサン先生がここで厩舎を開業しています。競馬場は外が芝で内がオールウェザー。曜日によって昼間開催とナイター開催があるみたいです。他の競馬場に遠征することも聞いてますが、どんなふうに移動するのか、まだ想像できません。
トルコでは過去に岡部幸雄、武豊、福永祐一、川田将雅という日本人騎手が招待競走で乗ってますが、未勝利。勝ったのは北関東の伝説の騎手、福田三郎が90年に挙げた1勝のみです。
中央の有名な騎手でも勝っていないと聞くと、ぜひ勝ちたいですね(笑)。トルコで唯一勝っているのが地方の騎手なんですね。失礼ながら、福田三郎さんは存じ上げておりません。
2019年6月11日、徽軫(ことじ)賞をサノラブで勝利
トルコは米倉騎手が初めてとなる滞在での騎乗。全てが初ものづくしで不安はありませんか?
もちろん、不安はあります。過去に行ったオーストラリアや韓国では先に行った方から、色々アドバイスをもらえましたが、今回は全てが一からですから。でも、過去に誰もしたことがないことをしているやり甲斐は実感できますし、自分で道を切り開く楽しみも大きいです。
トルコでの騎乗はいつまで?
当面は、金沢の開催が始まるまでの3月中旬を予定していますが、トルコでの成績が軌道に乗れば、期間を延長したいと思っています。延長は、ビザの関係で最長1年ですが。4月以降は、トルコでも日本のようにGIレース(トルコのローカルグレード)が多く行われるので、そこで騎乗できるように、結果を残したいです。
トルコでは有力馬に騎乗するチャンスはありそうですか?
行ってみないと分からないところもありますが、ハサン先生の尽力で、所有馬が今年(2019年)のGI(トルコローカル)を4勝しているアリフ・クルテル・オーナーから「乗せてもいい」と言ってもらっていると聞いてます。最初から有力馬に乗せてもらえるほど甘くはないですが、そのオーナーの馬でいいところを見せられたら、有力馬の騎乗のチャンスも出てくるので、楽しみにしてます。
トルコのレース映像は、見ましたか?
はい、見ました。長い距離のレースでも、序盤から馬を出してるなって思いました。それから9月にヨーロッパの馬や騎手が来るボスポラスカップ(国際GII、芝2400メートル)という国際レースがありますが、その2年前(2017年)のレースも見ました。この時の2着馬に乗ってるのが、今年(2019年)のジャパンカップをスワーヴリチャードで勝ったマーフィー騎手だと教えてもらいました。ヨーロッパの一流騎手と一緒に乗ってみたいですし、楽しみです。
これまで米倉騎手は韓国の釜山で90勝、オーストラリアで1勝、今年5月にはシンガポールギニー(16頭立て10着)にも1日限定免許で騎乗しています。いつごろから海外で乗りたいと思い始めましたか?
93年にデビューした時から海外には行きたい気持ちはありました。芝のレースは魅力ですし、賞金の高いレースに乗ってみたいのは騎手はみんな一緒ですよね。金沢では、なかなか中央で頻繁に乗るのは大変だし、やはり海外に目が向きました。オーストラリアに行くきっかけは吉原(寛人)君が先に騎乗したので、その話を聞いて、中央の森(秀行)先生にお願いして乗せてもらいました。韓国には、すでに日本人騎手が活躍してたので、自分も行きたいと思い、韓国馬事会のホームページの申請書を書いて手続きしました。シンガポールは騎乗馬の馬主が日本人でしたので、依頼を受けました。
海外では言葉が通じないことで不便を感じることはよくありましたか?
韓国では調教とレースの時、通訳が付いてくれましたが、ソウルに遠征した時はひとりでした。片言の英語と少し覚えた韓国語で何とか対応しました。騎手仲間とご飯を食べたり、アルコールを飲む時も、片言の英語と韓国語でした。もちろん、不便に感じることはありますが、逆に、聞きたくない話は聞こえてこないので、レースや馬のことに集中できる。その点はむしろ、海外の方がいいかもしれないですね(笑)。
トルコでは通訳は付きますか?
最初は、ハサン先生の奥さん(日本人)にお世話になりますが、韓国の時のように、ずっとは無理と言われてます。ただ、韓国やオーストラリアで1人の時にも、調教やレースで片言の英語と身振り手振りでどうにかなりましたので、今回もそれで乗り切るつもりです。
2019年も、もう終わりですが、12年ぶりに年間100勝超えで、勝率も金沢限定では3割を超えそうです。今年を振り返ってどうですか?
久しぶりの年間100勝と言っても、去年(2018年)は5月から乗り始めて79勝でしたから、それと比べると、ペースは落ちてるので、まだまだです。勝率3割も冬に高知で騎乗した時のものを入れたら、数字は落ちますし、勝率全国1位の佐賀の山口(勲)さんと比べたら全然ダメです。満足してません。
2019年1~3月には高知で期間限定騎乗
2020年に向けての抱負とオッズパークのファンに向けてメッセージをお願いします。
トルコでは、どこまでやれるかですね。自分に合う合わないは行ってからでないと分からないところもありますし、特に数字の目標とかはなく、やれるところまでやってみようと思います。金沢は冬は休みに入りますし、僕も日本を離れますが、オッズパークで昼間もナイターも地方競馬を楽しんだ後は、時差の関係で、ネットでトルコの競馬も見ることができます。日本からも声援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 松浦渉