デビュー11年目の石川慎将騎手(佐賀)は、今年93勝(10月28日現在)を挙げ、キャリアハイだった昨年の95勝を上回る勢いです。佐賀リーディング第2位まで上がって来た心境を伺いました。
今年は初のリーディング2位に付けています。勝利数も93勝と、キャリアハイだった昨年を超えそうですね。
たくさん勝たせていただいていることはありがたいですし、周りの方々に感謝しています。ただリーディング順位に関しては、佐賀には絶対王者の(山口)勲さんがいますから、ぶっちぎって2位にいないとあんまり意味はないかなと。勲さんとの差が開き過ぎているので、自分の中では2位も3位も4位も変わらないです。
勝ち星に関しては意識されていますか?
目標は年間100勝と思ってやって来て、去年はあと少しのところで達成出来なかったので、今年こそはという想いはあります。その目標に順位がついてきたという感じですかね。
2010年のデビューから、今年11年目です。すっかり佐賀を代表するジョッキーの一人になりました。
いやいやいやいや、まだ全然ですよ。わからないことだらけですし、自分ではまだ新人だと思っています。これまで、「完璧に乗れた!」というレースがあんまりないんですよね。勝った時よりも、「よくこの馬を2着に持ってきたな」とか、負けたけど内容が良かったというレースはありますけど。でもその前には、必ず山口勲がいますから。
"ミスターほとんどパーフェクト"と呼ばれる山口勲騎手は、どんな存在ですか?
佐賀で乗っているジョッキーにとっては、みんな目標にする騎手ですし、あの人のようにならなければと思いながらレースをしていると思います。一緒に乗っていて、ペース配分、展開の読み方、位置取り、最初から最後まで上手いなと思うことが多いですね。なので、基本的には勲さんの近くにいれば、人気がない馬でも着に入ったり、勲さんの後ろにいれば道が開いていくので、そういうセコイ乗り方をする時もあります(笑)。
かなり大きな存在ですね。
勲さんと競って勝つ1勝は、自分の中では2勝の価値だと思っています。今僕は11年目になって、やっと勲さんを意識してレースが出来るようになったので、そこは成長したのかなと。もちろんまだまだ雲の上の存在ですけど、少しは近づいている感覚です。これを勲さんに聞かれたら「100年早い」と言われるかもしれませんけど(笑)。
昨年からはミスカゴシマとのコンビで重賞戦線を沸かせて来ました。この馬との出会いも大きかったんじゃないでしょうか?
大きかったですね。これが騎手としての分岐点になったなという馬で、本当にいろいろなことを教えてもらいました。
ミスカゴシマで佐賀皐月賞制覇(2020年5月3日)
デビュー2戦目からコンビを組んでいますが、どのあたりで走るなと感じましたか?
もともとはデビュー戦から乗る予定だったんですけど、自厩舎の馬がいたので2戦目からになりました。能力検査を受ける前、ゲート練習の段階でいいスピードがあったので、デビュー戦は勝てるだろうなと思っていましたが、正直最初はここまで走るとは思っていなかったです。
相当走ると確信したのはいつ頃ですか?
小倉に遠征に行った時(8月10日フェニックス賞)くらいには、同世代の佐賀では一番強いだろうなと思っていました。金沢シンデレラカップでもいいレースをしてくれて、自分の仕掛けがちょっと早かったので2着に負けてしまいましたが、佐賀からの遠征馬で舐められていたところもあったと思うので、いいところを見せられたのは良かったです。
常に人気を背負った中でのレースというのは、プレッシャーも大きかったですか?
プレッシャーはそんなになかったですね。ミスカゴシマが一番強いという意識で乗っていたので、あとは自分がしっかり乗りさえすれば勝てると思っていました。
以前は逃げ馬でしたから、佐賀3歳三冠に差し掛かった頃には、かなりマークがキツかったですよね。
相当キツかったですね。でも僕としては、それが嬉しくて。そういう風に重賞でマークされる馬になかなか巡り合えないですから。マークされる存在になったんだって、緊張よりも面白さの方が大きかったです。とてもいい経験をさせてもらいました。
九州ダービー栄城賞では1番人気3着でした。
2000メートルは少し長いという意識もあって、みんなが目標にして来るのなら、前に行きたい馬は行かせようと。自分の中で、相手は前に行く馬たちではなく、後ろだと思っていたので、腹を括って逃げない競馬を選択しました。逃げていたらどうだったかというのは見たかったお客さんもいたと思いますが、自分自身で考えてやったことなので、悔しいですけど仕方ないなと。ダービーが終わってからいろいろ考えて、ずっと前に行く競馬だけでは勝てないですから、控える競馬も試していこうと、初めての古馬オープンだった大分川特別で控える競馬をしました。今まで砂を被ったことがほとんどなかったので最初の1~2コーナーはけっこう嫌がっていたんですけど、その後はしっかりハミを取っていたので、慣れればオープンでも通用するなと思いました。まさか(古馬オープン)2戦目の吉野ヶ里記念で勝てるとは思ってなかったですけど、改めて強いなと感じましたね。
ミスカゴシマは古馬相手に吉野ヶ里記念も制覇(2020年7月19日)
西日本ダービーでは山口勲騎手が騎乗して8着でした。レースをご覧になっていかがでしたか?
勲さんが乗るミスカゴシマを見られたというのは、また一ついい経験になりました。勲さんはこういうレースをするんだとか、自分に戻って来たらこういう乗り方をしたいなとかいろいろ考えましたし、たとえ戻って来なくても、他の人がどう乗るかというのはすごく気になりますね。僕は基本的に緊張しないんですけど、自分が乗った時より見ている方が緊張しました。ミスカゴシマはいろいろなことを教えてくれて、いろいろな想いを感じさせてくれて、騎手として大きな財産だと思っています。
佐賀は10月3日からほとめきナイターが始まりました。ナイターでの騎乗はどうですか?
薄暮開催で暗くなってからのレースもやっていましたし、門別でもナイターに乗せてもらっていたので、特に違和感はないですね。お客さんも入り出して、競馬場が華やかになった気はしています。
今年の夏時期に3年ぶりに走路の砂を全面入れ替えしたそうですが、現在の馬場状態はいかがですか?
良馬場だと若干時計は掛かっているかなと思いますが、雨が降ると一瞬で速くなるので、本当に判断が難しいですね。これは今の佐賀の面白さの一つでもあると思うんですけど、ジョッキーでもその日の馬場傾向がわからないという。
我々馬券を買う側は、どう判断したらいいでしょうか?
僕らも乗ってみないとわからないので、最初の2レースか3レースくらいでみんな試行錯誤しています。基本的には先行有利、内を開ける、という2つのポイントは変わらないですけど、日によってどのくらい内を開るかというのは悩みどころですね。あと30センチ内に行ったら重いかなとか、もう少し外がいいかなとか、人によって全然違うので、乗っていても「この人ずいぶん内行くな」とか、「そんなに外行くの?」とか。前半の傾向を掴んで後半に活かすので、ファンの皆さんもぜひ前半の傾向を見ていただけたらと思います。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
佐賀もナイターが始まって、遅くまで楽しめるようになりました。最近は若手の騎手もすごく頑張っていて、みんな「打倒!山口勲」を目標に戦っています。レースでもそういう部分が見えると面白いですから、絶対的な存在の織田信長を倒しに行くような感じで頑張ります!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:佐賀県競馬組合)