2020年10月11日、高知7Rをマイネルトゥランで勝ち、永森大智騎手(高知)が地方通算2,000勝を達成しました。現在、高知リーディング2位の勝ち星を挙げる永森騎手ですが、メモリアルまであと10勝に迫ったのは7月19日。区切りの勝利を挙げるまでの約2カ月間、どんな気持ちで過ごしていたのでしょう。また、かつてコンビを組んだグランシュヴァリエの産駒リワードアヴァロンでの高知優駿制覇についてもうかがいました。
地方通算2,000勝、おめでとうございます。
ありがとうございます。残り10勝くらいになってから、調教中に足の親指を骨折して騎乗を1週間休んだりして達成まで長かったので、やっと出来たっていう安心感と、ホッとした気持ちがありました。達成した日はちょうど母の誕生日で、その日に決められて嬉しかったです。
2,000勝は意識していましたか?
周りの方が「もう少しだな」って言ってくれていて、気にしてもらえているのは嬉しかったんですけど、勝ち急ぎすぎる性格なので、自分ではあまり考えないようにはしていました。でも、どこかで意識していたのがあったんじゃないですかね。
10月11日高知7Rで地方通算2,000勝達成(写真:高知県競馬組合)
この夏から秋にかけては永森騎手自身も「あまり調子が良くない...」と話していました。
毎年そういう悪い波はくるんですけど、今年はちょっと長すぎました。乗せてくれた方には迷惑をかけてしまったので、少しずつでもまた信頼してもらえるようにしっかり乗りたいです。
足の親指のケガの影響もあったのでしょうか。
1週間だけレースを休んでまた乗り出したんですけど、多少かばって乗っている部分があったので、別の部分に違和感がありました。今は全然大丈夫ですけど、そういうことで余計にリズムが崩れたっていうのはありました。
今年はリワードアヴァロンで高知優駿を制覇。父は永森騎手とのコンビで高知県知事賞連覇など重賞3勝を挙げたグランシュヴァリエで、ゆかりのある馬ですね。
そういう巡り合わせも今年はあったので、悪いことばかりじゃなかったなと思います。グランシュヴァリエは気性の難しい馬で、馬とケンカすると走る気を損ねてしまいました。そういう操縦性の難しさや気性を産駒も受け継いでいて、気分良く行った時は強いんですけど、ちょっとでも機嫌を損ねると一切走らなくて、レース後に全然息が上がっていないこともあります。
リワードアヴァロンで高知優駿制覇
そうなると、高知優駿では戦前から逃げる形を考えていたのでしょうか。
枠順が出た時点で、ああいう展開がベストかなと思いました。対戦相手との枠の並びも良かったので、リワードアヴァロンに向いてくれると思い、レース前から全てがうまく噛み合っていた感じです。スタートしてリワードアヴァロンは仕掛ければ行ける手応えだったので、内の馬が無理にでも行くのならば僕も仕掛けるっていう感じで内を見ながら行きました。折り合いに若干難しいところがありますが、最初のコーナーで折り合いもついてペースも良かったので、あとはどれくらい頑張ってくれるかだと思いました。揉まれない位置がこの馬にとっては一番よくて、あの形になって負けたら仕方がないなっていう感じだったので勝ててよかったです。
話を永森騎手自身に戻しますが、これで"ゴールデンジョッキー"の仲間入りをしました。
毎年、園田で行われる『ゴールデンジョッキーカップ』の出場権を得ただけですが、2,000勝はみんながみんな達成できる数字じゃないので、デビューからずっとお世話になっている雑賀正光先生に感謝したいです。
高知優駿口取り。左が雑賀正光調教師
さっそく2,001勝目は遠征先の園田でのエキストラ騎乗で決めました。波が戻ってきた感じはありますか?
毎年、波がありますけど、徐々には戻ってくるんじゃないかなと思います。それは(雑賀)先生も分かっているので、園田に行く朝に「園田は内が軽いんやぞ!」ってアドバイスされました(笑)。「先生、僕初めて行くんじゃないんですけど」って。
このあとの目標を教えてください。
このあと3,000勝を目指していないわけではないですけど、今まで大きな怪我もなくこられたから2,000勝を達成できたと思っているので、第一に怪我をしないように乗りたいと思います。それを前提において、あとは少しずつでもまた技術を上げていければなと思います。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
今年、念願の兵庫ダービーを制覇した杉浦健太騎手(兵庫)。新型コロナウイルス感染拡大の影響により無観客開催中で、「ウイニングランをしたかった」と残念そうでしたが、それでもダービージョッキーになった実感は得られたといいます。園田競馬場では9月30日からファンの入場が再開。兵庫ダービー初制覇と、「力になる」というファンの存在についてうかがいました。
兵庫ダービーをディアタイザンで制覇、おめでとうございます!西日本ダービーは2016年にマイタイザンで制しましたが、地元のダービー制覇はこれが初めてでした。
ダービーはその競馬場の中でも特別で、園田の一番を決めるレースということで、勝ちたいと思っていました。みんなから「あれ、初めてやったっけ?マイタイザンで勝ってなかった?」って言われたのがグサグサ刺さっていました(苦笑)。マイタイザンの時は周りからも「勝てる」って言われていましたけど、全然ダメで(7着)、勝ちたい気持ちが強くなりました。ディアタイザンは、ずっとお世話になっている平野ご夫妻の所有馬で、デビューの時からずっと乗せてもらっている碇清次郎先生の管理馬だったのでダブルで嬉しかったです。ほんのちょっとですけど、恩返しはできたかなと。
ディアタイザンで兵庫ダービー制覇(写真:兵庫県競馬組合)
兵庫ダービーからチークピーシズを着用したんですよね?
何走か前から4コーナーでふわっとする面があって、前走後から調教でいろんな馬具を試しました。その中で一番雰囲気が良くなったのがチークピーシズだったんです。ステラモナークや他の逃げ・先行馬よりも絶対に内枠がほしくて、綺麗にその枠順になって「これなら!」っていう感覚はありました。スタートが決まって逃げられて、一番力を発揮できる形になりましたし、チークピーシズの効果も出て、集中力も切らさずに運べて、何もかもが上手くいっての勝利でした。
無観客開催で、ウイニングランをできなかったのが残念ですね。
無観客が一番寂しかったですね。お客さんがいたら、僕、絶対にウイニングランをしていたと思います。あの雰囲気を味わいたかったです。
兵庫ダービーを勝った実感はいつ湧きましたか?
勝って1週間くらいが一番周りから「おめでとう」とか「よかったね」って言われて実感しました。いまはそんなに「ダービージョッキー」って感覚はないですけど、1カ月くらい前にディアタイザンが休養から帰ってきて、調教でダービーのことを思い出しながら乗っていました。「あ、ダービー馬に乗っている!」って。
10月7日のB1戦は休養明けながらきっちり勝ちました。
休養明け初戦からドーンと走るというより、使いつつ良くなっていく気性なんです。レース前の能検の動きがもう一つで、上がりもバタバタだったので、そこから追い切りを2本ほどいって、だいぶガラッと変わりました。それでも状態としては7分くらいじゃないですかね。勝てたのはポテンシャルだと思います。本番は楠賞なので、いい状態にもってこられると思います。逃げられたらいいですけど、遠征馬もいてメンバーも強くなるんで、逃げにこだわらず、どんな競馬ができるか楽しみな面もあります。あ、ちなみに楠賞が行われる11月4日は僕の誕生日なんです。がんばります!
休養明け復帰戦を制したディアタイザン
園田競馬場では3月3日から始まった無観客開催ですが、ついに9月30日からはファンの入場が再開されました。初日のメインレースをユウキラフェールで勝ちましたね。
無観客開催が始まった頃は違和感というか、なんだか寂しかったですし、活気がなくなった感じがしました。それが、ユウキラフェールで勝った時は歓声も聞こえましたし、入場再開の初日だったので嬉しかったですし、乗っていても楽しかったです。あとは表彰式があればもっと良かったですね。今はお客さんに見られて競馬ができることが楽しいです。ジョッキーって、基本的に目立ちたがり屋が多いんで、見られている方がやる気も出るし、「よっしゃ!」と気合も入ると思います。
ユウキラフェールは園田オータムトロフィーでは2着でしたけど、今後の活躍が楽しみです。
素直で、レースの操縦性もすごく高くて、反応もいいし、本当にいい馬になりました。入厩当初は細くて非力な馬やなって印象やったんですけど、どんどん体重が増えてガシッとしたいい体になって、成長を感じます。「あー、この馬成長していっているな」っていう感覚度合いではベスト5に入ります。
ディアタイザンと同じ碇厩舎の馬ですね。
担当しているのも同じ大山文吉厩務員なんです。崇拝していて、ディアタイザンが兵庫ダービーを制覇した記念に制作したキャップのツバの裏側には「文」って刺繍を入れたんです。遊び心で、文吉さんの「文」って。
10月15日には兵庫若駒賞をツムタイザンで勝って、ウイニングランもできましたね。
レースに乗っていても声援があると力になりますね。ツムタイザンは折り合いも問題ないので、距離が伸びてもしっかり走ってくれると思います。まだまだ奥がありそうで、来年の兵庫ダービーを目標に頑張っていきたいです。
兵庫若駒賞を制したツムタイザンでウイニングラン
杉浦騎手ご自身は昨年85勝を挙げてキャリアハイを更新しました。
一応、クリアはしましたけど、目標は100勝なので、満足はできていません。もう4~5年、ずっと「100勝したい」と言っているのでね。いま68勝(10月7日時点)なので、頑張ってゾーンに入れて100勝目指したいですね。
プライベートでは外出できない時期も長かったと思いますが、どんな風に過ごしていましたか?
子供と公園で遊ぶくらいでした。いま2歳で、足で蹴って漕ぐ自転車に乗る練習をずっと公園でしていました。あとは最近、園田のジョッキーはゴルフにハマっていて、僕も始めました。練習が嫌いなんで、コース一本でがんばってます。そんな奴は上手くならないですけど(笑)。スコアは100ちょっとなので、レースは100勝以上を目指して、ゴルフは100切りを目指します。
最後に、オッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
いつもありがとうございます。無観客開催の間でも売り上げが良かったのはみなさんのおかげで、本当に感謝しかないです。途切れさせることなく、ずっとレースをすることもできました。競馬場にも入れるようになったので、ネット観戦もいいですけど、ぜひ現地でも楽しんでください。これからも園田競馬をお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
今年も断トツの兵庫リーディングを快走中の吉村智洋騎手。8月12日には園田競馬で、3度目の1日6勝(兵庫競馬1日最多勝タイ記録)を達成しました。
3度目の1日6勝、おめでとうございます。この記録は意識していますか?
騎乗するからには全部勝つつもりでいますが、なかなかそうもいかないので、6勝という数字は意識はしていますね。
兵庫競馬のルールでは、1日の騎乗制限は何鞍ですか?
基本的には8鞍まで、連続騎乗も8鞍までになっています。あと当日の急な乗り替わりはプラス1まで認められています。なので、全部勝つとなると基本的には8勝までいけるなと。これまで園田で1日6勝を挙げた先輩方はすごい方ばかりですし、その記録に並べたことは嬉しいですが、6まで来たら7までいきたいし、そこまで行ったら8までいきたいです。
今回は3R、4Rと勝って、8Rから4連勝で6勝を挙げました。どのあたりでいけると思いましたか?
すごくいい馬たちに乗せていただいていたので、上手いこと行けば何個かは勝てるかなと思っていましたが、気づいたらこれも勝っていたという感じで。馬も頑張ってくれましたし、展開も上手いこと向いたのが大きいです。
もともといつも勝っていますが、6勝する日は何か違うんですか?
多分ですけど、人間が勢いづいていると思いますね。勢いづいて、気持ちが上がる。他の騎手の方もそうだと思いますが、馬に乗っていて「あれ?今日は鞍はまりが良くないな」という日もあったりするんですよ。乗った感じが何かフワフワしちゃっているなという時もあって。体調とかそういうことだけではなくて、メンタルの部分もあると思うんです。それが、「今日はバチっとハマるな」という時に勢いづくと、ポンポンといける感じですね。
その勢いづいた時を見極めたいのですが、前2回がナイター、今回は薄暮での達成ということで、そこは関係ありますか?
いや、多分関係ないかな(笑)。たまたまその日にチャンスある馬ばっかりが集まって、自分のリズムも良かったんだと思います。一つ言えるとしたら、その日自分が騎乗する最初のレースで勝つと、リズムが良くなりますね。最初のレースを勝つのと負けるのとでは、気持ち的にも違うと思います。初めに勢いづいちゃうと余裕が生まれて、展開も見えるようになるというか。
確かに振り返ってみると、1日6勝を挙げた3回とも、一番最初に騎乗したレースで勝っています。
そうでしょ。おそらく僕だけじゃなくて、たくさん勝っている騎手も人間なんでね、メンタルは大きいと思いますよ。
今回は11Rで6勝目を挙げて、最終の12Rでは初の7勝目が懸かっていました。かなり意識されましたか?
意識しないといったらウソになりますね。周りからも「7勝目だな」とすごく言われましたから(苦笑)。ただ、僕がバタバタしたところでいい結果には繋がらないですから、いつも通りの平常心で挑んだつもりです。負けて悔しいですけど、7勝目を意識してのレースを経験出来たことも大きいと思っています。なかなか6勝までもいかないですから。
今後、7勝達成を期待しております!馬の話題も伺いますが、園田チャレンジカップをナリタミニスターで勝利、吉村騎手と組んで5連勝ですね。
強いですよね。大人しくておっとりした性格で、体も440~450キロくらいとそれほど大きな馬じゃないんですけど、4コーナーで間を抜けて来ましたから、根性ありますね。以前は砂を被ってしまうと進まないと聞いていて、僕が乗ったそれまでの4連勝は砂を被っていないんです。でも園田チャレンジカップの時は行く馬が揃っていたので砂を被るのを覚悟していたんですけど、思っていたよりも砂を被っても進んでくれました。
園田チャレンジカップを制したナリタミニスター(写真:兵庫県競馬組合)
この馬の武器は何でしょうか?
一番は根性があることだと思います。金沢スプリントカップの時でも、ずっと3番手外で、自分から前を追いかけて行くというタフな競馬だったんです。直線を向いて2着の馬が追い込んで来て、交わされるかなと思ったところから粘ってくれる。今までたくさんいい馬に乗せていただきましたが、その中で短距離馬で3本の指に入るくらい、高い能力を感じています。
今後の距離の可能性はいかがですか?
僕はまだ1,400mしか乗ったことないんですよ。園田は1,230mがあるけど、ちょっと忙しいかなという印象です。僕は1,400m以上、1,700mや1,800mも行けるんじゃないかと思っていますが、今は1,400mで連勝しているので、しばらくこの距離に専念していくと思います。
もう1頭、イチライジンについても伺いたいのですが、西日本ダービーはアタマ差2着と惜しいレースでしたね。
あと1完歩で変わっていましたから、あそこまで行ったらなんとか出来たじゃないかって、反省の方が大きいです。外枠はちょっと痛かったかなと思いますし、あの位置からよく2着に来てくれたなと。この馬はけっこう粗削りなところがあって、新馬の頃は内側に馬がいると外に外に逃げたりしていました。最近はだいぶ成長しましたけど、出来れば内枠の方がレースしやすいんです。でも重賞になると必ず外枠ばっかりで......。こればっかりは与えられた枠なので仕方ないですけど。
2歳時には園田ジュニアカップを制したイチライジン(写真:兵庫県競馬組合)
内枠を引いた時はチャンスが大きいですね!
乗っている方としては、競馬がしやすいですね。力のある馬なので、また重賞を獲らせてあげたいです。
では、オッズパーク会員の皆さまにメッセージをお願いします。
いつもオッズパークで馬券を買っていただき、ありがとうございます。今コロナで日本中が大変な中、僕らいつもと変わらず競馬をさせていただいていること、とても感謝しています。無観客開催が続いて、声援もヤジもないので淋しいです。また状況が許せば現地に来ていただいて、オッズパークで馬券を買って応援していただけたら嬉しいです。
(※園田競馬場では9月30日からお客様の入場を再開しました)
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※インタビュー / 赤見千尋
8月10日の佐賀第7レースで、地方競馬通算1,000勝を達成した佐賀の手島勝利調教師。1996年の初出走から25年目。これまでを振り返っていただきました。
1,000勝達成おめでとうございます!
ありがとうございます。まずはホッとしましたね。直前にちょっと足踏みしてしまって、もう少し簡単にトントンと行けるかと思ったんですけど。
この数字は意識していましたか?
専門紙にあと何勝と書かれていたので、早く達成したいなとは思っていました。
1996年4月の初出走から25年、ここまで長かったですか? それともあっという間でしたか?
長いといえば長かったなとも思いますが、最初の頃からいい馬に巡り合えたので、ずっといい流れで来られたと思います。頑張ってくれた馬たち、預けてくれたオーナーや、厩務員、ジョッキーのお陰です。
思い出の馬はたくさんいると思いますが、その中で1頭あげるとしたらどの馬ですか?
自分にとっては全馬大事な馬たちですけど、1頭あげるとしたら、グレードレースを勝たせてくれたエスワンスペクターですね。乗り心地も良かったですし、レースに行ってのスピードが全然違いました。ちょっとガンコなところもありましたけど、扱いやすい馬でしたね。
デビュー2連勝から、門別のエーデルワイス賞(2003年)を勝った馬ですね。
今考えると、よく2戦2勝の馬を北海道まで連れて行ったなと。今なら行かないですよね。あの時はJRAの馬たちもいましたし、2戦2勝とはいえ佐賀からの遠征でしたから、まったく人気もなかったんです。でもスタートして2番手につけると、いい手ごたえで進んでいましたから、4コーナーから直線にかけてずっと叫んでいました。勝った時は本当に嬉しかったです。引退後には繁殖になれましたし、子供のエスワンプリンスでも夢を見させてもらって。今でも北海道に行った時には毎回顔を見に行っています。
先生のことを覚えていますか?
最初の頃はイヤがっていました(苦笑)。競馬場にいた時は、お世話をしてくれる厩務員さんにはなついていましたけど、自分は攻め馬をしていましたから、威嚇してきたりして。でもお母さんになって何年かしてからは、じっとして顔を撫でさせてくれるようになりましたね。今はもうすっかりお母さんの顔になりました。
子供のエスワンプリンスは、九州ダービー栄城賞(2012年)を勝ち、佐賀で数々の重賞を勝ちましたし、笠松グランプリ(2013年)や園田FCスプリント(2014年)を制すなど、全国的に活躍しましたね。
スペクターの子供をやらせてもらえるということがありがたかったですし、その上すごく走ってくれて。この親子には本当に感謝しています。僕にとって特別な存在ですね。それに、佐賀デビューで最後まで佐賀で走らせてくれたオーナーにもとても感謝しています。こういうクラスの馬は南関東やJRAに行ってもおかしくないですし、当時はあまり賞金がいい時代じゃなかったですから。
2015年吉野ヶ里記念を制したエスワンプリンス
エスワンプリンスといえば、馬体重が計れないという印象が強かったのですが、気性的に難しかったですか?
ちょっと難しい面もありましたが、ファンの方が思われているほど悪くはないんですよ。ただ佐賀の体重計には絶対に乗らなくて。初戦は乗ったんですけど、2戦目からはものすごく嫌がるようになりました。あまり興奮させてもレースに影響がありますから、計らないで済ませたら、それを覚えてしまって。でも遠征に行くと見慣れない場所で、他の遠征馬と一緒に装鞍所に行くでしょう? それで前の馬にくっついて歩いていると、いつの間にか体重計に乗っているという感じで、遠征の時だけは計れたんです。ファンの方からは「なんで佐賀の時だけ計れないんだ」という声もいただき、大変申し訳ないと思っていましたが、「佐賀では体重計に乗らなくていい」と覚えてしまったもので......本当に頭のいい馬でしたね。
現在の活躍馬といえば、昨年の中島記念を勝ったウノピアットブリオの印象が強いです。
一気に化けたというか、とんとん拍子に出世して、まさかグレイトパールを負かして中島記念を勝ってしまうとは......。もちろんレース前から勝ちたい気持ちは強かったですけど、さすがにグレイトパールは強いよなと思っていましたから、正直びっくりしました。
2019年の中島記念を制したウノピアットブリオ
ウノピアットブリオは2018年の春に転厩して来ましたが、当時は裂蹄に悩まされたそうですね。
そうなんです。4肢あるうちの3肢が裂蹄でしたから、思い切って長期休養しました。それが功を奏して、復帰してからは蹄に問題はありません。
今年の春には山口勲騎手が怪我をした時期があり、その時2戦は岩永千明騎手がコンビを組みました。2戦ともに重賞ではありませんでしたが、大きな注目を集めましたね。
オーナーとは以前から、(山口)勲が乗れない時には千明ちゃんに乗ってもらおうという話をしていました。というのも、千明ちゃんが大怪我をしたのはうちの厩舎の馬で、ウノピアットブリオと同じオーナーの馬だったんです。あれだけの怪我をして休んでいましたから、僕としてもとても責任を感じていました。だから千明ちゃんが復帰してくれて、本当に嬉しかったです。
コンビ初戦となった高千穂峰特別では、かなりの後方から一気に差し切りました。これまでとはまた違ったレースぶりでしたね。
「気楽に乗って来て」と言いましたが、メンバー的には絶対に負けないだろうと思っていました。でも勝負所でも相当後ろだったので、これはさすがに負けたな......と思ったんですが、そこからの脚がすごかったですよね。勲が乗る時には前々から抜け出すという競馬でしたが、後ろから差すという新しい面を引き出してくれました。
岩永千明騎手で高千穂峰特別(2020年5月10日)を制したウノピアットブリオ
ウノピアットブリオは7月5日の佐賀王冠賞以来休養していますが、今後の予定は決まっていますか?
去年の夏から連戦連勝で来て、中島記念で強い競馬をしてくれて、その後体調が下降線だったので、今は牧場で休んでいます。もう少し涼しくなったら帰ってくる予定でいます。中島記念を目指しますが、馬の状態が第一なので年明けになるかもしれません。
10月3日から、いよいよ『ほとめきナイター』が始まります!オッズパーク会員の皆さまにメッセージをお願いします。
いつも応援していただき、ありがとうございます。今も薄暮で後半の1、2レースは暗い時間にやっていますが、いよいよナイターが始まるということで、もっとファンの方が楽しみやすい時間になればと思います。一日の締め括りの楽しみとして、佐賀競馬も楽しんでいただければ嬉しいです。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:佐賀県競馬組合)
デビュー10年目を迎えた島津新騎手が、今年大ブレイク。ミノルシャープで重賞3連勝(北斗賞、旭川記念、ばんえいグランプリ)、3歳馬のコマサンダイヤとゴールドハンターで1つずつと今シーズン9レース行われた重賞ですでに5勝しています。
すばらしい活躍ぶりですね。周りの反応はいかがですか。
周りに冷やかされています。「おかしいな」って(笑)。いい馬に乗せてもらっていますから。
7月から観客が入場できるようになり、「おめでとう」の声はうれしかったです。
有観客になってからのインタビューも島津騎手ばかりですね。それぞれの馬について振り返ります。まずはミノルシャープ。昨年秋の北見記念の前から乗り替わり、騎乗してほぼ1年です。
馬の良さは降りてからのふんばりと、伸び。馬も強くなっているが、重賞を何回か使って古馬のゆったりしたペースに慣れたのはある。若い時は2障害まで着くのも速いですからね。経験とペースです。性格はやる気満々。負けん気が強いんです。
特にばんえいグランプリは、自信が表れたレースでしたね。障害手前で横を向いていたのが気になりましたが。
思った通りのレース運びができました。これまでは「勝てるかな」と思っていたのが「勝つんだ」という気持ちで乗りました。コウシュハウンカイと並んでも、切れで勝負できると思いました。障害手前で、左向いて休む癖があるんです。前向くと行くサイン。
ばんえいグランプリを制したミノルシャープ
3歳路線一冠目のばんえい大賞典を勝ったコマサンダイヤは。藤野俊一騎手が騎乗停止で乗り変わりの勝利となりました。
イレネー記念を藤野さんが勝った時、インタビューで「(今後は)島津君に返します」と言っていたが返してくれなかった(笑)。やっと返してくれました。
レースは「この馬が一番強い」と思って騎乗しました。天板で苦労した分、馬に負担をかけて申し訳なかったが、頑張ってくれた。最近は、前に行きたい気持ちが出てきている。障害が上手ですね。
ばんえい大賞典を制したコマサンダイヤ
コマサンダイヤが回避し、騎乗した3・4歳重賞はまなす賞のゴールドハンターは、末を生かすこの馬の勝ちパターンに持ち込んだように思います。若いころは逸走もして、騎手にとって大変なイメージがありますが...。
積極的に勝ちに行ったレースでした。ご存知の通り若い時はやんちゃでしたが、厩舎が仕上げてくれて以前よりは落ち着きが出てきた。いつも120%の力で走ってくれるのがいいところです。まだやんちゃな部分はあるので、1障害まではそりに座っています。
はまなす賞を制したゴールドハンター
若い馬など、たまに騎手がそりに座ることがありますよね。なぜでしょうか。
横に逃げる馬は、手綱でお尻から挟むようにして制御します。力も入りやすい。
4歳馬は、銀河賞でコマサンブラックに騎乗しますね。
3歳になって力をつけてきた。あと重賞でどれだけ頑張れるか。
期待の2歳馬は。
アバシリサクラはまだ障害に課題があるかな。これからですね。
ミススマイルはまだ850キロくらいしかないが、切れ味があるから面白いよ。
ここ最近は、思い切りのいいレースが多いですね。
一瞬の判断ですね。インビクタ(牡4)に乗ってから思い切ったレースができるようになったのかも。道をひらいてくれた馬です。
10年経ち、自分自身の変化は感じますか。2011年度は日本プロスポーツ大賞新人賞、NARグランプリ優秀新人騎手賞受賞を受賞し、その後も70勝前後の勝利数は挙げていますが、昨年度まで重賞勝ちは2勝のみ(2011年クインカップ・キタノサクラヒメ、2014年帯広記念・ホリセンショウ)で、ちょっとさみしいように感じていました。
最近は勝ちに焦らなくなったかな。確かに、以前はもう少し勝ちたいなと思っていたが、我慢していればそのうち、と。この時代があるからの今だと思う。
藤野騎手からの乗り変わりも多いですが、同じ道南の出身でデビュー当時から憧れの騎手でしたね。勝負服も似ています。
はい、藤野さんと鈴木恵介さんのレースはいつも見ています。ゴール前や障害を見て、何か盗もうとしています。よく調整ルームでビデオを見ています。
ではオッズパークのファンに向けて一言お願いします。
長澤幸太騎手の舞(そりの上で舞うように馬を追う)を見てください(笑)。というのは冗談として、今はコロナ禍ですから、競馬場に来て迫力を見てとも言いにくいし、難しいですね。中継映像やインターネットで熱いレースを感じてほしいです。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香