石川慎将騎手は、2010年4月に初騎乗初勝利でデビュー。それから12年10カ月となる2月4日に地方競馬通算1000勝を達成しました(8414戦目)。 その直前の2月2日には白鷺賞(姫路)で他場重賞初勝利。1000勝達成や白鷺賞の勝利、今後の目標について話をうかがいました。(インタビューは2月11日)。
2月4日に1000勝達成されましたが、その時のお気持ちというのは。
1000勝、1000勝と言われながらリズムが壊れたのですが、いずれは勝つんで、1000勝を意識したこともなかったし、リーチ(999勝)も重賞でかけらました。(1000勝達成は)たまたま乗り替りだったのですが、いつも世話になっているオーナーの馬で達成できてよかったです。
以前(15年2月)のインタビューでは100勝・200勝の時は意識してなかったと言われましたが、1000勝はどうですか。
やっぱり特別なものは多分あったと思います。その日のうちに1001勝もいっちゃったんで、「あ、やっぱりそういうときってパパッと勝つな」というのがあったし。その時は「1000勝したんだ」という日だったんですけど、あとは徐々にまた勝てることを意識しつつ、すぐ切り替えられました。
999勝は遠征(姫路・白鷺賞、ヒストリーメイカー)でのものでした。
あのレースは自分が何勝目とかは関係なしに、自分の中で力が入っていたし、何日も前からジンギのレースを見て、どうやって行くかなというのを考えていました。ただ、ゲートに入ってから、考えていたのはもう一旦全部捨ててレースに行ったので。まぁあんまり考えすぎないで感覚で乗った方が、自分にはあってるのかな?とは思います。
ジンギとの接戦を制したヒストリーメイカー(5番、黄色帽)<写真:兵庫県競馬組合>
ジンギをマークして早めに行って、というのはレースの流れの中でしょうか?
そうですね。考えていたプランは消し去ったので、もう全部何のプランもなく、なるようになれと。ただジンギを見ながらレースをしたいな、というだけを考えていたので。(田中)学さんも僕がずっと後ろにいて意識はあったと思うので、どこかで1回前に出る形の方がいいかな、と。
最後は迫られてきましたが、手応えはどうだったですか?
もうあそこまで馬が抜け出しちゃって、ちょっと遊ぶ感じもあって、どれか1頭馬の視界に入ってくれた方がまだ行ってくれるなというのはあって、ジンギが見えてからはグッとまたもう一段階ハミ取ってくれたんで、直線はもう自信もって、交わされないだろうなと思ってました。
18年以降は佐賀リーディング5位以内で安定していますが、そこはどう思われますか?
やっぱり1番になりたいですよね。競馬は2位もドベも一緒なんで、1位しかないですよね。2位だった3位だったとか、もう関係ないですよね。
昨年はリーディング2位で、1位の山口勲騎手とは17勝差でした。
まだやっぱり手は全然届かないし、背中がやっと見えたぐらいなので。また今年、全然背中も見えないくらい突き放されるかもしれないし。ただただ、自分はもうずっと何年間もあの人の背中ばっかり追いかけて。ただそれだけです。
初の年間100勝を達成した20年はミスカゴシマが3歳の年で多数の重賞を勝たれました。
それは多分かなり大きいと思いますし、やっぱりそういう強い馬に乗ってタイトルを獲るというのは自信にもなるし。乗り方も変わってくるし。ああいう馬がいてくれることでモチベーションもまた違いますし。
吉野ヶ里記念連覇のミスカゴシマ(2021.7.25)<写真:佐賀県競馬組合>
石川騎手が重賞を勝った時にウイニングランをされていました。
やっぱりその馬を応援してくれているお客さんもいるし、ミスカゴシマはここの生え抜きで好きなお客さんも一杯いますし、他の馬を応援しに来てくれるお客さんもいるし、当然他の重賞でもそういうのはあると思うし。やっぱり声援というのは、僕らお客さんがいると「あぁ今日(お客さんが)多いな」という感覚で乗れるんで、その人たちのためにもそういうファンサービスというか、自分たちもめちゃめちゃ気持ちいいんで、あれは。みんなにもやってもらいたいなとは思いますけど。
では次に重賞を勝たれたときには。
そういうチャンスがあるときには、はい。
イチノコマチについてですが、九州ジュニアチャンピオン(飛田愛斗騎手が騎乗)以降は勝ち星がありません。この馬のいいところや、ここが改善されればというところがあれば教えてください。
いつもいいレースしてくれて、自分の中では申し分のない競馬ではあるんですけど、やっぱり(近走は)1着獲れてないので、どうにかして1着獲りたいなという中で乗って、前走(花吹雪賞2着)も強かったし、いい形でレースを運べてたと思ったんですけど。絶対、能力の無い馬じゃないし、勝てる力はあるので、このままシルバーコレクターで終わらせるのはもったいないし。あとはもう、自分が考えて乗れば勝たせてやれるのではと思いますね。
昨年2月に真島正徳先生の初勝利に騎乗されていました。真島正徳、鮫島克也調教師は一昨年まで同じジョッキーでしたが、調教師になられて印象が変わったところはありますか?
今まで一緒に乗っていて、正さんも、克也さんも、(山口)勲さんも、3人はもうずっと僕の教科書でずっとやってきて、その人たちのいい所を勉強しようと思ってやってきたので、現役の時もレースでどうやって乗ったらいいのかを相談もしたし。その二人が先生になると、もう一段階聞くこともあるし、「こうやって乗ってくれ」ってオーダーに関して、すごい勉強にもなるし。ただ、緊張はしますよ。あの二人の先生の馬に乗るっていうのは。やっぱりついこないだまで乗ってた人というのは、レースを見る力というのがあるんで。それを上手く引き出したいというのはあるし、あの二人に認めてもらいたいというのもかなりあるし。全然意識は違いますね。
13年の門別での期間限定騎乗から10年、また他の場所で乗りたいという想いはありますか?
いろんな競馬場で乗るという想いはずっと常にあるし、あそこ(門別)で滞在した2カ月間というのは、すごい勉強になったし、またそういう機会があるなら行ってみたいです。
ヒストリーメイカーは4月以降他場の重賞を狙っていくそうですが。
それで行かせてもらえるのなら行きたいし、あれぐらい強い馬だったら行ってみた方が勉強にはなるし。
白鷺賞が他場の重賞初勝利でしたが、期間限定騎乗の門別以外では他場での勝利自体が初勝利でした。
そうですね。ミスカゴシマでも金沢2着だったし。うーんなんかもう2着が多いですよね。本当に。だから勝ったのはすごい嬉しかったですね。もともと自分も中学校卒業して園田に居たし、子供の頃から厩務員して姫路に連れて行ってレースしていたので、あそこで勝つというのは思い入れが全然違いました。
今後の目標となるとリーディング1位ですか?
それは当然目標だし、勲さんが現役のうちにいっぱい吸収したいものがありますし、あの人に数字でも腕でもまだ追いつけないし。だからとりあえず数字で追い越せるように頑張りたいし、ずっとそれを目標にしていたので。
最後にオッズパーク会員の方にメッセージをお願いします。
佐賀競馬も少しずつ若手も増えて、レース展開も変わってすごい面白くなってきたんで、自分たちの応援するジョッキーと応援する馬を見つけてもらって、楽しんでもらいたいと思っているので、これからもまたよろしくお願いします。
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※インタビュー / 上妻輝行
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ばんえい競馬で昨年12月、約18年ぶりに誕生した女性騎手です。年明けの20回開催(1月2~9日)は10勝を挙げ連対率5割でリーディング。2月13日現在33勝で、新人の負担重量10キロ減がなくなる50勝の年度内達成も見えてきました。
素晴らしい活躍ぶりですね。
いえいえ、全然思ったようにできていないです。馬が行ってくれているだけ。まだレース前は緊張しています。20キロの減量はてきめんです。ハナ速い馬が多いですし、そのような馬を選んで乗せてくれているからです。
弁当箱(77キロの騎手重量に合わせる重量かばん)は22、23キロかな。特注です。最初は二つに分ける話もありましたが、一つで収まりました。今では持つのも慣れました。
重量を調整する"弁当箱"は特注
最近は馬券でも人気になり、レース中にファンからの声援が聞こえます。
パドックで、「頑張れよ」という声は聞こえています。返事はできないけど、心の中で頑張ります、と思っています。レース中は聞こえないですね...。人気はレース前は見ないようにしています。あとで何番人気だったんだ、って知って「買ってくれる人たくさんいたんだな」って。
馬との出会いについて教えてください。
厩舎育ちで、歩けるようになった時から馬がそばにいました。夜中、そっと外に出て違う厩舎の馬を見ていて、「千尋また来てたぞ」ってその厩舎の人にだっこされて戻ってきたこともあります。ポニーばん馬は小学2年から乗り、小学4年の時にポニョというポニーが来てからは毎日乗っていました。
軽種に乗りたくて静内農業高校に進学しましたが、ホームシックで帯広に帰ってきて、それからはばん馬一筋。サラは体が細く俊敏で気が荒い。ばん馬もうるさい馬はいるけれど、おとなしくて別の生き物のようです。
乗馬経験から、ハミを使えるのが活躍の秘訣かなと思っていますが。
いえ、関係ないです。筋肉が必要。障害の下で持って行かれたり、ゴール際詰まった時、下げれなかった(手綱を引いて反動で前に出せなかった)。馬を苦労させてしまいました。筋力アップが課題です。べん打する時も、10倍以上力が足りない。力というよりは慣れでしょうか。手綱の長さを把握しないと、絡んでぐるぐるになってしまう。
6回目での騎手試験合格でした。ばんえいは競馬学校もなく、厩務作業が忙しい中試験勉強をするのも大変かと思います。デビューの日や初勝利について教えてください。
騎手試験は合格までしばらくかかって、何度もやめようと思いました。時間を見つけてこつこつ勉強しなかった自分が悪いんです。
勝負服は父(今井茂雅調教師)の現役騎手時代と、デアリングタクトからもらいました。
デビューの日は、緊張してすごかった。震えるし、頭真っ白だし。1レースはゲート前の挨拶があるのですが忘れていて、「ちー、挨拶あるんだぞ」と言われました。
初勝利の2日目も変わらず緊張していました。この日は自厩舎の馬が多くて、厩務員がなごませてくれた。初勝利は、ラコ(ホクセイサクラコ)が頑張ってくれました。
12月11日、ホクセイサクラコで初勝利
尊敬する騎手として、鈴木恵介騎手の名前が挙がりました。
厩務員時代に乗ってもらった馬が、恵介さんに乗り変わってからは全然動きが違ったんです。恵介さんが乗ったことのない馬だったので『末脚はいいがゴール前たれる』と話したら、その日は障害を降りてから緩むことなく馬の切れ味を生かしてくれた。それからは常に騎乗を見ています。藤野騎手もテン乗りの天才です。
これまで騎乗していて、印象的な馬はいますか。
ブチオですね。あの子は本当にすごい子だな、って思います。普段は一回止まるとあきらめることが多いのですが、「ぶーちゃん」と呼ぶと、こっちを見て、それから上がっていった。自分が乗っているのをわかっているんだと思います。
逆にサクラドリーマーはこっちをじーっと見て止まって「お前だもんな」って顔(笑)。でも、サクの降りてからの脚は、他の馬と全然違う! 重い荷物積んでますよね?って聞きたくなる脚です。
ブチオ
今井騎手の馬の話はおもしろいので、今井厩舎のほかの馬の話も聞かせてください。
ホクセイサクランボは、出足が遅いのでタイムの速い今は結果を残せていませんが、ゆっくりしたペースになれば期待できると思います。
サクラヒメ、ヒメちゃんはすんごくおとなしい。隣にけんかを売られても端で「ほぇー」ってしてます。
キンツルモリウチ、ツルちゃん危険です(笑)。何もないとかわいい顔ですが、機嫌が悪いと本当に危ないです。
平地競馬も見ているようですね。注目馬はいますか。
今はサリエラです。サリオスに妹がいるんだ、しかも父がディープインパクト!と、デビュー前から応援しています。スピーディキックやラッキードリームも注目しています。三冠、すごいですよね。
では最後に、オッズパーク会員に一言お願いします。
まだまだ未熟で足りないところだらけ。それでも精一杯頑張りますので、ぜひ本場に見に来てほしいです。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
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関本玲花騎手は2019年10月5日にデビュー。それから約3年2カ月後の昨年11月22日、レディスジョッキーズシリーズ第2戦を勝って地方競馬通算100勝を達成した。水沢開催に移った12月4日に101勝目を挙げて"新人騎手"も卒業している。冬期間は笠松競馬で期間限定騎乗をしている同騎手にこの先の目標をうかがった。
まず最初に、ちょっと時間が経ってしまいましたが100勝達成の喜びと感想をお願いします。
達成できて嬉しかったですが、もう少し早く達成したかったなとも思いました。
"もう少し早く"というのは、残りわずかになってからもっとポンポンと勝ちたかった?あるいは年数・日数的なもの?
もうちょっと短い月日で達成したかったです。
そうは言ってもまずまず早い方の100勝達成だと思いましたが。
女性騎手にしては早い方なんでしょうけども、3年かかってしまったから。もう少し早く、2年半くらいで達成したかったかな。
減量が取れる、女性騎手分はあるけれど、その"重み"のようなものは感じますか。
減量分は大きいと思うので、見習い卒業という面では感じます。いつまでも減量が残っているのは......と思うし、これで"新人"ではなくなった、見習いではなくなったと感じます。
見ていて、100勝が迫ってもあまり意識せず淡々と......という感じに見えていたんですけど、実際どんな気持ちだったのでしょうか。やっぱり意識をした?
あと10勝くらいから意識してましたね(笑)。盛岡の発走室にホワイトボードがあるんですけども、そこに"あと○勝"とカウントダウンを書いてました!
"あと10勝"というと......、9月11日か。この頃から自分でカウントダウンをしていたと。
100勝が近づいた最後の3勝くらいはわりと連続して勝てたんですけども、はじめはしばらく勝てなくて長く感じましたね。でも後になって見れば普段のペースとそんなに変わっていないから、やっぱり気持ち的に長く感じたんでしょうね。
ラストスパートはしっかり勝てて、そしてレディースジョッキーで決めたのがやっぱり良かったよね。
LJSで決めたい......と言うよりは良い馬に乗る事ができてチャンスでしたからね。そこで勝ちたい、勝とうという感じでした。結果的に良いレースで、良いタイミングで勝つ事ができました。
11月22日盛岡、レディスジョッキーズシリーズ第2戦で地方通算100勝を達成
さて、100勝達成のセレモニーで"岩手の女性騎手の勝利数で歴代1位を目指したい"と言われていましたが、デビューした頃からそういう目標を抱いていたのでしょうか?
デビュー当時は慣れる事に精一杯で目標は特になかったですが、100勝するあたりですか、ここまできたら超えたいなと考えるようになりました。
高橋優子騎手が203勝の記録(注:岩手競馬の記録による)を持っているのですが、3年で100勝したと思えばこの記録の更新も確かに見えてきた。
遠すぎる目標ではないと思うので、超えて記録を残したいです。100勝まで3年ちょっとで来ているから同じくらいで、あと3年半くらいまでには届けば良いかなと思っています。
ところで、気がつけばそんな女性騎手の中でも先輩になってきました。後輩の女性騎手が増えてきて、自分に何か気持ちの変化とかでてきましたか?
"先輩になってきた感覚"は特にないですね。だってまだ4年目ですし、それに佐々木世麗騎手や神尾香澄騎手はセンターで一緒の時期があったからそんなに後輩っていう感覚がないですからね。まだまだ"先輩"じゃないです。
初めて新馬戦を制したイイヒニナルでは、JBCデーのジュニアグランプリにも出走(8着)
ちょっと大きな事を聞くけれど、"女性騎手がもっと活躍するようになる、あるいはもっと増える"ためにどんな環境作りが必要だと思いますか?
そうですね、競馬場の設備の部分は自分だけでできる話ではないので分かりませんが、今はJRA・地方を含めて女性騎手のことが盛んに採り上げられているから、これから騎手を目指そうという女性は増えていくんじゃないでしょうか。
イイヒニナルと関本騎手
最後に、岩手競馬の新シーズンに向けての抱負をお願いします。
次の目標に向けて、今までよりも1鞍1鞍を丁寧に自分の競馬をできるように頑張っていきます。また、沢山の方が競馬場に足を運んで、レースを楽しんでくれたら嬉しいなと思います!
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※インタビュー・写真 / 横川典視
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小牧太騎手、岩田康誠騎手、木村健騎手など歴代の名ジョッキーが達成した1日6勝。1月11日、吉村智洋騎手が7勝を挙げて園田・姫路競馬における1日最多勝記録を更新しました。さらに翌週には地方通算3000勝を達成。また、2022年は2回目の地方競馬全国リーディングに輝くなど勢いに乗る吉村騎手に記録の数々ついて聞きました。
話題が豊富すぎる吉村騎手。まずは1日7勝おめでとうございます。
ありがとうございます。1日6勝は何回かしたことがあって(6回)、どこかで7勝ができるな、とは思っていました。
この日は最初の騎乗から直線入口で大きく外に進路を取るようなレースが見られました。
前日にインを狙ったレースを2~3回したんですけど、伸びないなと感じていて、最終レースで外に行ったらやっぱり伸びたので、「外やな」と気持ちが決まりました。
あそこまで外に出すのは勇気がいりそうですが、逃げたレースでも大外に誘導していましたね。10レースでは廣瀬航騎手との接戦を制して勝ちました。
直線で馬も脚が上がってふわっとしていたんですけど、乗っている感覚としてはアタマ差くらいで勝っていると思っていました。でも、ちょうど僕の馬が頭を上げて、相手は頭を下げたところがゴールだったので写真判定になりました。このハナ差の6勝目はかなり大きかったです。残り2レースで、最終レースはよっぽど下手に乗らない限り勝てるなと感じていましたが、メインレースは強い馬が1頭いたので、10レースを勝たないと7勝には届かないな、と考えていました。
ということは、このハナ差を勝ったことで「7勝はいける」と?
はい、7勝は来るなと思いました。さらにメインを勝てれば、もしかしたら8勝までもあるかもしれない、と思っていましたけど、順序があるんじゃないですかね。「1日7勝してからじゃないと8勝はダメですよ」っていう。
園田・姫路競馬は1日の騎乗数が8鞍までという制限があるので、1日8勝は全勝を意味しますが、吉村騎手ならいつか達成しそうです。1月17日からは開催が姫路に変わり、「姫路は苦手」と公言していましたが、園田と変わらぬペースで勝っていますね。
苦手は苦手なんですけど、コース形態ではなくて輸送があまり好きじゃないんです。厩舎や調整ルームのある園田競馬場と違って、姫路競馬場は毎日バスで約1時間かけて移動。姫路に着いてからは体重調整などの時間がなくて、あらかじめ園田で全てやらないといけません。
1年のうち8カ月以上は園田開催なのに対し、スケジュールがタイトになるんですね。そうした中でも、姫路開幕日にポンポンと勝ち3000勝も達成。おめでとうございます。
ついていますよね。開幕週3日間のうちに達成できればいいかなと思っていましたけど、まさか初日からポンポンと勝つとはね。流れがたまたま向いただけだと思うんですけど、流れは大事ですからね。
そして2022年は2回目の地方競馬全国リーディングで、NARグランプリの最優秀勝利回数騎手賞受賞も2度目となりました。
めちゃくちゃ嬉しいです。全国リーディングなんて、一度きりかなと思っていました。
2018年、296勝で初めて全国リーディングに輝いた後、ずっと300勝以上を挙げていましたが、森泰斗騎手(船橋)がそれ以上に勝つという状況でした。
森騎手のことは必然的に意識はしていました。去年は9月頃に20勝前後、森騎手に一度離されたんですけど、10月半ばくらいに僕が一気に勝って「ひょっとしたらまたリーディングが来るか!?」と意識していました。それだけいい馬に乗せていただいていて、このくらい勝って当たり前なんだと思います。むしろ、もっと勝たないといけなくらいだと思っています。それだけ「勝ってきてくれよ」という気持ちで騎乗依頼をいただいていると感じています。
長男・誠之助くんは現在、JRA競馬学校に在学中で騎手を目指しています。息子さんの存在は刺激になっていますか?
間違いなく刺激になっています。周囲の人から「お前の親父、全国リーディングやな」と言われた方が本人も嬉しいでしょうから、そういうところを見せていけたらいいなと思って、励みになっています。
お手馬の中では楠賞を勝ったエコロクラージュがいますし、今年も「親父すごいぞ」というところを見せられそうですね。
エコロクラージュはデビューから無敗で名古屋の秋の鞍に遠征した時、抜け出してからとんでもなく遊んでしまって、3着に負けました。連勝している時でも抜け出して遊ぶ面があったので馬具を変えたかったんですけど、やはり勝っている間はなかなか変えられないですよね。でも、名古屋で負けて、「何か考えないと、次の楠賞は勝てないぞ」となり、ブリンカーを着けることになりました。大目標にしていたのが楠賞で、秋の鞍と両方勝てれば一番良かったんでしょうけど、あの敗戦があったからこそ楠賞を勝てたと思っています。
11月2日、エコロクラージュで楠賞制覇
バンローズキングスも菊水賞での敗戦からチークピーシズを着けることになり、兵庫ダービーを勝ちました。無敗はもちろんすごいですが、負けて得られるものも大きいですね。
負けて学ぶこともたくさんあると思います。エコロクラージュはまさに分かりやすい例ですね。
最後に、オッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
レースではいつも人気ばかりが先行していますが、その人気にできるだけ応えられるように頑張っていきますので、これからも園田・姫路競馬共々、応援のほどよろしくお願いします。
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※インタビュー / 大恵陽子(写真:大恵陽子、兵庫県競馬組合)
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2022年12月6日、高橋悠里騎手が地方競馬通算1000勝を達成した。デビューから18シーズン目、ここ2シーズンは年間100勝を超える勝ち星を挙げて円熟味を増す同騎手に、1000勝達成やそれまでの道のりをうかがった。
早速ですが1000勝達成おめでとうございました。今シーズンはやはり"1000勝を決める"という目標を持って挑まれたのでしょうか?
春先から目標にしていました。21年くらいの成績(124勝)を挙げることができれば達成できそうでしたから。正直、達成する前はそれほど気にしていなかったんですけども、1000勝に近づいてきてリーチがかかると周りからいろいろ言われて、それで逆に気になるようになりましたね。残り1勝からは本命馬にも結構乗っていたけどもなかなか勝てなくて。なるべく焦らないようにしよう...と思ったりしていました。達成した時はホッとしました。
そういうのは、やはり何かプレッシャーのようなものがある?高橋騎手はそういうのがあまりないタイプかなと思っていたけど...。
なんかちょっとこう、いつもとは違う感じがするというか...。気にしないようにはしていましたね。あと1勝という意識はしていましたけども。ただ、リーチがかかった直後に落馬して"あー、1000勝は来年かな..."とか思いながら馬から落ちてました。
自分もそれを見ていて"1000勝は持ち越しか?"と思いました。立ち上がって歩いているのを見てホッとした。
無事達成できてホッとしていますし、いろいろな方が喜んでくれたり祝福の言葉をかけてくれたりして、先輩騎手も一緒に口取り写真に入ってくれて凄く嬉しかったです。騎手をやっていて良かったなって。
デビューから500勝までがざっと言って11年で、500勝から1000勝が6年。凄くスピードアップしているように見えます。
そうですね、最初の頃はよく怪我をしていましたし、騎乗数もそんなに多くなかったと思いますし。500勝はソウルから帰ってきて達成したんですが、韓国に9カ月いたりもしましたしね(2015年)。そういう部分もあったとは思います。
2022年12月6日、地方競馬通算1000勝達成
1000勝を達成した直後は"1500勝とか2000勝とかはまだ考えられない"と言っていましたが、今の調子なら1500勝は4年くらいで届くんじゃないか?と思ったりするけど。
今のリズムが続けばそれくらいで...でしょうけど、そう簡単にはいかないと思っています。これは何回も言っていることですが"シーズンを怪我せず乗り続ける事"が一番大事ですね。やっぱり怪我をして乗れない期間が長いと復帰してから取り戻すのが大変。その点では最近は怪我とかしないでリズム良く行けているかなと感じていますね。
自分は、これだけ活躍できるようになったのはやっぱり韓国に行ったのが良い影響になったと思う。あの経験で凄く逞しくなったんじゃないかなって。
僕の中でも大きいと思っています。最初のソウルの9カ月ですね。倉兼さん(倉兼育康騎手・高知)にアドバイスをいただいたりはしていたんですけども何も知らずに行って、あの頃はソウルに日本人は自分一人でしたし。そんな中で"自分はもっとやれる"と思っていたのに全然思い通りにいかなくて、最初は全然勝てなくて...。泣きましたからね自分。
泣いた?悔し泣き?
悔し泣きですね。1カ月か1カ月半くらい経った頃でしたね。凄く天気が良い日で、調教をしている馬の上で空を見ていたら涙がポロポロって。家族を置いてきて、調教師が止めるのも振り切ってまでここに来て、1日1つ2つ乗るくらいで勝てない。何しに来たんだろう...って。
でもその後くらいか、勝ち始めたら、今度は急に騎乗数も勝ち星も増え始めたよね。
そこから軌道に乗り始めましたね。今度は毎日乗り鞍が増える感じになって、そうすると逆に人気すぎるくらいになっちゃって。何でも人気になりましたからね。通訳の方と"なんでこんなに人気になっているの?"って驚いてましたから。
韓国・ソウル競馬場での高橋悠里騎手。韓国では通算31勝
自分もソウルに行って見ていたけど、声援が多かったものね。"タカハシ!タカハシ!"って。パドックに出てきたらそうやって声がかかるし。凄いなと思って。
韓国はやっぱり良い経験になりましたね。異国で一人暮らししながらレースに乗ったことでメンタルが鍛えられたと思うし、レースの頭数が多いからそれを捌くことも経験できましたしね。我ながら頑張ったと思いますよ(笑)。倉兼さんの助言もですし、通訳さんも支えてくれましたしね。
話を変えるけど、高橋悠里騎手くらいの世代、2005年デビューだけど、前後数年の同じくらいの世代の騎手が頑張っているのが今の岩手競馬にとっては心強いと感じます。
やっぱり岩手競馬が廃止になるかならないかの苦しい時期を一緒に耐えてきた人たちですからね。自分くらいの世代は最初の頃はあまりいい思いをしていなくて、自分も入って2年くらいで廃止するかどうかとかになってしまいましたから。そういう世代だから逞しいのかもしれませんね。
とはいうものの、そういう世代ももう30代半ばとかになっています。高橋騎手は、自分の今後のこととか考えたことはない?
一度考えてみたことはありますよ。でも、まだまだやれるなって。あと10年くらいは騎手をやっていきたいですね。今はレースに乗っていて楽しいですし、あと自分は身体のどこが痛いとか悪いとかが今のところ無いんですよね。頑丈な身体に生んでくれた母親に感謝ですね(笑)。
最近はコンスタントに100勝以上できているし、1000勝という区切りも達成して、この先さらに伸ばしていくのに何か"やりたいこと・やるべきこと"はありますか?
そうですね、もっと思い切ったレースができるのかな...と思ったりはしますね。最近は昔ほど思い切ったレースができていないような気がしたりします。ただ、今はリズムが良いですから、無理に変えなくてもいいのかな、とも。昔は馬のことを機械的に考えていたかもしれないですね。自分のやりたいような競馬を馬にさせていた、というか。今は馬の脚質とか性格とかを考えて乗っているから、その辺は昔と変わっていると思います。
こんな話をしていると楽しくて終わらないので、あと二つ聞かせてください。"思い出の馬"というと、やっぱり初重賞勝ち(岩鷲賞)をプレゼントしてくれたトーホウライデン?
ですね。初めての重賞というだけでなく、その頃の僕は成績が凄く落ち込んでいて、トーホウライデンで勝った2008年は確か18勝くらいしかしていないんですよね(実際には20勝)。岩手競馬も落ち込んでいた頃でしたし、もう騎手を辞めようかなとも思っていた時期だったんです。だからあの馬に"騎手を続けなさい"と言われたような気がするんですよね。ロマンチックな話かもしれませんけども、でもトーホウライデンがいなかったら今騎手をやっていたかどうか分からないですよ。あの馬のおかげです。
2008年岩鷲賞、トーホウライデンで重賞初制覇
もうひとつは、1000勝を達成して目標とか、改めて言いたいこととか何か挙がりますか?
自分が1000勝を達成できたのは馬主さんやいろいろな関係者の皆さんのおかげですけども、1000勝を達成させてくれた馬達にも感謝しています。1000勝分走ってくれて勝ってくれた馬達にですね。そして先輩・後輩の騎手、中でも一番は同期の山本聡哉騎手。山本聡哉騎手がいてくれて、引っ張ってくれたからここまで勝てたのかなと思います。デビューした頃は1000勝なんて全く考えていなかった数字ですからね。
同期の山本聡哉騎手(左)も自分のことのように喜んでいた
見ている方とすればもっともっと存在感を高めていって欲しいと思いますね。山本兄弟に割って入るくらいになってくれれば。
割り込んでいきたいですねえ。あの兄弟は強いですけども(笑)。自分とすれば一番はやはり怪我をせずシーズンを通して騎乗して、ひとつずつ積み重ねていくだけですね。記録とかはその後のことかなと思っています。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
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