ヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンド笠松で、見事勝利を挙げた笠松の渡邊竜也騎手。4月のデビューから2カ月経った現在の様子を伺いました。
まずは騎手になったきっかけから教えて下さい。
母方のおじいちゃんが競馬が好きで、小学校1年生くらいの時から一緒に競馬を見ることが多かったんです。何番の馬を応援する!みたいな感じで、どの馬が好きとかはなかったんですけど。中学3年生で進路を考えた時、「騎手をやってみれば?」って言われて、じゃあやってみようかなって。
かなり大きな決断をあっさりしましたね。
自分はサッカーをしていて、高校から声をかけていただいていたので、受験勉強に対してあんまり切羽詰まった感じがなかった、というのがまずあって。中学3年でJRAと地方を受けて、ダメだったら高校へ行こうと思いました。それで、JRAは落ちてしまったんですけど、地方は受かったので騎手になる道に進みました。
周りのほとんどが高校へ進む中で、迷いはなかったですか?
中学2年から乗馬を始めたんですけど、それがすごく楽しかったですし、おじいちゃんが本当に競馬が好きで、今までおじいちゃんにすごく迷惑をかけてしまったので、おじいちゃん孝行じゃないですけど、やってみようかなと思いました。親に怒られた時とか泊めてもらったりして、いつも味方になってくれたんです。
おじいちゃん喜んだんじゃないですか?
そうですね。今はすごく喜んでくれてますけど、地方競馬教養センター時代は本当にキツくて、辞めたいと思ったこともあって...。その時は心配しながら支えてくれました。
センターはキツかったですか。
同期が競馬関係者が近くにいたり、所属が決まっている人が多かったんですけど、僕はまったく知り合いがいなかったですし、所属も決まっていなかったので焦りました。とにかく、自分は騎手の卵なんだっていう実感が欲しくて。センターに合格したことは嬉しかったですけど、所属競馬場や厩舎がなかったので、ずっと実感がなかったんですよね。
どういう縁で笠松に決まったんですか?
実は、最初は船橋競馬に入るという話があって、中間査閲の時に調教師さんも会いに来てくれたんですけど、「南関東は騎乗数を確保するのが厳しいぞ」と言われて。騎手になるからには、たくさん乗って上手くなりたいと思っていたので、チャンスの多い競馬場を探すことになりました。教官たちとも話して、笠松は騎手も少ないしたくさんチャンスをもらえるんじゃないかということで、笠松で探してもらったら、笹野博司先生が所属にしてくれるということになりました。
笠松はいかがですか?
楽しいです。厩舎関係者の方々も、騎手の先輩方もみんな優しいです。笠松に入れて本当によかったですね。
特にどなたが優しいですか?
佐藤友則騎手です。優しいですし、全国で活躍しているのでとても尊敬しています。
実際にデビューしてみていかがですか?
レースは、デビューした頃は本当に緊張してました。いろいろな厩舎の方々が、まずは1勝させてあげようみたいな感じで応援してくれて、いい馬にも乗せていただいたんですけど、緊張してまったくレースができなかったです。思い描いたレースにならなくて、本当に申し訳ないですし、すごく悔しかったです。
4月26日、笠松第3レース、サムライズムで見事初勝利を挙げました!
はい、ありがとうございます。あの馬に乗せていただいたのが2回目だったんですけど、1回目が逃げろという指示だったのに、スタートで出遅れてしまって前に行けず、4着に負けてしまったんです。その悔しさがあったので、まずは逃げることだけを考えていたんですけど、勝った時は本当に嬉しかったです。ようやく勝てたか...と思いました。
4月26日、記念すべき初勝利
4月デビューですからタイミング的には遅くないですけどね。
ただ、たくさんチャンスをいただいていましたし、同期も勝っていたので、焦る気持ちもありました。関係者の皆さんと、馬ががんばってくれたお陰で初勝利を挙げることができて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
2勝目がヤングジョッキーズシリーズの笠松ですよね?
そうです。本当に嬉しかったですね。2、3番手につけられたらいいなと思っていて、その通りの位置につけられました。道中もいい手ごたえで行けて、ちょっと先頭に立つのが早かったですよね。4コーナーで被された時には、まずいな...と思いました。もうちょっとじっくりと行けたらもっと楽に勝てていたかもしれません。
地元のヤングジョッキーズシリーズではゴール前の接戦を制した(左)
早め先頭から一度抜かされたように見えましたけど、よく差し返しましたね。
本当に馬ががんばってくれました。ゴールした時は勝ったとわからなかったです。ただただがむしゃらに追っていました。ヤングジョッキーは楽しみにしていましたし、地元戦で絶対に結果を出したかったので、勝ててすごく嬉しかったです。周りの方からも「おめでとう、よかったな」って言ってもらいました。
今、6勝を挙げて(6月15日現在)順調ですね。
気持ち的に少し落ち着いたかなと思います。3勝目がようやく自厩舎の馬で初勝利だったんです。そこも大きかったですね。
今の課題はありますか?
スタートでよく躓いてしまうんですよ。ガクッとなってしまうので、気を付けたいです。あと、内ラチギリギリを回ってしまうこともよく注意されますね。コーナーがかなり小回りなので、コーナーの入りとか、大型馬だと弾かれたりして危ないことがあるので。先輩方は本当にすごいですけど、減量もありますし、そこを活かして積極的なレースをしたいです。
おじいちゃんは勝ったところを見たんですか?
いや、生ではまだ見ていないんですよ。2回くらい見に来てくれたんですけど。実家も遠いですし、平日開催ですし、なかなかタイミングが難しいですね。でも、早く勝ったところを見せたいです。
今後の目標を教えて下さい。
たくさん乗って、たくさん勝ちたいです。ヤングジョッキーズで今いい位置にいるので、トライアルラウンドの金沢(8月22日)もがんばって、年末の大井と中山を目指します!
では、オッズパーク会員の方々にメッセージをお願いします。
まだまだ足りないところがたくさあんりますが、一生懸命努力して、馬券に貢献できる騎手になります。注目していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:岐阜県地方競馬組合)
2015年11月から、2016年7月までの約9カ月間、韓国で期間限定騎乗を続けた岡部誠騎手。その経験も活きているのでしょう。今年はハイペースで勝ち鞍を伸ばし、東海リーディングぶっちぎり。そして現在全国リーディングトップ(5月22日現在)に立っています。
どうして韓国に遠征してみようと思ったのですか?
競馬は世界中でやっていますし、もっと上手くなりたい、勉強したいと思っていて、年齢的にも動けるうちにということでこのタイミングになりました。地元を空けることになるので色んな人に相談しましたが、あの時行っておけばよかったと後悔するのは嫌だったので迷いませんでした。韓国には日本の騎手がたくさん行っていたので状況も分かっていたし、行きやすい環境でしたね。
実際に韓国での競馬はいかがでしたか?
癖のある馬も多いし、状態も日本の感覚とは違う馬も多かったのでその辺が苦労しました。目一杯追っているつもりがどこかで力が入っていたりして。馬に合わせるために鐙もすごく長くなりました。それで日本に帰って来た時に、乗り方がバラバラになっていて...。これじゃ駄目だ、一からやり直さなきゃと思いました。
どうやって乗り方を戻したのですか?
毎日木馬に乗って鏡を見ながらフォームを研究したり、筋トレをしたり色んなトレーニングをしました。結果的に、韓国に行く前より今のほうがしっくりくる乗り方になりましたね。ずっと日本にいる状況だったら以前と同じだったと思うのですが、一から見直したことによって、レベルアップしたと思います。
韓国の生活はいかがでしたか?
競馬の時は通訳がいたのですが、普段は一人でした。韓国の騎手がとてもよくしてくれて、家に招待してくれたり、みんなで飲んだり。イタリア人の騎手もいて、「イタリアの競馬はこういう乗り方をしている」などとタブレットを見ながら話したりと、色んな情報を吸収することもできました。レース以外でもたくさん勉強になりましたね。
2016年10日20日、名古屋・ゴールドウィング賞(ミトノリバー)
写真:愛知県競馬組合
その経験もあってか、今年はすごいペースで勝ち鞍を伸ばしていますね。
良い馬に乗せてもらっていますから。でも取りこぼしのレースもあるし、なるべくミスを少なくして馬の邪魔をしないレースをしないといけないと思っています。今はレースがすごく楽しくて、精神的にも充実していると思います。毎年、何勝したいとか、どのレースを勝ちたいとか目標はたてません。とにかく、上手く乗りたい、きれいに格好良くレースを勝ちたいとしか思っていないんです。
4月17日の時点で、全国リーディングトップに立ちましたよ!
らしいですね(笑)。
全国リーディグを獲りたくないんですか?!
いや、そりゃ、獲れるもんなら獲りたいですよ!(笑)
7月から南関東での期間限定騎乗が始まりますね。
地元とは違う騎手の乗り方も見られますし、頭数も多くて展開も全然違うので、とにかく様々な経験をしたいと思っています。
南関東への遠征は今回で4回目となりますが、その度に手応えのようなものは感じていますか?
人の繋がりが増えているので、以前より声をかけてもらえているのは確かですね。でも期待をしてもらっているわけですから、下手な乗り方はできません。ですからプレッシャーは感じています。でもそのプレッシャーを常に感じることは良いことだと思います。
2017年4月9日、佐賀・ル・プランタン賞(スターレーン)
写真:佐賀県競馬組合
一度聞いてみたかったんですが、岡部騎手の同期には、川崎の今野忠成騎手や高知の赤岡修次騎手、北海道の服部茂史騎手と、各地のトップジョッキーが名を連ねています。それぞれの存在を意識したりはするんですか?
もちろん活躍は知っていますが、それが励みになっているという意識はないですよ。だって上手い騎手が勝つのは当たり前ですから。むしろ、みんなは凄い騎手だけど自分なんて全然上手くないという感じです。俺は欲が深いのかもしれないけど、まだまだ上手くなりたい、世界には良い騎手がたくさんいるしこんな乗り方じゃ通用しないと思っているんです。今は名古屋で、たくさんの縁があって1位を獲らせてもらっていますが、自信は全くないんですよ。
これからチャレンジしてみたいことはありますか?
タイミングは難しいけれど、色んな国で乗ってみたいですね。
最後に、オッズパークの会員の皆さんにメッセ―シをお願いします!
みなさんオッズパークで競馬を楽しんでもらっていると思いますが、もし機会があればぜひ競馬場に足を運んで頂ければと思います。会員のみなさんに怒られないよう、頑張って騎乗していますので、負けた時は勘弁してください(笑)。
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※インタビュー / 秋田奈津子
山口勲騎手は、4月22日に地方通算4000勝を達成。1987年10月のデビューからまもなく30年。大ベテランではあるが今年も佐賀のリーディング争いを独走しており、まだまだその牙城は揺らぐことがなさそうだ。
まずは通算4000勝達成の感想をお願いします。
3000勝を達成したとき、4000という数字はまったく考えなかったですし、4000までがんばろうという風にも思わなかった、というのは記憶にありますね。でもそれからも積み重ねてきたら、4000になったという感じです。
となると、5000勝も?
そうですね、それも考えられません(笑)。あとどのくらいまで(騎手として)やれるかとかも考えていませんし、あまり数字を目標にするタイプでもないもので。
2017年4月22日、佐賀第5レースで地方通算4000勝達成(写真:佐賀県競馬組合)
それでも「山口勲」というネームバリューは年々上がっているような感じがあります。先日(3月12日)は阪神競馬場で騎乗して2着に2回入りました。
今回、初めてエージェントをお願いしたんです。それもあって騎乗馬がたくさん集まりました(佐賀のハクユウロゼを含めて全7鞍)。ひとつめの2着だったレースは、最後にもたれるところがあったんですよ(未勝利戦で9番人気馬に騎乗)。それがなかったら粘り切れていたかもしれないですね。
東京競馬場でのワールドスーパージョッキーズシリーズ、あのとき以来の勝利のチャンスでしたからね。
府中で挙げた1勝は、本当にミラクルという感じでしたね。あの年はいろいろとうまいこと運が向いて、かみ合っていた年だと思います。この間もJRAでまずまず成績がよかったもので、何人かの調教師さんに「次はいつ来るの?」って聞かれたんですけれど、佐賀にはJRAに遠征する馬がおらんのですよ(苦笑)。
2012年ワールドスーパージョッキーズシリーズ(東京)第2戦で勝利
でも、それだけ腕があるということが知れ渡っているということでしょう。今年もジョッキーレースの時期がやってきますね。
そうですね。ジョッキーレースで勝てばまわりに与える印象が違ってきますからね。最近は相性がよくて、ゴールデンジョッキーカップではけっこう賞金をもらえていますし、去年のジャパンジョッキーカップ(盛岡)でもポイント的には2位でしたから。
そういうレースに臨むときのコツってあるんですか?
いやまあ、あるというかないというか。個人的にはこういうところが結果につながっているんだろうなと思い当たるところはあるんですが、この記事をほかの騎手が見る可能性がありますからねえ(笑)。
なるほど、そこは明かさないということで。ということは、ワールドオールスタージョッキーズへの意欲は十分ということですね?
もちろんですよ。札幌競馬場で乗ったこともないですし、ぜひ行きたいですね。
そのためには、スーパージョッキーズトライアル(SJT)で優勝しなければなりません。まずは第1ステージが盛岡です。昨年はジャパンジョッキーズカップで1勝しました。
でも盛岡のSJTでは、散々な成績で第2ステージに行けなかったことがあるんですよ。大雨で芝のレースがダート変更になってしまったとき(2014年)。ぼくが乗る馬は芝で好成績を挙げていて、新聞のシルシもけっこうついていたのにダートがまるでダメで......。じつはそのせいで、盛岡にはいいイメージがなかったんです。まあ、昨年の勝利でそれは変わりましたけれどね(笑)。
ジャパンジョッキーズカップ2016(盛岡)でチームWESTの優勝に貢献した山口勲騎手(右端)
ちなみに前回のSJT優勝は、通算3000勝を達成した年でした(2012年)。
そうでしたっけ? もうそんなになるんですかね。あまり数字は目標にしないと言いましたけれど、年間200勝という数字は意識していますよ。だんだん体が硬くなってきているかなという気はしますが、気持ち的には年をとったとか、そんな感じは全然ないですね。
となると、若手の壁になる山口騎手というのは続いていくことになるのでしょうか。
若手も何かきっかけがあれば伸びてくる感じはありますよ。ぼくも1000勝まではけっこう時間がかかりましたし、鮫島さんを初めて抜いたのが35歳くらいですからね。毎日の調教で乗っているのは15頭くらいかな。以前よりすこし減りました。でも鮫島さんもそのくらい乗っていますから。これからもケガなく続けられればいいなと思っています。
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※インタビュー / 浅野靖典
2005年のデビューから13年目を迎えた桑村真明騎手。昨年はシーズン自己最多の101勝を挙げ、2013年以来2度目となる北海道リーディングジョッキーの座に輝きました。"若手"というフィールドから一歩先へ進み、さらなる飛躍を遂げる桑村騎手にお話を伺いました。
2012年のインタビューでは「リーディングをとってみたい」とお話されていたと思いますが、その後実際に2度リーディングを獲得されて、心境面での変化はありましたか?
リーディングというのは自分だけの力ではなく、馬主さんや調教師さん、厩務員さんなど、周りの方々のバックアップがあって初めて取らせていただけるものだということに気付きました。あらためて、自分の環境であったり、周りの人たちへの感謝の気持ちを意識するようになりましたね。
昨年は自己最多の101勝を挙げられましたが、この数字に関してはご自身でどう捉えられていますか?
いい馬にもたくさん乗せていただきましたし、もうちょっと伸ばせてもよかったと思います。
リーディング争いは終盤までもつれましたね。
その頃になると、周りの調教師さんや馬主さんもリーディング争いを気にしてくださって、いい馬を用意してくれたんですよね。最後に頭ひとつ抜け出すことができたのは、そのおかげだと思っています。
所属先の角川秀樹調教師は、最近の騎乗ぶりについて「勝ち星を積み重ねていくうちに自信がついたのか、咄嗟の判断ができるようになってきた」と評されていましたが。
昔に比べてだいぶ周りが見えてきたというのはあると思います。大きな舞台でもけっこう乗せていただけたので、そういった経験も糧になっていますね。
いま「大きな舞台」というお話があったと思いますが、昨年はリンダリンダで東京プリンセス賞(大井)を制しました。かつてのお手馬と、南関東のクラシックで再びコンビを組んでの勝利だっただけに、感慨もひとしおだったのではありませんか?
2歳時に乗ったときと比べても、馬がさらに力強くなっていましたよね。僕らは基本的に南関東などへ移籍した馬に乗る機会はないんですが、3歳の全盛期、クラシックシーズンを迎えた馬の成長力を感じられたことはとてもいい経験になりました。個人的にも、ホッカイドウ競馬開幕の日に(スティールキングで北斗盃を)勝った次の日にまた重賞を勝てて、勢いをつけることができました。
タイニーダンサーとも、ブリーダーズゴールドカップで2歳時以来のコンビ(2着)を組みましたね。
もう少し引っかかるのかなと思っていましたが、2歳時よりも落ち着きが出てきて、折り合いも結構ついて乗りやすくなってきました。今年もまた門別に来てくれたらいいですね。
北海道スプリントカップでは、負傷したジョッキーに替わって急遽JRAのノボバカラに騎乗することになりました。
騎乗依頼をいただいたときは素直にうれしかったですね。レースではゲートの出もよかったので、自分のペースで行こうかなと。けっこう流れも速かったんですけど、「これだけ速いペースで行ってもまた直線伸びるんだ」と、心肺機能の違いを感じましたね。
最後は惜しくも2着に敗れましたが、ミルコ・デムーロ騎手が操るダノンレジェンドとの叩き合いは見応えのあるものでした。
そうそうないチャンスだったので、結果を出したかったというのは正直な気持ちですが、強い馬の背中を感じることができたので、本当にいい経験をさせてもらったと思います。
2016年北海道スプリントカップ、ノボバカラで2着
今シーズンも始まったばかりですが、ここまでの戦いぶりを振り返っていかがですか?
いい馬に乗せてもらったおかげでポンポンっと勝つことができているので、いいスタートを切れていると思います。
今年の目標として具体的にイメージされていることはありますか?
昨年同様、年間100勝以上を目標に頑張っていきたいです。門別だと開催期間も短いですし、最初のうちはレース数も少ないので、なかなか難しいですけれど。
ホッカイドウ競馬は冬場の休催期間も長いですが、冬期間の2歳馬の調教から実戦モードへ切り替えていくときに心がけていることはありますか?
僕は能検である程度気持ちを入れて、開幕に向かっていく感じですね。3月に能検が始まる時期に徐々に体重が落ちてきて、スイッチが替わっていくというか。
「今年はこれで上へ行きたい」という馬がいれば教えてください。
開幕日のスーパーフレッシュチャレンジを勝たせてもらったキタノシャガールですね。距離ももつと思いますし、調教や実戦でもう少し折り合いを覚えていけば、まだまだ上を目指せると思います。まずは栄冠賞(6月29日)まで順調に進んでほしいですね。
スパーフレッシュチャレンジを制したキタノシャガール
桑村騎手個人としても、6月にはスーパージョッキーズトライアルが控えています。前回出場時(2013年)は惜しくも1ポイント差で次点という結果でしたが。
前回は初戦でシンガリ負けになってしまい、「ああ、ダメだな」と思ったら、かえってリラックスできたので(笑)。デビュー前から知っている人たちと一緒に乗れたこともあって、楽しんでレースに臨めました。もちろん、自分自身も巧く乗らないとポイントは稼げませんが、乗り馬次第の面もあるので、今回もまずは楽しんで乗って、その上で結果を残せるよう頑張りたいですね。
ワールドオールスタージョッキーズは札幌競馬場で行われます。
比較的乗り慣れている場所なので、もし出られたら面白いと思いますけどね。
普段から師匠の角川調教師を尊敬されていることが我々にも伝わってきます。桑村騎手にとって、角川先生はどんな存在ですか?
先生のおかげでここまでいい結果を出せるようになったと思っているので、感謝してもしきれないですね。人としても尊敬できる先生です。例えば僕がよその厩舎の馬で勝ったときも、うちの先生が「よかったな」ってその調教師さんに連絡してくれたりするんですよ。
弟弟子の阿部龍騎手の活躍もめざましいですね。
すごく刺激になりますね。龍が活躍すればするほど、自分も頑張んなきゃいけないなという気持ちも強くなります。お互いに高め合っていける存在です。
では、最後にオッズパーク会員の皆さんへメッセージをお願いします。
今年も北海道から全国区になる2歳馬が多く出てくると思うので、特に2歳戦に注目しながら観ていただければうれしいですね。出世する馬たちを早くから見つけられるのが、ホッカイドウ競馬の楽しみだと思います。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴
デビュー24年目、今や岩手の騎手の中でも年長の方になった村上忍騎手。長く騎手リーディングでトップを争っているだけでなく騎手会長としても岩手の騎手のリーダーとして活躍している。
騎手会長として2017年度開幕の宣誓を行う
4月1日に岩手競馬の2017年シーズンがスタートしました。新シーズンを迎えての意気込みをお聞かせください。
地元での勝ち星を獲得していくだけでなく、今年は重賞を狙えそうな馬を何頭か乗せてもらっているのでそれでしっかり結果を出すということと、機会があれば遠征に行って良い結果を残すということも目標ですね。
この後ベンテンコゾウで北斗盃に挑戦という話もありますしね(※インタビューは4月9日、その後4月18日に北斗盃を勝利)。
良い形のレースができればベンテンコゾウにとっても先々の選択肢も拡がるでしょうし、そういう内容を大事にしたいです。
ベンテンコゾウ(奥州弥生賞)。その後北斗盃も制した
少し戻って2月ですね、エンパイアペガサスに騎乗して報知グランプリカップを勝ちました。村上忍騎手は南関東の重賞を勝つのはこれが初めてでしたね。
というか、岩手以外で、遠征で重賞を勝った記憶がないので、これが初めての勝利だったんじゃないかな(※記録を調べたところ、村上忍騎手の他地区重賞勝ちは初めて)。
新シーズンはそんな風に、遠征する、遠征して活躍するという機会も多くなりそうですね。
最近、馬を遠征させて戦うという機会が減ってきているんでね。今年は遠征するチャンスもありそうだから、自分にとって、もちろん馬にとっても糧になるので楽しみにしています。
話が出たので、まずベンテンコゾウについて。今の時点でこの馬の評価をしていただくとどんなコメントになりますか?
とにかく動きの良い馬ですね。走りが軽くて背中の感じが良くて。もちろん課題がないわけではないんですが、走る力に関しては僕はかなり期待をしています。その力の部分が遠征することではっきり見えてくるのではないかとも思っています。
もう1頭、エンパイアペガサスですが、こちらは既に重賞も勝っているので、そのぶん期待が高まったところから始まるわけですけども、どれくらい楽しみにしていればいいですか?
当面は地元で走るということで、その中ではマーキュリーカップも使うプランもあるそうですので、そこでどれくらいやれるか。地元馬との戦いも当然ですが、交流重賞でどんな戦いができるか?ですよね。この馬は一戦一戦力をつけてきているし、報知グランプリカップも、必ずしも高い評価ではなかった中で勝ち抜いたということが自信になった。今後はもっと強い馬と戦う機会も出てくるでしょうから、この馬自身ももうワンランク上の力をつけてくれるようなら面白いですね。
2月8日、船橋・報知グランプリカップをエンパイアペガサスで制覇
エンパイアペガサスは、ベンテンコゾウもそうなのですが、まだ力をつけそうだというのも楽しみですよね。
そうですね。どちらもまだ伸びしろはあると思いますよ。
古馬と3歳馬に良い馬がいる。これで2歳馬にも良いお手馬ができたら、今年もまた全世代で活躍できますね。
2歳馬はね、まだまだこれからで、秋になってデビューしてくる馬もいるでしょうから、本当に巡り合わせなんでね。良い馬に出会えれば良いですね。
村上忍騎手にもうひとつ聞いておきたいのが、ベテランとして、騎手会長としての立場から見た岩手競馬や各地の競馬です。新シーズンは各地で変化が多い幕開けになりました。
今年は岩手競馬でも賞金が見直されて、自分たちのモチベーションにもつながると思っているのですが、それが良い馬が集まることに、そして良いレースにつながってお客様達により楽しんでいただければ、自分たちもさらにやりがいが出てくる。そういうふうに良いサイクルになっていけば、と思っています。
村上騎手は騎手会長を務めて6年目ですか。騎手として自分のレースのことを考えるだけでなく、いろいろなことにも目を配らないといけないのは大変だなと思って見ています。変な話、自分自身の希望と騎手会としてやるべきことと、矛盾したりもするわけじゃないですか。
そんなにたいしたこともしてないんだけど(笑)、まず騎手としては事故が起こらないようにとか、騎手会としては若い騎手たちの生活を守るという方向になりますよね。競馬組合などにいろいろお願い事をしたりもあるし。それに、やはり自分たちの生活を守るための意見も言わなくちゃならないし。競馬を良くするためと思ってある程度共存していくようじゃないとうまくいかないんじゃないか......と考えているけど、自分だけ良ければっていうことを言ってしまっているかもね(笑)。
では、オッズパーク会員の皆さまにメッセージをお願いします。
オッズパークの会員の方々はね、よく盛岡に集まってくださったりとか協賛レースを行っていただいたりしてもらっています。自分たちも一緒に写真を撮ったりとかね。ネットで馬券を買っていただくのも有り難いのですが、機会があればぜひ盛岡や水沢で生のレースも見て下さい。自分たちも皆さんに楽しんでいただけるレースができるようがんばりますので。
ダンストンレガーメで留守杯日高賞を制し、この春はやくも重賞4勝目
かつて村上忍騎手にインタビューした際には菅原勲騎手や小林俊彦騎手を追いかける立場としてお話を聞くことが多かった。そんな両騎手が引退し、キャリア的にも実績的にも、また騎手会長としても岩手の騎手のトップに立って引っ張る立場になり、村上騎手の話すスタンスもかつてとは変わったように感じる。
自分のレースを戦いながら、同時に若い騎手達の相談を受けたりあるいは競馬組合や調教師会と交渉したり会議に出たり......という日常は実際非常に多忙なはず。だが村上騎手は"まだ枯れるつもりはないよ"とひと言。インタビューの中にあったような遠征での活躍もバネにして、まだまだ存在感を見せ続けてくれるに違いない。
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※インタビュー・写真 / 横川典視