藤本匠騎手が、8月26日ばんえい第7レースをドントコイで勝利し、デビュー35年目で、ばんえい競馬では前人未踏の4000勝を達成しました。2012年に「ミスターばんえい」こと金山明彦元騎手(現調教師)が持っていた最多勝利記録3299勝を塗りかえてから、自身の持つばんえい最多勝記録を更新し続けています。
4000勝おめでとうございます。その後変化はありましたか?
会う人会う人におめでとう、って言われました。4000も勝つくらい、騎手やっていると思わなかった。よく乗っていたな、って。
達成した日は3998勝で迎え、5レースをジーワンキングで勝利。8レースもコウシュハアレッポで連勝し1日3勝でした。この日は人気馬が多かったので意識していましたか?
後半開催だったから人気馬に乗ることはわかっていたけど、それより前半にいい馬が集まっていたのに2着ばかりで歯がゆかった。2着ばかりで、と思ったけれど勝つ時ってこういうものなんだよね。焦ってもどうにもならない。その馬のいい乗り方をするだけ。ただ、周りが「もう少しだね」と言ってくるから、早くすませたかった(笑)。
ジーワンキングは強い馬がいたがよく勝ってくれた。ドントコイは、前でためて障害を切り、末脚にかける馬。それがうまくいっていいレースだった。ほっとした、馬に感謝です。
8月26日第7レースで通算4000勝を達成
7月29日8レースのレインボーライデンでの勝利がちょうど3万回騎乗でもありました。
怪我なく乗れたのが一番だと思う。4000勝できたのも感謝だが、3万回乗せてもらえたのが騎手としてありがたい。勝てる可能性のある騎手を乗せる、という世界だから。
勝てる馬に乗せてもらうのが大変な世界。昔は、金山(明彦)さん、久田(守)さん(いずれも現調教師)など、個性的な騎手がいっぱいいた。特にハミの扱いがうまい。レースの後ビデオを見たりして、どんどん吸収できた。そこから技術を盗んだりして、引き出しを調教師や馬主に信頼してもらい、乗せてもらった。金山さんの現役時代は、12月で開催が終わっていた。1日の最大騎乗数も6回(今は7回)だし、今の時代なら、金山さんはとっくに4000勝してたんじゃない。
今まで、大きな怪我がないですよね。
特に何もしていないんだけど......。食べ物の好き嫌いはないな。釣りにゴルフ、気持ちを切り替えているかな。温泉も行く。ここ2、3年は調教の前にストレッチはするけどね。怪我するのが嫌だから。
厩舎にいると規則正しくなるよ。ナイターだと9時に終わって風呂入ったら、10時半には眠くなる。次の日、朝5時には調教。休みの日も同じような生活になるよ。
JRAジョッキーデーで、JRAの勝浦正樹騎手をミサキセンショーで勝利に導いた時も普段のレースのように追っていました。イベントでも本気の追いっぷりが気持ちいいです。
勝浦が勝ったことないっていうから(笑)。勝浦騎手も、自分で追っていたよ。一人でも乗れると思う。
期待の馬について教えてください。
ハマノダイマオー(牡2)はハナ走るし、障害がいい。父のハマナカキングはスピードタイプで、血統的に降りてからの脚がいい。
センショウニシキ(牡3)は体ができれば面白いと思う。
コウシュハウンカイ(牡7)は、いつも(1シーズンに)重賞を1つしか勝てないんだよな。獲れそうで穫れないんだ。ばんえい記念は、もうひとパワーつけば楽しみだね。
マルミゴウカイ(牡4)は、古馬と戦うことになる来年、今のオープン馬相手にどこまでやれるかだね。成長していけば楽しみじゃない。
ばんえい十勝オッズパーク杯をコウシュハウンカイで制覇
今後の目標は。
もう55歳だし、1年1年事故なく、病気なく毎日乗れるようにしたい。「もう少し!」「負けて悔しい!」という思いをしているうちは、騎手をやりたい。
騎手も世代交代をしていかなくてはならないから、今後のことも考えるようになってきた。4、5年前の賞金なら調教師になることは考えられなかったが、売り上げが良くなってきたから、この世界にずっといるのなら調教師になることも考えなくてはいけない。ただ、騎手をやりたいという若者がいないからね。今の賞金なら、騎手になってもやっていけると思うんだけど。
騎手の魅力はなんでしょうか。
3日間競馬場に缶詰めだし、厳しい規則もある。それでもやるのはなぜかというと、収入もあるけど、馬が好きではないとやっていけない。好きな仕事ができて、稼げて、というのができる人はなかなかいない。ありがたい。勝てない時は辛いが、好きでやっている世界だから、辛いと思ったことはない。馬も好きだけど、騎手って仕事も好きだよ。負けたらどうやって次勝つか、調教や乗り方を考え、それがうまくいくと楽しい。
最後に、オッズパークの会員の方に一言お願いします。
インターネットで購入している方というのは帯広から遠い人が多いのかもしれない。でも、迫力があるからぜひ生でばんえいを見てほしいです。
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※インタビュー / 小久保友香(写真:小久保友香・小久保巌義)