デビュー14年目を迎えた笠松の筒井勇介騎手。これまで、エレーヌと共に東海ダービーを制覇したり、騎乗馬集めに苦労した時期があるなど、激動の騎手人生を送っています。今年はケガの影響で1か月半の休養期間がありましたが、無事に復帰を果たした今、今後に向けての意気込みをお聞きしました。
まずはケガからの復帰、おめでとうございます。
ありがとうございます。これまで1週間くらいのケガはあったんですけど、骨折は初めてで、1か月半休んだのも初めてでした。この仕事をしていたらいつかはと覚悟はしていたんですが、まさか手の甲を骨折するとは思わなかったです。朝調教に乗ってる時に、すごく物見をする馬だったんですけど、物見をして思いっきりクビを上げながら横に飛んだ時、馬のクビに手の甲がバーンと当たってしまったんです。次の日もレースだったし、3日後にはJRAの遠征も控えていたのでできれば乗りたかったんですけど、病院に行ったら骨折と言われて、すごくショックでした。
昨年から今年にかけて、いい流れでしたもんね。
そうなんです。JRAの遠征もそうですけど、ツテもできていい流れでした。昨年から地元での勝ち鞍も増えていたし。こんな時期に...とショックを受けて、けっこう落ち込みました。レースを見ていると置いて行かれるような気がして辛かったです。でも、少しずつ気持ちが落ち着いて来て、こういうことも仕方がないかなと思うようになしました。手以外は動かせるので軽く運動したり、リハビリにいったり、いろいろなところのレースを見たり。あと、普段は朝が早いので夜はあまりテレビが見られないんですけど、ちょっと夜更かししてテレビを見たりして気持ちを切り替えました。ケガをしたのは残念でしたけど、いろいろ考え直すいい機会だと思って、ケガが治ってからは体を鍛え直そうとジムに通い始めました。
具体的には、どんなことを念頭に置いているんですか?
体というか、体幹を鍛える感じです。もっと体の使い方を上手くしたいんですよね。自分の体形に合った乗り方の中で、理想としているのは福永祐一騎手の乗り方です。乗り方だけじゃなくて、その考え方もすごいなって思ってて。あれだけのトップジョッキーなのに、今も変わろうとしていること、本当にすごいと思います。トレーナーの方もつけているし、第三者の方に騎乗フォームをみてもらうっていう発想もこれまではなかったじゃないですか。そういう、変われる力を尊敬しています。
いつ頃からそういう意識を持ったんですか?
やっぱり、エレーヌが死んでしまったことが大きかったです。もっと自分がしっかりしていたら、もっとエレーヌは楽だったんじゃないかって。気性の激しいところがあって、難しい部分もあったけど、本当によく頑張ってくれる子でした。初めて重賞も勝たせてくれて、東海ダービーも勝たせてくれて、いろいろな競馬場に連れてってくれて。感謝してもしきれません。最後は門別からの遠征後に死んでしまって、本当にショックで...。今でもよく考えますね。エレーヌがいなくなったあと、自分自身の調子も悪くなって、全然勝てなくなって。その時にいろいろ考えて、今のままじゃダメなんだって思いましたし、自分の技術のなさを痛感しました。エレーヌや関係者に恩返しするためにも、もっともっと上手くならなきゃって思っています。
エレーヌで東海ダービー制覇(2010年6月4日)
その努力の甲斐あって、昨年は地元笠松で74勝、リーディング第4位に躍進しましたね。
そのいい流れで今年も来ていたんですけど、そこでケガっていう...。なかなか上手くはいかないですよね。それでも、腐らずにがんばります。この仕事をしていると心が折れそうになることがあるけど、一度騎手を辞めようかなと思った時、助けてくれた人がいて。その繋がりでエレーヌに出会うことができたし、本当に人と人の繋がりは大事ですよね。そこで支えられていると思います。
笠松はトップジョッキーとして君臨していた尾島徹騎手が、31歳という若さで調教師免許試験に合格しました。これからリーディング順位も変動がありそうですね。
そうですね。尾島くんが抜けたことは相当大きいと思います。近くでがんばっている姿を見て来ましたから、調教師としても成功して欲しいですね。騎手リーディングは、今年はこのまま吉井(友彦騎手)くんが行くんじゃないでしょうか。たくさん調教もつけているし、すごくがんばってますから。あと、佐藤友則騎手も燃えてますよ。リーディングを獲りたいっていう強いモチベーションを持ってますね。僕ももちろん負けてられないです。がんばり次第で上に行けるけど、ここで結果を出さないと取り残されるという危機感も持っています。
では、今後の目標を教えて下さい。
目の前の目標は、1つ1つ丁寧に乗って結果を出していくこと。それが積み重なってリーディング順位にも繋がって行くと思うので。吉井くんやともくん(佐藤友則騎手)という同年代ががんばってますから、僕もリーディング争いに加われるようがんばります。そのために、毎日スキルアップしていきます!
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インタビュー / 赤見千尋
愛知の木之前葵騎手が、6月23日の名古屋第9レースで通算100勝を達成! 5月には初の海外騎乗となったイギリスで勝利を挙げるなど、快進撃が止まりません。デビューから3年目を迎えた今、木之前騎手の胸の内を伺いました。
まずは100勝達成おめでとうございます。
ありがとうございます。実は、しばらく勝てなかったんですけど、前開催(6月9日~12日)で4勝できて、今開催(6月23日~26日)の初日に2勝して決められたのでホッとしました。ひとつの目標だったので、達成できて嬉しいです。去年50勝を達成した時は自分の誕生日(7月10日)だったんですけど、100勝は誕生日より前に達成できたので、去年よりは早いペースで勝てているのかなと。ただ、今はまだ波があるので、そういう部分を直していけたらと思います。
6月23日第9レース、アルマベルヴァに騎乗して通算100勝を達成
デビュー3年目、ここまでハイペースで勝ち星を挙げている印象ですが、ご自身ではいかがですか?
そうですね、そう考えると自分でもびっくりというか。同期はすごくレベルが高くてセンター時代は一番下手だったんですよ。だからデビューする時も全然自信がなくて...。でも、錦見勇夫先生はじめ周りの方々が助けてくれて、本当にいい環境で過ごさせてもらっています。だからこそ、本当はもっと勝たないといけないんです。今は本当に馬のおかげで勝っていて、自分の力ではないので。いい馬に乗せてもらっているのに、自分のミスでちょっと負けてしまうことが多くて...。もっともっと体力を付けて、技術を磨いていかないと。チャンスをもらっている今、努力して成長できなかったら、もう乗せてもらえなくなってしまいますから。
謙虚ですね。
いえいえ。本当に馬たちのおかげなんです。錦見先生からも、「安心して見ていられない」と言われますし、自分でもその通りだなって思う部分があって。細かい技術面はもちろんですけど、体力をもっと付けないと馬に負けてしまうなと。それに、自分の思ったようなレースはまだまだ少ないですね。特に最近は余計少なくなった気がしているんです。前はもうちょっと考えたように乗れていたのに、今は考え過ぎなのか、思ったように乗れなくて悩む日々で...。ただ、馬に乗るのは本当に楽しいし、いい馬たちに乗せてもらってるので、もっと頑張りたいです。
100勝を達成しましたが、これからの目標というのは?
自分のお手馬は、未勝利の子はいないようにしたいです。今回の開催で未勝利だった子で勝てたんですけど、やっぱり調教からずっと乗ってて、一緒にレースを覚えて勝つと、すごく嬉しいです。大きな目標は、宮下瞳さんの女性騎手最高勝利記録(地方競馬通算626勝)を超えること。ただ、別府真衣さんもすごいので、まだまだ遠い目標です。
5月にイギリスで参戦したレディースワールドチャンピオンシップ(働く女性を支援するシェイカ・ファティマ・ビント・ムバラク妃殿下の活動の一環として、女性騎手を招待するシリーズ競走で、年間、世界各地で13戦行い、その年の11月にアラブ首長国連邦のアブダビで第14戦を『ファイナル』として締めくくる)では、見事な勝利でしたね。
ありがとうございます。本当に運が良かったです。海外自体が初めてだったので慌ててパスポートを取って、今回は母も一緒に行って来ました。リングフィールド競馬場は広々としていて、自然の中にある競馬場という感じでした。残念ながら芝のレースじゃなくてダートでした。コースの形も変わっていて、おむすび型みたいな感じなんですけど、直線が3回あって。みんなでコースを歩いてみたら、不思議な感覚でした。レースは、日本とブラジル以外の方はプロではなくてアマチュアの方だったので、なんとなく遠慮している感じでした。みんなが遠慮している間に前に行って、ジーっとしていて。直線も馬がよく頑張ってくれましたね。今回騎乗した馬はサラブレッドではなくて、アラブだったんです。初めて騎乗できて嬉しかったですね。サラブレッドよりも少し小さくて、素直でとてもいい子でした。
初めての海外遠征で勝利
初の海外で勝利したというのはすごいですね。
腹を括っていつも通り、平常心で乗ることを心掛けました。でもびっくりしたことも多かったです。日本と違って、パドックで跨って馬場に出たら、2分くらいでもう発走なんですよ。アブミの長さを調整している時に枠入りが始まっちゃって、「ちょっと待ってー」って慌てました(笑)。それに、ムチの使用回数が決まっていたり、日本とはルールが違うということも大きかったと思います。ムチの使用回数はいつもは気にしていないけど、何回使ったかとか考えていないといけないので、それで冷静になった部分もあるのかもしれません。
一緒に行ったお母さんも喜んだんじゃないですか?
すごく喜んでくれました。ちょうど10日が母の日だったので、表彰式でもらった花束を「母の日だから」って言って渡したんです。いい親孝行ができたんじゃないかなと思います。ただ、父は仕事があって一緒に行けなかったので、自分も行きたかったって文句言ってたみたいです(笑)。今回勝てたので、11月のアブダビにも出場する予定なので、そこは両親と一緒に行けたら嬉しいです。そこに向けて、もっともっと上手くなりたいですね。
それでは、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
いつも応援していただき、本当にありがとうございます。名古屋は7月の後半から、大規模な馬場改修があるんですよ。路盤から直して、砂も今までとは違う砂を入れるみたいなので、馬場傾向がガラっと変わると思います。どんな風に変わるのか、すごく楽しみです。おそらく、今までとはレースの傾向も変わって来ると思うので、そこをしっかりと勉強して、皆さんの期待に応えられるようなレースができるよう頑張ります!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:愛知県競馬組合)
今年4月にデビューした小林凌騎手。4月18日にデビューして翌々日の20日に早速初勝利を挙げ、順調なスタートを切った。
6月28日までの成績は60戦6勝で、今季の岩手は例年に比べ在厩頭数が少ないために少頭数のレースが目立ち、小林凌騎手もなかなか騎乗数を確保できないが、それでも勝率10.0%・連対率13.3%は立派な成績ではないだろうか。今回はその小林凌騎手にお話をうかがった。
では、騎手を目指したきっかけから聞いていきましょうか。
父が競馬が好きで、JRAのレースを父と一緒にテレビで見たり競馬場に行ったりしているうちに自分も好きになりました。小学校5、6年の頃ですね。
父はスペシャルウィークが好きだったのですが、自分が覚えているのは2006年くらいからでしょうか。ディープインパクトとかの頃ですね。
それで騎手を目指してみよう...と。JRAの騎手学校は考えなかったのですか?
JRAも受けたんです。でもちょっと厳しいだろうなって感じて。受験生がもの凄く多いし、自分のように競馬関係ではない家庭からではなかなか...っていうのもありました。受験に向けて1年間専門学校に通って乗馬等を勉強して、自分なりに準備をして挑んだのですが、やっぱりいろいろ難しいな、と。それに、JRAの騎手学校は合格しても卒業できるとは限らない。何年もかけて結局騎手になれないかもしれないより、少しでも早く騎手になりたかった。それで地方競馬の騎手を目指す事にしました。
そんな息子を、ご家族の皆さんはどんなふうに見ていたのでしょう?
そうですね、いろいろ考えてくれたように思います。アニベジ(アニマル・ベジテイション・カレッジ)にも通わせてくれましたし。
お母さんのフェイスブックを見ると、凌君のためにおかずを作って持ってきてくれたりしているようだけど? 栄養とかいろいろ目先が変わるようにとか、気を遣って作ってくれてるみたい。
え、母のフェイスブックを知ってるんですか(笑)。自分は減量をあまり気にしなくて良かったからわりと何でも食べる事ができて、母の料理などもそんなに難しく考えずどんどん食べていたんです。でも、そうやって考えてくれているのはありがたいですね。
初騎乗時。ちょっと緊張気味?
話を進めて、競馬学校を通過して今は騎手になっているわけですけども、本物の"騎手"になってみて、自分の思っていたのと違った...みたいな事はありましたか?
"思っているようには騎乗できない"でしょうか。小さい頃にテレビで見てカッコいいな、あんなふうにレースしたいなと思って騎手になったのですが、やはりそう簡単に、思っているようには乗れないですね。
それはテクニック面? 体力面で?
スタート、道中で息を入れる所、レース勘、体力...。全部ですね。まだまだなんだと思います。スタートがイマイチだからって焦って追っつけていったら後半自分がバテたりとか...。
見ている方としては、まずます順調に勝って経験も積んでいるんだな、って思っているけど。気持ち的には楽になってきたんじゃないですか?
いや、逆にまだまだだ、って感じがします。強い、勝てる馬に乗せてもらっているから勝てているけどそれに頼ってばかりじゃいけないですし。他の馬でも、自厩舎の馬ばかりじゃなくて他の厩舎の馬でも結果を出せるようになってこそ先生(板垣吉則調教師)に認めてもらえると。
2015年4月20日水沢第2レース、コスモリボンに騎乗して初勝利
デビュー前の小林凌騎手を見ていると、結構自信家なように感じたけども?
そんな自信家じゃないですよ。まだまだ全然です。デビューしてからいろいろ自分に足りないものも見えてきました。
凌君の所属する板垣厩舎は毎年リーディング上位を争っていて、良い馬・強い馬が多いですよね。自分の手で乗って勝ちたい...とか思ったりしませんか? しますよね?
自分もレースで乗りたい、自分の手で勝ちたいと想像したりもしますが、今の自分じゃまだまだですから。一日も早く自分も巧くなって、厩舎の成績に貢献できるようになりたいです。
調整ルームでの生活にはもう慣れましたか?
慣れました。自分は菅原辰徳騎手と相部屋ですが、辰徳さんが怪我でしばらくいなかったりしてしばらくは個室みたいな感じでした。ルームでは、ビデオでレースを見直して、ごはんを食べて寝る...でしょうか。ゲームとかはしないです。
調教は何頭くらい乗っていますか?
だいたい15頭前後でしょうか。板垣先生や厩務員さんも乗って、ほとんどフル回転で調教しています。
では最後にファンの皆さんにひと言アピールをお願いします。
ファンの皆さんに納得して貰えるよう、期待に応えられるような騎乗ができるよう、がんばります。
盛岡でも勝ち星を挙げた
昨年の実習時の小林凌候補生の印象は「結構話し好き」だったが、4月のデビュー前後は、やはり緊張する所があったのか口数が減って表情もちょっと厳しい感じになっていた。しかしそれも、デビューから2カ月経ってだいぶこなれて、緊張が解けてきたように見える。
デビュー前に聞いた時には「30勝が目標です」と意気込んでいた小林凌騎手。今のペースだと20勝に届くかどうか...という感じだが、しかしそれだけ勝てれば全日本新人王争覇戦の出場も見えてくる。頑張ってほしい。
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※インタビュー・写真 / 横川典視
デビューから25年目を迎えた、兵庫の永島太郎騎手。小牧太騎手・岩田康成騎手に継ぐナンバー3の時期があったり、兵庫リーディングトップ10に入れない時期があったりと、まさに山あり谷ありの騎手人生を送っています。そんな永島騎手に、現在の想いを語っていただきました。
今年ここまで31勝(6月16日現在)、リーディング8位につけています。激戦区の兵庫で、2010年からは常にトップ10に入っていますね。
もっと勝ちたいと思っているけど、なかなか結果が出せていないです。数年間はもっと良かった時代があったので、現状に納得はできていないですね。兵庫だけじゃなくいろいろなところで乗せてもらって、上手な人はたくさんいるし、上には上がいっぱいいます。競馬は結果がすべての世界なので、誰かを意識するよりも自分自身との戦いですね。
今年25年目になりますが、ここまでのジョッキー生活を振り返るといかがですか?
気持ちも体もデビューした頃と変わらないつもりですし、40歳過ぎたけど年老いた感じはないです(笑)。いろいろなめぐり合わせの中で生きてきましたけど、振り返るとあっという間でした。僕のような波の激しい、激動のジョッキー人生っていうのはなかなかないんじゃないですかね。普通は平坦だったり、上ってそのままだったり、落ちてそのままだったりしますけど、僕は上がって下がってまた上がってのジェットコースター人生ですから(笑)
その激しい波というのは、どんなことが影響していると思いますか?
自分自身は特に変わっていないと思うんですけど、人から見て評価されたりされなかったりという感じなんですかね。どんなに自分が頑張っていると思っても、人に評価されなければ上には行けない世界ですから。あとは、「よし!今から」という時に、2度大ケガをしたこともありました。腕じゃなく脚だったので時間が掛かって、半年休んだ時と4か月休んだ時がありましたね。こういうめぐり合わせもあるんだと思います。ただ、いろいろな出会いがあって、人付き合いは恵まれました。普通では出会えない人と会えたし、本当に有難い出会いが多いです。
永島騎手は地方の騎手には珍しく、かなり転厩が多かったですよね。
そうですね。最初は自厩舎の調教師が勇退して解散になったんですけど、当時はいい順位にいたので、勝負を賭けようとリーディングトレーナーの厩舎へ移りました。でも結果を出すことができなかったし、周りからもあまり良く思われなかったですね。
リーディング厩舎へ移籍というのはかなり目立つ行動ですし、そういう積極的な動きを良く捉えない人もいますよね?
あの頃は精神的に辛かったですね。なんだか八方塞がりみたいな感じでした。これまでと同じ世界の中で勝負しているけれど、環境が変わると人の見る目も変わりますから。でもその時、家族をはじめ身近な人たちが助けてくれて。特に、妻の父から言われた言葉が今でも忘れられません。昔の人の言葉なんですけど、「過去と人は変えられないけど、未来と自分は変えられる」っていう。人が人がと考えていても仕方ないし、なるようにしかならないんだなと気持ちを切り替えられました。
激動のジョッキー人生を25年間続けて来られたモチベーションというのは?
やっぱり、結婚して家族ができたことが大きいですね。家族に対する責任もありますし。それに、僕は騎手という仕事が大好きなんですよ。まだまだ乗っていたいし、もっと上手くなりたいです。1レース1レース、まだまだ反省点がいっぱいありますから。
騎手・永島太郎の売りは何ですか?
技術的には負けてないと思っています。プロの世界なので、そこは負けたくないですね。
具体的なことを言うと、捌きです。馬群にいる時、(アクセルを)踏んでから詰まると控える力が大きくなってダメじゃないですか。同じ詰まるでも、踏んでから詰まるのと踏む前に詰まるのでは全然違うので。踏んで控えて踏んで控えてみたいなシーソーのようなレースはダメなので、そこは大事にしています。流れの中で今踏めば大丈夫というのはわかって来ました。そういう部分の技術では負けないです。ただ、結果がついてこないと負け犬の遠吠えになるので、もっと経験を積んでもっと上手くなりたいです。
昨年の六甲盃では、ハルイチバンに騎乗して逃げ切り勝ち。人気馬を抑えての勝利は気持ち良かったんじゃないですか?
そうですね。あの時は代打で騎乗のチャンスをもらって、積極的なレースをしました。逃げたので砂も飛んでこなかったし、本当に乗ってて気持ち良かったです。ああいうチャンスを物にして、自分のお手馬に繋げて行けるかがカギですから。
2014年3月6日、ハルイチバンで六甲盃を勝利(写真:兵庫県競馬組合)
では、今後の目標を教えて下さい。
2000勝という数字が見えて来たので(6月16日現在1820勝)そこに向かって頑張りたいです。今の流れだと、劇的に勝ち星が変わることはないけれど、1つ1つコツコツと積み上げて行きたいですね。園田では毎年2000勝以上のジョッキーが集まるゴールデンジョッキーカップがあって、2000勝というのはやはり意識しています。あのレースは誰もバタバタしないんですよね。個々に色んなアクションはしているけど、無駄な動きをしないんです。進路も甘くないし密集して走っている中で、ギアチェンジもしっかりしているし、完全に手の内に入っているから少しの隙間、一瞬の隙間を付いてパッと伸びて来られる。間近で見ていてとても勉強になります。
兵庫は常に激戦区と呼ばれますけれども、ここ最近も、若手からベテランまで揃っていますね。
みんな生き生きと乗っているんで、そういう中で僕も乗れて楽しいです。特に最近は若手が頑張っていますよね。その中でも僕が注目しているのは鴨宮祥行です。体が大きくてまだ無駄な動きが多いけど、すごく頑張っていますよ。乗り馬で成績が左右されるので、今後は技術を磨くことと、人間関係が大事。周りから信頼されて、可愛がってもらえるジョッキーになって欲しいです。
今年も『その金ナイター』が始まりました。4シーズン目ということで、かなり定着しましたね。
でも地元でもまだ知らない人がいるんです。競馬は衣食住には関係ない、なくても生きて行けるものなので、継続的に魅力を伝えていかないと。ナイターはまた違う視点で見てもらえるし、平日の昼間では見られない人にも見てもらえるので、たくさんの方に楽しんで欲しいです。どこの競馬場ももちろんですけど、その中でも兵庫のレースは激しいと思っています。ギリギリのところで戦っている、激しいバトルを見て下さい!
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※インタビュー / 赤見千尋
今年4月にデビューした佐賀の山口以和騎手は、同期の93期生の中で最初に初勝利を挙げ、すでに6勝を挙げる活躍を見せています(5月15日現在)。これからの成長が楽しみな佐賀の新星に、お話を伺いました。
(写真:地方競馬教養センター)
以和(もちかず)というお名前はかなり珍しいと思うのですが、どんな由来があるんですか?
両親が付けてくれたんですけど、よく「珍しい」って言われます。聖徳太子が作った十七条の憲法の第一条に、『一に曰く、和を以て貴しと為し、忤ること無きを宗とせよ』ということが書いてあって、原文だと『以和為貴』となるんですよ。そこから来ているみたいですね。
さらにお名前に対してなんですけど、苗字が"山口"ということで、佐賀のリーディング山口勲さんと繋がりがあるんですか?
それもよく言われます(笑)。でも全く関係ないんですよ。僕は東京都出身なので。でも苗字が山口さんと同じで、兄弟子は鮫島(克也)さんなので、佐賀のツートップには可愛がってもらっています。
4月5日、デビュー5戦目での初勝利(写真:佐賀県競馬組合)
騎手を目指したきっかけは何ですか?
もともと父が競馬好きで、小さい頃からずっと見ていたんです。物心ついた時には自然と騎手になりたいと思っていました。印象に残っているのは、ヒシミラクルの菊花賞です。あの時ノーリーズンが落馬したんですよね。「競馬っていうのはこういうこともあるのか」と思いましたけど、騎手になりたいという気持ちは変わらなかったです。
地方競馬教養センターでの2年間はどうでしたか?
僕は小さい頃から騎手に憧れていた割には、馬に乗っていなかったんです。だから、センターでは初心者でした。最初のうちは馬に乗れることがすごく楽しかったんですけど、だんだん周りが見えてくると、乗馬経験のある同期との差が大きくて......。そこからは大変でした。辛いこともいっぱいあったけど、でもやっぱり終わってみれば楽しかったですね。
東京都出身ですが、佐賀競馬場を選んだ理由は?
親戚が福岡にいるので、九州という土地が身近だったことと、あと新人がいないんですよ。他の競馬場は同期か近い期でデビューしている新人がいるんですけど、佐賀はいないので、ここで頑張ってみたいなと思いまして。特にツテがあったわけではないのに、所属にしてくれた手島勝利先生には本当に感謝しています。鮫島さんが兄弟子だし、すごく恵まれた環境ですね。
(写真:佐賀県競馬組合)
4月4日にデビューして、5日にはもう初勝利を挙げました。同期の中でも一番乗りでしたね。
はい! 一番に勝てたことはすごく嬉しいです。やっぱり同期のことは意識していますし、絶対に負けたくないので。デビュー戦は、自分では緊張してないって思っていたんですけど、冷静になって振り返るとガチガチだったなと(苦笑)。初勝利は2日目で挙げられたんですけど、「勝ちたい!」という気持ちよりも「この馬のレースをしよう」と思っていたんです。上手く逃げることができて、向正面で田中純さんが来たら馬がハミを取ってくれて、その時もまだ落ち着いて乗っていられました。でも3,4コーナーの中間でチラっと後ろを見たら誰も来てなくて、そこで初めて「勝てるかも...」と思ったら急に体に力が入ってしまって...。そこからはもう必死すぎて、フォームがバラバラになってしまいました。本当に馬のお蔭で勝たせてもらったんです。
デビューからすぐに初勝利を挙げられたというのは、大きいんじゃないですか?
1勝できたことは本当に嬉しかったです。でも本当にまだまだなので......。実は、次の週のスリーバリアントという馬で初勝利するんだって思っていたんです。すごくいい馬で、厩舎としてもそういう期待を持っていて。僕としてはその前に初勝利ができて気持ちが楽になるはずですけど、「2勝目だ!」って意気込んでしまって。レース中は周りが見えなくなって、結局兄弟子の鮫島さんにハナ差で差されて2着......。次にスリーバリアントに乗った時にも気持ちが先行して、ゲートでびっくりするくらい引っ張ってしまってまた負けたんです。「勝ちたい!」「勝てる!」と思うと、どうしても気持ちが入りすぎてしまう......。自分が入れ込んではいけないと本当に思いますね。今、6勝させてもらったんですけど、スリーバリアントでは勝てていないので、この馬で勝つことが今の目標です。
デビュー1か月半で6勝というのは、かなりいいペースだと思いますけど。
ホントですよ。こんなに上手くいくというのは想定外でした。このペースではずっと行けないと思っています。今はいい馬に乗せてもらってたまたま勝たせてもらっているけど、ここで経験を積んで実力をつけて、自分自身の力で馬をサポートできる騎手にならないと。1つ1つを大事に、取りこぼさないように心がけています。
初勝利の口取り。右から2人目が手島勝利調教師(写真:佐賀県競馬組合)
憧れの騎手はどなたですか?
やっぱり兄弟子の鮫島さんです。一緒に乗っていると本当にすごいと思いますね。当たり前のことを当たり前にやるんですよ。実はそういうのって難しいじゃないですか。それに、引き出しの数が多くて、「こんなこともできるんだ」っていつも驚きます。自厩舎は本当によくしてくれて、実習の頃からほとんどの調教に乗せてくれたんですけど、エスワンプリンスだけは乗ったことがないんです。難しいところのある馬だし、佐賀の看板馬なので期待も大きいですから。今は、エスワンプリンスを任せてもらえるような騎手になりたいと思っています。
鮫島騎手は厳しいですか?
レースには厳しいですけど、普段は優しいですよ。デビューしてすぐ、けっこうな数に乗せてもらっているので、鞍が足りなくて。そうしたら鮫島さんが鞍をくれたんです。実はその前に鮫島さんの鞍を勝手に借りてしまって怒られたんですけど......。ちょうど鮫島さんがいなくて、事前に言えなかったんですよ。鮫島さんには本当にいろいろな面でお世話になっています。
では、ファンのみなさんにメッセージをお願いします。
ここまで順調に来ているので、なんとか新人賞を獲りたいと思っています! 佐賀は山口さんと鮫島さんというツートップの壁が厚いですけど、いつかそこを崩せるように精一杯頑張ります。ぜひ佐賀競馬に注目して下さい。
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※インタビュー / 赤見千尋