今回は番外編! ジョッキーインタビューではなくトレーナーインタビューです。
昨年から始まった、オッズパーク地方競馬応援プロジェクト(オッズパークとグリーンファーム愛馬会が共同で行っている、地方競馬向け競走馬ファンド)。その第一弾としてデビューした佐賀のローカルロマンは、新馬戦こそ3着に負けたものの、その後3連勝で見事JRA認定競走を制覇しました! 管理する東眞市調教師に、ローカルロマンについてたっぷりとお聞きしました。
まずは、3連勝でのJRA認定競走制覇(8月30日佐賀8レース)おめでとうございます! 1番人気に支持されての見事な勝利でした。
ありがとうございます。認定を勝つことを最初の目標にしていたので、勝ててホッとしました。ファンの方に人気にしてもらっていたので、期待に応えられて嬉しいです。初めて控える競馬をして、前の馬を差し切る競馬ができたので、勝ち方にも満足しています。今後が余計に楽しみになりました。
具体的にレースを振り返っていただきたいんですけれども、スタートはあまりダッシュが付かずに離れた3番手からとなりました。
最後にゲートに入れる順番だったので、山口騎手とも『ちょっと嫌だな』って話していたんです。というのも、デビュー戦の時に最後入れで全然ダッシュが付かなかった経験があったので。一番最後に入れるとすぐにゲートが開くので、そのタイミングだとまだボーっとしてしまうみたいなんです。2戦目3戦目は速かったけど、今回はちょっと怪しいぞと思って山口騎手も気合を入れて出していました。それでもやっぱりダッシュがイマイチでしたね。
2番人気のラヴインアクションと、同じ東眞市厩舎のガンバルスマート(3番人気)の2頭がハイペースで引っ張る展開になりました。
ガンバルスマートの方も勝ちに行く競馬で積極的に乗ってくれました。前半は少し速いペースでしたが、ローカルロマンにとってはいい展開になりましたね。エンジンが掛かってからは長くいい脚を使ってくれたし、山口騎手は『抜け出してから遊んでいた』と言っていましたから、まだまだのびしろがあると思います。
ローカルロマンはJRA認定競走(8月30日)で5馬身差圧勝。
レース後の様子はいかがですか?
さすがに食が細くなりました。牝馬特有のテンションの上がり方をしていて、なかなかご飯を食べないんです。まぁ、今回は絶対に勝ちたいということで調教でもけっこう攻めましたし、追い切りも好タイムで動いていたので、ある程度の反動は仕方ないと考えています。今後は馬の様子を見ながらゆっくりのペースで乗り始めて、次のレースを決めるつもりです。
具体的な予定というのは?
オーナーサイドと相談になりますが、直近の大目標は10月の九州ジュニアチャンピオンです。そこが1750mなので、その前に一度距離を経験させたいなという気持ちもありますね。馬の回復次第では、1開催休ませて9月の後半の開催でもう一度認定を使うかもしれません。
JRA認定競走を勝ったということで、先々にはJRAへの遠征も視野に入りますね。
意外と芝が合いそうな走りをしていますし、父スペシャルウィークで血統的にも合いそうですよね。デビュー前から認定競走を勝って芝で使ってみたいという気持ちはありました。なので、最初はフェニックス賞(8月15日小倉)を目指したいと思っていたんです。牧場さんやオーナーサイドと相談してかなり早めに入厩させていただいたんですけど、最初の新馬戦が頭数不足で成立しなかったのが痛かったです。認定競走は新馬戦を4レース消化しないと組めないので、今年は8月の終わりになってしまって...。例年通りだったら間に合っていたんですけどね。
となると、今後遠征に行くのは難しいですか?
権利はあるので、あとは時期と場所だけですね。阪神まで行くのはこの馬には厳しいと思うんです。輸送が長くなりますし、食の細い馬ですから。そうなると選択肢は2月の小倉になりますが、その頃は地元の牝馬重賞も始まってくるので。芝に挑戦してみたい気持ちと、牝馬重賞を獲りたい気持ちと...。嬉しい悩みですけど、どちらのローテーションを選ぶのかは難しい選択です。
今後の課題というのはありますか?
今回のレースで控える競馬で勝てたことはすごく大きいです。逃げても番手でもレースができるというのは大きな強みになりました。ただ、予想よりも時計が遅かったので、肉体的にも精神的にも、もう一段階パワーアップして欲しいです。とにかく一番は、ご飯を食べてくれることですね。厩務員さんが工夫して一生懸命食べさせてくれているので、少しずつ体ができてきましたが、将来的には450キロ台(前走434キロ)になって欲しいです。性格もまだ子どもで、他の馬を怖がって怯んだり、かといって誰もいなくなると遊んでしまったり...。まだ真剣に走ったことがないので、本当にこれからの馬だと思っています。
では、ファンの方にメッセージをお願いします。
オッズパークさんの地方競馬応援プロジェクトが始まって、第一弾の馬を預けていただけると聞いた時には、本当にうちでいいのかと恐縮しました。新馬からいい馬を預けてもらえるというのはとても有難いですし、本当にやりがいを感じています。ローカルロマンは入厩当初から高い能力を感じていましたから、ここまで無事に来て、結果を出すことができてホッとしています。ファンの方の期待に応えられるよう、スタッフ一同精一杯頑張りますので、これからもローカルロマンと佐賀競馬をよろしくお願い致します。
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※インタビュー / 赤見千尋 (写真:佐賀県競馬組合)
今年4月に金沢競馬場でデビューした柴田勇真騎手。約4か月で16勝を挙げ(8月18日現在)、順調なスタートを切りました。騎手を目指したキッカケから今後の目標まで、たっぷりと語っていただきます。
騎手になろうと思ったキッカケは何だったんですか?
テレビで競馬を見ていて、騎手ってカッコいいなと思ったんです。高校を卒業する時に将来のことを考えて、体も小さいし挑戦してみたいなと。その時、学校からの推薦で就職が決まりそうだったので、母は安定した職業に就いて欲しいって思っていたみたいですけど。でも騎手になるには年齢制限があるので、今しかチャレンジできないと思いました。高校を卒業してから茨城にある騎手になるための勉強をする専門学校に入って、最初はJRAの試験を受けたんです。そこは落ちてしまったんですけど、騎手になりたいという気持ちは変わらなかったので、地方競馬教養センターの試験を受けました。
教養センターでの生活はどうでしたか?
茨城の専門学校で一通り馬の経験を積んだので、入所した当初はすんなりと馴染めました。ただ、1期上の先輩たちが競馬場実習に行ってしまい、作業も馬に乗る頭数も倍になってからはけっこうしんどかったです。休む間もなく時間に追われて動き続けるので、そこが大変でした。
やめたいとは思わなかったですか?
騎手になりたいっていう気持ちが強かったですし、家族や友達に応援してもらって家を出て来たので、途中で帰るという選択肢はなかったです。
群馬県出身の柴田騎手が、金沢所属になった経緯というのは?
競馬の世界に知り合いがいなかったので、なかなか所属先が決まらなかったんです。最初の頃は南関東を希望していたんですけど、受け入れてくれる厩舎が見つかりませんでした。教官から「騎手は乗ってなんぼだぞ」って言われて、チャンスの多い競馬場がいいんじゃないかと思うようになって。ちょうどその頃、僕の1期上の中島龍也騎手が金沢でデビューしてすごく活躍していたので、金沢に行ってみたいなと思うようになったんです。それで希望を出したら、高橋俊之先生が所属にしてくれると言ってくれました。高橋先生はもともと高崎の調教師でしたから、僕が群馬県出身ということで受け入れてくれたみたいで。縁があって金沢所属になれて、本当によかったです。
デビュー戦(4月4日第1Rピースピース・5着)、そして初勝利(4月14日第11Rブラッシー)は覚えていますか?
覚えていますよ。デビュー戦は思っていた以上に緊張しなかったです。今思えばただつかまっていただけなんですけど、3、4番手に付けてジッと回って来た感じです。初勝利はデビューから10日後なので、そこだけ見ると早いって言われるかもしれないですけど、それまでに何度かチャンスをもらっていたので自分としては焦っていました。最初はあまり気にしていなかったんですけど、同期の栗原大河騎手が先に勝った時(4月12日第6R)にけっこう焦りましたね。初勝利は、あれはひどいレースでしたね(苦笑)。1~2コーナーで後方からブワーッとマクって行って。先生から「一周追ってこい」と言われていたので、心の中で「行けー!」と思いながら追ってました。先頭でゴールに入った時にはすごく気持ちが良くて、「これが勝つということなんだ」と実感しました。1つ勝ってからは気持ち的に楽になった気がします。
デビューから約4か月で16勝。いいペースですね。
たくさん乗せていただいて本当に感謝しています。でも、勝ち星には満足していません。乗り馬の質を考えたら20勝は越えていないといけなかったんです。僕のミスで取りこぼしたレースもありますし、その分、2着3着が多くて申し訳ないです。
柴田騎手は一般家庭から競馬界に入って来たわけですけれども、想像と違う部分はありましたか?
ありますね。ある程度想像はしていましたけど、デビューしてみて勝負の世界は甘くないなと痛感しました。まず普段の人との関わりが大事だし、少しずつ乗り馬を増やしていくことも、たくさんの先輩方がいる中で簡単なことではないなと。それに、レースでもデビューしたての時には危ない場面があると先輩方が気を使ってくれましたけど、それも甘えていたんだなと思います。当たり前のことですけど、勝負の時はみんな本気ですから、自分で馬をコントロールして危険を回避しないといけないし、その中で勝つというのは本当に難しいです。
尊敬している騎手はどなたですか?
先輩方みんな尊敬していますけど、目標は大きくミルコ・デムーロ騎手です! 成績をしっかりと出す騎手だし、誰が見ても上手いと思うじゃないですか。日本人と体の造りが同じじゃない部分もありますが、少しでも追いつけるように目標にしています。
故郷を離れて金沢所属になったわけですけれども、すんなりと馴染めましたか?
高橋先生がすごく良くしてくれますし、厩務員さんもいい方ばかりで恵まれた環境だと思います。競馬場の雰囲気にもすぐに馴染むことができました。いい馬にも乗せてもらっているので、早く上手くなって恩返しがしたいです。勝つことが一番の恩返しだと思うので。今は、金沢所属になれて本当によかったと思っています。それと、この前のお盆開催の時に両親が見に来てくれたんですけど、やっと目の前で勝つことができたんです。これまでデビュー戦と、ゴールデンウィークの開催の2回見に来てくれたんですけど、その時は勝てなくて...。お盆の時は目の前で2勝することができたので、ちょっとは親孝行できたかなと思いました。
では、今後の目標を教えて下さい。
まずは、今年中に減量を取る(30勝)ことです! 将来的には金沢のリーディングを獲って、全国で活躍できる騎手になりたいです。そのために、1レース1レースを大事に乗って、日々成長できるよう頑張ります。金沢は若手の先輩方がすごく活躍しているので、僕もその中の一人になりたいですね。同期の栗原大河といういいライバルがいるので、常にモチベーションを持ち続けながら成長していきたいです。
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※インタビュー / 赤見千尋
オーストラリアを拠点に、韓国やシンガポールでも活躍する藤井勘一郎騎手(31)が、9月30日までホッカイドウ競馬で期間限定騎乗中です。
日本での最初の騎乗が道営で、とても嬉しいです。ホッカイドウ競馬で騎乗することになった経緯を教えて下さい。
昨年、韓国でレース中に怪我をして、妻の実家がある札幌にいたんです。シンガポールの高岡秀行調教師(元ホッカイドウ競馬)がセリに来ていると札幌競馬場で聞いて、静内へ挨拶に行きました。その時にホッカイドウ競馬の調教師を紹介していただき、田中淳司先生と縁ができたのです。
各地の競馬場で騎乗されていると思いますが、門別はどこに似ていますか?
オーストラリア、シンガポール、マレーシア、韓国、約60箇所で乗りましたが、似ているところはないです! ほとんどが芝ですし、門別は砂厚が12センチと深く、パワーがいる。雨が降るのと乾燥しているのではコンディションが違い、日によってどこを通るかが大事になる。去年研修に来た時に聞いてはいましたが、乗ると全然違いますね。ベテランの位置取りを見ながら、レースを組み立てています。古馬はクラス分けも細かいから、駆け引き次第で変わってくる。騎手の能力が問われます。2歳は南関東や中央を目指しているからシビアですね。全体的に、7カ月のみの競馬だからか、意気込みを感じます。学ぶことが多い。同厩の岩橋騎手とは同年代だし、刺激しあえる仲です。心強い。
門別競馬場は、関係者、スタッフが一丸となって作り上げている。全体の魅力、思いが伝わってほしい。
ナイター競馬はいかがでしょう。
シンガポールやオーストラリアでナイターの経験はあります。霧は人生初めてですよ、霧!! びっくりしました!! レースが中止になった時は、馬もよくなっていたのに......。映像は白くても、全く見えないわけではないんです。ただ、離して逃げる馬がいると距離感がわからないし、霧がゴーグルについて見にくくなるそうです。何より、パトロールタワーからレースが見えないと公正競馬が成立しないですからね。初めてといえば、今日午前3時頃坂路に行ったら、叫び声が聞こえたんです。子鹿が迷い込んでいたんですよ。
北海道はいかがですか。
道路が広く、自然が豊かなのはオーストラリアに似ています。オーストラリアでは3時間とか車を運転して競馬場に行くので、それを思い出しました。
牧場も新しい経験ですね。先日は育成牧場に行きました。坂路といってもいろいろあって、ウッドチップの質や敷き方、勾配、距離から違う。先日は育成牧場を経営している、元騎手の吉田稔さんと併せ馬をしたんです。元トップジョッキーと乗れたのもいい経験でしたね。うれしかったです。休みの日は札幌にいる家族に会いに行っています。3歳の息子、4月に生まれた娘がいます。癒やされますよ。
初勝利(7月15日1レース、ハッピーヴィータ)については。
勝つ馬を用意してもらいましたから。ほっとしましたね。精神的に楽になりました。日本で勝ったら感動するかなぁと思いましたが、以外と冷静でしたね(笑)。すぐに次はどう乗ろうか、と考えていました。結果を出すということを考えると、冷静、客観的にならなきゃいけないところはありますからね。
今後は、重賞を勝ちたいですね。王冠賞に乗せていただきましたが、他地区の川原正一騎手(兵庫)が来たり、独特の雰囲気があって乗っていて楽しい。道営は元トップジョッキーの調教師が多いので、騎手に対する目が厳しいです(笑)。
勝負服はどのように決めたのですか。
騎手服のある韓国で騎乗する時に作りました。オーストラリアで5勝か6勝して、大きな競馬場で乗るきっかけをくれた、ベネッツグリーンという馬がいます。馬主さんにぜひ使いたい、とお願いして同じ勝負服を引き継ぎました。
JRAの騎手試験を受けるときに、1キロだけ体重がオーバーして受けられずオーストラリアに渡ったと聞きました。地方競馬は考えなかったのですか。
もちろん、地方競馬のことは知っていたのですが、中央でも体重制限があるなら地方も同じだな、と考えて、オーストラリアを目指しました。
小学生の時に、たまたまテレビをつけて見たのがフジキセキの弥生賞。それから父が2カ月に1回くらいは、京都などの競馬場に連れて行ってくれました。父はもともとギャンブルやらないんですけどね。蹄やムチの音、臨場感、美しい馬。全てが新鮮でした。競馬場を出ると、焼き鳥やイカ焼きとかが並んでいる(笑)。それも思い出です。
理解してくださったお父様も素敵ですね。さて、オーストラリアではジョー(Joe)と呼ばれていますね。勘一郎と全然違うじゃないですか(笑)。
そうなんですよね(笑)。15歳の時に行ったホストファミリーでニックネームを名付けられて、そこから定着したんです。僕のサインもJoeって入っていますよ。
騎手になりたい若者が日本にもたくさんいると思います。
簡単ではないけれど、本当にやりたければ挑戦していくべきだと思う。僕もまだ、挑戦の過程です。オーストラリアにはほかにも日本人騎手はいますが、僕みたいに日本ら来ているのもいれば、現地で結婚して家を建てたり、それぞれのライフスタイルがありますね。
門別の後は決まっていませんが、10月にはJRAの試験があるのでそれに向けて勉強します。自分は初めて見たのがJRAだったから、日本で乗りたい気持ちがある。スノーフェアリーのダンロップ調教師なども言っていたけれど、日本の競馬は今世界で認められているし、日本で勝つのは難しい。外国の騎手にとっても、日本で乗るのはステイタスになっています。
好きなレース展開はありますか?
特にないです、馬に合った乗り方をしているだけ。生き物ですから、毎回レースで変わってくる。リプレイは欠かさず見ていますが、固定観念に縛られず、日々の変化をどれだけ感じ取れるか、です。宮崎光行騎手と話す機会があって、その時話題になったのは「人それぞれの個性がある。どれだけストロングポイントを出して騎乗するか」ということ。自分ですか? 難しいですが、いろんなところで乗ってきた、という柔軟性でしょうか。ここの競馬場だから簡単に勝てる、というところはひとつもないんです。
プロフェッショナルでいたい、ですね。それがあれば、海外でも言葉、生活の壁があっても、信念があれば乗り越えられる。いい仕事をしたいです。
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※インタビュー / 小久保友香 (写真:小久保友香、小久保巌義)
スーパージョッキーズトライアル(SJT)2015で、第1ステージ11位から大逆転で優勝を果たした金沢の藤田弘治騎手。一瞬にしてシンデレラボーイとなった心境をお聞きしました。
大井の第1ステージでは4ポイント(11位通過)でしたが、第2ステージの園田で2連勝! 大逆転での優勝、おめでとうございます。
ありがとうございます。本当に奇跡が起きました。信じられないです。第1ステージでは4ポイントしか取れなかったので、さすがに優勝は絶対に無理だと思っていたんですけど、すごく嬉しいです。第2ステージの園田ではいい馬に当たったので、奇跡を信じたいという気持ちもありましたけど、まさか本当に実現するとは......夢みたいです。
まずは第1戦、華麗な差し切り勝ちでしたね。
本当は前に行く予定だったんですけどスタートで後ろ脚を滑らせてしまって......。「ああ、やばいな......」と思って、これはもうロスなく回るしかないなと腹を括って内でジッとしていました。道中で手応え良かったので「これはイケるな」って思っていたんですけど、3、4コーナーでは前で吉井(友彦騎手)くんの馬が壁になっていたので、「頼むから進んでくれ~」と後ろから応援していました。で、上手く抜けてくれたんで「やったー!」と思いながら追って。1つ勝てたことがまず嬉しかったですね。ただ、この時点で上位の方とのポイント差はかなりあったし、たとえ次も勝てたとしても、優勝までは厳しいかなと思っていました。
そして第2戦は2番手から早め先頭の強い競馬でした。
これはもう本当に上手く行きました。レース前に思っていたことが思っていた通りに上手く進んだんです。前に付けられたらいいところでジッとしていようと思っていて、その通りに上手く行きました。本当に馬が強かったです。
レース直後は村上忍騎手か藤田騎手か、どちらが優勝なのかわからなかったですけれども、1ポイント差で優勝だと知った時はいかがでしたか?
レースが終わってちょっと経ってから「優勝だ」って言われましたけど、間違いなんじゃないかって思いました(笑)。最終戦の前に、勝ってもポイント的に優勝は無理だろうなと思っていたので。それに、第1ステージの大井の時にレースが終わって鞍掃除をしている時に、下位2人は誰だって話になって、僕じゃないかって言われたんですよ(第1ステージの下位2名は第2ステージには進めない)。「園田行けないかも」ってなって、自分でも13着と9着だったんで、「だよねー...」って思ってて。結局はギリギリで第2ステージに進めたわけですけど(実際の下位2名は森泰斗騎手と岡部誠騎手)、優勝って言われてもまた間違いなんじゃないかって思って、すぐには信じられなかったです。
実際に優勝が確定して、表彰台に立った時はいかがでしたか?
まだ実感はなかったですけど、嬉しい気持ちはすごくありました。応援に来てくれたファンの方も泣いてくれていて、少しは恩返しができたのかなって。本番もありますけど、とりあえず嬉しい気持ちが強かったです。
まさにシンデレラボーイですね!
いや~...自分で「そうです」とは言いずらいですけど(笑)。こんな大きなチャンスをもらったからには、本番も結果を出したいです。今回、僕がSJTに出場できたのは、リーディングの吉田晃浩騎手がケガをしてしまって、それで2位の僕が補欠で出場することになりました。だから、吉田騎手には申し訳ないですし複雑な気持ちもあります。ただ、せっかくのチャンスなので、精いっぱい頑張ります。
藤田騎手は、金沢の顔である吉原寛人騎手と同期ですけれども、吉原騎手は2011年にSJTで優勝し、WSJSでも第2位という成績を収めました。
吉原くんは身近な存在ですけど、本当にすごいと思います。デビューした頃からバンバン勝って注目されていて、僕は全然乗り馬がいなくてものすごく差がありました。今もだいぶ差がついてますけど、今回こういう形で吉原くんが経験した大きな舞台に立てるのは嬉しいです。吉原くんは2位でしたから、もちろん1位を目指すしかないですね。
中央競馬での騎乗の経験はありますか?
一昨年の夏に、1回だけ新潟で騎乗したことがあります(2013年朱鷺ステークス マイネルルビウス・12着)。初めての芝ですごく感動したし、12着だったけどいい経験になりました。あと、金沢のオフシーズンに毎年美浦トレセンで修行しています。もう7年連続で行っていますね。施設も充実しているし、馬のレベルもすごい。視野や考え方も変わるし、すごく勉強になります。
デビューしてから約2年はほとんど乗り馬がいなくて、相当悔しい思いをしたということでしたけれども。
そうですね。あの時は本当に苦しかったですけど、黒木豊調教師が拾ってくれて、それから僕を乗せ続けてくれました。そのお蔭で今があるし、黒木先生にはいつか恩返しがしたいと思っています。ここで全国の方に名前を憶えてもらって、黒木厩舎や金沢競馬のアピールができたらと思っています。
それでは、ファンの方にメッセージをお願いします。
今回大きなチャンスをもらえたわけですけど、これまでの1つ1つのことが繋がっているんじゃないかなって思います。いろいろな方に助けてもらって、いろいろな経験をさせてもらったお蔭で今があるので。その感謝の気持ちをしっかりと持って、札幌に挑みます。それに、先日吉原くんがダートグレードを勝った(ユーロビートでマーキュリーカップ制覇)し、今回僕もSJTで優勝することが出来て、金沢にいい波が来ているんじゃないかと思っています。このチャンスを活かせるように、精一杯頑張ります!
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※インタビュー・写真 / 赤見千尋
今シーズンのばんえいリーディングは藤野俊一騎手(54)。2位の藤本匠騎手に10勝以上の差をつけ、59勝を挙げています(7月27日現在)。ばんえい記念は現役最多の5勝というベテランに話を伺いました。
ぶっちぎりのリーディングですね。
馬との巡り合わせだね。新馬にもいい馬が多い。2歳賞金1位のキタノリュウキをはじめ、ジェイナイト、リュウセイイチバンも強いな。馬に感謝だね。ただ、癖のある馬にも乗れるよう、努力はしてきたよ。途中で変な癖がついてしまっただけで、能力のある馬が多いんだ。調教でもレースでも、いじめないで、おだてて荷物を引っ張らせる。
3歳1冠目のばんえい大賞典を勝ったシリウスは、障害を降りてからの脚がいい。ニュータカラコマ(2011年イレネー記念、2013年岩見沢記念など重賞5勝)も、いろいろとハミを変えたりして大変だったんだよ。2歳の時も、一度障害であがらなくなった時があったんだ。復調してきたところでイレネー記念を勝った。力がついてきたね。行く気になった時の力の出し方がすごい。夏はバテやすいので今は馬主さんの牧場で休養している。BG1のばんえいグランプリも休ませるつもり。競馬場に来てから初めて外に出たから、なかなか馬運車乗らなかったな。
ばんえい大賞典(7月26日)を制したシリウス
ニュータカラコマは、北斗賞(4着)のパドックではちょっと小さく見えました。
そうか? 調子いい馬は大きく見える。自分乗らなくても、馬の大きさで調子の善し悪しはわかるよ。
あと、楽しみなのははニシキエーカン(2012年イレネー記念)ね。2歳から能力が高かった。一時期体調を崩したけれど、最近また良くなってきた。(ハンディを背負って)荷物にも耐えてきたからね。
キタノリュウキはいかがですか。
母親のヨシノサクラにも乗っていたんだ。なかなか1着獲れなくて、2着が多くてね。初仔がここまで活躍するとはびっくり。キタノリュウキはでかいし、力がある。若いから、そんなに期待をかけすぎないようにしていくよ。
能力検査でのキタノリュウキ
父のカネサテンリュウにも乗っていましたね。今年の2歳が初年度ですが、子どもが活躍していますね。
真面目な馬だったね。開腹手術をしたけどその後も走り続けた体の強さや、その分レースを使っていないということから人気がある。弟のカネサブラック(2011、2013年ばんえい記念など重賞21勝)の仔も楽しみになるよね。全体的に、若い時から活躍した馬の子は、活躍するように思う。
ニシキダイジン(2010、2012年ばんえい記念など重賞8勝)の仔は、まだ思ったより走っていないなぁ。牝馬の方が活躍しているよね。3世代しか遺せなかったのは寂しいよね。
最近、帯広競馬場に人が増えていますね。
見ている人は多いよね! でも、働いている人は若者が少ない。共進会に行っても、牛は若い人ばっかりなのに、馬は年寄りばかり。昔は騎手試験も30~40人近くが受けていたんだ。俺も厩務員生活長かったけど、自分の馬が勝ったらうれしいよ。厩務員生活7年、騎手として乗れるまで10年かかった。若い人が入って、活性化してほしいね。
競馬場のお薦めかい? そりゃ、入り口のジンギスカンコーナーでしょう。風向きによって、焼いているにおいがコースに流れてくるんだ(笑)。暑いから美味しいもの食べてほしい。帯広の夏は北海道の中でも暑いよね。湿度も高い。装鞍所は、岩見沢から持ってきた扇風機があるけれど、湿度が高いと汗をかいて馬も弱る。からっとしていればいいんだけど。俺の犬も動かないよ。
犬を飼っているんですか。
ポメラニアンのメスで、ライっていうんだ。めんこくてな、衝動買いよ。なのに、俺の所帰って来ないで、(同じ建物に住む)松本(秀克)騎手のところばっかり行くんだ(笑)。松本さん散歩連れてってやってるしな。
今後の目標を教えてください。
ばんえい記念、ニュータカラコマで......、勝ったら騎手やめる(笑)。
えーーっ!だめです!!
そのくらいの気持ちで乗るってことだよ。努力して、あそこまで育てた馬。ばんえい記念を勝つ能力もあるよ。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香