今年デビュー18年目を迎えた佐賀の倉富隆一郎騎手。山口勲騎手、鮫島克也騎手という二大看板に続く佐賀ナンバー3として、長年活躍を続けています。昨年はケガによる長期休養もありましたが、完全復活を果たした今、今後への意気込みをお聞きしました。
昨年は大きなケガがあり、久しぶりにトップ3から陥落してしまいました。ご自身ではどんなお気持ちでしたか?
デビューしてから初めての大ケガで、初めての挫折でしたね。足の甲の骨折で場所が悪かったので、リハビリを始めるのにも相当時間がかかってしまって......。結局、丸4か月騎乗ができませんでした。最初はすごく落ち込んだし、不安でしょうがなかったんですけど。でも今になってみれば、いい経験ができたんだなと思っています。
ケガで休養したことが、いい経験になったと?
そうですね。デビューして17年経って、3位というのがある意味定位置になっていたんです。山口さんと鮫島さんは本当に偉大な先輩で、いつの間にか「超えてやろう!」という闘志が薄れていました。でもケガをして長く休んだことで、馬に乗りたいという気持ちが改めて沸いてきて。自分はリーディングを獲りたいんだということを強く思うようになりました。
やっぱり、山口騎手と鮫島騎手というのは偉大な存在ですよね。
本当に偉大ですよ。山口さんは完璧なんです。リーディングになってからも、なる前とまったく変わらず努力を続けていて。誰よりも早く起きて、誰よりも遅くまで攻め馬してるんですから。それに、どんなにクセのある馬でも、ゲートが悪い馬でも絶対に無理だって言わないんです。普通1位になったら攻め馬の頭数を少なくしたり、馬も選んで乗っていくようになるじゃないですか。でも山口さんは変わらない。付け入るスキがないんです。鮫島さんはもうすぐ53歳ですし、今は頭数を減らして選んで乗っているんです。それでも抜けないんですから、本当にすごい人ですよ。でも、鮫島さんが乗っているうちに抜かなきゃいけないと思っています。そうじゃないとファンの方もつまらないだろうし、鮫島さんを抜けるとしたら3位の僕ですから。
倉富騎手は中学時代に全国で第4位に入るほどの乗馬の腕前をお持ちですが、どういう経緯で騎手になったんですか?
もともと佐賀競馬場の近くに住んでいたんですけど、10歳くらいの時に近所の乗馬クラブに行き始めたんです。乗馬クラブっていうと高級なイメージがありますけど、そこは佐賀の馬主さん(ワンパクメロなどのオーナーである、野上ヤチ子さん)が子供たちのために安くやっているところで、学校が終わってから毎日通っていました。それで、僕はあんまり頭が良くないから(笑)、「馬術で大学まで行けるように」という感じで教えてもらっていたんです。それで馬術推薦で高校に入ったんですけど、結局勉強についていけなくなって、学校に行かなくなって......。家にも帰りたくなくて、ちょっとグレてしまったんです。その時に、「このままじゃダメだから」って、半分無理やり佐賀競馬に連れてこられて、川田孝好先生のところに下乗りとして入ったんです。だから、その乗馬クラブが僕の原点だし、本当に感謝しています。
川田厩舎といえば、現在JRAで活躍中の川田将雅騎手のお父さんの厩舎ですよね。
そうです。将雅も同じ乗馬クラブに来ていたので、子供の頃から知っています。今でも隆一兄ちゃんて呼んでくれて、連絡を取り合っていますよ。将雅はものすごく頑張ってますから、いつも刺激をもらっています。あの時連れていかれたのが川田厩舎じゃなかったら今の僕はいないし、ジョッキーにもなってなかったと思います。川田家の方々にも本当に感謝ですね。
というと、騎手になるのもご苦労があったんですか?
下乗りで入った時点で55キロありましたから、教養センターの試験を受けるためには12キロ痩せなきゃいけなかったんです。育ち盛りの高校生で12キロ痩せるっていうのは、自分ひとりの力ではかなり難しいですからね。川田先生の奥さんが毎日食事を用意してくれて、毎日体重を計ってチェックしてくれたんです。みんなが見守ってくれたお蔭で、騎手になることができました。
川田将雅騎手の存在もそうですが、教養センター時代の同期には、戸崎圭太騎手や森泰斗騎手もいます。この2人の存在も刺激になるんじゃないですか?
そうですね。圭太はセンター時代から人に嫌われなくて、みんなの人気者でした。腕はもちろんですけど、人間力がすごいのであそこまでの活躍も納得です。泰斗はセンター時代は尖っているところもあったし、実力はあるのになかなか結果が出せない時期もありましたよね。でも今は全国リーディング独走中ですから、アイツもすごいなと思います。将雅もそうですけど、一緒にがんばってきた仲間がどんどん結果を出して遠くに行ってしまうので、僕も置いて行かれないようにがんばります!
では、今後の目標を教えて下さい。
まずは鮫島さんを抜いてリーディング2位になることです。そうしたら、「リーディングを獲ることが目標です!」と言えるようになるので。簡単なことではないですが、目の前のレース1つ1つで結果を出して、積み上げていきたいです。もうひとつは、もう一度ダートグレードを獲ることです。ヴァンクルタテヤマ(2008年サマーチャンピオン)に乗せてもらえたのは本当にラッキーで、山口さんと鮫島さんが他の馬に乗っていたので僕だったんです。あの時はものすごく緊張しましたけど、宝物になる経験をさせてもらいました。もう一度ダートグレードを勝って、もっと佐賀競馬を盛り上げたいです!
2008年サマーチャンピオンをJRAのヴァンクルタテヤマで勝利
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※インタビュー / 赤見千尋