金沢の看板馬ナムラダイキチの主戦ジョッキーとして知られる畑中信司騎手。今年はすでに80勝を挙げ(9月28日現在)、昨年の73勝を上回る成績を残しています。ナムラダイキチのこと、そしてご自身のことについてお話を伺いました。
ナムラダイキチは約11カ月の休養を経て今年の5月に復帰しましたが、久しぶりに騎乗してみていかがでしたか?
復帰戦はA級の特別戦だったんですけど、あれだけ休んでいたのにいきなり勝ってくれて、さすがだなと思いました。休む前に比べると行きっぷりが多少よくなかったですけど、勝ち切ってくれるところがダイキチだなと。ただやっぱり、絶好調だった頃に比べると強い調教をすることができなくて、様子を見ながらの攻め馬だったので、前走の百万石賞では思ったような動きをすることができませんでした。今は脚元の状態があまりよくなくて、また休養に入ってしまいました。
ナムラダイキチはどんな存在ですか?
本当に大きな存在ですよ。たくさん重賞も勝たせてもらいましたし、白山大賞典(2012年)でも2着にがんばってくれて。騎手をしていて、これだけの馬に出会える機会はなかなかないですから、いつも勉強させてもらうつもりで騎乗しています。地元の期待を一身に背負っている馬ですから、乗る時にはプレッシャーも大きいですけど、その中で結果を出せたというのはすごく自信になりました。この馬に出会う前と後では、精神的に変わったと思いますね。僕にとって大事なパートナーです。ダイキチが絶好調だった頃(2012年)、僕も初めて年間100勝を達成させてもらったんですよ。やっぱり、地元の看板になるような馬に乗せてもらっているとすごく目立つし、騎乗馬も増えるという好循環になるんだと思います。ダイキチには感謝してもしきれないくらいですね。途中からは脚元との戦いになってしまいましたが、コンスタントに使えるようならばもっと大きい舞台へも行けたと思います。今はとにかく脚元を治療して、無事に復帰してくれることを願っています。
ナムラダイキチ(2013年百万石賞)
もう1頭、クロスオーバー(高知・別府真司厩舎所属)とのコンビも印象が強いですけれども、どういうきっかけで乗ることになったんですか?
冬場のオフシーズンに福山に乗りに行っていたんですけど、残念ながら廃止になってしまったじゃないですか。それで、じゃあどこに行こうかと思った時、南関東は成績的に条件が足りないし、高知はウェルカムで迎えてくれるという感じだったので、期間限定騎乗をお願いすることにしました。たくさんチャンスをいただいて乗せてもらったんですけど、その中でも別府先生が本当に良くしてくれました。クロスオーバーに関しては、佐賀の花吹雪賞を勝てたことが大きかったです。ハナ差で逃げ切ることができたんですけど、1着か2着かでその後が大きく変わったと思いますね。本当に大きなハナ差でした。
クロスオーバー(2014年佐賀・花吹雪賞)
別府先生と畑中騎手は性格的にすごく合っているとお聞きしました。
そうなんですよ、すごく合うんです(笑)。どういうところがっていうんじゃないですけど、遠征に行った時とかもけっこう一緒に行動してますね。騎乗に関しては細かい注文もなく僕に任せてくれるし、懐が深くて本当にすごい先生です。調教師としても、人間としても尊敬しています。
クロスオーバーは他地区への遠征の時にも騎乗していますが、高知の馬で金沢の騎手が全国に行くというのは、今の時代ならではですよね。
少し前だったらそこまで交流が盛んではなかったですから、こういう時代になって感謝しています。そのお蔭でいろいろなところに行くことができて、本当に勉強になっていますね。TVで見たり、人から話を聞いていても、実際にその競馬場に行って乗ってみないとわからないことって多いですから。それに、外の競馬場で騎乗した経験が、また地元に戻った時に活きてくるというか。僕はデビューしてしばらくは本当にダメで、全然上手く乗れなかったんですよ。でも周りの方々が助けてくれたこと、そして福山や高知などで経験を積ませてもらったことで、多少なりとも成長ができたのかなと思っています。
今年はここまで80勝を挙げ(9月28日現在)、すでに昨年の73勝を上回りました。好調の波に乗っていますね。
僕がどうこうではなく、最近は金沢リーディングの金田一昌厩舎の馬に乗せてもらえることが大きいですね。騎手は乗せてもらって初めて仕事ができる立場なので、周りの方々に常に感謝して、これからもおごらずに進んで行きたいと思っています。
では、今後の目標を教えて下さい。
直近の目標としては年間100勝です。2012年に一度だけ達成したことがあるんですけど、そこからはなかなか近づけていない数字なので、今年は絶対に超えたいです。長い目でみた目標は、ありきたりですけど1頭1頭丁寧に乗って、ひとつずつ勝ち星を積み上げて行くことです。結果的にそれがリーディング順位にも繋がることだと思うし、大きな舞台へも繋がることだと思っているので。これからも金沢競馬を代表する騎手になれるようがんばります!
-------------------------------------------------------
※インタビュー / 赤見千尋 (写真:石川県競馬事業局、佐賀県競馬組合)