デビュー14年目を迎えた笠松の筒井勇介騎手。これまで、エレーヌと共に東海ダービーを制覇したり、騎乗馬集めに苦労した時期があるなど、激動の騎手人生を送っています。今年はケガの影響で1か月半の休養期間がありましたが、無事に復帰を果たした今、今後に向けての意気込みをお聞きしました。
まずはケガからの復帰、おめでとうございます。
ありがとうございます。これまで1週間くらいのケガはあったんですけど、骨折は初めてで、1か月半休んだのも初めてでした。この仕事をしていたらいつかはと覚悟はしていたんですが、まさか手の甲を骨折するとは思わなかったです。朝調教に乗ってる時に、すごく物見をする馬だったんですけど、物見をして思いっきりクビを上げながら横に飛んだ時、馬のクビに手の甲がバーンと当たってしまったんです。次の日もレースだったし、3日後にはJRAの遠征も控えていたのでできれば乗りたかったんですけど、病院に行ったら骨折と言われて、すごくショックでした。
昨年から今年にかけて、いい流れでしたもんね。
そうなんです。JRAの遠征もそうですけど、ツテもできていい流れでした。昨年から地元での勝ち鞍も増えていたし。こんな時期に...とショックを受けて、けっこう落ち込みました。レースを見ていると置いて行かれるような気がして辛かったです。でも、少しずつ気持ちが落ち着いて来て、こういうことも仕方がないかなと思うようになしました。手以外は動かせるので軽く運動したり、リハビリにいったり、いろいろなところのレースを見たり。あと、普段は朝が早いので夜はあまりテレビが見られないんですけど、ちょっと夜更かししてテレビを見たりして気持ちを切り替えました。ケガをしたのは残念でしたけど、いろいろ考え直すいい機会だと思って、ケガが治ってからは体を鍛え直そうとジムに通い始めました。
具体的には、どんなことを念頭に置いているんですか?
体というか、体幹を鍛える感じです。もっと体の使い方を上手くしたいんですよね。自分の体形に合った乗り方の中で、理想としているのは福永祐一騎手の乗り方です。乗り方だけじゃなくて、その考え方もすごいなって思ってて。あれだけのトップジョッキーなのに、今も変わろうとしていること、本当にすごいと思います。トレーナーの方もつけているし、第三者の方に騎乗フォームをみてもらうっていう発想もこれまではなかったじゃないですか。そういう、変われる力を尊敬しています。
いつ頃からそういう意識を持ったんですか?
やっぱり、エレーヌが死んでしまったことが大きかったです。もっと自分がしっかりしていたら、もっとエレーヌは楽だったんじゃないかって。気性の激しいところがあって、難しい部分もあったけど、本当によく頑張ってくれる子でした。初めて重賞も勝たせてくれて、東海ダービーも勝たせてくれて、いろいろな競馬場に連れてってくれて。感謝してもしきれません。最後は門別からの遠征後に死んでしまって、本当にショックで...。今でもよく考えますね。エレーヌがいなくなったあと、自分自身の調子も悪くなって、全然勝てなくなって。その時にいろいろ考えて、今のままじゃダメなんだって思いましたし、自分の技術のなさを痛感しました。エレーヌや関係者に恩返しするためにも、もっともっと上手くならなきゃって思っています。
エレーヌで東海ダービー制覇(2010年6月4日)
その努力の甲斐あって、昨年は地元笠松で74勝、リーディング第4位に躍進しましたね。
そのいい流れで今年も来ていたんですけど、そこでケガっていう...。なかなか上手くはいかないですよね。それでも、腐らずにがんばります。この仕事をしていると心が折れそうになることがあるけど、一度騎手を辞めようかなと思った時、助けてくれた人がいて。その繋がりでエレーヌに出会うことができたし、本当に人と人の繋がりは大事ですよね。そこで支えられていると思います。
笠松はトップジョッキーとして君臨していた尾島徹騎手が、31歳という若さで調教師免許試験に合格しました。これからリーディング順位も変動がありそうですね。
そうですね。尾島くんが抜けたことは相当大きいと思います。近くでがんばっている姿を見て来ましたから、調教師としても成功して欲しいですね。騎手リーディングは、今年はこのまま吉井(友彦騎手)くんが行くんじゃないでしょうか。たくさん調教もつけているし、すごくがんばってますから。あと、佐藤友則騎手も燃えてますよ。リーディングを獲りたいっていう強いモチベーションを持ってますね。僕ももちろん負けてられないです。がんばり次第で上に行けるけど、ここで結果を出さないと取り残されるという危機感も持っています。
では、今後の目標を教えて下さい。
目の前の目標は、1つ1つ丁寧に乗って結果を出していくこと。それが積み重なってリーディング順位にも繋がって行くと思うので。吉井くんやともくん(佐藤友則騎手)という同年代ががんばってますから、僕もリーディング争いに加われるようがんばります。そのために、毎日スキルアップしていきます!
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インタビュー / 赤見千尋