カネサブラック名実ともに頂点へ!
27日(日)はばんえい競馬の最高峰レース、重賞・ばんえい記念(4歳以上オープン)が行われ、カネサブラックが優勝。2年連続2着の雪辱を果たし、名実ともにばんえい界の頂点に立ちました。
早朝の雪で馬場水分1.8%からスタートしたこの日。しかしレース直前には0.9%まで下がったうえ、1トンの負担重量だけに、各馬第1障害から脚が止まりました。ホクショウダイヤ、ニシキダイジン、ナリタボブサップ、カネサブラックあたりが先団を形成し、これに他馬が追いつき、そしてまた先行勢が引き離す展開。例年同様のスローペースで進み、ニシキダイジンを先頭にようやく各馬が第2障害下にたどり着きました。
真っ先に仕掛けたのはニシキダイジンで、呼応するようにカネサブラックも登坂を開始。ばんえい記念初挑戦となるホクショウダイヤも果敢に挑みます。先に天板に脚を掛けたのはニシキダイジン。さらなる踏み込みを見せて、荷物を曳き上げました。時を同じくしてカネサブラックも天板へ。駆け下るニシキダイジンを逃すまじと懸命に歩を進め、射程圏で難関を突破しました。後続はやや苦戦ムードで、早くも両雄の一騎打ちの様相。
障害を下りてカネサブラックが抜群の加速を見せると、みるみる差が詰まり、ほぼ横並びに。進んでは止まり、進んでは止まり、互いに相譲らず残り30メートル。ここからカネサブラックがぐんぐん加速して、1馬身ほどリード。しかし残り10メートルで脚を止めると、ニシキダイジンが反撃して逆に1馬身差をつけて先頭へ。高重量戦での粘り腰に特長があるニシキダイジンが、渾身の歩みを見せます。
しかし、カネサブラックはどんな重量でも高いレベルのスピードを発揮できるタイプ。立て直すと並ぶまもなくニシキダイジンを交わして先頭を奪い返します。しかし、残り3メートル。勝負あったか、と思われたところで、またしてもストップ。そこでチャンス到来とばかりにニシキダイジンが交わしますが、脚いろは今ひとつ。わずかに前に出たところで脚が止まってしまいました。
ここで勝負あり。立て直したカネサブラックが差し返し、通算60勝目、重賞13勝目、そして悲願のばんえい記念初制覇のゴールに飛び込みました。連覇を狙ったニシキダイジンは奮闘及ばず、2秒9差の2着。障害7番手からいつものように追い上げたフクイズミが3着に入りました。古豪トモエパワーが得意の超高重量戦で4着と存在感をアピール。障害3番手クリアのナリタボブサップは、凌ぎきれずに5着に敗れました。以下ホクショウダイヤ、ニシキユウ、ヨコハマイサム、アローファイター、タケタカラニシキ。全馬10頭が無事に完走を果たしました。
ついに頂点を極めたカネサブラック。ばんえい随一の実力馬であることは明らかでしたが、このレースは過去2年で連続2着と苦杯をなめてきました。どうしても獲りたかったであろうこのタイトルを、昨年の覇者ニシキダイジンとのマッチレースの末、力でもぎ取りました。これまで見せていたような詰めの甘さはなく、むしろゴール前では、このレースを何度も制しているかのような抜群の底力を披露。王者としてふさわしい勝ち方でした。
ニシキダイジンは、敗れたとはいえ持ち味の粘りを存分に発揮しての2着。15キロの馬体減は帯広記念制覇時(1104キロ)とほぼ同じで、陣営の仕上げも万全だったと思われます。それだけに、今回ばかりは相手が一枚上だったと言わざるを得ないでしょう。素晴らしいレースを見せてくれただけに、2着でも惜しみない拍手を贈りたいと思います。
3着のフクイズミは、やはりこうした脚質だけに展開次第の面は否めず、障害さえまともなら、とはいつも思うこと。しかし、そうであるからこそ愛される存在であることも事実です。980キロの重量でも持ち前の切れは鈍っておらず、牝馬ナンバー1として存在感を強くアピールしました。実力を兼ね備えたこの愛すべき個性派にも、賛辞を贈るべきでしょう。
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松田道明騎手「接戦で体も熱くなっていて、何とも言えませんが、とにかく勝ててホッとしています。スタートしてからも冷静に乗っていたつもりですが、第2障害に近づいてファンのみんなも応援してくれているのがわかって、『何とか落ち着かなきゃ』と思って乗っていました。障害にたどり着いた時には、ちょっと早いかなと思ったけど、馬の思い切りもあったから思い切って掛けてみました。障害で止まった位置がまずまずだったから、落ち着かせることに専念しました。残り30メートルの手前でニシキダイジンの脚いろが鈍ったのを見て、『絶対どこかでシーソーゲームになる』と思いました。だから離せるだけ離して、いったん相手の出方を見てみようと。昨年は目の前に相手がいても重量が重いぶん脚がきかなかったので、それと同じ轍を踏まないように意識しました。それでシーソーゲームの、最後の1メートルで前に顔を出していれば、というところまで持ち込もうと頑張りました。最後にゴールを跨いで止まった時にはヒヤッとしましたね。今回走った各馬もよく頑張っていたし、他の馬にも今後、応援をよろしくお願いします」