毎年全国のリーディングジョッキーたちが激突するスーパージョッキーズトライアル(SJT)。今年は第2ステージの名古屋で2連勝し、大逆転で高知の永森大智騎手が優勝を果たしました。SJTでの熱戦の模様、そしてワールドオールスタージョッキーズ(8月27・28日 札幌競馬場)に向けて、意気込みをお聞きしました。
まずは、SJT2016優勝おめでとうございます! 第2ステージの名古屋で2連勝して大逆転での優勝劇でしたね。
ありがとうございます。まぐれですよね。去年の藤田(弘治騎手)くんも第2ステージ2連勝で決めたじゃないですか。その時は「すごいな」って思って見ていたんですけど、まさか自分が同じように優勝できるとは思いませんでした。
SJT本戦出場は2度目でしたが、レース自体はいかがでしたか?
やっぱりトップジョッキーが集まって、みんなが「勝ちたい!」って熱くなっているレースなので、特に去年なんかは全然レースをさせてもらえませんでした。今年も第1ステージの盛岡では、第1戦で気負ってしまってスタートで後手を踏んで14着だったんです。正直、「またこの流れか...」って思いました。でも第2戦は直線を向いて一瞬「勝てるかも」と思うくらい手応えが良くて、結果3着だったんですけどとりあえず次の名古屋に行ける順位(下位2名は第1ステージで脱落)だったのでホッとしました。
第2ステージの名古屋はどんな気持ちで挑んだんですか?
暫定8位だったので、あまり気負わずプレッシャーもなかったです。もちろん優勝したいですけど、現実的に一番の目標はSJTの舞台で1つ勝つことでした。第3戦で乗せてもらったメイショウコルシカはかなり気が悪いと聞いていたので、馬の気持ちに逆らわないように後方からの位置になりました。向正面で外に出したらいい感じで上がって行ったので、そこも馬の気持ちを損ねないように気分よく運ぶことに気を付けました。4コーナー手前ではかなり手応えが良かったんですけど、最後2着の馬がものすごい勢いで追い込んで来たので、気持ちが焦って追い方もバラバラになってしまって......。正直、勝ったかどうかわからなかったです。検量に引き上げて来る途中、電光掲示板を見たら僕の番号が1着に出ていたので、「勝ったんだ~」と思いました。
続く第4戦も、後方から追い込んでの快勝でしたね。
ぶっちゃけ1つ勝ってかなり満足したというか、目標が達成できて気持ちが楽になっていたのがよかったんだと思います。乗せてもらったモズノハナミチは差し馬で、VTRを見たらマイルでもハミを噛んでいる感じだったので、初めての1900メートルだし、馬の後ろに入れてゆっくり行きました。ちょうど人気馬に乗っていた(山本)聡哉の後ろに付けられたので、そのまま付いて行こうと思っていました。ただ、その前にいる馬たちが人気薄の馬が多くて、もしかしたら一気にタレてくる可能性もあると思って、向正面で少し捌いて外に出しました。そこからは手応えが違ったし、3戦目よりも余裕がありましたね。
SJT第4戦を制したモズノハナミチ
優勝を確信した時のお気持ちは?
3戦目が終わった時点で自分のポイントを知らなかったので、まさか優勝しているとは思わなくて。4戦目のレースが終わって上がって来る時に聡哉が「2連勝だから優勝ですよ」って言ってくれたんですけど、最初は信じられなかったです。その後優勝だって言われてすごく嬉しかったですけど、JRAで騎乗したことがないので、「初めてのJRAでワールドオールスタージョッキーズの舞台に立つのか......」と早くも緊張しちゃいました(笑)。
確かに、初めての中央遠征で世界の名手が集まるレースというのは緊張しそうですね。
絶対緊張しますよ! (赤岡)修次さんが1回目に行った時、「誰も知り合いがいなくて、居る場所もわからなくて、ホテルの部屋から出たくなかった」って言ってましたけど、自分もあの場に行くのかと思ったら......。ものすごく嬉しい気持ちと、かなりの緊張と半々ですね。
高知の先輩である赤岡修次騎手は2度WSJSに出場していますが、1度目(2007年・総合3位)で知名度を全国区に広げ、2度目(2014年・総合6位)で南関東期間限定騎乗のお声が掛かりました。そういう意味でプレッシャーはないですか?
それはないです。だって、修次さんとはもともと持っている技術が違い過ぎますから。修次さんは周りからかなり期待されての出場でしたけど、僕はそういうわけではないので。挑戦させてもらうという気持ちで挑みます。
でも、2015年は赤岡騎手を抑えて初の高知リーディングを獲得しました。この経験は大きかったんじゃないですか?
リーディングを獲れたことは確かに大きかったです。ただ、去年は修次さんが南関東期間限定騎乗で2か月いなかったので、リーディングを獲るのは当然なんですよ。しかも高知限定では僕が1位ですけど全国の勝ち星でいったら修次さんの方が上なので、高知の競馬新聞では『1位赤岡修次』って出てるんです。数字の上でも技術面でも、まだまだ超えられない壁なんですよ。でも僕もずっと修次さんの背中を追いかけて来て、すごく遠い背中だったのが少しだけ近づけたのかなとは思います。
では、今後の目標を教えて下さい。
WASJでは、高知の代表、地方の代表として行くので、少しでもアピールできるように積極的なレースをしたいです。あと、所属の雑賀(正光)先生と一緒にNRAグランプリで表彰されたいので、去年(雑賀先生が)獲れなかった全国リーディングを獲って、僕は勝率1位(2016年7月19日現在30.2%で第1位)かフェアプレイ賞を狙ってがんばります!
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※インタビュー / 赤見千尋
4月24日に地方競馬通算2500勝を達成した、高知の中西達也騎手。デビューから30年目を迎えた今年もすでに重賞2勝! 46歳のベテランとして、強い存在感を放っています。
まずは2500勝達成、おめでとうございます。
ありがとうございます。長く乗っていればいつかはと思っていましたが、区切りの勝利なので素直に嬉しいですね。若い頃にはここまで乗っている自分を想像できなかったし、まさか2500勝もできるとは思っていなかったです。大きなケガもあったし、騎手として戻って来られて本当に良かったなと思いますね。
去年大きなケガをされたんですよね。
そうなんです。これまでそれほど大きなケガをしたことがなかったんですが、去年1月のケガは相当酷かったですね。股関節の脱臼骨折だったんですけど、とてつもない痛みと、足がおかしな方向に向いているのを見て、「これはただごとじゃないな」と思いました。お医者さんからも「元のように乗れるかわからない」と言われてしまったので、覚悟はしなきゃいけないなと思いました。さすがに凹みましたね。
どうやって気持ちを保ったんですか?
保ったというか、ずっと不安はありました。リハビリで体を動かしても、馬乗りの感覚と違うじゃないですか。だから、乗ってみないとわからないなと思っていました。年齢的にもそろそろ辞める時期なのかもしれないというのは頭をよぎりましたし、まだ乗っていたいという気持ちと、どっちもありましたね。もし復帰して思うように乗れなければ騎手を続けることはできないですから、とにかく早く乗りたいという気持ちでした。
実際に復帰してみていかがでしたか?
久しぶりに乗れた時には本当に嬉しかったです。騎乗に関しても問題なかったので、戻って来られてすごくホッとしました。勝つことができた時は、ジョッキーっていい仕事だなって改めて思いましたね。家族や周りの方々、ファンの方々に支えていただいて本当に感謝しています。でもケガからの復帰というのは自分自身で乗り越えなければいけないことなので、なんとか乗り越えられて本当に良かったです。
福永洋一記念表彰式
5月にはニシノファイターと共に福永洋一記念を勝ちましたけれども、あのレースは特別な雰囲気がありますよね。
もう本当に特別なレースですよ。ずっと勝ちたいと思っていたレースだったので、勝ててすごく嬉しかったです。福永洋一さんもいらっしゃいますし、ファンの方もマスコミもたくさん来てくれて注目度も高いですから。表彰式は感無量でした。
レースは逃げてかなり渋太く粘りました。
ニシノファイターは逃げて早めに叩かれると一気に失速してしまうんですけど、並ばれている状態ならば渋太いんですよ。この時も3コーナーくらいから並ばれたんですけど、途中で息も入ったし、被せられなかったので最後まで粘ってくれました。その次のA級選抜戦もいい形で勝てたし、まだまだがんばってくれると思います。今は休養しているので、夏はゆっくり過ごして今後が楽しみですね。
さらに5月はブラックビューティで黒潮皐月賞も制しましたが、残念ながら高知優駿には出走しませんでした。
そうなんですよ......。唯一三冠を獲る権利のある馬だし、チャンスも十分あるので期待していたんですけど。脚元が少し気になったので、大事を取って回避ということになりました。辞めることも勇気が必要だったんですけど、出走すれば確実に人気になりますから、中途半端なことはできないなと。ただ、休ませたぶん馬は良くなると思うので、今後の成長に期待しています。
黒潮皐月賞を制したブラックビューティ
では、今後の目標を教えて下さい。
ケガなく休まず乗る、これに尽きますね。体はもちろん若い頃と同じではないですが、その分若い頃にはできなかったことを身に付けたと思っています。それに、同期の西川(敏弘騎手)ががんばっているので、自分だけ落ちぶれるわけにはいかないです。西川とは今でも調整ルームで同室なんですけど、悩んだ時とか、人に言えないことでもなんでも相談できるんですよ。まだまだ一緒に高知を盛り上げたいですね。ファンの方からも「アーサーがいないとつまらない」と言ってもらえると嬉しいですし、応援してくれる方がいる限りがんばります!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:高知県競馬組合)
2011年の荒尾競馬廃止を経験し、現在は佐賀で活躍する田中純騎手。再出発から4年目を迎え、今年は佐賀リーディング3位まで上がって来ました。新たな地で少しずつ階段を上っている、その心境をお聞きしました。
田中騎手は荒尾廃止と共に一度騎手を引退し、10か月後に再び復帰。佐賀での生活も4年目となりましたけれども、もうかなり馴染んでいるように見えますね。
そうですね。周りの方々にすごく良くしていただきましたし、弟(田中直人騎手)が佐賀所属だったというのも大きかったかもしれません。若い子たちからは、「もとから佐賀にいるみたいですね」って言われるくらいなので。
弟さんの存在は大きいですか?
大きいですね。しょっちゅう一緒にご飯を食べに行くんですけど、でも競馬の話は一切しないです。普通の兄弟ですよ。騎手としては、どうしても成績がモノを言う世界じゃないですか。僕が佐賀に来た頃は弟の方が成績が上だったので何も言えなかったですけど(笑)。レースに関しては各々の考えがあるし、相談し合うというよりは心の中で『負けてられない』という風に思う存在です。弟が勝たないと心配になるし、勝っても『なにくそ!』って思うのでちょっと複雑というか(笑)。家族としての気持ちと、騎手としての気持ち両方がありますね。
移籍して新しい場所で結果を出すというのは難しいことですが、佐賀に馴染むきっかけになったことはありますか?
一番は2014年のダービー(九州ダービー栄城賞)を勝たせてもらったことですね。高知のオールラウンドに乗せてもらったんですけど、特に人気もなかったしリラックスして乗れたのが良かったんですかね。ダービーはやっぱり特別なので、ここを勝ち切ることができたのは相当大きかったです。しかもその後すぐにスイングエンジンで吉野ヶ里記念を勝てたので、そこからいい流れに乗れたのかなと思います。
2014年九州ダービー栄城賞
今年はここまでリーディング3位です。だいぶ上がって来ましたね。
たくさんのいい馬に乗せていただいたことと、あとケガで休んでいた方がいたことも影響していると思います。だから、単純に順位が上がったとは考えていません。荒尾時代は自厩舎の調教に専念していたんですけど、佐賀は攻め馬をしないとレースに乗せてもらえないので、とにかくみんなたくさん攻め馬するんですよ。これまで所属していた先生もそうですし、最近所属にしてもらった濱田(一夫)先生もそうなんですけど、すごく理解していただいて自厩舎以外の厩舎の調教をする時間ももらっています。そういう恵まれた環境の中でやらせてもらっているので、もっと上に行って恩返ししたいという気持ちは強いですね。
騎乗的に変わって来たことはありますか?
どうなんですかね。自分ではちょっとわからないですけど、あんまり意識はしていないです。1着になるにはどう乗ればいいかっていうことを逆算して考えているので、常に1着になるイメージしかもってなくて。性格もそうですけど、基本的にポジティブなんですよね。あんまり自分を追い込んで行くタイプではないし、何かあって落ち込んでも引きずらないです。
検量室の辺りで見ていて、レース前後の表情がかなり楽しそうだなという風に感じました。
楽しいですよ。今すごく楽しいです。たった10か月ですけど騎手を辞めていた時間がありましたし、荒尾廃止も経験して、騎手でいられることの有難さを痛感しています。今は本当にたくさんのチャンスをもらっているし、悔しいこともあるけど毎日が楽しいです。
今の目標を教えて下さい。
大きな目標は一番上を獲ることです! そのためには目の前のひとつひとつを大事にしていかないとたどり着けないので、少しでも多く勝てるように、一歩一歩着実に進んでいきたいです。
佐賀は上位2名がかなり強力ですけれども。
強烈ですよ~(苦笑)。山口(勲)さんも鮫島(克也)さんも、まさにレジェンドですからね。勝てる部分を探すのは今は難しいです。お2人だけじゃなくて、上位にいる人たちはみんな上手いですからね。だからといって負けていられないので、他の人たちの騎乗を研究しつつ、自分を磨いていきます!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:佐賀県競馬組合)
現在笠松リーディング第5位につけている藤原幹生騎手。デビュー16年目となる今年は、さらなる飛躍が期待されます。これまでのこと、そして現在の心境をお聞きしました。
今年はここまで49勝(2016年6月22日現在)を挙げ、デビュー以来最高のペースで勝ち星を重ねていますが、飛躍のきっかけというのは?
今年はいつも以上のペースで勝たせていただいて、本当に有難いです。ただ、自分では飛躍したという風には感じていないですし、1つ1つ目の前の馬たちに対してがんばっているだけです。特にきっかけとかはないですね。
昨年は3カ月間、門別競馬場で期間限定騎乗しました。その辺りの経験も大きかったのでは?
確かにそれはありますね。これまでとまったく違う環境でいろいろ勉強させていただいて、とても刺激になりました。コースも施設も違うし、馬産地北海道なので近くに牧場もたくさんあって。レースのことだけじゃなく、競馬に対する視野が広がったのかなと思います。
あのタイミングで期間限定騎乗した理由というのは?
去年デビュー15年だったんですけど、それまでも漠然とどこかで乗ってみたいなというふうには考えていました。ただ、笠松の現状では人手が足りないので、僕がどこかに行くとなると他の人たちに攻め馬を頼んで行かなければいけないんです。ただでさえみんな忙しいのに、「ちょっと行って来ます」という雰囲気ではなくて。だから、具体的には考えもしなかったですね。でも一昨年に大きなケガをして休まざるを得なくなってしまって。復帰してからも、しばらくして体の中に入れたプレートを除去する手術をしなくちゃいけなかったので、そんなに攻め馬を増やさなかったんです。その延長で期間限定騎乗に行かせてもらいました。
なるほど。調教する人が少ない分、競馬場を空けるというのも難しいですね。
そうなんです。朝は1時45分から1頭目に乗って、だいたい20数頭攻め馬しますね。大変ですけどみんなやっていることだし、攻め馬をしている馬は基本的にレースにも乗せてもらえるのでがんばり甲斐はあります。
2014年のケガは相当大きなものだったそうですが、復帰まで大変だったのでは?
腰椎を5か所やって他にもいろいろ......。しばらく歩けなかったので凹みましたけど、じたばたしても仕方ないのでゆっくり休みました。復帰した当時は前と同じ騎乗ができなくて精神的に堪えましたね。周りの人たちから見たらほんのささいなことなんですけど、自分の体は自分が一番感じるじゃないですか。このままじゃダメだと思ってトレーニングをしたりいろいろ考えて、今はケガする前を上回っていると思っています。
具体的にはどんな部分が上回ったんですか?
う~ん......言葉で説明するのは難しいんですけど。ケガをする前から目指していたフォームがあって、復帰した時はそこから離れたなと感じたんです。その後トレーニングして筋肉を増やして、バランスの取り方も変わって軌道修正できたかなと。やりたかったことに追いついて来た感じです。
乗り方について、目指しているジョッキーはいますか?
みんな上手いので、いいところはどんどん見て覚えようとは思っていますが、「この人みたいになりたい」というのはないです。勝負の世界だし、笠松や名古屋だけじゃなく、地方も中央も世界でも、騎手の中で負けたくないという気持ちは強いです。そのためには、自分なりのフォームを追求していくのが一番だと思っています。
騎乗フォームのお話が出ましたけれども、馬とのコミュニケーションはどうですか?
それは自分の中で納得がいっているんです。自分なりに会話できるようになったなって。でももちろんもっと研究していきたいし、上手くなりたいと思いますけど。
馬とのコミュニケーションが納得できているというのは、すごいことですね。
笠松の環境もあると思いますよ。レース単体で考えるわけじゃなくて、毎日の調教の中で少しずつコミュニケーションを取っていって、その馬がどういう馬なのか、何を考えているのか、今はどういう状態なのかっていうことを感じていくわけです。パッと乗ってわかる馬もいれば、なかなかわからない馬もいますけど、それでも毎日接していれば少しずつ理解できるようになりますよ。だから、朝の調教は大変ですけど、なくてはならない大事な時間だと思っています。
毎朝1時45分から調教しているということですが、それを何年も続けられるモチベーションというのは?
やっぱり、馬の気持ちを理解して思い通りに走らせられると嬉しいですし、それを周りが評価してくれたら嬉しいです。大人しくて素直に走る馬も大好きですけど、クセがあって乗り難しい馬といかに意思疎通するかっていうのも楽しくて。なんだかんだで、乗っている馬たちは期待に応えてくれるんですよね。それが一番の喜びです。
では、今後の目標を教えて下さい。
今まで通りというのが一番の目標です。おごらず、腐らず、今まで通り1頭1頭を大切に乗っていきたいです。
なんだか藤原騎手は悟っているというか、静かな闘志を感じます。昔からそういう考えは変わっていないですか?
いや、昔は腐ってましたよ。「何で評価してくれないんだ!」って思ってましたし。でも今思えば技術がなかったし、当然だったなと思います。30歳くらいまでにいろいろな経験をさせてもらったことで、少しずつ自分自身が見えるようになったのかもしれないですね。特に大きな何かがあったわけじゃないですけど、考え方が大きく変わりました。これからも笠松で一生懸命がんばりますので、ファンのみなさんに見ていていただけたら嬉しいです!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:岐阜県地方競馬組合)
鈴木麻優騎手は現在岩手競馬で唯一の女性騎手。2014年にデビューして3年目のシーズンを迎えた。このインタビューは自身の最近の騎乗の話を聞く事が多いのだが、今回はJRA・藤田菜七子騎手の盛岡参戦を受けて、鈴木麻優騎手から見た藤田騎手や地方競馬の女性騎手たちのお話をたずねた。
5月16日にJRAの藤田菜七子騎手が盛岡で騎乗して、その日はたくさんのファンで賑わいました。鈴木麻優騎手もイベントで一緒になったりレースでも一緒に騎乗したりしましたが、藤田騎手参戦はどのように感じましたか?
菜七子ちゃん(藤田騎手)が来るという事でたくさんのファンが来てくれたのは岩手競馬にとって良かったですし、自分も同じ女性騎手という事で比べられるじゃないですか。それも良い刺激になりました。
5月16日盛岡競馬場、藤田菜七子騎手と
彼女のレースを実際に見てどんな事を思った?
力強く追えるところとか、ステッキの使い方なんかも上手だなって思いましたね。
以前に会った事があるんですってね。
はい。私がまだ教養センターにいて、菜七子ちゃんはJRAの競馬学校に入る直前の頃かな。候補生同士の交流会で菜七子ちゃんが来ていて、"女の子がいる!"って。それ以来ずっと覚えていました。
やっぱり女性同士、女性騎手同士、なんというか感じるものはあった?
競馬の事で刺激になる、参考になるのもあるし、女の子同士っていう事で話したい事もあるし......。競馬場だと"同世代の女の子"が周りにいないじゃないですか。女の子同士で話したい時ってあるんですよ。今回は菜七子ちゃんが忙しくてあまり話せなかったけど、また来てほしいですね。その時はもっとゆっくりいろいろ話してみたい。
藤田騎手は今どこに行っても注目を集めているけれど、鈴木騎手もね、デビューした時は凄く話題になって、密着取材とかもされていたじゃないですか。そういう"取材される立場"を体験した者として藤田騎手の事はどんなふうに思う?
大変だろうなと思いますよ。絶対ストレスが溜まると思う。取材されているとムスッとした顔とか、したくてもできないじゃないですか。疲れている時でも受け答えしないといけないのは辛いと思うし、それをこなしているのが偉いなと。
今はこれだけ注目されているけど、何年か経った時にどうなっているかはちょっと心配になったりするね。
ギャップとかですか? でも菜七子ちゃんは上手いから大丈夫だと思う。たくさん勝てるようになって、女の子だからという事でなく普通に目を惹く騎手になるんだと思う。でも早く引退とかしないでほしいな。
ちょうど女性騎手ネタなのでもうちょっと聞いてみよう。あの、レディース系の招待競走あるじゃないですか。女性騎手が集まってね。ああいう時は女性騎手同士でどんな話をしているの?
レースの話もしますけど、いろいろな話をします。たわいもない話。ガールズトークですよ。他所の女性騎手は皆さん個性派揃いだから話していて本当に楽しいです。
昨年のレディス&ヤングジョッキーズでは大活躍
各地の女性騎手の、鈴木麻優騎手から見た印象とか話してもらえる? あたりさわりのない話でいいので。どんなふうに見えているか。じゃあ別府真衣騎手から。
真衣さんは、レースはすごく真剣じゃないですか。1レース1レースもの凄く真剣で、馬の実力を出し切ろうとしている。女性騎手として憧れる存在です。でも普段はすごく面白い。びっくりするくらい面白い方です。
へえ~。なんとなく分かる感じはするけども。同じ高知の下村瑠衣騎手は?
瑠衣さんも面白い先輩なんですが、自分の将来の事とかしっかり考えていて芯が通っているところがすごいなって思いますね。
同じ東北出身だしね。
そうなんです。同じ東北で(※下村騎手は青森県の八戸出身、鈴木騎手は宮城県の気仙沼出身)、同じ港街の生まれだから波長が合うって言うか。話しやすい先輩です。
佐賀の岩永千明騎手はどうでしょう?
まだあまり一緒のレースに乗った事がなくて、会った事もそんなにないですけど、印象は"大人のお姉さん"という感じです。自分から見たイメージは"綺麗な年上の女性"ですね。
名古屋の木之前葵騎手は? 教養センターでも同じ時期だよね。
葵先輩はちょっと気が強いところもあるけどおっとりした面もあって......。几帳面できれい好き。手先も器用です。
みんな"天然"なのね(笑)
そうなんですよ。みんな個性的なんですよ。だから集まるとすごく楽しいんですよ。女性騎手が増えて、またLJSみたいな女性騎手だけのレースをする機会ができればいいですね。
鈴木麻優騎手もデビュー当初は"東日本大震災の被災地から騎手を目指した女の子"という事で注目を集め、デビュー前後の長期間にわたってマスコミの取材を受け続けた経験を持つ。それだけに今の藤田菜七子騎手の境遇には共感する部分も多いようだ。
同時に、そうして取材を受け続けながらも変に舞い上がらず、自分の立場をしっかり理解している......という点でも似ているのではないかと感じる。
またいつか、この二人の、そして藤田騎手も交えての女性騎手の戦いを、見る機会がある事を願う。
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※インタビュー・写真 / 横川典視