今年度のオッズパークグランプリは2月28日に笠松競馬場で行われる予定。過去5回の同レースでは、笠松所属馬が3勝、2着1回と抜群の成績を残している。そしてそのうちの2勝は尾島徹騎手が挙げたものだ。
まずはその2勝(08年マルヨスポット=福山、09年マルヨフェニックス=園田)を振り返ってもらおう。
最初のときは、福山競馬場そのものが初めて。それで多少の不安はありましたが、競馬場に着いて馬場を見たら笠松以上に小回りで、さらに不安に。でもレースではキングスゾーンとか強い馬が引っ張ってくれたので、うまく流れに乗れました。しかもマルヨスポットは内にササるタイプだったので、コーナーもスムーズに回れたんです。ほかの馬は外に膨らんでいましたから、その点は有利に働きましたね。マルヨフェニックスのときは、勝てるかなという手ごたえがありました。出走メンバーのなかの強い馬を目標にして、最後に差し切れればという思いで乗ったら、そのとおりになりました。
尾島騎手とマルヨフェニックスのコンビは、南関東でも重賞を2勝。まさに全国区での活躍が続いている。その出会いとともに、尾島騎手の成績も急上昇。2009年以降は年間100勝以上を達成している。
デビューしたころは安藤光彰さん(JRAに移籍、引退)が師匠みたいで、いろいろと面倒をみてくださいました。でも自厩舎には兄弟子が2人いたので、レースでは乗る馬が全然いなくって。それでも少しずつ乗り鞍が増えましたが、勝ったら次は乗り替わり。よく腹を立てていましたね。
それでもデビューの年は17勝で、2年目が40勝。素質を実績に変えつつあった2006年に、ひとつの転機をみつけた。
僕の父の関係からつながって、JRAの岩戸孝樹調教師(美浦)を紹介していただいて、研修という形で行けることになったんです。笠松での仕事はもちろん気になりましたが、刺激がほしいという欲求と、興味と好奇心で押し切りました。いやあ、行ってよかったです。重賞勝ち馬にも乗せてもらえましたし、藤沢和雄厩舎でも調教を手伝わせていただきました。もう、馬を見るだけでほれぼれするというか、笠松とは馬のカタチや造りが違って見えましたね。そもそも、歩くスピードから違いました。
その経験は、その後の尾島騎手にどんな影響を与えたのだろうか。
いちばん変わったのは考え方ですかね。その期間、レースに乗ったわけではないですが、JRAでの経験は落ち着いて乗ろうと考えることにつながったように思います。「勝てる馬は構えて乗っても勝てるんだ」と。その意識ができたことで、笠松でも控えて乗れることが多くなりました。それによって、勝てる馬での取りこぼしが少なくなったようにも思います。美浦に行く前は、前へ前へという気持ちでしたし、周りもそういう騎手が多かったですし。
そういった積み重ねが、2009年の笠松リーディングにつながったともいえそうだ。
そのおかげで、JRAに遠征するときに、笠松以外の馬にも乗せてもらえるようになりました。(マルヨフェニックスで)黒潮盃(大井)を勝ったのも大きかったですね。僕みたいな騎手は、何か目立つことをやらないとなかなか覚えてもらえないですから。
しかしなぜか、スーパージョッキーズトライアルでは2回とも苦戦となっている。
普段のレースとあまり変わらないと思うんですけれど......。でも気持ちとしては、ワールドスーパージョッキーズシリーズは本当に出たい舞台。その経験はもちろん、そのあとがきっと大きくなるはずですから。
そのためには今後もリーディングを守る必要がある。尾島騎手が考える笠松競馬場の勝負ポイントはどのあたりなのだろうか。
笠松では地元同士のレースだと、力のある馬なら多少強引に行ってもなんとかなりますが、交流競走になるとペースが速くなるので後ろからでも届きます。でもそれも違いがあって、地元馬が逃げたらペースはゆっくりめ、遠征馬が逃げたら早くなるという特徴があります。まくりを打つなら3コーナー手前にある坂の頂上が勝負ポイント。でも外を回ると不利なので、通る目安は内から3頭目までかな。ですから、先行馬が固まっているとき、それがどうなっていくのかを読むというのも重要です。
小回りコースだけに、コースロスを少なくするのは大きな課題。それが騎手の技量を上げることにもつながるのだろう。
あるとき、インを突いて勝ったら、2着の大先輩にものすごく怒られたんですよ。でも、それで気後れしたり遠慮したりすると、結果は残せませんよね。常に攻めていかないとレースしてもつまらないですし、自分自身も成長できません。今はどこでもレース映像が見られますから、どんなときでも自分が勝ちたいという気持ちが伝わるような競馬をしていきたいと思っています。
デビュー12年目の2012年は、過去最高の勝ち星を挙げている。さて尾島騎手は、なにを今後の目標に据えていくのだろうか。
確固たる目標というよりは、とにかくここで実績を作ることが第一。それが今後につながっていくことになると思います。笠松は先輩たちが勉強熱心というか、そういう気持ちをもっているんですよ。その意味で、笠松には見習えるいい先輩が揃っています。そして安藤勝己さん、光彰さんをはじめとする偉大な先輩と同じ時期に騎乗できたことも、自分自身の財産になっています。笠松はベテランの皆さんが強い競馬場ですけれど、僕自身、ここまで上がったからには成績を落としたくはないですね。2012年のデビュー馬では、カツゲキドラマとのコンビで5連勝を挙げ、川崎のローレル賞でも4着に好走した。「あの馬は野生状態で笠松に来て、馴致から僕が担当したんです。そういう馬で活躍したのは、僕自身はカツゲキドラマが初めてです。馴致育成はその道のプロに任せたほうがいいと思うんですけれど(苦笑)」。さまざまな経験を重ねながらも高いところに理想を置いて、その上で日々を一所懸命に過ごす。今後もさまざまな舞台で、尾島騎手の活躍が見られることだろう。
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取材・文●浅野靖典
尾島 徹(笠松)
おじま とおる
1984年3月23日生まれ おひつじ座 O型
愛知県出身 柴田高志厩舎
初騎乗/2001年4月1日
地方通算成績/5,701戦870勝
重賞勝ち鞍/オッズパークグランプリ(福
山・園田)、OddsParkFanSelection、黒潮盃
(大井)、スパーキングサマーカップ(川崎)、
岐阜金賞(4回)、東海菊花賞(2回)など33勝
服色/黄、青のこぎり歯型、そで青一本輪
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※2012年11月19日現在
(オッズパーククラブ Vol.28 (2013年1月~3月)より転載)