白山大賞典JpnIIIでは中央の強豪を相手に2着と健闘したナムラダイキチ。金沢の王者として君臨する、そのナムラダイキチの主戦をつとめるのが、デビューして12年目を迎える畑中信司騎手です。今年のシーズン前には福山での期間限定騎乗でも結果を残し、金沢のトップジョッキーのひとりとして活躍中です。
大川:白山大賞典ではナムラダイキチで2着。
畑中:くやしいですねえ。もうちょっとがんばれるかな、とは思っとったんですけどね。周囲の期待は感じていましたね。レース中も、1周目スタンド前でスゴい声援があったんで、うれしかったです。道中、ボクがイメージしていたのよりペースが落ち着いたんで、向正面ぐらいで、『あ、これは3コーナーまでガマンすると、逃げてるエーシンモアオバーが残っちゃうな』と思ったんですよ。ニホンピロアワーズの手応えはハンパなかったんでね。『あ、ちょっとこれにはかなわんな』とは思ったんですが、エーシンモアオバーはかわしたいなって。
大川:ペース上がらず、よくなかった?
畑中:ああ、そうですね。2コーナーの立ち上がりのところで、一度ひかえてから外に出す感じになっちゃったんですよね。もうちょっとペースが上がっとったら、ひかえて出すっていうより、流して出せたんですけどね。できるものなら、もうちょっとスムーズに、サーっと出していけたらよかったですね。
大川:残り800を切る前に動きました。
畑中:ペースが遅いなと思ったのもあったし、外に出したときにダイキチがいい感じにちょっとハミとっちゃったんで、無理矢理おさえるよりも、このまま流してったほうがいいかなと思って。交わせるなら交わしちゃったほうがよかったんですけど、内の手応え見たら、もう絶対かわせないなと思って(笑)。それほどニホンピロアワーズの手応えは、良さそうでしたね、横で見とって。3コーナー過ぎまで行ってから、一瞬ビュッて離されたじゃないですか。離されて、直線入ってからちょっとフワフワしたんですよ、ニホンピロアワーズが。その時にもう1回、交わせるかなって思って(笑)、がんばってみたんですけど、でも追いつかなかったですね。
イヌワシ賞(2012年9月4日)勝利時のナムラダイキチ(撮影:石川県競馬事業局)
大川:ナムラダイキチはよくやったという声も大きいですが?
畑中:ゴールしてからも、上がってきたら、「ようがんばった!」って、ファンの方から。負けたのにねえ、大きな声援を(笑)。2着でようがんばったって拍手もらったり、声援をあびるのは初めてですね。また来年はいいとこ見せられるように、交流重賞でがんばるので、応援よろしくお願いします。ボクも、『ナムラダイキチさん、ホント、ありがとうございました』って感じです(笑)。
大川:その後のナムラダイキチは?
畑中:涼しくなったせいか、またより一層元気になっちゃいましたね(笑)。白山大賞典でけっこうダメージ食らうかなと思ってたら、逆に元気になった(笑)。若さなんやろなあと思いますけどね。回復力がハンパねえな、って。タフですわ、ホントあの馬。
大川:ナムラダイキチは、これまでに出会った馬のなかで...。
畑中:一番ですね、やっぱ。レースに関しても無駄な動きをしないですね。遅くなったら遅くなったペースで走れるし、速くなったら速くなったペースでも走れるし。無駄に、こう、ガーって引っかかったりとかしないんですね。で、行くときはちゃんと行ってくれるし。一完歩がでかいですね。それもいいところだし、頭もいいし。競馬に行っても頭がいいですね。教えられることばっかりですね。
大川:出会ったことについて。
畑中:ホント感謝してますよね。ダイキチさまのおかげで、ボクもこうやってインタビューを受けさせてもらったりとか、みんな注目してくれたりとか。結局、乗り役なんて見られてナンボの商売ですからねえ。ホントありがたいです。
大川:騎手になったキッカケは?
畑中:中学校のときに、アレを見に行ったんです、阪神大賞典。96年の、ナリタブライアンとマヤノトップガンの一騎打ち。ナマで見て、うわ、めっちゃカッコええやん、って。競馬ナマ観戦は、そんとき初めてだったんですよ。テレビでしか見たことなかったのが、初めてのナマで、あの一騎打ちを見てしまって。乗り役になりたいなと。母に騎手になりたいって言ったのは、中学校の進路相談の三者面談のときにね。先生に「畑中くん、何にするの?」って聞かれて、「ボク騎手になります」って言ったら、「はぁ!?」って(笑)。お母さんも初耳、先生も初耳(笑)。結局、ダメだって言われて高校に進学したんですけど。高校3年生のまた進路相談のときですわ、先生に「どうするんや」って聞かれて、「進学します」って言って、「進学ってお前、学力ないのに進学できんぞ」「いや騎手になりたいんで、その学校に」って言ったら、その先生も、「そんなんなりたかったんや」っていうふうで、けっこう動いてくれたんです。一度、中央の試験受けて、不合格で。で、近くの貝塚市にある牧場、春木競馬で厩務員やってた方の牧場かな、そこで「お願いします」って言うたら、「そんなら知ってるやつが金沢で調教師やってるから、そこで面倒見てもらえや」みたいな。そこで(現在の師匠である)寺田茂先生を紹介してもらいました。
大川:ナムラダイキチとコンビを組んでもうすぐ1年、冬季の期間限定騎乗でも結果をだしました(騎乗期間終了時点で福山リーディング1位)。
畑中:福山では、そんなに勝てると思ってなかったんですけど、行く前に寺田先生にも気合い入れられて。春木におった厩務員さんとかが福山で働いてるとか、けっこうおるらしいんですわ。「お前、オレの勝負服着て行くんやから恥をかかすなよ」って。ボク、先生の勝負服デザイン、もらったんですよ。乗り役として、コレはみんなよりうまいんちゃうかなあと思うワザをみがかないといけないな、と思うんですけどね。逃げるのは、あんま好きじゃないんですけど、周りのひとから見ると、『逃げたら残るじゃんアイツ』、みたいに見られることが多いんですよ。でも、ボクとしては、逃げ方が上手くなったのは、福山での騎乗が大きいですね。アレはホント勉強になりましたよ。ホント、今年は上手な逃げ方を覚えさせてもらったなあ、あの競馬場では。ダイキチに乗るようになって、乗り役として、自信が持てるようになりましたね。他のレースでも、落ち着いて周りが見えるようになりました。余裕、ゆとりがあるから、『ああ、前にコレとコレとコレがおって、ああ、コレとコッチは下がるし、コレの後ろではアカンし』みたいな。以前よりそういうものを、敏感に感じるようになりましたね。気持ちにゆとりができたんでしょうね。他の馬に乗っても、その馬の力のある程度の容量なんかを、敏感に感じるようになりましたね。もう今年は、ダイキチでも福山でもスゴい勉強させてもらいましたね。ホント、充実した1年でした(笑)。
大川:まだ今年、終わってませんが(笑)。最後に金沢を代表する騎手としてひと言。
畑中:ボク自身、知名度が上がるような活躍して、金沢競馬のために宣伝でもなんでもして、普段は競馬しないひとでも、「あんなイケメンジョッキーが乗ってるなら行ってみようか」って思ってもらえるならうれしいですね(笑)。
大川:金沢競馬のイケメンは誰ですか?...畑中騎手以外で。
畑中:ボクをのぞくとですか? ドングリの背比べですね(笑)。
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※インタビュー / 耳目社・大川充夫