園田競馬ファンの期待を一身に背負って、JBCスプリントに参戦したオオエライジン。願いは届かず、結果は6着。それでも地方馬最先着は果たしたのだから、メンツは保てたんだろうけど、やっぱり残念...。騎乗した木村健騎手に、話を伺って振り返ることにします。
竹之上:調子は凄く良いって陣営から聞いていたけど、調教から乗っていてどんな感じだった?
木村:調子は絶好調でした。馬が沸いてましたもん。
「沸く」という表現を、他の地区ではどうかは分かりませんが。兵庫県競馬関係者は、よく口にします。絶好調のときに、力が漲っているように思える状態のとことです。細胞のひとつひとつが小躍りでもしているのでしょうか。
木村:これまで園田では元気でも、輸送をするとシュンとしてしまうところがあったんです。それが今回は川崎についてからも元気で、やっぱり輸送に慣れてきたんやなぁと思いましたね。
竹之上:うん、それは陣営もすごく気にしていたことやったけど、その元気さを見て、ひとつ課題はクリアできたと思ったわ。それで、本場馬入場のときに、サーッと馬場を流すのではなく、ゆっくり誘導場についていったよね。
木村:あれはね、ライジンに馬場をしっかり見せたかったんです。前走の大井では、ゲート地点で物見して、そこから動いてくれなかったから、結局走るところを下見させることができなかったんですね。だから今回はそのあたり不安を取るためにしたんですけど、しっかりできましたね。
竹之上:不安と言えば、左回りの不安ってのもあったよね。
木村:調教では園田の内馬場を使って練習していたんですが、1回目は外に張って行きましてね、やっぱり無理なんかなと思ってたんです。でも2回目からはすんなり行って、やっぱり賢い馬やなと思いました。レースのときも返し馬で回ってみたんですが、何の問題もなく回れたので、おっ!これやったら行けるっ!と思いましたよ。
しかし、トップスピードでコーナーに入る実戦では、稽古とは大きな違いがあったようです。スタートは少し躓くようになりましたが、それでもスッと前に取り付き、4番手で1コーナーを迎えます。
木村:元気すぎで、以前によく出していた悪い癖の出遅れがないか心配してたんですが、それほど悪くなかったですし、前のグループについて行けましたね。ええ感じや!と思ってコーナーに入ったら、そこで外に張って行ったんです。やっぱりレースでは違いました...。
1、2コーナーで早くもムチを使って外に張るのを防ぐ木村騎手。
木村:外に張って行くので、肩ムチを入れてなんとか矯正しました。飛んで行ってしまいそうで、他の馬にも迷惑をかけるわけにいかないし...。
竹之上:向正面では内を突いて上がっていったよね。あのときの手応えは良く見えたんやけどね。期待は高まったよ。
木村:ぼくも向正面では、一瞬思いましたけど、最初にムチを入れてたんで、馬が行く気になっていましたからね。それで3コーナーに入ったらまた外に張って...。そこでまたムチを入れるわけですから、結局息が入らないんですよね。悔いが残ります。
さすがに息が入れられず向いた直線では、JRA勢の瞬発力に敵うはずもなく6着に沈んでしまいます。ただ、"悔いが残る"という木村騎手の言葉に、決して失望していない明るいものを感じとることができます。
木村:確実に成長を感じるんです。だからもっとスムーズにレースをさせられたら、いいレースができたんじゃないかってね。帝王賞(10着)のときは初めて内で包まれる競馬をして、頭を上げて馬がヤル気をなくしてしまってたんです。でも、東京盃(7着)のときは包まれても嫌気を出さずにレースができたんです。今回も輸送が一番良くて、レースでも怯むところはなかったですしね。
竹之上:落鉄もあったって聞いたけど。
木村:どこでやったかわわからないんですが落鉄していました。爪がめくれ上がって、人間でいえば深爪みたいになって、かわいそうでした。何度もコーナーでぎこちない走りをさせてしまったからですかね...。
竹之上:でも、悔しい思いがあるってことは、巻き返す自信もあるってことやね。
木村:左回りでも何度もやれば慣れては来るでしょうけど、使えるところがあまりないですし、やぱっり難しいでしょうね。でも、右回りやったら、慣れた園田の馬場やったら、巻き返せるという思いはあります。
竹之上:年末(12月26日)の『兵庫ゴールドトロフィー』やね!
木村:その前に『園田金盃』(1870m)を使います。今年からファン投票のレースになったので、選ばれればファンの期待に応えたいですし。でも、短いところを使って思ったのですが、やっぱり適性は短距離だと思います。だから、1400mの『兵庫ゴールドトロフィー』で迎え撃つつもりです。地元では負けられないって気持ちです。
最後は力強く締めくくってくれた木村騎手。昨年3着に敗れてしまった舞台。1年を経て心身ともに成長を遂げたオオエライジンなら、きっと好結果をもたらすものと信じています。ファンの熱気に包まれながら行われる年末の大一番。歓喜に"沸いている"園田競馬場の光景が目に浮かぶ。
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※インタビュー / 竹之上次男