2024年の全日本新人王争覇戦で優勝した細川智史騎手。昨秋にはネクストスター名古屋をミトノユニヴァースで制して重賞2勝目を挙げるなど、デビューから4年を前に着実にステップアップを続けています。
全日本新人王争覇戦を優勝、おめでとうございます。高知競馬場は2021年のヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンドで勝利を挙げた舞台でもありました。コースの印象は?
地元の名古屋競馬場は最近、内ラチ沿いの砂が重たくなって、逃げるか2~3番手外がいい馬場なのですが、高知競馬場は内を空けて走るけど3コーナーで内をすくって勝てないこともない、という印象です。
新人王の第1戦は前目につけるつもりが、少し出遅れてしまったとのこと。すぐに作戦は切り替えられましたか?
いろんなレースを積み重ねて、名古屋の先輩方が僕を鍛えてくれたので、すごく冷静に乗れました。運が良かったのか、前がやり合ってくれて後ろにいた馬向きの展開になりました。YJSでもみんな内をかなり空けて走るイメージがあったので、内で脚を溜めてすくっていく形を取りました。
向正面後半からは馬群が密集していて、抜け出す進路があるのかな?と少し不安になりました。
両サイドに馬がいたんですけど、2頭の間に馬の首だけでも入れておいて、最低限の自分のスペースだけは確保していました。両サイドの馬が仕掛けると、スペースを確保するために僕もついて行かないといけなくなって、そうなったらさらに外の馬も追ってくる、という展開になりかねなかったので、両サイドの馬には仕掛けはもう少し待ってほしいなぁと思っていました。そうしたら、意外と待ってくれて良かったです。最後は僕の得意の"追い"で勝負しようと考えていました。
1月23日、全日本新人王争覇戦(高知)第1戦
新人王は全2戦で優勝が決まります。第2戦は何着くらいに入れば優勝できる、など考えていましたか?
考えていました。騎乗馬は逃げたら強い馬だったので、ハナを取れたら潔いレースをしようと思っていました。でも、他馬とやり合うくらいなら、控えて一つでも上の着順を目指すプランも考えていました。そうしたら、外から加茂(飛翔)くんが勢いよく来たので控えて、いかに少しでも上位に食い込むかを考えていました。結果、8着でギリギリでしたけど、優勝できて嬉しかったです。
2位古岡勇樹騎手とは1ポイント差の接戦でしたね。
古岡騎手は同期なので、一緒に表彰台に立てたことがすごく嬉しかったです。もし僕が2位に負けていたら悔しいですけど、それでも優勝が同期だったらなんだか嬉しいっていう気持ちもあったと思います。古岡騎手も「おめでとう」と言ってくれて、いい同期です。
同世代たちとのレースは普段と違いましたか?
なんだか、すごく冷静に乗れました。いま漫画やアニメで『ブルーロック』を見ているんですけど、その中でメタ・ビジョン(超越視界)という第四の眼が上空にあって、全体を把握できる力があります。アニメの世界だけじゃなくて現実にもそういう能力はあると思っていて、僕も上空に目を持っているつもりで空間認識をして、視野を広げて乗るイメージでいます。中二病ですみません(笑)。
昨年はネクストスター名古屋をミトノユニヴァースで制覇。細川騎手自身は重賞2勝目ですが、所属する角田輝也厩舎との重賞制覇は初めてでした。人気馬で、プレッシャーもあったのでは?
重圧はめちゃくちゃありました。人気するのは分かっていたんですけど、単勝2倍くらいかなと思っていました。そうしたら、パドックに行った時に角田先生に「1番人気だぞ」と言われてチラッと見たら「本当に1番人気だ」と、心臓がバクバクになっちゃいました。
10月31日、ネクストスター名古屋をミトノユニヴァースで勝利
最終オッズは単勝1.7倍でした。ゲートに入れば落ち着きましたか?
ずっとバックバクでした。レースでの指示もありましたし、オッズもとんでもないことになっているし、そうした中で勝てて、大きな成長になりました。とにかくホッとしましたね。
ネクストスター自体が第1回で注目もされていましたし、すごい経験をしましたね。今はどんなことに取り組んでいますか?
調教では、馬によって利き足があったりするので、そこを意識して乗るようにしています。ただ、あんまり良くないことかもしれないですけど、いまは感覚で勝負しています。考えることが苦手ということもあるんですけど、感覚を磨き続けたらどうなるんだろう、と思って、いまそれを実践しています。
これからの目標とオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
所属厩舎の角田先生に恩返しをしてきたいです。また、これからは角田厩舎の馬だけじゃなくて、地元・名古屋やいろんな競馬場で勝てるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
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昨年4月2日に騎手デビューした加藤翔馬騎手。2戦目に初勝利を挙げ、地方競馬通算勝利数は70勝(2024年3月8日現在)と、順調に経験を積んでいます。デビューから約1年を振り返っていただきました。
もうすぐデビューから1年となりますが、ここまで70勝、振り返っていかがでしょうか。
デビューした頃からたくさんレースに乗せていただき、周りの方々にはとても感謝しています。最初はなかなか競馬に慣れなかった部分もありますし、筋力も足りなくて苦労しましたが、1年経って、今やっと慣れてきた頃かなという感じです。
デビュー初日から初勝利を挙げ、とても順調に見えますが、ご自身ではどう感じていますか。
環境にはすごく恵まれているので、その環境に甘えず、しっかりと活躍できるようにという気持ちでやってきました。実際、人気馬で期待していただいたのに負けてしまったレースもありましたし、もっと努力して上手くなりたいです。
お父様の加藤和義調教師はどんな存在ですか?
競馬の世界では親子というよりは先生と弟子という関係が強いですね。競馬に対してはすごく厳しいですが、その分いろいろと教えてもらえることがありがたいです。厳しい中でも、自分が上手く乗れたなという時に、「よく乗ったな」と褒めてもらえると嬉しいです。
高知での期間限定騎乗(1月7日~2月21日)はいかがでしたか?
田中守先生の元でたくさん勉強させていただきました。馬場も流れも全然違うので、金沢では勉強できないことを経験させていただきました。具体的には、金沢だとそこまで緩急がないというか、流れたペースになりやすいんですけど、高知は緩急があってペースが落ち着いたりすることもあって。馬場が深くて重い分、道中で脚を使ってしまいやすいので、どうロスなく乗るかということを考えました。自分をもう一歩成長させてもらえるいい機会だったと思います。
やはり馬場の違いは大きかったですか?
大きかったですね。雨が降ったりするとまた全然変わりますし、毎日傾向が違うという印象でした。僕はまだ自分で判断するのが難しいので、前半のうちは周りの方々の様子を見て、どのくらいのペースで行っているか、というところを確認して、それをレースに活かすようにしていました。
元日に大きな地震があり、石川県は大変な被害がありました。
僕自身は地震の時に高知に居たのですが、家族や友達がたくさんいるので心配でした。大きな被害があり、被災した方々に心よりお見舞い申し上げます。競馬場の近くでも被害が大きいところもありましたが、幸いにも競馬場は大きなダメージがなかったようです。駐車場が広いので、消防車など救助部隊の基地として有効活用できたことは、誇らしく思います。それから、全国いろいろな競馬場で被災地支援レースをしていただいて、たくさんのファンの方々が賛同してくれたと聞きました。石川県民としてとても感謝しています。
金沢競馬は3月10日から開幕です。現在の競馬場の雰囲気はいかがでしょうか。
今は開幕に向けて調教も進んでいますし、関係者一丸となって頑張っています。特にジョッキーたちはファンの方々に喜んでいただくためには何が必要か、売り上げを上げるためにはどうしたらいいか、ということをすごく考えているので、自分もできることがあれば協力したいと思っています。
尊敬する先輩はどなたですか?
吉原寛人騎手です。騎乗技術がすごいというのはもちろんですが、人柄も本当に素晴らしいので。誰に対しても優しく謙虚に関わっている姿を見せてくれて、あれだけのトップジョッキーになってもそこは忘れてはいけないんだと思わせてくれる存在です。いろいろなことを聞いたら教えてくれますし、とても尊敬しています。
今後の目標を教えてください。
今シーズンは昨年以上の成績を残すこと、あと重賞も勝ちたいです。
では、オッズパーク会員の方々にメッセージをお願いします。
いつも金沢競馬を応援していただき、ありがとうございます。毎年1歩ずつ成長した姿をお見せしたいので、今年も頑張ります。応援よろしくお願いいたします。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:高知県競馬組合)
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デビューして4年目の金田利貴騎手は、自厩舎(金田勇厩舎)のトップホース、アオノブラックに今年度から乗り替わって1年。17日のばんえい記念に向かいます。
アオノブラックの手綱を任されて1年近くが経ちました。
レースではうまく行かないこともあったけど、道中の息の入り方など、だいぶわかってきたかなと思います。
自分が競馬場に厩務員として来た2018年は2歳Bクラスでした。そこから調子を上げてナナカマド賞3着。その後もメムロボブサップに負けることが続き、悔しい思いをすることが多かったです。自分は同期のコマサンブラックとコマサンエースを担当していましたが、いいレースができてもこの2頭には勝てない。差が縮まらなくて、強いな、と思いました。それから騎手になり、今、こういう馬に乗れるとは思わなかったです。
乗り替わりの時は。
えー! と思いました。ありがたい。プレッシャーはあります。ただ、コマサンブラックで肩掛けを取りたかった、という気持ちもありました。
1年振り返ってみていかがですか。
先に障害を下ろしたい、と思うと(今シーズンの)ばんえいグランプリや帯広記念のように負けてしまう。先に下ろすと楽だ、という騎手のエゴが出た結果でしょう。優勝したチャンピオンカップは障害を降りたあとに走れたので、負担なくレースを進められたのかなと思います。
夏が苦手な馬ですが、今年はうまく乗り越えられたようですね。
異常な暑さだったので、今年は厩舎全体で思いっきり休むなど対策を講じました。
休むのは怖いですよね。そして岩見沢記念、北見記念と連勝しました。
岩見沢記念はメムロボブサップがいなかったので、負けたら替えてくれというつもりでした(笑)。ほっとして、それからは乗りやすくなりました。北見記念はメムロボブサップに20キロハンデがあってコンマ7秒差。相手の強さを目の当たりにしました。チャンピオンカップはほかの馬も調子がよさそうでしたし、ばんえい記念に向けていいレースができれば、と思っていました。......今、自分で話していてステップアップしているな、と感じます。
岩見沢記念
それは馬がですか?自分が?
両方です。野球でいうバッテリーみたいな。ゲートの出が悪いこともありましたが、改善されました。
バッテリーとは、さすが甲子園球児。ポジションは捕手でしたが、それではアオノブラックは投手ですか?
この馬はそんな感じかな。
普段はどんな馬でしょう。
どっしり構えている。ボス的な......リーダーで、騒いでいる馬がいたら、メスでも怒ります。「うー」と声をだしたらみんな黙る。メスに騒ぐ若馬も一喝してくれます。
若い頃は調教でメムロボブサップを見るとかかっていきそうになったので、今は近づけないようにしています。でも、隣の枠に入ったチャンピオンカップでは道中噛み付きにいこうとしていました。闘争心があるので、隣になったのは良かったです。普段はおとなしく、無駄なことはしない馬です。餌のときはほしがってうるさいので、扉を頑丈にしています。
ばんえい記念は、昨年コマサンブラックで初騎乗(5着)でした。
普段との違いを感じました。夢の中......、ぼんやりとした感じ。甲子園もそうだけど、人の力を感じます。みんなが盛り上げてくれる感じがする。コマサンブラックは前走勝っていて人気になり(3番人気)、自分も期待していた。緊張しました。帯広記念を先頭でクリアした時のイメージがあって先行しましたが、1000キロ(の重量)は違った。差を感じました。
金田騎手が重賞で優勝すると、口取り撮影は家族みんなで撮られるのでほほえましいです。息子さんは、金田調教師(金田騎手の父)を大好きなのが伝わります。
昨年2人目が生まれたからか、長男は自分が調整ルームにいる間は親の部屋にいるそうです。厩務員も仲がいいですし、みんなアオノブラックのことを好きで、応援しています。ブラックが勝った時のみんなの笑顔が浮かびます。負けたときの葬式のような雰囲気も想像できます(笑)。
チャンピオンカップ。家族とともに口取り
あらためて、ばんえい記念に向けての抱負をお願いします。
今年は勝ち負けを期待される馬に乗るのでありがたいです。馬主さんをはじめ、周りの人たちが自分の騎乗に我慢してくれて、たくさんの人に支えてもらいここまで来られました。かみしめながら騎乗し、勝ちたいと思う。王者(メムロボブサップ)がいて、自分はヒールかと思うが、ブラックを応援してくれる人も多いので、みんなを笑顔にしたい。勝ちたいな、と思うほど失敗するので平常心で乗りたいです。枠には左右されませんが、雨が降らなければいいなと思います。
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※インタビュー・写真 / 小久保友香
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昨年4月にデビューした大畑慧悟騎手。年末にはヤングジョッキーズシリーズ・ファイナルラウンドへ出場し、1月4日の名古屋記念では初重賞制覇を果たしました。
まずは名古屋記念での初重賞制覇、おめでとうございます。急遽の乗り替わりでブンブンマルに騎乗しましたが、とても積極的な騎乗が印象的でした。
ありがとうございます。勝つことができてとても嬉しいです。加藤聡一騎手からの急遽の乗り替わりというところが複雑ではありますが......。聡一さんが乗っているレースを見て、先行した方がいいかなと思っていたのですが、当日の新聞には、塚田(隆男)厩舎のセイルオンセイラーが意地でも行くと書いてあったので、ペースが流れるかもしれないなと思いました。川西(毅)先生と相談したら、想定よりも1列下げてもいいよということだったので、そういうイメージで乗ったらハマった感じです。
加藤聡一騎手からの騎乗変更で指名されたときはいかがでしたか?
力のある馬ですし、「僕でいいのかな」と思いました。チャンスをくださった川西先生はじめ関係者の方々に感謝しています。実は以前にも川西先生には重賞で乗り替わりのチャンスをいただいていたのですが、その時は7着だったので、今回勝つことができて嬉しかったです。
1月4日、名古屋記念をブンブンマルで勝利
昨年のトリトン争覇(6月15日/コウイチに騎乗)ですね。デビューから約2カ月の時期に、初めての重賞騎乗で1番人気でした。
あの時は本当に緊張しました。急遽の乗り替わりで乗せていただいたのですが、初めての重賞騎乗で1番人気で......。これまでで一番緊張したと思います。思うような結果が出せずとても悔しかったのですが、あの時の緊張感があったからこそ、今回は平常心で乗ることができました。心の中では「焦るな、焦るな」と言い聞かせていました。
そして、1年目にしてヤングジョッキーズシリーズではファイナルに進出しました。
地元以外の競馬場で騎乗できるのはすごく刺激になります。その中でファイナルに行けたことは嬉しかったですね。結果は13位ということで納得はしていませんが、初めての中山競馬場はコースが広くて、お客さんもたくさんいて気持ち良かったです。今年中に通算100勝したいので、そうなるとヤングジョッキーズシリーズに出場するのは今回が最後かなと思うと、またファイナルに出たいです。
YJSトライアルラウンドでは金沢第1戦で勝利
昨年4月のデビューからまだ1年経っていませんが、重賞制覇をして、JRAでの騎乗も果たし、通算勝利数は57勝(2024年2月19日現在)。ここまでの成績はいかがでしょうか。
たくさん乗せていただいているお陰で、成績的には想像以上に勝っているかなとは思いますが、自分のミスで勝ちを逃したレースがありますから、もっともっと勉強して無駄のないレースをしたいです。
騎乗数も多いですし、毎朝の攻め馬はかなりの頭数に乗っているんじゃないですか?
乗っていますね。1日28頭くらい、朝は1時から乗っています。
今の楽しみは何ですか?
馬に乗ることが楽しいですし、あと息抜きという意味では地元が近いので、休みの日に地元に帰って友達と遊ぶことです。今高校3年生の年齢なんですけど、仕事の話とかはしないでワイワイするのが楽しいです。
名古屋は塚本征吾騎手や細川智史騎手も目立っていて、若手騎手が元気いいですね。
そうですね。自分は一番下ですけど、みなさん仲良くしてくれて、けっこうワイワイやっています。野球チームもあるので、冬はあまり練習していないですけど、また暖かくなったら試合とかもやりたいですね。
デビューの頃から変わったなと感じる部分はありますか?
特に自分ではわからないですね。気持ちの面でも特には。成長できていたらいいですけど。
では今後の目標はいかがでしょうか。
僕は小さい頃から叔父さん(大畑雅章騎手)を見て騎手になりたいと思ったのですが、今は一緒にレースに乗ることができる立場になれたので、いつか抜きたいです。昨年は叔父さんが122勝で僕が46勝なので全然かなわなかったですけど、早く成長して近づきたいです。
では、オッズパーク会員の皆様にメッセージをお願いします。
いつも名古屋競馬を応援していただき、ありがとうございます。これからも精一杯頑張りますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:愛知県競馬組合、NAR)
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昨年、園田競馬場での期間限定騎乗をきっかけに騎乗フォームや追い方が格段にパワーアップした濱尚美騎手。その成果はヤングジョッキーズシリーズ(YJS)でも表れ、初のファイナル出場を果たしました。
昨年のYJSトライアルラウンドは初戦から見せ場を作りました。高知第1戦を10番人気スズカノアイルで逃げ粘ってアタマ差2着。
マイペースで逃げられたことが大きいかなと思います。3コーナーくらいで後ろから来るかなと思っていたんですけど、意外と来なくて「あれ?あれ?」と乗っていてビックリしました。でも、あの着差は勝たせられたと思います。ステッキを持ち替えて内から打っていたら、きっと違ったと思うんですけど、馬上で人間がアップアップでした。
ムチを左右どちらから打つかだけでそんなに変わるんですね。
ちょっと内にモタれていたかなと思います。レース後には園田の期間限定騎乗でお世話になっていた新子先生からも「内から打てと思っていた」と言われました。
TR高知第1戦で騎乗したスズカノアイル
悔しさが残る一方、掲示板に載ることさえ少なかった過去のYJSから考えると、大躍進です。
園田に短期で行っている最中の地元でのトライアルラウンドだったので、いいところを見せたい気持ちはありつつ、結果を残せるか不安もありました。初戦で2着を取れたことで、すごく自信に繋がりました。「新子先生、ありがとうございます」って本当に感謝の気持ちです。
続くTR金沢では第2戦を最低人気馬で差し切り勝ち。
ペースが速かろうが遅かろうが、騎乗馬のペースでレースをしたいなと考えていました。3コーナーで前にいた騎手が外に切り替えて、サーッて道が開いたので「ここに行くしかない」と進んでいくと、上手くいきました。でも、あんなに弾ける脚があるとは思っていなくて、追ったらそのまま突き放したのでビックリしました。
TR金沢第2戦では最低人気ながら直線で抜け出した
名古屋も2着、3着でまとめて、地方西日本トップでファイナル進出を決めました。ただ、ファイナルは川崎が8着、7着、JRA中山が15着、8着で総合15位でした。
パッとしないまま4レースとも終わっちゃいました。中山競馬場で乗れることは楽しみにしていて、レース前の返し馬がめちゃくちゃ楽しかったです。でも、レースになったらいっぱいいっぱいで、勿体ないことしたなと思います。もうちょっと楽しんで乗りたかったですね。でも、YJS最後の年にすごく楽しめて結果も出て、良かったなと思います。
YJSトライアルラウンドもですし、昨年5月~7月は園田で騎乗して3カ月で前年を超える20勝。どんどん結果が出て、乗っていても楽しかったんじゃないかなと思います。
この世界は結果で判断されます。誰が見ても努力しているよねって言われても、結果が出ないとそれで合っているのか疑心暗鬼になってしまいますが、園田では着実に結果に繋がっていったので、余計に自信に繋がりました。
その期間限定騎乗は、トップトレーナーの新子雅司調教師に濱騎手が直談判して実現しました。園田に行って明らかに騎乗フォームが変わりました。改めてどんなことを教えてもらったか聞かせてください。
毎朝、調教終わりに新子先生に木馬で騎乗フォームを見ていただきました。馬と人の重心の位置について教えてもらったり、馬に乗る位置を前にする意識など、騎乗姿勢をゼロから作っていただきました。木馬でできないことは絶対に馬上でもできないから、と徹底的に体に覚え込ませました。
下半身も筋力アップして安定感が増したように感じました。
週2回くらいジムに行って筋トレをしました。園田に行って最初に木馬を全力で追っても30秒でアップアップだったんです。腕を動かすスピードも遅いし、お尻も上がってきちゃったんですけど、毎日続けることで全力で追える時間が長くなっていきました。ある時、過去の映像を見たら「よくこんなんで乗っていたね(笑)」って新子先生の奥さんと一緒に笑っちゃうくらいでした。これだけ変われるんだなと思いましたし、新子先生と奥さんのサポートがなかったら、ここまで成長できなかったと思います。
ジムも木馬も、日々取り組んだ方がいいと思っている騎手はたくさんいても、実際にトレーニングを継続できるかがまた難しいのでしょうね。
そうなんです。「ジムに行ってこいよ」と言われるだけだったら、私も甘い部分があるので、そんなにできなかったと思います。続ける難しさがありますよね。でも、先生や奥さんが毎朝、私の調教が終わるまで待ってくださって、一緒に木馬やジムに付き添ってくださいました。だからこそ、身に付いたのかなと思います。
向正面と最後の直線では乗り方が違うことを教えてもらった、とも話していましたね。
「ずっと同じ筋肉を使っていたら、人間も疲れるよね」と新子先生から聞きました。筋肉の使い分けをしたらもっと楽になるし、力も出せるよと言われて、向正面では足をちょっと開いて外側の筋肉を使って、追いはじめた時にグッと膝を締めて内腿で押すようにしました。ただ綺麗に乗ることだけじゃなくて、「わぁー!」と感動しました。
たしかにその発想はなかったです。
向正面では足を開いているので体を畳めて、胸を膝につけるイメージで乗っています。吉原寛人騎手がめちゃくちゃそういうタイプじゃないですか。向正面でああいう形を作りたいんですよ。でも、どれだけ意識しても「いや、まだちょっと筋力が足りひんな」と思います。毎週、レースを見直して、園田の期間限定騎乗が終わった後も新子先生からは時々連絡をいただいていて、「いい位置で乗れているけど、手綱がちょっと緩いよ」などアドバイスをいただいています。
これから目標は?
まず100勝を達成したいですね。そして、新子先生に教わったことを無駄にしないように、技術を大切にしていきたいなとは思います。高知に戻ってきてからもトレーニングとかはやっていても、勝ち鞍が減ってしまっているので、「高知では全然勝てないよね。園田ではいい馬に乗せてもらっていたから」という見方になってしまうと思うんです。でも、見てくれている人はいると思っているので、努力を続けていきたいです。
最後にオッズパーク会員のみなさんにメッセージをお願いします。
ファンの方々の応援が自分にとってすごく力になっています。恩返しできるように結果を出していきたいなと思うので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子
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